個人再生で住宅ローンは?家を守る知識と手続きガイド

2026年03月31日

個人再生で住宅ローンは?家を守る知識と手続きガイド

多重債務に陥り、家計が苦しくなったとき、「家だけは手放したくない」と考える方は少なくありません。特に住宅ローンを抱えている場合、「個人再生をすると家も失ってしまうのではないか」という不安は非常に大きいでしょう。

しかし、ご安心ください。個人再生には、自宅を残しながら借金を整理できる「住宅ローン特則」という制度があります。この制度を適切に利用すれば、大切な住まいを守りながら、生活の再建を目指すことが可能です。

この記事では、個人再生の住宅ローン特則について、その概要から利用条件、具体的なケースにおける適用可否、そして利用する際の注意点まで、疑問を解消するために詳しく解説します。

※個人再生の基礎知識は、こちらの記事をご覧ください。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士 春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内法律事務所勤務
当事務所開設
資格
宅地建物取引士
情報処理安全確保支援士
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目次

個人再生をしても家を残せる「住宅ローン特則」とは?

このセクションの要点

  • 個人再生では、一定の条件を満たせば自宅を残せる可能性があります。
  • その鍵になるのが「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」です。
  • 住宅ローンはそのまま維持しつつ、その他の借金を減額して生活再建を目指します。

個人再生は、裁判所に申立てを行い、借金を大幅に減額してもらう手続きです。

原則として借金は5分の1から10分の1程度にまで減額され、残りの借金を原則3年(最長5年)で分割して返済していくことになります。

この個人再生制度には、自宅を手放さずに手続きを進めるための特別な制度が設けられています。それが「住宅ローン特則」、正式名称「住宅資金特別条項」です。

住宅ローン特則(住宅資金特別条項)の概要

住宅ローン特則は、民事再生法に定められた制度で、再生計画を立てる際に、他の債務とは異なり住宅ローンは減額の対象から除外することで、自宅を維持できるようにするものです。

具体的には、他の一般債務(消費者金融やカードローンなど)は大幅に減額される一方で、住宅ローンの返済については、これまで通りの契約内容か、あるいは返済期間の延長や、一定期間元本の返済を据え置くなどの「リスケジュール(返済計画の変更)」を行うことで、自宅の競売を回避し、住み続けることを可能にします。

この制度の最大のポイントは、住宅ローンの債権者(金融機関など)に、他の債権者とは異なる特別な扱いを認める点にあります。これにより、自宅を守りつつ、生活を立て直すための大きな手助けとなります。

住宅ローン特則を利用するメリット

個人再生の住宅ローン特則を利用するメリットは、何よりも「自宅を手放すことなく、借金の整理ができる」点にあります。

  • 大切な自宅を守れる:自己破産のように自宅が処分される心配がなく、住み慣れた家で生活を継続できます。
  • 他の債務が大幅に減額される:住宅ローン以外の借金が大幅に減額されるため、月々の返済負担が軽減されます。これにより、住宅ローンの返済に集中しやすくなり、家計の立て直しが容易になります。
  • 返済計画の柔軟な変更:住宅ローンの返済期間を延長したり、一時的に元本の返済を据え置いたりすることで、再生計画認可後の返済負担を調整し、無理のない返済を続けられます。
  • 安定した生活の維持:自宅を維持できることで、転居に伴う費用や環境の変化によるストレスを避けることができ、精神的な安定も保ちやすくなります。

他の債務整理(自己破産・任意整理)との違い

個人再生の住宅ローン特則が、他の債務整理とどう異なるのかを理解することは、適切な手続きを選択する上で重要です。

自己破産との違い:
自己破産の場合、原則として住宅を含む財産は処分され、換価された上で住宅ローン返済分を上回る売却益は債権者に配当されます。

つまり、自己破産を選択すると、自宅を手放すことになります。一方、個人再生の住宅ローン特則を利用すれば、自宅を残すことが可能です。

任意整理との違い:
任意整理は、債権者と直接交渉し、利息のカットや返済期間の延長などを求める手続きです。しかし、他の債務を任意整理しても、個人再生と異なり返済月額が大きいので家計が破綻するリスクが残ります。

個人再生の住宅ローン特則は、裁判所を介することで、強制的に他の債務を減額し、住宅ローンの返済計画を変更できる点で、任意整理とは大きく異なります。

住宅ローン特則を利用するための条件

このセクションの要点

  • 住宅ローン特則は誰でも使えるわけではありません。
  • 「本人所有・本人居住」「住宅取得等のためのローン」など厳格な条件があります。
  • 抵当権や代位弁済の状況によっては利用できないことがあります。

