誹謗中傷がX(旧Twitter)で多発?原因・法的リスク・加害者と被害者の対処法を解説
最終更新日: 2024年12月14日
- X(旧Twitter)で誹謗中傷されている。誹謗中傷をやめさせるにはどうすればよい?
- X(旧Twitter)で誹謗中傷を行ってしまい、どのような罪に問われるのか心配だ。
- 誹謗中傷の問題を解決したい。弁護士と相談した方がよいのだろうか?
X(旧Twitter)上で誹謗中傷の投稿が多発しています。誹謗中傷された側は精神的な苦痛を受けていることでしょう。
一方、誹謗中傷の加害者は、重いペナルティを受ける可能性があります。
そこで今回は、SNSトラブル解決に携わってきた専門弁護士が、誹謗中傷がX(旧Twitter)で多発する理由、的確な対処法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- X(旧Twitter)上で誹謗中傷の投稿が多発するのは、ユーザー数が多く匿名で利用できるから
- X(旧Twitter)で誹謗中傷を行うと、名誉毀損罪や侮辱罪等に問われる可能性がある
- 誹謗中傷の加害者・被害者はともに、専門弁護士と以後の対応を話し合おう
誹謗中傷がX(旧Twitter)で多発する理由
X(旧Twitter)上での誹謗中傷が問題となっています。誹謗中傷が多発する理由として、ユーザー数の多さや、匿名性、投稿を拡散しやすいという特徴があげられます。
ユーザー数が多い
X(旧Twitter)は世界最大規模のSNSの1つです。膨大なユーザーがX(旧Twitter)を利用する中、誹謗中傷を行うユーザーも数多く存在しています。
また、海外のユーザーとX(旧Twitter)を通してつながる機会も頻繁にあります。
そのため、投稿内容が日本国内では許容される内容でも、他国から見れば不快に思われる場合があるかもしれません。
あなたの何気ない投稿が、誹謗中傷トラブルに発展してしまうリスクもあるのです。
気軽に発言できる
匿名で利用できることも理由の一つです。アカウント作成のときに、氏名や住所といった個人情報の入力が不要です。
気軽にX(旧Twitter)へ参加できる反面、氏名はもちろん顔すらわからない無数のユーザーが、あなたの投稿を閲覧できる状況となっているのです。
投稿するときは、140文字(半角の場合280文字)以内で内容の入力が可能です。物事を簡潔に伝えられる内容であれば問題ない文字数ですが、慎重な説明を要する場合、140文字では説明不足となるかもしれません。相手の誤解を招き、誹謗中傷と捉えられてしまう可能性が出てきます。
投稿を広めやすい
リポスト(リツイート)で投稿を拡散しやすいのも、誹謗中傷が多発する理由といえます。
話題性がある投稿は、リポスト(リツイート)機能で、すぐSNS上に広がります。
快挙や朗報をSNS上で一気に広められるのはメリットといえます。しかし、特定の個人や団体を攻撃する投稿も同じように拡散できるので、深刻なトラブルに発展しやすいのです。
X(旧Twitter)で誹謗中傷したときに問われる罪
あなたがX(旧Twitter)上で誹謗中傷の投稿を行うと、被害者からあなたの個人情報が特定されてしまう事態も想定されます。
個人情報の特定により、被害者が警察署に告訴状を提出すれば、あなたは名誉毀損や侮辱行為の疑いで逮捕・起訴され、重い罪で裁かれるおそれもあるでしょう。
名誉毀損罪
名誉毀損罪とは、公然と特定の個人・団体に関する事実を摘示し、名誉を侵害する罪です。
特定の個人や団体の本当の情報であっても、嘘の情報であっても事実の摘示に該当します。事実の適示により相手の社会的評価を失墜させれば、本罪に問われるので注意しましょう。
X(旧Twitter)上で次のような投稿をすれば、名誉毀損罪に該当する可能性があります。
- 個人の場合「女優〇〇は未成年のときに風俗で働いていた。数年前、実際に性的なサービスをしてもらった。」
- 法人の場合「〇〇株式会社はパワハラで毎年数人の自殺者を出しているブラック企業だ。遺族に訴えられないようカネで解決している。」
名誉毀損罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けると、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処されます(刑法第230条第1項)。
侮辱罪
侮辱罪はX(旧Twitter)上で、公然と事実を摘示せずに、特定の個人や団体を侮辱する罪です。
特定の個人や団体の悪口を投稿すれば、本罪に問われるので注意しましょう。
