不倫した配偶者に財産分与は必要? 減額や放棄はできる?
2025年11月19日

配偶者の不倫が原因で離婚する場合、多くの方が「不倫した側にまで財産を分け与える必要があるのか?」と疑問を抱きます。
特に、自分は誠実に家庭を守ってきたのに、不倫した配偶者に財産を持っていかれるのは納得できない、できるだけ多くの財産を確保したいと考える方は少なくありません。
結論から言うと、不倫をした配偶者であっても、原則として財産分与を請求する権利はあります。ただし、ケースによっては財産分与の割合を調整できる可能性があり、弁護士に依頼することで有利に進められることがあります。
本記事では、不倫と財産分与の関係についてわかりやすく解説し、できるだけ多くの財産を獲得するための方法もご紹介します。
財産分与とは?
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を、離婚の際に公平に分け合う制度のことです。
法律上は「夫婦共有財産」と呼ばれ、結婚生活を続けるなかで築いた財産は名義に関わらず基本的に共有とされます。
財産分与の対象となる財産
- 給与や賞与の貯金
- マイホームやマンションなどの不動産
- 車、家電、家具など生活に必要な資産
- 株式や投資信託などの金融資産
- 退職金(婚姻期間中に相当部分が発生した場合)
一方で、結婚前から持っていた財産、相続・贈与で得た財産、別居後に得た財産は「特有財産」として分与の対象外になるのが原則です。
分与割合の基本
日本の家庭裁判所の実務では、専業主婦(主夫)か共働きかに関わらず、財産分与は2分の1ずつとされるのが一般的です。
これは、収入を得ていたか、どちらかの収入が大きかったかに関係なく、家庭生活を支え合った貢献度は対等と評価されるからです。
不倫と財産分与の関係
ここで多くの方が疑問に思うのが、「不倫した配偶者にまで2分の1渡さなければならないのか?」という点です。
財産分与はあくまで財産形成の寄与度が基準
財産分与は、不倫といった「有責行為の有無」ではなく、婚姻期間中にどれだけ財産形成に寄与したかを基準に決められます。
つまり、たとえ配偶者が不倫をしていても、それまでの財産形成に貢献していれば、原則として財産分与の権利は認められます。
不倫による慰謝料とは別問題
「不倫をしたのだから財産分与を減らすべきだ」という考え方は自然ですが、法律上は財産分与と慰謝料は別物として扱われます。
そのため、財産分与を減少させることはできませんが、別途不倫の慰謝料を請求することは可能です。
不倫した配偶者からできるだけ多くの財産を獲得するには?
では、不倫を理由に財産分与で有利になることはできないのでしょうか。
完全に放棄させるのは難しいですが、実際には工夫次第でより多くの財産を確保できる可能性があります。
慰謝料請求を併せて行う
上記のとおり財産分与と別に、不倫による慰謝料を請求できます。
たとえば夫婦の財産が2,000万円あり、財産分与で1,000万円ずつとされる場合でも、慰謝料300万円を獲得できれば、実質的にあなたが得る金額は1,300万円になります。
隠し財産を見逃さない
不倫をした配偶者が、離婚を見越して財産を隠そうとすることも少なくありません。
預貯金や株式、不動産の名義移転など、巧妙に隠されるケースもあるため、専門家とともに調査することが重要です。
早期離婚と引き換えに財産分与の条件を調整する
不貞行為をした側から離婚を要求される例も少なくはありません。もっとも、不貞行為をした側は有責配偶者との扱いを受け、配偶者の合意がない限り、長期間の別居等厳しい条件をクリアしなければ、離婚を実現できません。
そのため、有責配偶者側が積極的に離婚を望んでいる場合に限り、このパワーバランスを利用して、早期の離婚に合意することと引き換えに、財産分与につき有利な条件に応じるよう交渉できる場合もあります。
弁護士に依頼するメリット
不倫が原因で離婚する場合、感情的になって話し合いが難航することが多いです。
特に財産分与と慰謝料をどう組み合わせるかは法律的な知識と交渉力が必要となります。
弁護士に依頼することで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 財産の全容を把握し、隠し財産を見つけやすくなる
- 慰謝料請求と財産分与を組み合わせた有利な和解案を作成できる
- 法的根拠に基づいた交渉で、相手に強く主張できる
- 裁判になった場合も代理人として手続きを進めてもらえる
不倫した配偶者に「財産を渡したくない」と強く思うのであれば、弁護士の力を借りて戦略的に進めることが不可欠です。
よくある質問(FAQ)
Q. 不倫をした配偶者に財産分与を全く与えないことはできますか?
A. 原則としてできません。財産分与は夫婦の財産形成への貢献度で決まるため、不倫の有無だけで権利を失うことはありません。
Q. 不倫慰謝料と財産分与は同時に請求できますか?
A. はい、可能です。慰謝料は不倫による精神的損害の賠償、財産分与は財産形成の清算という別の性質を持つため、両方請求できます。
Q. 不倫した配偶者が財産を隠している場合、どうすればよいですか?
A. 弁護士を通じて調査を行い、銀行口座や不動産の名義変更を確認します。調停や裁判になれば、裁判所の調査嘱託を通じて相手に財産の開示を求めることも可能です。
Q. 財産分与を放棄させるために離婚協議書を作成しても問題ありませんか?
A. 当事者同士の合意で財産分与の放棄を取り決めることは可能ですが、不公平が著しいと無効になる可能性があります。専門家に相談して作成することをおすすめします。
まとめ
不倫をした配偶者であっても、法律上は財産分与の権利があります。そのため「不倫したからゼロにできる」と考えるのは誤解です。
ただし、慰謝料請求を併用したり、財産分与と組み合わせて交渉したりすることで、実質的により多くの財産を確保することは可能です。
感情的になって不利な合意をしてしまう前に、専門家の助言を受けながら冷静に対応することが、最終的に自分の利益を守る一番の近道となります。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。