住宅ローン特則は非常に強力な制度ですが、誰でも利用できるわけではありません。いくつかの厳格な条件を満たす必要があります。

本人が所有し、居住している家であること

住宅ローン特則の対象となるのは、債務者自身が所有し、かつ現に居住している住宅に限られます。

  • 所有していること:自宅の登記名義が債務者本人、または債務者とその家族の共有名義である必要があります。親名義の家に住んでいる場合や、賃貸物件に住んでいる場合は対象外です。
  • 居住していること:投資用マンションや別荘、他人に賃貸している物件など、居住目的ではない住宅は対象になりません。あくまで、自身や家族が生活の本拠として利用している家である必要があります。

住宅の購入やリフォームのためのローンであること

住宅ローン特則の対象となる債務は、「住宅の購入資金」または「住宅の改良・建設資金(リフォーム資金など)」の借入れに限られます。

  • 対象となるローン:自宅の購入や増改築、大規模なリフォームなど、住宅そのものの価値を高める目的で借り入れたローンが該当します。
  • 対象外となるローン:事業資金や生活費、車の購入費などを目的とした借入れで、たまたま自宅を担保に入れているような「フリーローン」は、住宅ローン特則の対象外となります。

不動産に住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと

住宅ローン特則を利用するためには、対象となる不動産に、住宅ローン以外の債務を担保するための抵当権(根抵当権を含む)が設定されていないことが原則です。

  • 二番抵当権の問題:例えば、消費者金融から借入れをする際に、自宅に二番抵当権が設定されているようなケースです。このような場合、住宅ローン特則の利用が認められない可能性が高くなります。これは、二番抵当権の債権者が住宅ローン特則の対象外となってしまうため、不利益を被ることから、同意を得ることが困難であるためです。
  • 解決策:もし二番抵当権が設定されている場合は、その抵当権を抹消することなどにより特則の利用が可能になる場合がありますが、手続きは複雑になります。

保証会社の代位弁済から6ヶ月以上経過していないこと

住宅ローンの返済が滞ると、金融機関は保証会社に保証債務の履行を求めます。これを「代位弁済」といい、債務者が金融機関に負っていた住宅ローンの債務は、保証会社が肩代わりし、債務者は今後は保証会社に対して返済することになります。

  • 代位弁済後の期限:保証会社が代位弁済を行ってから6ヶ月以内であれば、住宅ローン特則を利用できる可能性があります。
  • 6ヶ月を過ぎた場合:代位弁済から6ヶ月を超えてしまうと、住宅ローン特則の利用が困難になります。この期間を過ぎると、保証会社は自宅を競売にかけるなどの法的措置を取る可能性が高まるため、迅速な対応が必要です。返済が困難になったと感じたら、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

【ケース別】こんな場合、住宅ローン特則は使える?

このセクションの要点

  • ペアローンや共有名義でも利用できる可能性があります。
  • 滞納中でも間に合う場合がありますが、早い対応が重要です。
  • 連帯保証人やアンダーローンの有無によって注意点が変わります。

ペアローンを組んでいる・共有名義の場合

夫婦などでペアローンを組んでいる場合や、共有名義で住宅を所有している場合でも、住宅ローン特則は利用できる可能性があります。

  • 再生計画を申し立てるのが一人だけの場合:再生計画を申し立てた債務者(夫または妻)のみが住宅ローン特則の対象ですが、個人再生を申し立てていないもう一方の債務者についての住宅ローンの履行可能性や住宅ローン債権者の意向等を総合考慮して、住宅特則の利用を認めるかどうか、裁判所が判断します。
  • 夫婦で申し立てる場合:夫婦ともに個人再生を申し立てる場合は、それぞれが自身の債務について住宅ローン特則を利用することになります。

住宅ローンに連帯保証人がいる場合

住宅ローンに連帯保証人がいる場合、個人再生を申し立てた債務者の借金は減額されますが、連帯保証人にはその効果は及びません

  • 連帯保証人への影響:債務者が個人再生手続を開始し、住宅ローン特則を利用すると、その効力は、連帯保証人にも及びます。他方で、連帯保証人も同時に個人再生する場合、この連帯保証債務が住宅資金特別条項も、制度趣旨の解釈上、住宅資金貸付債権として取り扱うということも可能だと考えられています。