X(旧Twitter)上で次のような投稿をすれば、侮辱罪に該当する可能性があります。
- 個人の場合「〇〇、お前はだめな人間だ。この世から消えてしまえ。」
- 法人の場合「〇〇株式会社はクズ企業。さっさと倒産しろ。」
侮辱罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けると、1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処されます(刑法第231条)。
脅迫罪
脅迫罪とは、特定の個人やその親族の生命や身体、自由、名誉、財産に害を加えると告知し、脅迫した場合に問われる罪です。
X(旧Twitter)上に投稿して脅迫する他、特定の個人に電話やメール等を送信し脅迫する行為も本罪に該当します。
たとえば「お前や家族を付け回し、背後から刺してやる。」と、X(旧Twitter)上に投稿すれば脅迫罪にあたります。
脅迫罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けると、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されます(刑法第222条第1項)。
偽計業務妨害罪
偽計業務妨害罪とは、偽計(嘘の流布)により特定の個人や団体の業務を妨害した場合、問われる罪です。
なお、特定の個人や団体の業務に影響がなかったとしても、本罪が適用されます。
X(旧Twitter)上に虚偽の情報を投稿・拡散させる他、ごくわずかな人たちへ伝える行為も本罪に該当します。
X(旧Twitter)上で次のような投稿をすれば、偽計業務妨害罪となる可能性があります。
- 個人の場合「〇〇が個人経営している〇〇商店の野菜は放射線で汚染されてる。絶対買うな。」
- 法人の場合「〇〇ビルにサリンをまき散らす。」
偽計業務妨害罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法第233条)。
威力業務妨害罪
威力業務妨害罪とは、威力を用い、特定の個人や団体の業務を妨害した場合、問われる罪です。
たとえ特定の個人や団体の業務に影響がなかったとしても、威力業務妨害罪が適用されます。
特定の個人や団体の意思を制圧するに足りるような行動であれば、本罪にあたるおそれがあるので注意しましょう。
たとえば、X(旧Twitter)上で「お前の店に大勢で押し入って暴れてやる。」と、プレッシャーをかける行為が該当します。
威力業務妨害罪で逮捕・起訴され有罪判決を受けた場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります(刑法第234条)。
X(旧Twitter)で誹謗中傷された場合の対処法
X(旧Twitter)上で誹謗中傷を受けた場合、あなたは動揺するかもしれません。
しかし、何とか気持ちを落ち着け、迅速に誹謗中傷の投稿を保存し、弁護士への相談を検討しましょう。
証拠保存
X(旧Twitter)上で誹謗中傷の投稿を発見した場合、まず証拠の保存が必要です。
あなたを誹謗中傷している投稿は、スクリーンショットで保存していきます。誹謗中傷している投稿は一つだけでなく、発見した投稿を全て保存しましょう。
投稿の保存はなるべくパソコン画面で行った方が、投稿内容や投稿日時等を漏れなく保存できます。
加害者の捨てアカウントでも、しっかりとアカウント名、ハンドルネーム、プロフィール等を記録しましょう。
弁護士への相談
X(旧Twitter)上で誹謗中傷に関して「どのように対処してよいかわからない。」と感じたら、弁護士に相談しましょう。
弁護士はX(旧Twitter)上での誹謗中傷の投稿内容、被害者であるあなたの希望を確認し、次のアドバイスを行います。
- X(旧Twitter)上の投稿がどのような罪に該当するのか
- 削除依頼をする場合の手順
- 加害者を特定する方法
- 損害賠償請求をする場合の適正金額
- 刑事告訴のポイント
- 加害者に示談交渉を申し込まれたときの対処
誹謗中傷の投稿を見つけた後、早い段階で弁護士に代理人を依頼すれば、投稿の削除依頼、加害者を特定するための手続き、訴訟・刑事告訴等を全て任せられます。
削除依頼
投稿の削除依頼は、まずX(旧Twitter)のヘルプセンターに届け出ましょう。
ヘルプセンターの「お問い合わせ 私たちがサポートします。」に進み、「Xにおける安全性や、センシティブなコンテンツに関する懸念」を選択します。
質問事項に回答した後、あなたのXユーザー名・メールアドレス・報告対象のアカウントのユーザー名等を入力し、削除依頼を送信しましょう。
