セックスレスで慰謝料は請求できる?できない?すべきことも詳しく解説
最終更新日: 2024年11月12日
- 配偶者が性生活を拒否し続けているのは慰謝料請求の理由になるか
- 配偶者が性生活を拒否しているが、何か理由があるのだろうか
- セックスレスで慰謝料請求する場合、弁護士に相談した方がよいか
何らかの理由でセックスレスとなった夫婦もいるでしょう。
セックスレスを理由に慰謝料請求できるかどうかは、ケースバイケースです。
そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、セックスレスを理由とした慰謝料請求の条件、慰謝料請求の手順等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- セックスレスとなるには、病気や不貞行為等、様々な原因がある
- セックスレスの原因によっては、慰謝料請求が可能な場合もある
- 離婚問題に詳しい弁護士のアドバイスを受け、慰謝料請求の手続きを進めた方がよい
セックスレスで慰謝料を請求できる条件
セックスレスを理由に夫婦で協議離婚する場合、配偶者が合意すれば慰謝料を請求できます。
ただし、配偶者がセックスレスだからといって、必ずしも慰謝料が認められるわけではありません。
片方の拒絶
配偶者が理由なく性生活を継続的に拒絶する場合、慰謝料請求が認められる可能性はあります。まずは配偶者の年齢・健康状態・性的不能かどうか等を確認しましょう。
- 夫婦が高齢であるわけではなく、性生活を送るのが当然という状況である
- 夫婦の健康状態は良好で、夫はED(勃起不全・勃起障害)になっていない
- 夫婦のいずれも性的欲求が減退しているわけではない
裁判で慰謝料請求が認められたケースは次の通りです。
- 夫が性生活を拒否しているのに、アダルトビデオで性欲を満たす状況が継続し、妻が離婚と慰謝料を求めた事案で、120万円の慰謝料が認められた(福岡高等裁判所平成5年3月18日判決)
- 夫が性的不能を隠して結婚、約4年間の同居期間中に1度も性交渉がない事案で、慰謝料200万円が認められた(京都地方裁判所昭和62年5月12日判決)
- 夫が同性愛者で別の男性と性的な関係にあり、妻との性生活を拒否するようになった事案で、慰謝料150万円が認められた(名古屋地方裁判所昭和47年2月29日判決)
性的不能というやむを得ない事情があっても、その事実を隠して結婚すれば、慰謝料請求が認められる場合はあります。
出典:裁判例検索 | 裁判所
不貞がある
不倫相手との性交渉で性的欲望を満足させ、夫婦の性生活を拒否するようになった場合、不倫をしている配偶者に慰謝料請求が可能です。
裁判では原因が不貞行為によるものである以上、セックスレスか否かを問わず、不倫した側に慰謝料を命じる判決がほとんどです。
なお、セックスレス以外にDV等の事実があった場合など、離婚事由を作った配偶者に慰謝料の支払いを命じる場合があります。
セックスレスで慰謝料請求できないケース
セックスレスの原因がやむを得ない事情で生じたものであり、原因のある配偶者に責任を追及するのは酷であると判断された場合、慰謝料請求は認められません。
また、単に性交渉の回数が少ないだけの場合も、慰謝料請求は認められない可能性があります。
片方に能力がない
夫婦のどちらかが性的不能である場合です。ED(勃起不全・勃起障害)は男性の誰もが発症し得る病気であり、慰謝料請求は基本的に認められません。
妻の理解のもとでED治療を行い、健康体に戻るよう努力しましょう。
ただし、配偶者が性的不能であるのを告白せず結婚したという場合、あなたに対して重大な事実を黙っていたと判断できます。
性的不能であることを告白せず結婚したケースであれば、裁判所は配偶者に慰謝料を命じる可能性が高いです。
双方が望んでいない
夫婦双方が性生活を望んでいないと、どちらかが裁判で慰謝料請求を行っても基本的にその請求は認められません。
お互い若いが性生活はなくてよいと考えて夫婦関係を続けている、高齢夫婦となり性生活はなくとも満たされている等のケースがあげられます。
ただし、夫婦の一方が性欲を満たすため不倫に走り、夫婦関係が破綻したという場合は、セックスレスか否かを問わず、慰謝料請求が認められます。
