立ち退きとは何か?基本・メリット・費用・ポイントをわかりやすく説明!

最終更新日: 2024年12月02日

立ち退きとは何か?基本・メリット・費用・ポイントをわかりやすく説明!

  • 賃借人に賃貸物件からの立ち退きを要求したい。穏便に立ち退きを進めるコツがあれば是非知りたい
  • 賃貸人から立ち退きを要求されてしまった。やはり従うしかないのだろうか?
  • 立ち退きを交渉する前に、弁護士に相談した方がよいのだろうか?

立ち退きは、基本的に賃貸人と賃借人の合意がなければ進められません。
賃貸人から立ち退きを要求する場合、「正当な事由」が必要です。

そこで今回は、立ち退き問題の解決に携わってきた専門弁護士が、立ち退きの進め方、スムーズに進めるポイント等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 賃貸人に「正当な事由」がなければ、賃借人に立ち退きを要求できない
  • 立ち退きを要求する場合、賃借人の事情も十分に考慮する
  • 賃貸人も賃借人も弁護士からアドバイスを受けながら、交渉を進めた方がよい

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

立ち退きとは?わかりやすく説明

賃貸人側にやむを得ない事情があれば、賃借人との賃貸借契約を更新せず、賃貸物件からの退去を要求できます。

ただし、「自分が賃貸物件を利用したくなった」という都合だけでは、立ち退き要求は認められないので注意が必要です。

概要

立ち退きとは、賃貸人と賃借人との話し合いなどによって、必要に応じて立退料を支払い、賃借人を賃貸物件から退去させることを指します。

ただし、立退料を支払えばよいというものではなく、賃貸人に立ち退きを求める「正当な事由」が必要です。

立ち退きを要求された賃借人は、生活の拠点を失う可能性があるので、慎重に話し合いを進める必要があります。

なお、賃貸借契約の解除後に賃借人へ立ち退きを求めるため、まず期間の満了日の1年前から6か月前までに、契約を更新しない旨の通知を行わなければなりません(借地借家法第26条)。

契約解除のタイミングを逃すと、再び同一の条件で契約を更新したとみなされてしまいます。

出典:借地借家法 | e-GOV法令検索

立ち退きが認められる「正当な事由」

賃貸人に「正当な事由」がなければ、基本的に立ち退き要求は認められません。

次のようなケースが正当な事由が認められる可能性があります。

  • 賃貸物件が老朽化し、このままでは倒壊の恐れがある
  • 賃貸物件の所在地が再開発地域となり、取り壊しが必要となった
  • 多額の相続税の支払いが必要となり、賃貸物件を売却しなければいけない
  • 賃借人の重大な契約違反が発覚した 等

ただし、賃貸物件が老朽化していても、外壁を補強すれば耐久性・耐震性が高められるなら、立ち退き要求は認められません。

また、賃借人が住んでいる状態で賃貸物件を売却できる場合(オーナーチェンジ可能物件)、賃借人の立ち退きは不要です。

立ち退きの進め方とは?わかりやすく説明

賃貸人は賃借人が立ち退きに同意しやすいよう立退料等の条件を提示し、交渉を進めていきます。

また、賃借人の事情に配慮し、立ち退き日の猶予や立退料の上乗せをして、譲歩する姿勢も必要です。

理由の説明

立ち退きを要求する理由について説明し、立ち退き日や要求に応じた場合の立退料を提示するなどして理解を求めましょう。

ただし、いきなり賃借人側と面会するのではなく、事前に賃貸借契約の更新はしない旨の通知書を送付します。

通知書には立ち退きを要求する理由の他、立退料を支払う旨、希望する立ち退き日、面会日等を明記しましょう。

通知書を送付すれば、賃借人は交渉日までに立ち退きに同意するか拒否するか、賃貸人にどのような要求を行うかも検討できます。

面会日に賃貸人が理由を説明するときは、感情的にならず、冷静な口調でわかりやすく賃借人に伝え理解を求めましょう。

賃借人側の事情を聴く

賃借人側の事情をヒアリングし、正式な立ち退き日の決定や立退料を算定するときの参考にします。

住居の立ち退きを要求された賃借人は、賃貸人へ率直に不安や不満を主張しましょう。

  • 立ち退きをしたら、生活の拠点を失ってしまい不安だ
  • 引越し先の住居が見つかっても、勤務先から遠くなるのは嫌だ
  • 子どもの学区が変わらないようにしたい
  • 提示された立退料だけでは、引越し先の住居の礼金や仲介手数料は賄えない 等