住宅ローンの返済を滞納している場合

住宅ローンの返済を滞納している状況であっても、住宅ローン特則は利用可能です。むしろ、滞納が深刻化し、競売にかけられる前に個人再生を検討することが重要です。

  • 期限の利益の喪失:住宅ローンの返済を滞納すると、「期限の利益」を喪失し、金融機関から残債の一括返済を求められることになります。この状態でも、個人再生の住宅ローン特則を利用することで、一括返済を猶予され、リスケジュールされた返済計画に基づいて返済を再開できる可能性があります。
  • 競売手続きの進行:ただし、すでに競売手続きが進行している場合は、手続きの段階によっては住宅ローン特則の利用が間に合わないこともあります。できるだけ早く弁護士に相談し、適切なタイミングで申立てを行うことが肝心です。

アンダーローン(家の価値>ローン残高)の場合

アンダーローンとは、家の時価が住宅ローンの残高を上回っている状態を指します。この場合でも、住宅ローン特則は利用可能です。

  • 清算価値保証の原則:個人再生では、「清算価値保証の原則」というルールがあります。これは、債務者がもし自己破産した場合に、債権者が受け取れるはずの金額(清算価値)よりも、個人再生で返済する金額が少なくなることは認められない、という原則です。
  • アンダーローンの影響:アンダーローンの場合、自宅を売却すればローンを完済し、さらに余剰金が発生することになります。この余剰金は、破産した場合に他の債権者に配当される可能性のある「清算価値」として計算されます。そのため、個人再生で他の債務を減額する際、この清算価値が最低弁済額を決定する要素の一つとなり、減額幅が制限される可能性があります。しかし、自宅を残せるという点は変わりません。

個人再生で住宅ローン特則を利用する際の注意点

住宅ローン自体の返済額は減額されない

住宅ローン特則の最も重要な注意点の一つは、住宅ローンの元本自体は減額されないという点です。他の一般債務は大幅に減額されますが、住宅ローンは減額の対象外となります。

  • リスケジュールの内容:住宅ローン特則によって認められるのは、返済期間の延長や、一定期間元本の返済を据え置くことなどによる「返済計画の変更(リスケジュール)」です。これにより、月々の返済額を一時的に軽減することは可能ですが、最終的に支払うべき元本の総額は変わりません。

信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリスト)

個人再生の手続きを開始すると、信用情報機関に「事故情報」として登録されます。世間でいう「ブラックリストに載る」という状態です。

  • 影響の範囲:この事故情報は、個人再生の申立てから5年~10年程度の間、記録として残ります。その間は、新たなクレジットカードの作成、消費者金融からの借入れ、自動車ローンや教育ローンなどの新たなローンの契約、スマートフォンの分割払いなどが原則としてできなくなります。
  • 生活への影響:クレジットカードが使えなくなることで、公共料金の支払い方法の変更や、ネットショッピングでの不便が生じる可能性があります。また、新たに保証人になることも難しくなるでしょう。

官報に氏名や住所が掲載される

個人再生を申し立てると、手続きの開始決定時と認可決定時などに、国が発行する「官報」という機関誌に、申立人の氏名や住所などが掲載されます。

  • 官報とは:官報は、国の機関紙であり、法令の公布や国の公示事項などが掲載されます。個人再生だけでなく、自己破産などの裁判所を介した法的手続きにおいても氏名等が掲載されます。
  • 実生活への影響:官報は一般の人が日常的に目にするものではなく、官報を通じて知人があなたの個人再生を知る可能性は極めて低いと言えます。しかし、特定の職種(例えば、信用情報調査を行う業者など)の人が閲覧する可能性はゼロではありません。

手続きに費用と時間がかかる

個人再生の手続きは、裁判所を介する複雑な法的手続きであり、費用と時間がかかると認識しておく必要があります。

【費用】

  • 弁護士費用:個人再生の手続きは専門知識が必要なため、通常は弁護士に依頼します。弁護士費用は事務所によって異なりますが、一般的に数十万円程度が必要です。
  • 裁判所費用:裁判所に納める申立手数料(収入印紙代)や、官報公告費用などの実費がかかります。
  • 再生委員への報酬:事案によっては、裁判所が「再生委員」を選任する場合があります。この場合、再生委員への報酬として、通常十数万円程度の予納金が必要となります。

【時間】

手続きの完了までには、申立てから再生計画の認可まで、通常6ヶ月から1年程度の期間を要します。書類の準備期間を含めると、さらに時間がかかることもあります。この間は、精神的な負担も伴うことを覚悟しておくべきでしょう。

個人再生と住宅ローンでお悩みなら弁護士に相談を

このセクションの要点

  • 住宅ローン特則の可否判断は専門的です。
  • 書類作成や裁判所対応は複雑で、弁護士に任せるメリットがあります。
  • 早めの相談が競売回避につながることがあります。

