財産分与をしない離婚協議書の書き方!サンプル・注意点を弁護士がわかりやすく解説

最終更新日: 2025年02月14日

財産分与をしない離婚協議書の書き方!サンプル・注意点を弁護士がわかりやすく解説

  • 夫婦で離婚の話し合いが終わった。すぐにでも離婚届を提出した方がよいのだろうか?
  • 夫婦で離婚条件の合意ができた。財産分与はしないと決めたので、離婚協議書に書く必要はないだろうか?
  • 離婚協議書の書き方を相談したいので、離婚問題に詳しい専門家を探したい。

夫婦で合意した離婚条件を書面化したものが「離婚協議書」です。

離婚協議書の作成義務はありませんが、離婚当事者が離婚後もお互いに、取り決めた条件内容を忘れないようにするためにも、必要な作業といえます。

離婚条件の内容を具体的にわかりやすく記載しておかないと、後々トラブルとなるおそれがあるので、特に注意が必要です。

そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた弁護士が、離婚協議書で財産分与をしなし場合の書き方や注意点等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 財産分与をしないと取り決めなかった場合、離婚協議書にその旨を明記する
  • 相手から財産分与を放棄するよう無理やり迫られ同意した場合、すでに作成した離婚協議書の取り消しが可能な場合もある
  • 離婚協議書を作成する前に、弁護士とよく相談した方がよい

離婚に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

財産分与をしない場合の離婚協議書の書き方

離婚協議書の記載内容は、夫婦で自由に決められます。定められた書き方もなく、手書きでもパソコンによる作成でも構いません。

ただし、協議離婚の場合、様々な条件(例:財産分与、慰謝料、養育費等)の取り決めが必要です。

離婚協議書には、夫婦で合意した条件だけではなく、取り決めなかった条件も明記しておいた方がよい場合があります。

なぜなら、離婚協議書に明記していないからという理由で、他方が離婚後に取り決めなかった条件(離婚給付)を請求してくるおそれもあるからです。

そのため、夫婦で離婚時に財産分与を行わない場合は、次のように離婚協議書へ記載しましょう。

「第〇条 甲と乙は、離婚に際し、互いに財産分与の請求をしない。甲と乙の名義の資産はその名義人に帰属する旨を確認した。」

財産分与をしない場合の離婚協議書の書き方サンプル

夫婦で財産分与を行わない場合はその旨も明記し、離婚協議書の内容を記載していきます。

離婚協議書の記載例

以下の設定での離婚協議書の記載例をご紹介します。

  • 甲:夫
  • 乙:妻
  • 子:未成年1人
  • 離婚理由:性格の不一致(慰謝料なし)

離婚協議書

〇〇〇〇(以下甲という)と△△△△(以下乙という)は、甲乙間の婚姻の解消に関する件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意する。

第1条(離婚の合意)
甲及び乙は、本日、協議離婚し、各自署名捺印した離婚届は乙が提出することに合意した。

第2条(財産分与)
甲と乙は、離婚に際し、互いに財産分与の請求をしない。甲と乙の名義の資産はその名義人に帰属する旨を確認した。

第3条(親権)
甲及び乙は、甲乙間に生まれた未成年の子□□□□(令和×年×月×日生)の親権者・監護者を乙と定めて、乙が監護養育する。

第4条(養育費)
1 甲は乙に対し、前記子の養育費として、令和〇年〇月から満18歳に達する月まで、1か月〇〇万円の支払義務があると認め、毎月末日限り乙の指定口座に振込送金の方法で支払う。振込手数料は甲の負担とする。

2 前記子が事故又は病気など特段の事由により特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議して分担額を決める。

3 上記養育費は、物価の変動その他の事情の変更に応じて、互いに誠実に協議したうえで増減できる。

第5条(面会交流)
1 乙は、甲が前記子と週〇回、宿泊を伴う面会交流について認める。
2 面会交流の具体的な日時及び場所は、前記子の福祉に配慮して、甲及び乙が協議して決める。

