不倫した側からは離婚できない?有責配偶者が離婚する方法も解説

最終更新日: 2024年01月12日

不倫した側からは離婚できない?有責配偶者ができることや対処のポイントを解説

  • 自分が有責配偶者の場合、交渉では不利な立場のまま話が進むのか
  • 有責配偶者からは離婚請求できないのか
  • 不倫した側から相手に離婚を働きかける方法があれば知りたい

不倫(不貞行為)した配偶者が離婚をしたくても、不倫された配偶者が離婚を望まない限り、原則として離婚は実現できません。

なぜなら、不倫をした側は「有責配偶者」となり、有責配偶者からの離婚訴訟の提起が認められていないからです。

有責配偶者は協議や調停という方法で、不倫された配偶者に働きかけ、何とか離婚を成立させる必要があります。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、不倫した側が離婚できない理由、離婚できないときの対処方法等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 不倫をした側から離婚の請求をする場合、厳格な条件を満たす必要がある
  • 不倫をした側は不倫された配偶者に有利な条件を提示し、離婚に合意してもらう方法もある
  • 不倫した側は別居したり、誠実な協議を継続したりして、離婚の成立を図る

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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不倫した側(有責配偶者)が離婚できない理由

裁判離婚では、原則として不倫(不貞行為)をした有責配偶者からの離婚請求は認められません。

理由は、自分の不貞行為が原因で夫婦関係を破綻させたのに、その本人からの離婚請求を認めることは不公平と考えられるからです。そのため、法定離婚事由があるとしても、有責配偶者からの離婚請求は、基本的に認めるべきではないと解されているのです。

ただし、次の3つ全てに該当する場合は、不倫をした側からの離婚請求も可能です。

婚姻関係が破綻している

不倫をした側が離婚したくても、他方の配偶者に離婚の意志がなければ、裁判離婚はできません。また、夫婦が同居していれば、婚姻関係は破綻していないと判断されます。

婚姻関係の破綻が認められるのは、夫婦双方に婚姻継続の意思がなく、第三者から見ても夫婦として共同生活を行える見込みがない状態(例:長期別居)にある場合です。

未成熟の子がいない

未成熟の子がいる場合は、不倫をした側からの離婚請求は基本的に認められません。

未成熟の子とは、自らの力で生活できない状態の子どもを指します。未成熟の子は未成年に限らず、成人ではあるが就職しておらず自立できていない子どもも該当します。

配偶者にも有害性がある

不倫をされた配偶者に何も非がない場合は、不倫をした側から離婚の訴えは認められません。

ただし、不倫をした原因が配偶者からのDVやモラハラ等によるものであった場合、配偶者にも非があったとして、不倫をした側からの離婚訴訟が可能な場合もあります。

不倫したことで離婚できないときの交渉材料

不倫をした側は原則として裁判離婚が認められないものの、協議や調停の場で離婚を主張することは可能です。

その場合、不倫をした側が次の条件について大幅な譲歩を行えば、不倫された配偶者は離婚に応じるかもしれません。

慰謝料

不倫をした側が協議または調停で高額な慰謝料の支払いを提案すれば、離婚に合意してもらえる可能性があります。

離婚する場合の慰謝料の目安は100万円〜300万円ですが、たとえば「離婚に合意してもらえるなら400万円~500万円に慰謝料を増額する」という条件提示も有効な方法です。

財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産(共有財産)を、離婚時または離婚後に分配する方法です。

財産分与は、共有財産を2分の1ずつに分けるのが一般的です。

しかし、分与割合は法律で決められているわけではないので、交渉で自由に設定できます。

たとえば、不倫された配偶者の合意を得るために、不倫された配偶者に全額分配することもできます。

また、本来、財産分与には該当しない特有財産(例:引き継いだ遺産、婚姻前の預貯金等)を、分与の対象にしても構いません。

親権

子どもの親権をどちらにするかを、不倫された配偶者が優先的に選択できるよう配慮します。

不倫された配偶者が親権者となりたいのであれば親権を譲り、子どもの養育費の支払額や支払い方法も納得を得られるように取り決めます。

不倫した側が親権者となる場合は、不倫された配偶者と子どもとの面接交流について、配偶者の希望を最大限に尊重しましょう。

養育費

不倫された配偶者が親権者となる場合は、養育費を増額することも交渉材料になります。

養育費は、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考にして算定します。

たとえば離婚の交渉時の家族の収入状況等が次の通りだった場合、

  • 養育費を支払う側:夫(会社員年収800万円)
  • 養育費を受け取る側:妻(専業主婦)
  • 子ども1人:11歳(小学生)

