立ち退きとは何か?基本・メリット・費用・ポイントをわかりやすく説明!
2024年11月12日
- 賃借人に賃貸物件からの立ち退きを要求したい。穏便に立ち退きを進めるコツがあれば是非知りたい
- 賃貸人から立ち退きを要求されてしまった。やはり従うしかないのだろうか?
- 立ち退きを交渉する前に、弁護士に相談した方がよいのだろうか?
立ち退きを行う場合、基本的に賃貸人・賃借人双方の合意が必要です。
また、賃貸人から立ち退きを要求する場合、「正当な事由」がなければいけません。
そこで今回は、立ち退き問題の解決に携わってきた専門弁護士が、立ち退きの進め方、スムーズに進めるポイント等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 賃貸人に「正当な事由」がないと、賃借人に立ち退きを要求するのはほぼ不可能
- 立ち退きを要求する場合、賃借人の事情も十分に考慮する
- 賃貸人も賃借人も弁護士からアドバイスを受けながら、交渉を進めた方がよい
立ち退きとは?わかりやすく説明
賃貸人側にやむを得ない事情があれば、賃借人との賃貸借契約を更新せず、賃貸物件からの退去を要求できます。
ただし、「自分が賃貸物件を利用したくなった。」という都合だけで、立ち退きは認められないので注意が必要です。
概要
立ち退きとは、賃貸人と賃借人とが話し合い、必要に応じて立退料を支払い、賃借人を賃貸物件から退去させる方法です。
ただし、立退料を支払うだけでなく、賃貸人に立ち退きを進める「正当な事由」がなければいけません。
立ち退きを要求された賃借人は、生活の拠点を失う可能性があるので、慎重に話し合いを進める必要があります。
なお、賃貸借契約の解除後に賃借人へ立ち退きを求めるので、まず期間の満了日の1年前から6か月前までに、更新しない旨の通知を行わなければいけません(借地借家法第26条)。
契約解除のタイミングを逃すと、再び同一の条件で契約を更新したとみなされてしまいます。
出典:借地借家法 | e-Gov法令検索
立ち退きが認められる「正当な事由」
賃貸人に「正当な事由」がなければ、基本的に立ち退き要求は認められません。
次のようなケースが正当な事由に該当します。
- 賃貸物件が老朽化し、このままでは倒壊の恐れがある
- 賃貸物件の所在地が再開発地域となり、取り壊しが必要となった
- 相続の発生で、多額の相続税が必要となり、賃貸物件を売却しなければいけない
- 賃借人の重大な契約違反が発覚した 等
ただし、賃貸物件が老朽化していても、外壁を補強すれば耐久性・耐震性が高められるなら、立ち退き要求は認められません。
また、賃借人が住んでいる状態で賃貸物件を売却できる場合(オーナーチェンジ物件)、賃借人の立ち退きは不要です。
立ち退きの進め方とは?わかりやすく説明
賃貸人は賃借人が立ち退きに同意しやすいよう立退料等の条件を提示し、交渉を進めていきます。
また、賃借人の事情に配慮し、立ち退き日の猶予や立退料の上乗せをして、譲歩する姿勢も必要です。
理由の説明
立ち退きを要求する理由について説明したり、立ち退き日や要求に応じた場合の立退料を提示したりして理解を求めましょう。
ただし、いきなり賃借人側と面会するのではなく、事前に賃貸借契約の更新はしない旨の通知書を送付します。
通知書には立ち退きを要求する理由の他、立退料を支払う旨、希望する立ち退き日、面会日等を明記しましょう。
通知書を送付すれば、賃借人は交渉日までに立ち退きに同意するか拒否するか、賃貸人にどのような要求を行うかも検討できます。
面会日に賃貸人が理由を説明するときは、感情的にならず、冷静な口調でわかりやすく賃借人に伝え理解を求めます。
賃借人側の事情を聴く
賃借人側の事情をヒアリングし、正式な立ち退き日の決定や立退料を算定するときの参考にします。
住居の立ち退きを要求された賃借人は、賃貸人へ率直に不安や不満を主張しましょう。
- 立ち退きをしたら、生活の拠点を失ってしまい不安だ
- 引越し先の住居が見つかっても、勤務先から遠くなるのは嫌だ