削除申請後も、X(旧Twitter)の運営側が削除しない場合は、裁判所に削除依頼の仮処分の申立てを行います。
仮処分の申立書と保存した誹謗中傷の証拠を添付し、X(旧Twitter)側の運営者を相手方として、裁判手続きを進めていきます。
発信者情報開示請求
投稿の削除依頼ができても、以後、誹謗中傷の投稿が止まるわけではありません。
誹謗中傷した加害者を特定し、法的措置や刑事告訴を行わないと、悪質な投稿の抑止にはつながらないでしょう。
そこで、X(旧Twitter)上で誹謗中傷した加害者を特定するため、「発信者情報開示請求(プロバイダ責任制限法第5条)」または「発信者情報開示命令(同法第8条)」の手続きを進めます。
開示請求・命令は加害者の利用したプロバイダ等に、加害者の情報開示を請求する方法です。
手続きの方法はそれぞれ次の通りです。
- 発信者情報開示請求:X(旧Twitter)運営側に任意開示請求等を行い、開示されたIPアドレスの情報からプロバイダを特定する。当該プロバイダを相手に裁判所へ発信者情報開示請求の訴えを起こす。
- 発信者情報開示命令:裁判所に開示命令を申し立てる。裁判所が申立てを認めたら、X(旧Twitter)運営とプロバイダに開示命令を行う。
プロバイダは開示請求・命令に従い、加害者の氏名や住所、電話番号、メールアドレス等をあなたに開示します。
損害賠償請求
開示請求・命令で加害者の氏名や住所、電話番号、メールアドレス等がわかったら、不法行為責任を理由に、損害賠償(慰謝料)を請求できます(民法第709条)。
請求は加害者宛に通知して構いません。内容証明郵便を利用すれば、加害者に損害賠償請求した事実を証明できます。
通知しても加害者が金銭の支払いに応じない場合は、加害者の住所地を管轄する裁判所に、「損害賠償請求訴訟」を提起します。なお、加害者に通知をせず裁判所に訴えても構いません。
また、加害者の刑事裁判中でも、問題なく民事裁判で損害賠償請求を行えます。
刑事告訴
誹謗中傷した加害者が特定できたら、警察署に告訴状の提出が可能です。
告訴状とともに、あなたを誹謗中傷している投稿も証拠として提出しましょう。
警察が捜査を開始し、加害者が逮捕・起訴され有罪判決を言い渡された場合、懲役刑や禁錮刑、罰金刑等を受ける可能性があります。
また、告訴状の準備中に、被害者から刑事告訴されたり、捜査機関から逮捕されたりする事態をおそれ、加害者側が示談交渉を申し込んでくる可能性もあります。
X(旧Twitter)で誹謗中傷を行った場合の対処法
あなたが誹謗中傷を行ったら、プロバイダから「意見照会書」が自宅に届く場合があります。意見照会書とは、プロバイダが「被害者にあなたの個人情報を開示してよいですか?」と尋ねる通知です。
意見照会書が送付されてきたら、被害者はあなたの個人情報を特定するための手続きに動いているとわかります。あなたは焦らずに、以後の対応を検討する必要があります。
示談交渉
誹謗中傷を行ったあなたは、被害者との示談交渉による和解を目指しましょう。
示談が成立すれば逮捕を回避できたり、検察官から不起訴処分を受けたりする可能性があります。
示談交渉では次の取り決めを行います。
- あなたが誹謗中傷の投稿を謝罪し、投稿の削除、投稿の拡散防止に努める
- 示談金額、示談金の支払方法、支払期日の決定
- 被害者が告訴しない、すでに告訴していたら取下げる旨
- 「被害者は加害者の処罰を望まない。」旨の条項も入れる
取り決めた内容は示談書(2通作成)を作成しましょう。示談書は、あなたと被害者とで1通ずつ保管します。
弁護士への相談
「捜査機関から逮捕されてしまうかもしれない」と感じたら、弁護士に相談しましょう。
弁護士は誹謗中傷を行った経緯、あなたの希望をヒアリングし、次のアドバイスを行います。
- 投稿が誹謗中傷にあたるか
- 示談交渉のポイント
- 適正な慰謝料の金額の算定
- 示談交渉が決裂した場合の対応
意見照会書が届いた段階で、弁護士に代理人を依頼すれば、被害者との示談交渉や、逮捕された場合の弁護活動を全て委任できます。
X(旧Twitter)での誹謗中傷なら弁護士にご相談を
今回は、SNSトラブルの解決に尽力してきた専門弁護士が、X(旧Twitter)の誹謗中傷に関する対処法等を詳しく解説しました。
誹謗中傷の加害者も被害者も、法律の専門家である弁護士と相談し、アドバイスを受けながら、以後の対応を慎重に取り決めていきましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。