離婚で住宅ローンが残っているときの対処法とよくある注意点
最終更新日: 2025年07月15日
離婚を考えたとき、住宅ローンが残っているマイホームの扱いは大きな課題となります。
「家はどうする?」「ローンは誰が払う?」「名義は変えられるの?」といった問題は、感情だけでなく契約・債務・財産分与など複雑な法的要素が絡んできます。
この記事では、住宅ローンが残っている場合の離婚においてどのような選択肢があるのか、それぞれの対応方法と注意点、またよくある質問まで含めて、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
離婚時に問題となる「住宅ローン」とは?
住宅ローンがある状態での離婚では、主に次の点が大きな論点になります。
- 自宅の所有名義とローンの契約者が誰なのか
- 連帯保証人や連帯債務者が存在しているか
- 住宅の現在の評価額とローン残高のバランス
- どちらかが住み続けるのか、売却するのか
- 支払い義務をどう分担するか
特に、名義と債務者が一致していないケースでは、離婚後もローンに関する責任が残る可能性があるため注意が必要です。
また、家の価値がローン残高より下回っている「オーバーローン」の場合は、売却しても借金が残るという現実的な問題も発生します。
離婚時に選ばれる主な選択肢
住宅ローン付きの家をどう扱うかについては、以下の3つが主な選択肢です。
自宅を売却する
もっともシンプルな方法は、住宅を売却し、その代金でローンを返済する方法です。家の価格がローン残高を上回っていれば、清算も容易です。
ただし、売却損が出るオーバーローンの場合は、追加で自己資金を投入する必要が出てくる可能性があります。
どちらかが住み続ける
子どもがいる家庭では、環境を変えたくないという理由で住み続けることもあります。
この場合、住み続ける側がローン契約者でないと名義変更などが必要となりますが、金融機関の承諾が必要で、審査も厳しいのが実情です。
一方が相手に住まわせる(賃貸または使用貸借)
名義人が住宅ローンを払い続けつつ、もう一方に住まわせるという形もあります。
ただし、口約束だけで進めると「家賃が払われない」「出ていってくれない」といったトラブルにもなりやすいため、書面化や契約書の整備が重要です。
名義と債務の関係を理解する
家の名義とローンの契約者が同一であるとは限りません。以下のようなケースがあります。
- 所有名義が夫で、ローンも夫
- 所有名義が夫婦共有、ローン契約は夫(妻が連帯保証人)
- 所有名義が妻、ローン契約は夫(名義と債務が不一致)
連帯保証人や連帯債務者として登録されている場合は、離婚しても支払い義務は免れません。
「離婚したから責任がなくなる」ということにはならず、契約上の債務はそのまま残る点は誤解しやすいポイントです。
特に連帯保証は、自分が借主でなくても、債務者が滞った場合にすべての返済義務を負うという極めて重い義務です。
これを外すには、借換えや債務引受けなどを通じて、金融機関の同意を得るしかありません。
財産分与の対象になる?ならない?
住宅は原則として「共有財産」として財産分与の対象になります。
購入時期が婚姻中であれば、どちらの名義でも共有とみなされるのが一般的です。
ただし、次のようなケースではトラブルになりやすくなります。
- 名義が一方に偏っている場合(例:夫のみ名義)
- 親の援助で一方のみが支払っていた場合
- 結婚前からの持ち家だった場合(特有財産)
財産分与では、「家の評価額」から「ローン残高」を差し引いた「純資産額」が基準になります。
たとえば家が3000万円、ローンが2500万円残っていれば、500万円の資産を分け合うという考え方です。
ただし、評価方法や残債の見方によって争いが生じやすいため、専門家による不動産評価や法律的整理が不可欠になるケースもあります。
よくある状況と対応例
例:住宅を売却し、ローンを完済(40代夫婦・子どもなし)
離婚にあたり、夫婦共有名義のマンション(ローン残2000万円・査定額2400万円)を売却。
売却益でローンを完済し、残額を分け合うことで財産分与とし、トラブルなく協議離婚が成立。
「売却で一区切りついた」と双方が納得しやすい形となりました。
よくある質問(FAQ)
Q:離婚後、住宅ローンの名義変更はできますか?
→ 原則として簡単にはできません。金融機関の同意が必要で、名義変更先に十分な返済能力がなければ認められません。
Q:オーバーローンの家は売却できますか?
→ 原則として難しいですが、任意売却という制度を使えば、ローン残債がある状態でも売却できる場合があります。事前に金融機関との調整が必要です。
Q:連帯保証人を離婚後に外すことはできますか?
→ これも簡単ではありません。金融機関との交渉や借換えが必要で、状況によっては第三者の保証人を立てる必要も出てきます。
Q:家には住み続けたいが、名義もローンも相手にある。どうすれば?
→ 使用貸借契約を結ぶことで、一定の権利を明文化する方法があります。弁護士に相談のうえ、書面化を進めましょう。
Q:財産分与で家をもらったのに、後からローンの返済が滞ったらどうなりますか?
→ 債務者・保証人の立場が残っていれば、離婚協議書があっても債権者から請求を受ける可能性があります。名義変更が伴っていない場合は注意が必要です。
まとめ
住宅ローンが残っている状況での離婚は、単に「家をどうするか」だけではなく、名義、債務、評価、契約上の責任が複雑に絡み合う問題です。
安易に「家はあげる」「ローンは払ってね」と口約束で済ませるのではなく、書面や契約、必要ならば金融機関との協議を通じて、現実的に解決できる方法をとることが大切です。
感情的に動くのではなく、冷静に、かつ専門家の力も借りながら、自分と家族にとって最善の形を探していきましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。