- 子どもの学区が変わらないよう、引越ししたい
- 提示された立退料だけでは、引越し先の住居の礼金や仲介手数料は賄えない 等
更に店舗の立ち退きを要求された賃借人ならば、次の補償も賃貸人に求めます。
- 新たな店舗の内装費用、広告宣伝費用
- 休業したときの営業利益の補償
- スタッフの休業手当
- その他の損失補償 等
また、立ち退きのときは引越し準備の他、市区町村役場に様々な届出(転居または転出・転入届、マイナンバー変更、国民健康保険の住所変更、国民年金の住所変更等)が必要です。
賃貸人の立ち退き日に無理があるなら、賃借人は「賃貸人が希望する立ち退き日までに、とても準備や届出が間に合わない。」と主張した方がよいでしょう。
時期・立退料の提示
賃貸人は賃借人側の意見や提案を踏まえ、改めて立ち退き日・立退料を提示します。
ただし、提示した内容に賃借人が同意するとは限らず、更に調整が必要となる場合もあります。
賃貸人は焦らず、提示した条件で不安や不満に思っている点を賃借人から聴きだし、同意が得られるよう条件の修正・改善を図りましょう。
譲歩の検討
賃貸人は自分の要求を主張するだけでなく、譲歩を検討します。賃借人が次のような点に不安を感じているなら、不安を解消できる条件を提示しましょう。
- 移転先の賃貸物件がなかなか決まらない→賃貸人が賃借人の希望に合う賃貸物件の紹介、斡旋を行う
- 新たな賃貸物件と現賃貸物件との家賃差額分の開きが大きい(新たな賃貸物件の賃料が高い)→立退料の上乗せ
賃貸人がある程度譲歩すれば、賃借人が立ち退きに応じる可能性も高まります。
解決案の提示
解決案を提示するときは、必ず書面で賃借人に渡しましょう。
たとえ口頭で解決案を提示し賃借人が同意したとしても、「後日そのような話は聞いていない。」「提案内容をすっかり忘れてしまった。もう1回話し合いをしたい。」とはぐらかされ、立ち退き手続きが進まなくなるおそれもあります。
解決案を文書で作成し提示すれば、お互い内容を忘れるような事態はありません。
立ち退きの条件に双方が合意したら、「合意書」を忘れずに作成しましょう。合意書を2通作成し、双方が1通ずつそれぞれ大切に保管すれば、内容をすぐに確認できます。
また、文書化すると賃借人が「もはや交渉の余地はなく、取り決めた内容に従い、立ち退きを進めなければいけない。」と、立ち退きへ前向きになる効果が得られます。
裁判の検討
「賃借人との意見の隔たりが大きく、交渉がこれ以上進まない。」と感じたら、裁判による解決を検討しましょう。
賃貸人と賃借人が交渉しても合意に達しなかった場合、賃貸人は裁判所に「明け渡し請求訴訟」の提起が可能です。
賃貸人がまず賃貸物件の所在地を管轄する裁判所に訴えを提起後、賃貸人は原告、賃借人が被告となります。裁判では原告・被告双方が立ち退きに関する主張を行い、証拠を提示しなければいけません。
裁判所は慎重に審理したうえで原告の主張を認めた場合、判決で被告に賃貸物件の明け渡しを命じます。
なお、賃借人が判決に従わず賃貸物件から立ち退かない場合、賃貸人は裁判所へ強制執行の申立てが可能です。
立ち退きとは?メリットをわかりやすく説明
賃貸物件からの立ち退きは、賃貸人だけではなく、賃借人にもメリットがあります。
賃借人からみればネガティブなイメージを持たれがちですが、立ち退きを受け入れたときのメリットもよく考慮し、要求に同意するかどうかを検討しましょう。
賃貸人側のメリット
賃借人の立ち退き後に賃貸物件を取り壊せば、現在のニーズに合わせた新たな建物を建築できるので、賃貸人の経済活動の向上が図れます。
たとえば、賃貸物件の周辺地域の人口が増加し、ファミリー層が数多く移り住んでいる場合、単身者用マンションからファミリー用マンションに建て替えると、大きな利益が得られることでしょう。
新たな建物を建築すれば、耐震性や耐火性の向上はもちろん、老朽化した建物と比較して修繕費や維持管理費も抑えられます。
