大麻で家族が逮捕されたときはどうする?問われる罪とすべき対応を徹底解説
最終更新日: 2025年03月05日
- 息子が大麻所持で逮捕されてしまった。どのような処罰を受けるのだろう?
- 夫が大麻に関する罪で現行犯逮捕された。判決を受けるまで、ずっと身柄を拘束されたままになるのか?
- 家族の誰かが大麻に関する罪で逮捕されたとき、専門知識のある人に相談したい。
大麻に関する法律は、大幅な改正(2024年12月12日施行)が行われました。
大麻の使用・所持等は「麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)」が適用され(以前は大麻取締法)、厳しく規制されています。
また、大麻草の栽培は「大麻草の栽培の規制に関する法律(大麻栽培規制法)」で規制されています。
それぞれの法律に違反し有罪となれば、懲役(拘禁刑)が言い渡され、情状により罰金刑も追加されるでしょう。
そこで今回は、多くの刑事事件に携わってきた弁護士が、大麻に関する法律違反で問われる罪、家族の誰かが大麻で逮捕されたときの対処法等を詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 営利目的で大麻の所持・譲渡等を行うと、懲役(拘禁刑)だけではなく、罰金刑を付加される場合がある
- 家族の誰かが大麻に関する法律違反で逮捕されると、家族全体に大きな影響を及ぼす
- 大麻に関する罪で減刑を得たいのであれば、弁護士と相談した方がよい
大麻で家族が逮捕されたときに問われる罪
大麻の栽培や製造、流通、施用(使用)、所持行為が規制の対象です。大麻に関する法律違反で有罪となれば、懲役または情状により懲役および罰金刑に処されるでしょう。
なお、懲役は2025年6月1日から拘禁刑に変更となります。
所持・譲渡・譲受
大麻の所持や譲渡、譲受を行うと、本人は麻薬取締法で処罰されます。
- 営利目的の場合:1年以上10年以下の懲役、または情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金(麻薬取締法第66条第2項)
- 営利目的以外の場合:7年以下の懲役(麻薬取締法第66条第1項)
輸出入・製造
法律に違反し大麻の製造や輸出入をする行為は処罰対象です。
- 営利目的の場合:1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(麻薬取締法第65条第2項)
- 営利目的以外の場合:1年以上10年以下の懲役(麻薬取締法第65条第1項)
ただし、一定の条件を満たし、医薬品医療機器等法の承認を受けた場合、大麻草を使った医薬品の製造は可能です。
使用
2024年12月12日以降、大麻の施用(使用)も禁止の対象となりました(麻薬取締法第66条の2)。
- 大麻の単純施用(使用):7年以下の懲役(拘禁刑)
- 営利目的での施用(使用):1年以上10年以下の懲役、または情状により1年以上10年以下の懲役および300万円以下の罰金
ただし、法律の基準を満たす大麻草で製造された医薬品であり、その医薬品を医師から処方されたときは使用してもよいです。
栽培
法律に違反し大麻を栽培した場合、次のような罰則を受ける可能性があります(大麻栽培規制法第24条)。
- 単純栽培:1年以上10年以下の拘禁刑
- 営利目的:1年以上の有期拘禁刑、または情状により1年以上の有期拘禁刑および500万円以下の罰金
ただし、大麻草の栽培は用途によっては、厚生労働大臣や都道府県知事、地方厚生(支)局長のいずれかの免許を受けていれば、違法とはなりません。
大麻での逮捕の種類
大麻に関する法律違反で逮捕される場合「現行犯逮捕」「後日逮捕」「緊急逮捕」の3つの可能性があります。
現行犯逮捕
現行犯逮捕とは、違法行為中、または違法行為の直後に犯人を逮捕する方法です。
たとえば、密売人と大麻の売買中に、警察官に発見され逮捕されるケースが該当します。
現行犯逮捕の場合、犯人を間違える可能性は低く、犯罪の嫌疑も明らかなため、逮捕状なしでの逮捕が認められているのです。
後日逮捕
後日逮捕(通常逮捕)とは警察官が逮捕状を持参して、犯人を逮捕する方法です。
後日逮捕は次のような流れで進められます。
2.逮捕の必要性がある場合は、裁判官に逮捕状の発付を請求
3.裁判官が審理し請求を認めれば、逮捕状を発付
4.逮捕状を持参した警察官が、犯人の身柄を拘束
逮捕状には有効期限があり原則として7日間です。ただし、裁判官が相当と認めるときは、7日を超える有効期限も定められます(刑事訴訟規則第300条)。
出典:刑事訴訟規則|裁判所
緊急逮捕
逮捕状を請求する時間がないときは、逮捕状なしに犯人を逮捕できます。