算定表を用いると、離婚時の養育費は毎月約10万2,000円が目安です。

不倫をした側が配偶者に合意してもらうためには、養育費の金額を上乗せして交渉したほうがよい場合もあるでしょう。

出典:養育費・婚姻費用算定表 | 裁判所

面会交流

不倫した側が親権者となる場合は、不倫された配偶者と子どもとの面接交流について最大限配慮しましょう。

面会交流は月に1回程度が一般的です。しかし、不倫された配偶者に合意してもらうためには、面会交流の機会を増やす次のような条件の提示が有効です。

  • 面接交流は週1回は可能にする
  • 土曜日は親権がない親の自宅に泊まれる
  • 夏休みや冬休みに親権がない親と長期旅行できる

もちろん親権がない親の希望を聞いて取り決めをしましょう。

不倫した側から離婚ができないことへの対処法

不倫した側から離婚を働きかけたい場合は、事前の準備を十分整えてから、離婚の交渉や調停に進みましょう。

弁護士への相談

不倫した側から離婚を申し出たいときは、前もって弁護士と相談しましょう。

弁護士は相談者からの事情を聴き、次のようなアドバイスをします。

  • 不倫した側(有責配偶者)からの離婚裁判の提起は非常に困難であること
  • 不倫した側が離婚を成立させたい場合は、基本的に協議または調停で解決する方法に限定されること
  • 協議離婚または調停離婚の手順や方法の説明
  • 協議や調停をする場合、どんな条件を提示すべきか 等

弁護士に依頼すれば、不倫された配偶者が話し合いに応じてくれない場合に交渉に応じるよう働きかけをしてもらえます。

夫婦が直接顔を合わせると口論やトラブルに発展しそうなときは、弁護士に任せた方が無難です。

自然な流れでの別居

不倫した側が別居するのもよい方法です。

ただし、別居するときは自分の一存だけで家を出るのではなく、基本的に配偶者の同意を得る必要があります。

別居が長期間継続すれば、裁判離婚のときに裁判所が「婚姻の継続は困難」と判断する可能性もあるでしょう。

ただし、1年や2年別居しただけでは、不倫した側からの離婚は通常認められません。

法律に「夫婦が〇年別居すれば、離婚を認める」という規定もありません。

離婚裁判では、裁判所が夫婦の事情や、婚姻期間に対する別居期間の割合、未成熟の子どもの有無等も考慮し、不倫した側からの離婚が妥当かどうかを判断します。

誠実な協議

不倫した側が離婚を望む場合は、不倫をされた配偶者の感情にも配慮しながら、誠実に話し合いを進める必要があります。

離婚条件の大幅な譲歩を行い、配偶の同意を得る努力が求められます。

夫婦だけで話し合いをしても合意に至らない場合は、不倫した側から「夫婦関係調整調停(離婚)」の申立てができます。

訴訟と違い調停は家庭裁判所で夫婦が話し合うための手続きなので、不倫した側からの離婚の働きかけも可能です。

不倫した側は相手方(配偶者)の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、申立てをします。

調停では家庭裁判所から選出された調停委員が、夫婦それぞれの言い分を聴き、助言や解決案を示しながら、合意が得られるよう手続きを進めていきます。

出典:夫婦関係調整調停(離婚) | 裁判所

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、不倫した側がどうしても離婚したい場合の対応方法等について詳しく解説しました。

不倫した側が離婚を進める場合は、まず不倫された配偶者や家族への誠心誠意の謝罪が必要です。

また、不倫した側は有責配偶者であるため、離婚手続きにおいて不利となる可能性が高い点に十分留意しておきましょう。

不倫した側が離婚を望むのであれば、まず弁護士と相談し、今後の対応を話し合ってみましょう。

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