発信開示請求を拒否する書き方例を大公開!成功ポイントも詳しく紹介

最終更新日: 2025年02月01日

発信者開示請求を拒否する書き方例を大公開!成功ポイントも詳しく紹介

  • プロバイダから「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が届いた。発信者情報開示請求は無視した方がよいのだろうか?
  • 意見照会書が届いたけれど事実無根の内容だ。発信者情報開示請求を拒否する有効な方法を知りたい。
  • 意見照会書に書いてあるように相手を誹謗中傷したのは事実だが、情報開示を拒否したら、プロバイダは拒否に同意してくれるだろうか?

ネット上で権利を侵害されたと主張する相手が、発信者情報開示請求をして侵害した人を特定しようとする場合があります。自分に権利侵害したつもりがなくても、権利侵害者と見なされる場合もあるでしょう。

手続きが進むと自分と契約しているプロバイダから、「発信者情報開示請求に係る意見照会書」が通知されます。意見照会書へどのように回答したらよいのか、頭を悩ませることになるかもしれません。

そこで今回は、ネット上のトラブル解決に携わってきた専門弁護士が、発信者情報開示請求を拒否するときの書き方について、ポイント等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 意見照会書を確認するときは、まず相手がどのような権利を侵害されたと主張しているかに注目する
  • 相手の主張に誤りがある、権利侵害を行っていないという場合は、反論したうえで開示請求拒否を行う
  • 開示請求を拒否する場合、前もって弁護士と相談しておいた方がよい

発信者情報開示・削除に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

発信者情報開示請求を拒否する前にすべきこと

ネット上で権利侵害されたと主張する相手が、権利侵害したとされる人(自分)の情報開示を、プロバイダに求める可能性があります。

要求を受けたプロバイダは権利侵害したとされる本人に「発信者情報開示請求に係る意見照会書」を送り、情報開示してよいかどうかを確認するでしょう。

意見照会書は書面で自宅に送付されるか、登録されているメールアドレスに送信されます。

意見照会書の内容は主に次の通りです。

  • 開示請求者の氏名(名称)
  • 権利侵害が確認できた掲示板等
  • 権利侵害にあたる投稿内容
  • 開示請求者が主張する権利侵害の種類
  • 権利侵害の理由
  • 発信者情報の開示理由
  • 開示請求をされている発信者(権利侵害した本人)の情報
  • 証拠

書類に一通り目を通し、自分が意見照会書に記載された通りの行為をしたか、相違する点はないか確認しましょう。

開示請求者が主張する権利侵害の種類に関しては、「侵害された権利」の欄をよく見ないと、自分がどのような権利侵害を疑われているのかわかりません。

意見照会書が届いたときは、情報開示請求に「同意」「拒否」のいずれかの回答を、指定された期限内に行いましょう。

照会書を無視しても違反等にはなりませんが、結局プロバイダが情報を開示してしまう可能性が高いです。

発信者情報開示請求拒否時の書き方

開示請求拒否をする場合、単に拒否する旨を記載するだけではなく、拒否する理由・根拠も明記しましょう。

名誉毀損

開示請求者(誹謗中傷されたとする相手)が名誉を毀損していると主張する場合、まず名誉毀損の要件を満たしているか確認しましょう。

名誉毀損が成立するのは次の3要件を満たす場合です。

  • 特定性:名誉毀損の内容が開示請求者を指している
  • 社会的評価の低下:開示請求者の印象が悪化した
  • 違法性阻却事由がない:違法性がある

反論する場合、次のような理由が想定されます。

  • 特定性→開示請求者の氏名や性別・所属等が明記されていない
  • 社会的評価の低下→具体的事実が指摘されておらず、投稿は単なる意見に過ぎず開示請求者の印象が悪化したとはいえない
  • 違法性阻却事由がない→報道等を根拠にしており、投稿内容は名誉毀損にあたらない

報道等を根拠にした場合、実際のマスメディアの報道内容を証拠として提示した方がよいです。

プライバシー権侵害

開示請求者がプライバシー権を侵害していると主張する場合、侵害の要件を満たしているか確認しましょう。

プライバシー権侵害が認められるには、次の3要件を満たさなければいけません。

  • 投稿されたら私生活上の事実、または私生活上の事実のように受け取られてしまう
  • 一般人の感覚なら、公開を欲しないであろうと認められる
  • 一般の人々に未だ知られていない内容である

反論する場合は、投稿した内容は違法・不当といえず、すでにマスメディアの報道(証拠として報道記事等も提示)していた等の理由が想定されます。

著作権侵害

開示請求者が著作権を侵害していると主張する場合、侵害の要件を満たしているかについて確認します。

著作権侵害が認められるのは、次の4要件を満たす場合です。

  • 著作物性:創作物に開示請求者(作者)の個性が認められる
  • 著作権保有:開示請求者が著作権を依然として有している
  • 法定利用行為がある:すでに公表・利用されている創作物である
  • 権利制限規定に該当しない:著作権が制限されていない

反論する場合、開示請求者の主張した創作物には独創性がない、私的使用のための複製である、営利を目的としない上演である等の理由が考えられます。

名誉感情侵害

開示請求者が名誉感情を侵害していると主張する場合、投稿者による社会通念上許される限度を超える侮辱行為だったかが要件となります。

投稿者が反論する場合、投稿に至った経緯等の詳しい説明が必要です。

投稿の前後の文脈から、侮辱行為ではなく、開示請求者に対する正当な批判である旨を反論しましょう。

発信者情報開示請求を拒否する主な理由

開示請求を拒否する理由はいろいろあり得ますが、拒否を認めるかどうかはプロバイダ次第です。

説得力のある拒否理由や根拠・証拠の提示がないと、開示請求者に自分の個人情報が開示される可能性が高いでしょう。

全く身に覚えがない

権利侵害の投稿に関して「身に覚えがない」「他人にパソコンやスマートフォンを貸していたので知らない」という理由で拒否しても、プロバイダが個人情報を開示してしまう可能性があります。