個人再生と住宅ローン特則は、自宅を守る上で非常に有効な手段ですが、その制度は複雑であり、個々の状況によって適用可否や手続きの進め方が大きく異なります。ご自身で判断し、手続きを進めることは非常に困難です。

もし、個人再生と住宅ローン特則でお悩みなら、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

住宅ローン特則が利用できるか正確に判断してもらえる

弁護士は、現在の収入、借金の状況、自宅の状況、住宅ローンの契約内容などを詳細にヒアリングし、住宅ローン特則の利用条件を満たしているか、また、個人再生自体がご自身にとって最善の選択肢であるかを正確に判断してくれます。

自己判断では見落としがちな点や、専門知識が必要な判断についても、的確なアドバイスを受けることができます。

複雑な裁判所の手続きを任せられる

個人再生は、裁判所に数多くの書類を提出し、裁判官や再生委員との面談、債権者集会(開催される場合)への出席など、複雑な手続きが伴います。

弁護士に依頼すれば、これらの煩雑な書類作成や裁判所とのやり取り、手続きのスケジュール管理など、すべてを代行してもらえます。これにより、あなたは本業や生活に集中しながら、安心して手続きを進めることができます。

債権者との交渉窓口になってもらえる

弁護士に個人再生を依頼すると、弁護士が債権者(金融機関や貸金業者など)との窓口となります。受任通知が発送された後は、債権者からの直接の督促が止まり、精神的な負担が大幅に軽減されます。

また、債権調査や、場合によっては返済計画に関する交渉なども弁護士が代行してくれるため、あなたは一人で悩む必要がなくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. すでに住宅ローンを数ヶ月滞納しています。もう手遅れですか?

銀行から「代位弁済通知(保証会社が代わりに払った通知)」が届いてから6ヶ月以内なら、まだ間に合う可能性があります。

保証会社が銀行に全額返済(代位弁済)してしまうと、原則として家は競売に向かいます。

しかし、そこから6ヶ月以内に個人再生を申し立てれば、保証会社の支払いを「なかったこと」にして、再び銀行への分割払いに戻せる特別なルールがあります。 一刻を争う状況ですので、すぐに弁護士にご相談ください。

Q. ペアローンや、配偶者が連帯保証人の場合はどうなりますか?

配偶者が連帯保証人の場合、配偶者も一緒に個人再生を検討するのが一般的です。 

Q. 投資用のマンションや、店舗兼住宅でも「特則」は使えますか?

原則として「本人が居住する住宅」に限られます。

  • 投資用物件: 特則の対象外です。一般債権として処理されるため、売却を迫られる可能性が高いです。
  • 店舗兼住宅: 床面積の2分の1以上が居住用であれば、特則を利用できる可能性があります。

Q. 住宅ローン以外の「抵当権」がついている場合はどうなりますか?

他の借金の担保として家に抵当権がついている場合、特則は利用できません。

例えば、事業資金の借り入れのために自宅を担保に入れている場合や、税金の滞納で差し押さえを受けている場合などです。住宅ローン以外の理由で家を差し押さえられる状態にあるなら、個人再生で家を守ることは非常に難しくなります。

まとめ

このセクションの要点

  • 個人再生では住宅ローン特則により家を残せる可能性があります。
  • ただし利用には厳しい条件があり、早めの確認が重要です。
  • 迷った段階で弁護士に相談するのが安全です。

個人再生の住宅ローン特則は、多重債務で苦しむ方が「自宅を手放したくない」と願う場合に、非常に強力な味方となる制度です。この制度を利用すれば、他の借金を大幅に減額し、住宅ローンの返済計画を見直すことで、大切な自宅を守りながら生活の再建を目指すことが可能です。

しかし、住宅ローン特則を利用するには、

「本人が所有・居住している家であること」
「住宅の購入・リフォームのためのローンであること」
「住宅ローン以外の抵当権が設定されていないこと」
「保証会社の代位弁済から6ヶ月以内であること」

といった厳しい条件があります。また、住宅ローンの元本は減額されないこと、信用情報に事故情報が登録されること、手続きに費用と時間がかかることなどの注意点も理解しておく必要があります。

ご自身の状況で住宅ローン特則が利用できるのか、あるいは個人再生が最善の選択肢なのか、専門的な判断が必要となります。

もし、個人再生と住宅ローンでお悩みなら、まずは弁護士に相談し、ご自身の状況に合わせた最適な解決策を見つけることを強くお勧めします。早めに相談することで、競売などの最悪の事態を避けることにもつながります。

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