店舗からの立ち退きを要求された賃借人であれば、次の補償も賃貸人に求めた方がよいでしょう。

  • 新たな店舗の内装費用、広告宣伝費用
  • 休業したときの営業利益の補償
  • スタッフの休業手当
  • その他の損失補償 等

また、立ち退きのときは引越し準備の他、市区町村役場に様々な届出(転居または転出・転入届、マイナンバーカードの住所変更、国民健康保険・国民年金の住所変更等)が必要です。

賃貸人の要求する立ち退き日に立ち退きが無理な場合は、賃借人は「賃貸人が希望する立ち退き日までに、とても準備や届出が間に合わない」と主張した方がよいです。

時期・立退料の提示

賃貸人は賃借人側の意見や提案も踏まえ、改めて立ち退き日・立退料を提示しましょう。

提示した内容に賃借人が同意するとは限らず、更に調整が必要となる場合もあります。

賃貸人は焦らず、提示した条件で不安や不満に思っている点を賃借人から聴き、同意が得られるよう条件の見直しも検討しましょう。

譲歩の検討

賃貸人は自分の要求を主張するだけでなく、譲歩の検討も必要です。賃借人が次のような点に不安を感じているのであれば、不安を解消できる条件を提示しましょう。

  • 移転先の賃貸物件がなかなか決まらない→賃貸人が賃借人の希望に合う賃貸物件の紹介・斡旋を行う
  • 新たな賃貸物件と現賃貸物件との家賃の開きが大きい(新たな賃貸物件の賃料が高い)→立退料の上乗せ

賃貸人がある程度譲歩すれば、賃借人が立ち退きに応じる可能性も高まります。

解決案の提示

解決案を提示するときは、必ず書面で賃借人に渡しましょう。
たとえ口頭で解決案を提示し賃借人が同意したとしても、「後日、そのような話は聞いていない」「提案内容をすっかり忘れてしまった。もう1回話し合いをしたい」などとはぐらかされ、立ち退き手続きが進まなくなるおそれもあります。
解決案を文書で作成し提示しておけば、お互い内容を忘れるような事態はありません。
立ち退きの条件に双方が合意したときは、必ず「合意書」を作成しましょう。合意書を2通作成し、双方が1通ずつ保管すれば、内容をすぐに確認できます。
また、文書化すると賃借人が「もはや交渉の余地はなく、取り決めた内容に従い、立ち退きを進めなければいけない」と、立ち退きへ前向きになる効果も期待できるでしょう。

裁判の検討

「賃借人との意見の隔たりが大きく、交渉がこれ以上進まない」と感じたときは、裁判による解決を検討しましょう。
賃貸人と賃借人が交渉しても合意に達しなかった場合、賃貸人は裁判所に「明け渡し請求訴訟」の提起が可能です。
賃貸人は、賃貸物件の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起しましょう。賃貸人が原告、賃借人は被告となります。裁判では原告・被告双方が主張を行い、証拠を提示しなければいけません。
裁判所は慎重に審理したうえで原告の主張を認めた場合、判決で被告に賃貸物件の明け渡しを命じます。
賃借人が明け渡し判決に従わず賃貸物件から立ち退かない場合は、賃貸人は裁判所へ強制執行の申立てが可能です。

立ち退きとは?メリットをわかりやすく説明

賃貸物件からの立ち退きは、賃貸人だけではなく、賃借人にもメリットがあります。

賃借人からみればネガティブなイメージを持たれがちですが、立ち退きを受け入れたときのメリットもよく考慮し、要求に同意するかどうか検討した方がよいです。

賃貸人側のメリット

賃借人の立ち退き後に賃貸物件を取り壊せば、現在のニーズに合わせた新たな建物を建築できるので、賃貸人の経済活動の効率向上が図れます。
たとえば、賃貸物件の周辺地域にファミリー層が数多く移り住んでいる場合、単身者用からファミリー用のマンションに建て替えると、大きな利益が得られるでしょう。建物を新築すれば、耐震性や耐火性を向上させられるだけでなく、老朽化した建物と比較して修繕費や維持管理費も抑えられます。
また、賃借人が賃貸物件内で問題行動を起こし(騒音や異臭の発生等)、入居者や周辺住民に不快な思いをさせている場合もあるでしょう。問題行動を起こす賃借人に立ち退きを求めなければ、「賃貸人はなぜ立ち退きを迫らないんだ」と、反感を持たれてしまう恐れもあります。
何度注意しても問題行動を改めない賃借人に対して、賃貸人が契約違反を理由に立ち退きを要求すれば、他の入居者や周辺住民からの信頼も高まるでしょう。