ただし、次のような条件を満たすことが必要です。
- 逮捕状を請求していては、犯人逮捕の機会を逃してしまう
- 死刑や無期、長期3年以上の懲役または禁錮(拘禁刑)にあたる罪を犯した犯人である
たとえば、大麻の常習犯で、指名手配されている犯人を発見したケースが該当するでしょう。犯人逮捕後は、裁判所に逮捕状の請求が必要です。
大麻で家族が逮捕される状況
大麻に関する法律違反は、いろいろなきっかけで発覚する可能性があります。
警察の捜査によっては、大麻の所持等を疑われている本人だけでなく、家族に影響が及ぶかもしれません。
職務質問
職務質問で、大麻の所持・栽培等が発覚するケースです。
たとえば、警察官が繁華街を巡回中、不審な人物を発見し職務質問するときに、所持品検査が行われる場合もあります。
所持品検査で、大麻の所持が発覚すれば現行犯逮捕となるでしょう。なお、職務質問自体は任意であり拒否も可能です。
ただし、拒否すると警察官は強い不信感を抱くかもしれません。また、拒否するときに警察官に暴言や暴行を加えると、公務執行妨害罪で逮捕される可能性もあります。
警察からの呼び出し
警察からの呼び出しに応じ、警察署で大麻に関する法律違反を自白したケースです。
大麻等売買を捜査する過程でも、警察からの呼び出しが行われるときがあります。
任意の呼び出しなので本人は拒否できます。ただし、正当な理由なく拒否を繰り返すと、警察が強制捜査に踏み切る可能性もあるでしょう。
家宅捜索
大麻に関する法律違反の疑いで家宅捜索を受け、自宅から大麻が発見されたケースです。
警察が家宅捜索をするときは、証拠隠滅を避けるため、予告なく自宅にやってきます。
もしも家族の誰かが大麻の所持等で逮捕・身柄を拘束され、自宅を警察が捜索するときは、逮捕された本人以外の家族が、捜索に立ち会わなければなりません。
大麻で家族が逮捕された後の流れ
家族の誰かが大麻の所持等で逮捕されると、取り調べ後に検察への身柄送致、勾留という流れで刑事手続が進められていきます。
ただし、逮捕前や逮捕後すぐに弁護士と相談すれば、逮捕された本人の早期釈放や、有利な処分につながる可能性もあるでしょう。
取り調べ
「被疑者」として逮捕されると、警察署に連行され取り調べを受けます。
取調官から、大麻に関する法律違反をした動機や経緯、誰から購入(誰に売却)したか、家族構成や現在の職業等について詳しく質問されるでしょう。
警察が「被疑者は逃亡、証拠隠滅のおそれがある」と判断すれば、検察に身柄を送致されます。
一方、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合、被疑者は釈放され在宅事件となるでしょう。
逮捕された段階で弁護士と相談できれば、弁護士が警察を説得し、早期釈放が認められる場合もあります。
送致
検察への送致は次のいずれかの方法になります。
- 被疑者が逮捕、留置施設に身柄を拘束されているとき→身柄送致
- 被疑者がすでに釈放されており、在宅事件となったとき→書類送致
身柄送致の場合、被疑者は検察官から更に取り調べを受けます。書類送致のときも、少なくとも1回は検察官から呼び出しを受けるでしょう。
身柄を送致された被疑者の取り調べ後、検察官は次のいずれかの対応をとります。
- 引き続き身柄の拘束が必要→裁判所に勾留請求
- 身柄拘束は不要→被疑者を釈放、在宅事件とする
ただし、勾留請求は、被疑者の逮捕後72時間以内、かつ被疑者を受け取ってから24時間以内に行わなければなりません。
勾留
裁判所が勾留請求を認めると、被疑者は引き続き留置施設で身柄を拘束されます。
勾留期間は最長20日間(原則10日間、やむを得ない事由があるとき検察官の請求で10日間延長可)になります(刑事訴訟法第208条)。
勾留中、被疑者の家族や知人は本人に面会できますが、面会が認められるのは基本1日1組だけです。
ただし、弁護士を私選弁護人としていれば、弁護士は自由に被疑者と面会できます。被疑者の家族は、弁護士を通して、本人の健康状態や捜査の状況を把握できるでしょう。
起訴・不起訴
捜査機関が捜査を終えれば、検察官が被疑者の起訴・不起訴について決定します。
次のような場合は、検察官は不起訴処分を決めなければなりません。
- 被疑者は大麻に関する法律違反をしていなかった→嫌疑なし
- 大麻に関する法律違反の証拠が乏しい→嫌疑不十分
大麻に関する法律違反が明白で、かつ証拠が揃っていた場合でも、情状酌量の余地があれば、検察官は被疑者を不起訴にできます(起訴猶予)。
検察官が起訴すると刑事裁判に移行し、被疑者は「被告人」と呼ばれ、裁判所で大麻に関しての審理が開始されます。
刑事裁判
