別居中に子どもを育てるには?生活費の相場と確実に受け取る方法
最終更新日: 2025年07月04日
夫婦関係が悪化し、子どもとともに別居を始める決断をした方にとって、最も不安なのが「生活費(婚姻費用)」の問題です。
特に収入が少ない中で子どもを育てるとなると、生活を維持できるだけの金額を受け取れるのかが切実な課題となります。
結論から言うと、相手の収入や子どもの年齢に応じて「婚姻費用算定表」などを使って妥当な金額を知ることができ、法的にも生活費を請求する権利があります。
請求の方法や、もし支払いを拒否された場合の対処法もきちんと用意されています。
この記事では、別居中に受け取れる生活費の目安と計算方法、適切な請求の進め方、実際の相談事例、公的支援の活用方法、将来の養育費についてまで詳しく解説します。
婚姻費用とは?
別居中でも法律上は「夫婦」であるため、経済的に余裕のある配偶者は、もう一方に生活費(=婚姻費用)を支払う義務があります。
この費用には、本人の生活費だけでなく、一緒に暮らしている子どもの養育費も含まれます。
生活費の目安は、家庭裁判所が使用する「婚姻費用算定表」によって一定の基準が示されており、相手の年収と子どもの人数・年齢、自身の年収によって金額が変わります。
支払いは別居開始時点から求めることが可能で、協議で決まらない場合は、家庭裁判所で調停や審判を申し立てることもできます。
子ども2人の場合の生活費シミュレーション
以下は、子ども2人、夫の年収600万円、妻の年収150万円のケースを想定した婚姻費用の目安です。
子どもの構成 | 支払われる婚姻費用の目安(月額) |
未就学児+小学生 | 約8万円〜9万円 |
小学生+中学生 | 約9万円〜10万円 |
中学生+高校生 | 約10万円〜11万円 |
※これはあくまで目安であり、夫婦双方の年収、稼働能力、扶養義務者の住宅ローンや特別な出費、子どもの進学状況によっては増減します。
よくある状況と対応例
弁護士と相談の上で別居をし婚姻費を増額できたケース
夫の不貞が分かり離婚を決意。
事前に弁護士に相談をした上で、別居と同時に離婚請求と婚姻費用請求をしたところ、請求をした月から適正額が支払われるようになりました。
しかも、別居前に受けていた婚姻費用額は6万円程度であったのですが、弁護士に相談したところ、「その金額は算定表から見ても明らかに少ない」とのことで、内容証明郵便で適正な金額(約18万6000円)を請求したところ、当該金額の支払を受けることができるようになり、むしろ別居後の方が多く生活費の支払を受けることができるようになりました。
弁護士の介入がなければ、月額6万円のまま泣き寝入りしていた可能性が高かったケースです。
別居後、生活費の支払がストップ。調停を経て未払い分も受け取れたケース
別居後、夫は生活費を負担しておらず一向に払う気配がなく、子供と生活していた相談者は経済的に生活が苦しかったケースです。
弁護士に相談した結果、家庭裁判所に「婚姻費用分担調停」を申し立てました。調停では、支払い義務の正当性と未払い分の清算も主張し、月額8万6000円の支払いについて調停が成立し、婚姻費用が支払われるようになりました。
調停を経て「審判」という形で法的効力を持つ決定となり給与差し押さえがなされる可能性を視野に入れられたことで、相手も応じざるを得なくなりました。
離婚後に受け取る「養育費」との違いも知っておこう
婚姻費用は「別居中の生活費」ですが、離婚が成立した後は、子どもの養育費として支払いが続きます。
養育費は、親権を持たない親が支払うもので、子どもが社会的に自立するまで(大学進学がなければ通常は20歳まで)継続的に支払われます。
算定表も婚姻費用と同様に使われ、条件が近ければ金額も大きく変わらないケースが多いです。
実際には、婚姻費用を請求しながら弁護士を通じて、将来の養育費についても見越したアドバイスを受けておくと安心です。
別居→離婚→養育費の流れを一貫して相談できるのが弁護士に頼む大きなメリットでもあります。
婚姻費用を確実に受け取るためにできること
生活費を請求するときは、まずは話し合いを試みましょう。相手が応じない場合や、金額が妥当でないと感じたときは、すぐに家庭裁判所へ「婚姻費用分担請求調停」を申し立てることが重要です。
調停では、双方の収入証明などをもとに適正金額が判断され、合意に至らない場合は「審判」で強制力のある決定が出されます。
また、調停が成立したり審判が確定した後に支払いが滞った場合には、裁判所を通じて給料差押えなどの強制執行も可能になります。
弁護士に依頼すれば、手続きの代行だけでなく、適切な金額の算出や証拠の整理、書類作成、裁判所とのやりとりまで一括で任せることができます。
弁護士に相談するメリット
生活費の話し合いがうまくいかないときや、「この金額で本当に合ってるのかな…」と不安に感じたときは、弁護士に相談するのが安心です。
弁護士にお願いすれば、
- いくらくらい請求できるのか計算してもらえる
- 相手とのやり取りを代わりにやってもらえる
- 調停や裁判所の手続きもおまかせできる
など、ややこしいことを全部サポートしてもらえます。
また、もし約束した生活費を相手が払ってくれなくなったときも、給料を差し押さえる手続きまで対応してくれるので、「支払いが止まったらどうしよう」という不安も減ります。
育児や仕事で忙しい中、すべてを1人で対応するのはとても大変。弁護士の力を借りることで、精神的な負担もぐっと軽くなります。
よくある質問(FAQ)
Q: 婚姻費用はいつから請求できますか?
別居開始時点から請求可能です。
請求前の過去の婚姻費用請求は原則として認められないため、早期に内容証明郵便などで婚姻費用請求を行うことが重要です。
Q:話し合いだけで決めてもいいの?
可能ですが、後で「そんな約束してない」と反故にされる可能性があるため、書面に残すのが安全です。
Q:相手が支払いに応じないときはどうする?
家庭裁判所に調停を申し立てましょう。
最終的には法的に支払いを命じてもらえますし、法的に支払を命じてもらえる見込みであるという利益状況を背景として合意を成立させることができる可能性も高まります。
Q:収入証明ってどうやって出すの?
源泉徴収票や課税証明書、給与明細などが一般的です。個人事業主の場合は確定申告書と内訳書・決算書が一般的です。
弁護士に相談すれば取得方法も教えてもらえます。
Q:養育費との違いは?
婚姻費用は離婚前の別居中の配偶者と子供の生活費、養育費は離婚後の子どもの生活費です。請求できる時期が異なります。
まとめ:子どもの生活を守るために、早めの対応を
別居後の生活費(婚姻費用)は、子どもとの生活を維持するための重要な資金です。話し合いだけで解決しないと感じたら、法的な手続きを検討しましょう。
算定表で目安を把握し、弁護士のサポートを得ることで、安心して子どもとの生活を支える準備ができます。経済的な不安を少しでも和らげるために、まずは一度、弁護士への相談を活用するのが賢明です。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。