第6条(年金分割)
甲は乙に対し、甲乙の婚姻期間中の双方の年金分割割合を〇とすることに合意し、その年金分割に必要な手続きに協力すると約束する。

第7条(精算条項)
甲と乙は、離婚協議はすべて解決したものと確認する。今後、上記の各条項のほか、名義の如何を問わず金銭その他の請求を相互にしないと約束した。

第8条(通知)
甲及び乙は、住所、居所、連絡先を変更したときは、遅滞なく書面により相手方にこれを通知すると約束する。

第9条(公正証書)
甲及び乙は、本件離婚協議書と同じ内容の強制執行認諾文言付公正証書を作成することに合意した。

以上のとおり合意したので、本書2通を作成し、甲乙各自が署名押印し、各自1通ずつ保有する。

令和×年×月×日

(甲)住所
氏名           印

(乙)住所
氏名           印

解説

本事例は夫婦の性格の不一致による離婚のため、慰謝料の明記が不要であり、非親権者甲の面接交流の回数・内容も充実したものとなっています。

強制執行認諾文言付公正証書とは、公証人が作成する公文書です。

本件の場合は非親権者が養育費を指定期日に支払わなかった場合、「強制執行されても構わない」との意思表示が付与された公正証書となります。

なお、離婚協議書に慰謝料を記載する場合は、慰謝料額・支払期限・支払方法(一括か分割か)・約束を破った場合の措置等も明記します。

財産分与をしない場合の離婚協議書における注意点

夫婦で決めた離婚条件を離婚協議書にまとめるときは注意が必要です。

離婚協議書に財産分与の放棄を記載していても、夫婦の一方から脅迫されたりだまされたりして放棄した経緯がある場合は、特に慎重な対応が求められます。

再度求めることは不可

離婚協議書を作成する前に、財産分与請求権の放棄が妥当な判断か、慎重に考えてみましょう。

夫婦のどちらかが財産分与請求権を放棄するのは自由です。しかし、一旦放棄すると、放棄した意思表示を翻し、相手に対して財産分与を請求することは基本的に認められません。

そのため、相手に放棄を求められても即答は避け、放棄するメリット・デメリットを慎重に検討してから、放棄するかどうかを決めましょう。

財産分与をどうするかで相手と揉めてしまった場合は、まず離婚に合意し市区町村役場へ離婚届を提出してもよいです。

離婚後であっても、引き続き元夫婦の間で話し合いが可能です。

また、離婚成立日から2年以内であれば、家庭裁判所に「財産分与請求調停」を申し立て、調停による解決もできます。

損得を計算すること

離婚協議書に財産分与はしないと明記する前に、財産分与請求権を放棄する場合の損得を、慎重に考慮しましょう。

財産分与請求権を放棄するかどうかは、離婚で優先しなければならない条件や、離婚後に想定される事態も踏まえて考える必要があります。

財産分与を金銭で一括で受け取れれば、離婚後も生活に困窮するおそれはそれほどないでしょう。

金銭で財産分与を受ける場合、所得税はかからないため、分与しやすいメリットもあります。しかし、不動産が共有財産となっている場合は、現金化するのに手間がかかります。

財産分与で自宅を分与された場合は、生活の本拠を失う心配はありませんが、登録免許税・不動産所得税・固定資産税等を負担しなければならない点にも注意が必要です。

夫婦の所有している共有財産の状態によっては、財産分与を放棄した方がよい場合もあり得るのです。

一方、子の親権・養育費に関する取り決めは、損得に代えられないでしょう。財産分与の支払いを求める側が親権者となるとき、養育費の充実は離婚合意の重要事項です。

そのため、財産分与に固執するあまり、非親権者からの養育費支払いに支障が出る場合は、財産分与割合の縮減または放棄を検討した方がよい場合もあるでしょう。

無理やり放棄させられてしまったとき

財産分与はしない旨を離婚協議書に明記していても、合意する過程で財産分与をしたくない相手から不当な圧力があった場合は、裁判を起こし取り消すことも可能です。

相手からの不当な圧力として、次のようなケースがあります。

  • 無理やり財産分与請求権を放棄させられた→強迫(民法第96条)
  • 放棄した方が楽だとだまされ放棄に同意した→錯誤(民法第95条)または詐欺(民法第96条)

放棄を取り消したいときは、相手からの強迫、錯誤または詐欺を理由として、相手方の住所地を管轄する地方裁判所に訴えを提起しましょう。

出典:民法 | e-Gov法令検索

財産分与をしない場合の離婚協議書の書き方を弁護士に相談するメリット

離婚を協議するとき・離婚協議書を作成するときは、前もって弁護士に相談した方がよいです。

弁護士は有益なアドバイスをし、様々なサポートを行います。

法律の観点からの書類作成が可能

弁護士は法律の知識に精通しており、どのような内容を記載すれば、後日トラブルとなるリスクを減らせるかも熟知しています。

夫婦だけで離婚協議書を作成する場合は、条件の記載漏れがあったり、不明確な文言となったりするかもしれません。

弁護士に作成を依頼すれば、法律に則った夫婦が安心できる内容の離婚協議書を作成できます。

依頼者に適した書類作成が可能

弁護士と相談し、最初から協議離婚のサポート役を依頼すれば、依頼者に有利に話し合いを進めることができます。

弁護士は法律の知識に精通し交渉経験も豊かなため、依頼者側に立った説得力のある主張の展開が可能です。

相手側が弁護士の提案に応じ離婚条件に同意する可能性も高まるでしょう。弁護士は相手が同意した内容を、正確かつ詳細に離婚協議書へ反映させます。

財産分与割合の見直しも可能

夫婦間で財産分与の割合で揉めているときは、弁護士にアドバイスを求めましょう。

弁護士は夫婦それぞれの収入・支出、共有財産の詳細を整理し、適切な分与割合を算定します。

財産分与で依頼者が受けるメリットより、デメリットの方が大きいとき(税金の負担が重い等)は、財産分与請求権を放棄した方がよい、と提案する場合もあるでしょう。

依頼者は弁護士のアドバイスを踏まえ、財産分与の取り決めをどのようにするのか、冷静に検討できます。

離婚協議書でお悩みのときは春田法律事務所まで

今回は離婚問題の解決に尽力してきた弁護士が、財産分与をしない場合の離婚協議書の作成ポイント等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は離婚問題の解決に豊富な実績を誇る法律事務所です。まずは弁護士と相談し、離婚協議書の作成を冷静に検討しましょう。

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