賃借人側のメリット

賃貸人と対等の立場で交渉することで、自分の希望に近い立退料を得られる可能性があります。

立ち退き要求を受けた段階で、新たな賃貸物件を探せば、現在の住居よりも好条件の物件(例:駅近、間取りが広い等)が見つかる場合もあるでしょう。
引越し費用のほとんどを立退料で賄えれば、お金の心配をせずに新たな好条件の住居へ移ることができます。

立ち退きの費用とは?わかりやすく説明

立退料の金額や計算方法は、賃貸人と賃借人が合意すれば、どのように取り決めても構いません。
ただし、住居を立ち退く場合の立退料は、「移転先の住居の6か月分~1年分の賃料+引越し代」で算定することが多いです。立退料は100万円〜200万円程度となるケースもよくあります。
一方、裁判所では次のような計算式で算定される場合が多いです。

立退料=(新規賃料-現行賃料)×1年~3年+引越し費用+新規契約金

新規契約金には礼金や仲介手数料が該当します。

具体例をあげて計算してみましょう。

  • 新規賃料(引越し先の住居):1か月10万円
  • 現行賃料(現在の住居):1か月7万円
  • 新規賃料と現行賃料の差額:3年分
  • 引越し費用:20万円
  • 新規契約金:30万円

(新規賃料10万円-現行賃料7万円)×3年+引越し費用20万円+新規契約金30万円=158万円

なお、店舗の立ち退きの場合は、営業利益の補償やスタッフの休業手当等も考慮されるため、立退料の増額を必要とする場合があります。

立ち退きをスムーズに進めるポイントとは?わかりやすく説明

立ち退きを円滑に進めたいときは、なるべく賃借人の希望を汲み、条件の調整を行った方がよいでしょう。

賃貸人も賃借人も法律のプロである弁護士に相談し、アドバイスを受けつつ、交渉を進めた方が無難です。

譲歩ポイントの検討

賃貸人・賃借人共に譲歩ポイントをよく検討しておきましょう。

  • 賃貸人:「立退料として移転先住居の7か月分の賃料を支払うので、新たな住居は賃借人で探してもらいたい。」
  • 賃借人:「現在の住居より駅近の新住居を紹介してもらえれば、立退料は移転先住居の3か月分の賃料に軽減されても構わない」

双方とも、事前にどこまで譲歩できるか検討してから交渉を開始すれば、条件を調整しやすくなります。

弁護士への相談

立ち退きの交渉を円滑に進められるよう、弁護士に相談し、対応を協議するのもよい方法です。

弁護士は次のようなアドバイスを提供します。

  • 交渉を円滑に行うコツ
  • 立ち退きが正当な事由に当たるかどうかの説明
  • 立退料の金額は妥当かどうか
  • (相談者が賃貸人の場合)交渉が決裂した場合の裁判手続きの説明
  • (相談者が賃借人の場合)交渉を拒否したときに想定されるリスク
  • 弁護士に代理人を任せる有効性

賃貸人と賃借人の双方が弁護士に交渉役を任せることが可能です。弁護士は依頼者の立場に立ち、冷静に交渉を進めていきます。

立ち退きとは何か?わかりやすく知りたいなら春田法律事務所に相談を

今回は、立ち退き問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、立ち退きを進めるポイント等について詳しく解説しました。

立ち退き交渉が決裂すると、最終的には訴訟・強制執行で解決が図られます。裁判になると手間や時間がかかるので、賃貸人と賃借人とが歩み寄り、話し合いによる解決を目指した方がよいです。

春田法律事務所は初回相談を無料で提供しています。立ち退き問題に悩んだときは、気軽に弁護士と相談しましょう。

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