セックスレスと認められない
回数は少ないものの、夫婦で性交渉が行われている場合、慰謝料請求は基本的に認められません。
日本性科学会ではセックスレスを、特別な事情がないのに、夫婦の合意した性交渉が1か月以上なく、その後も長期にわたると予想される場合、と定義しています。
そのため、夫婦のどちらかが性交渉を数回申し出て1回は応じている場合や、1か月に1回程度は性交渉がある場合、裁判で慰謝料請求が認められるのは困難です。
セックスレス問題による慰謝料の相場
離婚を伴う慰謝料請求の場合、100万円〜300万円程度が相場です。
離婚には至らず慰謝料のみの場合は、100万円を超えないのが一般的です。
慰謝料額の算定にあたっては、夫婦の婚姻期間、相手の年収や職業、子どもの有無等が考慮されます。
また、裁判では、セックスレスの経緯や理由、相手方に責任追及されてもやむを得ない部分があるか否かによって、認められる金額に差が出てきます。
希望の慰謝料額を請求しても、諸事情が考慮され、希望した金額がそのまま認められるわけではない点に注意しましょう。
セックスレスが原因で慰謝料請求する流れ
セックスレスが原因の慰謝料請求は、離婚協議や調停離婚・裁判離婚を行う場合に、あわせてするのが一般的です。
夫婦の話し合いで離婚・慰謝料の合意に達しない場合は、家庭裁判所で解決を図ります。
協議
慰謝料を含めた離婚条件について、夫婦で冷静に話し合いましょう。慰謝料額をどのくらいにするかは、夫婦で自由に決めることができます。
しかし、双方の考えている金額の隔たりが大きいと、協議不成立となる可能性が高いため、弁護士に前もって相談し適正な金額を提示してもらい、話し合いを進めた方がよいです。
夫婦で直接話し合うと感情的になりそうな場合は、第三者である弁護士を代理人に立て、配偶者と交渉するとよいでしょう。
調停
協議離婚がうまくいかなかった場合、家庭裁判所に「夫婦関係調整調停(離婚)の申立」が可能です。
話し合いの場を家庭裁判所に移し、離婚や慰謝料に関する夫婦の合意を図ります。
家庭裁判所から選ばれた調停委員が夫婦の間に入り、様々な助言・解決案の提示を行います。解決案に夫婦が納得すれば、合意内容を記載した「調停調書」が作成され、調停成立です。
一方、夫婦が合意しなければ調停不成立となり、裁判離婚で解決を図ることになります。
裁判
調停が不成立になった場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を提起しましょう。なお、調停を経た後でなければ、裁判による解決は図れません(調停前置主義)。
離婚・慰謝料請求を行うときは、証拠の提示が必要です。
裁判官が訴訟当事者の主張や提出された証拠をもとに、事実を認定し、法律の定める離婚原因・慰謝料請求が認められるか等を審理し、判決を下します。
なお、判決前に裁判官から和解案が提示されるケースもあります。訴訟当事者が和解案に合意したときは、和解調書が作成され判決を経ずに裁判終了です。
セックスレスの慰謝料請求ですべきこと
セックスレスが原因で配偶者に慰謝料請求を行う場合は、確実な証拠収集とともに、法律のプロである弁護士と相談し、対策を練る必要があります。
慰謝料請求の前に準備を整えて、スムーズに手続きを進めましょう。
証拠収集
夫婦間での性生活が行われない原因を調査し、証拠を揃える必要があります。
たとえば、配偶者の性的不能が原因ではなく、不倫(不貞行為)が原因である場合は、裏付けとなる証拠を集めなければいけません。
裁判で不倫(不貞行為)と認められる証拠は、次の通りです。
- 配偶者と不倫相手の性交渉の画像・動画
- 配偶者と不倫相手の不倫を推認できる性交渉の画像・動画(例:不倫相手の自宅に2人が出入りする画像・動画等)
- 配偶者と不倫相手の不倫に関係する音声 等
素人だけでは、有力な証拠となり得る画像・動画・音声の収集は困難でしょう。証拠を得るため、探偵に調査を依頼するのもよい方法です。
弁護士への相談
弁護士に相談して慰謝料請求に関するアドバイスを受け、サポートを依頼するのもよい方法です。
弁護士は、様々な慰謝料請求に関する情報を提供します。