なぜなら、開示請求の対象になるのは、「誰が権利侵害となる投稿をしたのか」ではなく、「投稿に使用されたプロバイダ契約者の個人情報」だからです。

そのため、当該プロバイダ経由で権利侵害の投稿があったと証明された場合、契約者本人の情報開示が認められてしまいます。

他者の意見を真似した

ネット上で投稿された内容を真似したという理由も、有効な反論とはいえません。

なぜなら、他人の権利侵害の内容を更に拡散する行為だからです。たとえ開示請求を拒否しても、プロバイダが個人情報を開示するでしょう。

書いても誰も信じない

あくまで本人の主観であり、開示請求を拒否する有効な反論にはなりません。

ネット上に掲載された権利侵害を本気で信じるユーザーも多く、投稿が炎上し、開示請求者に大きな影響を与える可能性があります。

その場のノリで書いた

掲示板等に参加する中での一時的な感情、場の流れで軽い気持ちで投稿し、深い意図や悪意がないと反論しても、開示請求を拒否する有効な反論にはなりません。

たとえ悪意がなくとも、投稿者の軽率な投稿で権利侵害が発生した場合、開示請求者から責任を追及されるでしょう。

正しいと考え書いた

マスメディアの報道・過去の自分の経験を基に、正当な主張であると信じて投稿した場合、開示請求を拒否する有効な理由といえるでしょう。

理由とともに説得力のある証拠を提示すれば、プロバイダ側は開示請求拒否を認める可能性があります。

納得いかない

意見照会書に記載された開示請求内容に事実の相違があり、納得できない場合は開示請求を拒否する有効な理由といえるでしょう。

納得できない理由を明示し、証拠を提示すれば、プロバイダ側は開示請求拒否を認める場合があります。

違法性が認められない

自分の行った投稿で相手の権利侵害となるような表現を用いず、報道内容や自分の経験に基づいた批判であれば、違法性はないと反論可能です。

権利侵害とされている投稿内容の説明の他、投稿に至った前後の投稿・証拠を提示し、開示請求を拒否すれば、プロバイダ側の同意を得られる場合があるでしょう。

発信者情報開示請求拒否を成功させる書き方ポイント

プロバイダ側に開示請求拒否を求めるときは、感情的でなく理性的な主張と、主張を裏付ける証拠を提示しましょう。

開示請求拒否をする前に、ネット上の権利侵害に強い弁護士と相談するのもよい方法です。

法的な根拠の確認

権利侵害となる要件をチェックし、どのような要件にあてはまれば、開示請求者の主張する権利侵害となるのかを確認しましょう。

たとえば、著作権侵害が問題となっている場合に、著作権者(作者)の許諾を受けなくても作品を利用できると主張するためには、著作権法の制限規定をよく確認する必要があります。

法律の条文は法律に不慣れな人にはわかりにくい場合もあるので、著作権問題に強い弁護士のアドバイスを求めた方がよいです。

丁寧な文書

感情的な文章は控え、わかりやすい文章の作成に努めましょう。

開示請求者に対する反論・根拠・証拠が明示されていれば、プロバイダの理解も得やすくなります。

文章は回りくどくなく簡潔にしましょう。自分の反論・主張内容は文章の前半にまとめ、その次に根拠・証拠となる自分が保存している記録や、報道資料等を提示します。

具体的な事例をあげ、文書の作成例を見てみましょう。

以前勤めていた会社を批判する投稿でトラブルになったケースです。

【1.事例:問題となった投稿】

「〇〇社は、定時では帰れない。サービス残業は毎月60時間を超えるのに、残業代は全く出なかった。タイムカードも定時で押せと会社から圧力がある。採用内定を得た方はそれを覚悟して入社した方がよい」

【2.文書の作成例:開示請求者(〇〇社)への開示を拒否する理由】

私は〇〇社の不当な長時間労働が原因で辞めました。〇〇社を辞めてから数年が経っています。(自分の主張・〇〇社との現在の関係)。

〇〇社は出版会社でありライバル会社と激しく競争していました。入稿締切前には長時間労働を余儀なくされました。

入稿締切日は5時間程度の残業となりますが、定時でタイムカードを押すよう上司が指示します。

会社の社内メールでは社長が「今の状況で残業代なんて出さない、残業代が欲しいならもっと売れる記事を書け」とよく公言していました。

当該メールを印刷した書類も資料として提出します(主張の根拠・証拠)。

私は入社した方が、〇〇社の不当な長時間労働の犠牲者とならないよう、投稿を行いました(公共の利害・公益目的への合致)。

専門家への相談

開示請求を拒否する前に、ネット上の権利侵害に詳しい弁護士に相談しましょう。

弁護士は事情をヒアリングし、開示請求を拒否する説得力のある文章の書き方、証拠の提示方法、情報が開示されてしまった場合の対応等についてアドバイスします。

相談している間に、「弁護士に開示請求拒否を任せた方がよい」と思ったときは、弁護士と委任契約を締結しましょう。

弁護士が依頼者の代わりに、開示請求を拒否する文書の作成、提出を行います。

発信者情報開示請求を拒否したいなら春田法律事務所まで

今回はネット上のトラブル解決に尽力してきた専門弁護士が、発信者情報開示請求を拒否するときの注意点等について詳しく解説しました。

春田法律事務所はネット上のトラブル解決に実績豊富な法律事務所です。まずは弁護士と相談し、今後の対応を冷静に検討しましょう。

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