刑事裁判に移行した場合、被告人は公開の法廷に出廷しなければなりません。
被告人が大麻に関する法律違反を認めているときは、基本的に2回の公判期日で裁判は終了するでしょう。
第1回目の公判期日では、大麻に関する罪状認否や冒頭陳述、証拠調べ、求刑・弁論等が行われます。
ただし、被疑者が罪を否認しているときや、複雑な事件のときは、何回も公判期日が設けられる可能性が高いです。裁判終了までには数年を要する場合もあるでしょう。
判決
被告人が大麻に関する法律違反を認めているときは、第2回公判期日で判決を言い渡す場合がほとんどです。
被疑者を罪に問えるような有力な証拠がないとき、裁判所は「無罪判決」を言い渡すでしょう。
一方、被告人が有罪の場合に言い渡される判決は次の2種類です。
- 実刑判決:懲役(2025年6月1日以降は拘禁刑)が言い渡され、刑事施設へ収容される。罰金刑も付いている場合、罰金の支払いも必要。
- 執行猶予付き判決:執行猶予期間を無事に経過すれば、裁判官からの刑の言渡しは効力を失う。
ただし、執行猶予付き判決を受けても前科は付くので、被告人の罪が消えるわけではありません。
大麻で家族が逮捕されたときにすべき対応
家族の誰かが大麻に関する法律違反で逮捕されても、慌てずに今後の対応の仕方を検討しましょう。
逮捕後すぐに弁護士と相談すれば、早い段階で的確なアドバイスやサポートを受けられます。
弁護士に相談
弁護士は相談者から事情を聴いたうえで、次のようなアドバイスを行います。
- 逮捕された本人がどのような刑罰を受けるか
- 今後の弁護活動
- 刑事手続の流れ
- 不起訴処分や減刑の可能性
- 家族が協力する重要性
- 再犯防止策の必要性
- 起訴された場合の対応
相談後は、そのまま弁護士に私選弁護人を依頼してもよいでしょう。
家族の誰かが現行犯逮捕された、自宅に警察がやってきて逮捕されたなどの場合、逮捕された本人は弁護士の選任・依頼が困難です。
このような場合は、家族が本人に代わり弁護士の選任・依頼を行います。
接見申立
家族は原則として、勾留されている本人と接見(面会)が可能です。
家族は「一般面会」という方法を利用して本人と会えますが、次のような制約もあります。
- 警察署が定めた時間帯の中で面会する
- 面会時間は約15分、1日1組まで、一度に3人まで面会が可能
- 接見禁止決定がなされていると面会できない
一方、弁護士には接見交通権が認められており、いつでも自由に被疑者と接見できます。家族が本人と会える状況にないときは、弁護士に連絡役を任せましょう。
早期釈放
弁護士に弁護を依頼すれば、早期に本人が釈放されるよう、裁判所に働きかけます。
被疑者が勾留中で検察から起訴される前であれば、弁護士は次のような請求や申立てを行うでしょう。
- 勾留理由開示請求:裁判所に勾留理由の開示を求め、勾留可否の再考を促す
- 準抗告:刑事裁判前に申し立て、勾留決定の変更・取消しを求める
- 勾留取消の申立て:これ以上被疑者を勾留する必要はないと主張し、裁判所に勾留取消しを求める
裁判所側が弁護士の説得に応じて、被疑者の早期釈放を認める場合もあるでしょう。
保釈請求
起訴され拘置所に身柄を拘束された場合でも、保釈申請が認められれば、被告人は身柄拘束から解放されます。
保釈申請は、弁護士の他に家族や被告人本人もできます。ただし、弁護士に任せれば保釈申請の方法を熟知しているので、スムーズに手続きが進むでしょう。
弁護士は保釈に関して裁判官と面接もできます。面接時に裁判官から保釈金額の話題が出れば、保釈の可能性は高いと判断できます。
再犯防止策の作成・提示
説得力のある再発防止策を作成し提示すれば、裁判官は「更生の余地がある」と評価し、減刑になる可能性があります。
家族が本人の監視強化に協力するという主張も、有力なアピールとなるでしょう。
大麻への依存度が高い場合は、依存から脱却するための治療計画の策定も必要です。
本人の依存度を考慮し、弁護士と相談しながら、次のような段階に分けた治療計画を立てましょう。
2.通院治療:回復支援施設退所後も専門医療施設・クリニックで、集団治療等を継続する。
3.自助グループへの参加:大麻等の依存者の集まり等に参加し、自分自身を見つめ直す。
大麻で家族が逮捕されたときは春田法律事務所まで!
今回は数多くの刑事事件を担当してきた弁護士が、家族の誰かが大麻で逮捕されたとき、弁護士に相談するメリット等を詳しく解説しました。
春田法律事務所は、刑事事件の弁護活動や裁判において経験豊富な法律事務所です。家族の誰かが大麻に関する疑いで逮捕されたときは、弁護士と対応の仕方を相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。