- 協議で慰謝料を決めるポイント
- 証拠収集の方法
- 協議不成立となった場合の調停・裁判の手順
- ケースに応じた適正な慰謝料額の説明
弁護士を代理人に立てれば配偶者との交渉はもちろん、調停・裁判手続きも任せられます。また、調停・裁判であなたの立場に立った主張・立証が可能です。
セックスレスで慰謝料請求をされた場合の対応
あなたがセックスレスで慰謝料請求される側になった場合も、冷静な対応が必要です。
あなた自身にやむを得ない理由があるという証拠の収集や、どのように解決を図っていくのかよく検討しましょう。
まずは内容を確認する
配偶者からセックスレスで慰謝料請求された場合は、請求内容を冷静に確認しましょう。
慰謝料請求は、口頭やメール、内容証明郵便等、様々な方法があります。内容証明郵便による請求が行われた場合は、配偶者は調停・裁判の手続きを進める可能性が高いとみてよいでしょう。
内容証明郵便に慰謝料の支払いを強制する効力はありません。ただし、調停・裁判のときに、あなたが慰謝料請求に応じなかったという証拠となる可能性があります。
どのような方法の慰謝料請求であっても、請求を無視せず、誠実に話し合う姿勢が必要です。
証拠の確認と収集
セックスレスの原因が、自分の病気やケガ等のやむを得ない理由である場合、それを裏付ける証拠の収集が必要です。
たとえば、あなたがED(勃起不全・勃起障害)の場合、次の書類が証拠となります。
- ED治療を以前から受けてきた場合は領収書
- 医師の診断書
医師の診断書は医療機関にもよりますが、数千円程度が相場です。
ただし、ED(勃起不全・勃起障害)を相手に打ち明けないまま結婚した場合、あなたが責任を追及される可能性があるため注意しましょう。
相手との話し合いを試みる
セックスレスとなったやむを得ない原因がある場合は、率直に配偶者に伝え慰謝料ではなく、別の解決方法を検討するように説得しましょう。
EDが原因でセックスレスとなっているなら、次のような提案が考えられます。
- 夫婦関係を継続するなかで、EDとなった事実を配偶者に告白する
- 今後はED治療薬を積極的に試し、性生活を送ると約束する
配偶者が申し出に合意すれば、夫婦関係の修復に向けた新たな努力を開始できます。
調停・裁判の準備
夫婦間で協議がまとまらないときは、配偶者は調停・裁判に向けた準備を進める可能性があります。
配偶者が調停を申し立てた場合、あなたに家庭裁判所からの呼び出しの通知があります。次の書類が自宅に届くので、内容をよく確認しましょう。
- 調停期日通知書(呼び出し状)
- 申立人である配偶者が家庭裁判所に提出した離婚調停申立書(写し)
- 夫婦間の問題に関する意見、事件等の照会書
- 調停に関する説明書、裁判所の地図
届いた書類には、あなたが必要事項を記入し提出しなければならないものもあります。指示に従い、指定日までに提出しましょう。
家庭裁判所での調停・裁判では、身だしなみ・言葉遣いに気を付け、あなたの言い分を主張しましょう。
専門弁護士への相談
慰謝料を請求され、どうしてよいかわからないときは、離婚問題に詳しい弁護士へ相談しましょう。
弁護士は、慰謝料を請求された側のアドバイスやサポートも当然行います。
離婚問題に詳しい弁護士を選任するためには、まずホームページを確認しましょう。
ホームページで離婚相談実績がわかる離婚相談・解決事例が豊富に掲載されている、離婚に関する手続きの手順・報酬が明記されている等すれば、離婚の協議・裁判が得意な弁護士とみることができます。
あなたのニーズに合った法律事務所を選んで、セックスレスで慰謝料請求された悩みや、今後の対応策を話し合いましょう。
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今回は離婚成立に尽力してきた専門弁護士が、セックスレスを理由とした慰謝料請求ができるケース・できないケース等について詳しく解説しました。
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※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。