また、賃借人が賃貸物件内で問題行動を起こし(騒音や異臭の発生等)、隣室の入居者や周辺住民に不快な思いをさせていれば、「問題行動を起こす賃借人に、賃貸人はなぜ立ち退きを迫らないんだ。」と、反感を持たれてしまう場合もあります。
何度注意しても問題行動を改めない賃借人に対し、賃貸人が契約違反を理由に立ち退きを要求すれば、他の入居者や周辺住民からの信頼も高まることでしょう。
賃借人側のメリット
賃貸人と同等の立場で交渉できるので、自分の希望に近い立退料を得られる可能性があります。
立ち退き要求を受けた段階で、新たな賃貸物件を探すと、現在の住居よりも好条件の物件(例:駅近、間取りが広い等)が見つかる場合もあります。
引越し費用のほとんどを立退料で賄えるなら、お金の心配をせずに新たな住居へ移ることができるでしょう。
立ち退きの費用とは?わかりやすく説明
立ち退きの金額や計算方法は法定されているわけではなく、賃貸人と賃借人の合意があれば、どのように取り決めても構いません。
ただし、住居を立ち退く場合の立退料は、「移転先の住居の6か月分の賃料+引越し代」で算定する方法が一般的です。立退料は100万円〜200万円程度となるケースがほとんどです。
一方、裁判所では次のような計算式で算定される場合が多いです。
立退料=(新規賃料-現行賃料)×1年~3年+引越し費用+新規契約金
新規契約金には礼金や仲介手数料が該当します。
具体例をあげて計算してみましょう。
- 新規賃料(引越し先の住居):1か月10万円
- 現行賃料(現在の住居):1か月7万円
- 新規賃料と現行賃料の差額:3年分
- 引越し費用:20万円
- 新規契約金:30万円
(新規賃料10万円-現行賃料7万円)×3年+引越し費用20万円+新規契約金30万円=108万円
なお、店舗の立ち退きの場合は、営業利益の補償やスタッフの休業手当等も考慮されるので、更に立退料の増額を必要とする場合があります。
立ち退きをスムーズに進めるポイントとは?わかりやすく説明
立ち退きを円滑に進めたいならば、なるべく賃借人の希望を汲み、条件の調整を行った方がよいでしょう。
賃貸人も賃借人も法律のプロである弁護士に相談し、アドバイスを受けつつ、交渉を進めた方が無難です。
譲歩ポイントの検討
賃貸人・賃借人共に譲歩ポイントをよく検討しておきましょう。
- 賃貸人:「立退料として移転先住居の7か月分の賃料を支払うので、新たな住居は賃借人で探してもらいたい。」
- 賃借人:「現在の住居より駅近の新住居を紹介してもらえたなら、立退料は移転先住居の3か月分の賃料に軽減されても構わない。」
双方とも、事前にどこまで譲歩できるか検討してから交渉を開始すれば、条件の調整が行い易くなります。
弁護士への相談
立ち退きの交渉を円滑に進められるよう、弁護士に相談し、対応を協議するのもよい方法です。
弁護士は次のようなアドバイスを提供します。
- 交渉を円滑に行うコツ
- 立ち退きが正当な事由に当たるかどうかの説明
- 立退料の金額は妥当かどうか
- (相談者が賃貸人の場合)交渉が決裂した場合の裁判手続きの説明
- (相談者が賃借人の場合)交渉を拒否したときに想定されるリスク
- 弁護士に代理人を任せる有効性
賃貸人・賃借人の一方または双方が、弁護士に交渉役を任せても構いません。弁護士は依頼者側の立場にたち、理性的に交渉を進めていきます。
立ち退きとは何か?わかりやすく知りたいなら春田法律事務所に相談を
今回は、立ち退き問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、立ち退きを進めるポイント等について詳しく解説しました。
立ち退き交渉が決裂すると、最終的には訴訟・強制執行で解決が図られます。裁判になると手間や時間がかかるので、賃貸人と賃借人とが歩み寄り、話し合いによる解決を目指した方がよいです。
春田法律事務所は初回相談を無料で提供しています。立ち退き問題に悩んだら、まずは気軽に弁護士と相談してみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。