不倫の慰謝料は裁判にすべき?ケースごとに専門弁護士が解説
最終更新日: 2024年02月01日
不倫の慰謝料請求は裁判にした方がいいの?
不倫の慰謝料請求の裁判はどのような流れになるの?
裁判になったら家族や会社に不倫を知られてしまうの?
不倫の慰謝料請求する場合、裁判にするべきか示談をすべきか悩むことがあるかと思います。もちろん何でも裁判にするのが良いわけではなく、むしろ裁判にしない方が良いケースもあります。
今回は不倫問題を数百件解決してきた専門弁護士が不倫の慰謝料の裁判について徹底解説します。
不倫の慰謝料で裁判にすべきケース
不倫の慰謝料請求をする事案では、裁判にすべき場合と裁判にすべきではない場合があります。まずは裁判にすべきケースについて3つ確認しましょう。
相手が無視しているケース
不倫相手に内容証明を送ったのに返信がない、電話やメッセージを無視されている。不倫の慰謝料請求をすると不倫相手がこのような対応をとることがしばしばあります。
このように不倫相手が無視をする場合の多くは、無視をしておけば諦めて請求が止むだろうという甘い考えをもっているのです。
このような場合には返事を催促しても時間の無駄ですから、裁判にします。裁判所から訴状が届いてもなお無視をするケースは稀です。
不倫を否定しているケース
2つ目は、不倫相手が不倫の事実を否定している場合です。不倫の事実が証拠から明らかであるにもかかわらず、不倫相手が否定する場合があります。
不倫の事実を否定している以上、交渉での解決は望めませんのでこの場合も裁判にするべきです。
提示額が相場より低いケース
3つ目は不倫相手が提示してきている慰謝料の金額が相場よりも低い場合です。
例えば、不倫の慰謝料の相場が100万円のケースであるにもかかわらず、30万円しか支払わないと不倫相手が言っているのであれば、裁判にした方が高い慰謝料を取れますので裁判にすべきです。
ただし、求償権の放棄と弁護士費用も考慮してもなお裁判にした方が自分に残る金額が増えるのかについても検討しておくべきです。
不倫の慰謝料で裁判にすべきでないケース
次に、不倫の慰謝料で裁判にすべきではないケースを3つ確認しましょう。
証拠がないケース
まずは不倫を証明する証拠がない場合です。証拠がなければ裁判に負けてしまいますので、裁判をすべきではありません。
ただし、不倫の証拠はないものの、不倫相手が不倫を認めているのであればそれが証拠になり得ますので、この場合には不倫相手の自白によって不倫を証明できるかについて十分に検討した上で裁判をすべきか判断します。
既婚者と知らなかったケース
2つ目は不倫相手に既婚者の認識がなかった場合、独身と信じていた場合です。
不倫相手が既婚者とは知らなかったと言っている場合も、既婚者と知っていた、あるいは既婚者であることを疑っている内容のLINEなどの証拠がある場合には慰謝料を支払わせることができますので裁判をすべきです。
そのような証拠がない場合には裁判をしても負ける可能性が高いため、裁判はすべきではありません。
相手にお金がないケース
3つ目は不倫相手が無職で資産もない場合です。不倫相手が学生の場合や専業主事の場合にこのようなケースがあります。
この場合、裁判をして勝訴判決を得たとしても差し押さえる財産、収入がないことから慰謝料を回収することができません。弁護士費用や裁判費用がかかるだけになってしまいますので、この場合にも裁判はすべきではありません。
不倫の慰謝料は裁判ならどれくらいの金額?
不倫の慰謝料請求について裁判になった場合、和解をする場合も判決が出る場合も概ね相場の慰謝料金額となります。そこで、裁判になった場合にはどれくらいの慰謝料がとれるのか確認しておきましょう。
不倫の結果、夫婦が離婚する場合には慰謝料は200万円、離婚しない場合には慰謝料は100万円が相場です。
そして、婚姻期間が20年以上など長期であったり、不倫期間が5年以上など長期である場合にはこの金額より増額されますし、不倫で妊娠をして出産した場合も慰謝料は増額されます。
その他にも従前の夫婦関係が悪かった、不倫がばれた後も不倫を続けているなど様々な事情を考慮して慰謝料金額は増減します。
例えば、不倫が1回あったに過ぎない場合には慰謝料は50万円以下になることがありますし、不倫期間が20年以上にわたりその間に婚外子も生まれているようなケースでは慰謝料が500万円になることもあります。
離婚する場合は200万円、離婚しない場合は100万円が基本となりますが、それぞれのケースにおいて色々な事情を考慮して最終的な慰謝料が決まるのです。
不倫の慰謝料を請求する裁判の流れ
次に、不倫の慰謝料について裁判を起こした場合の裁判の具体的な流れについてご説明します。
- 訴状の提出
- 訴状の送達
- 第1回裁判
- 第2回以降
- 和解協議
- 尋問
- 判決
訴状の提出
裁判を始めるにはまずは訴状を裁判所に提出します。
訴状にどのような事実関係を書くか、最初にどのような証拠を提出するかについては、裁判の最後までの流れを予測し、戦略的に考える必要があります。
なお、裁判所に納める費用は印紙代と郵便切手代です。それぞれの金額について裁判所の早見表がありますので、下記リンクよりご確認ください。
訴状の送達
訴状を裁判所に提出しますと、裁判所の方で訴状に不備がないか審査がなされます。特に不備がなければ被告である不倫相手に対して訴状が送達されます。
送達先は原告において訴状に記載をしておきます。通常は被告の住所地ですが、被告の住所地が不明の場合には被告の勤務先を送達場所とすることもあります。
第1回裁判
被告に訴状が発送される前の段階で、原告と裁判所において第1回の裁判期日について調整がなされます。概ね提訴日から1か月ほど後の日にて調整されます。そして、その第1回裁判期日を指定した書面とともに被告に訴状が発送されます。
第1回裁判期日は公開の法廷にて行われ、原告が提出した訴状の陳述、証拠の取り調べ、被告が提出した答弁書の陳述、証拠が行われます。陳述といっても訴状などを読み上げるわけではなく、「訴状のとおり陳述します」などと述べるだけです。
被告又は被告代理人の弁護士が出廷している場合には争点の確認や今後の進め方について協議がなされます。
なお、第1回裁判期日については、被告は必ずしも出廷する必要はありません。欠席をしても答弁書の陳述が擬制されます。
第2回以降
裁判期日は概ね1か月に1回のペースで開かれます。双方の主張と証拠が出尽くすまで原告、被告が交互に主張書面と証拠を提出していきます。
第2回裁判期日からは弁論準備手続という手続きになることがほとんどです。この手続きは、公開の法廷ではなく、裁判所の一室において非公開で行われます。
近時は、マイクロソフト社のTeamsを利用したWEB会議によって裁判期日が開かれることも多く、この場合、裁判所に出向くことなくパソコンの画面を通じて裁判期日のやり取りが行われます。
和解協議
双方の主張と証拠が出尽くすと裁判所としては勝訴、敗訴、慰謝料の金額について概ね心証が形成されます。そして、原告と被告のいずれもが条件次第では和解もありうると考えているときは、裁判所を仲裁者として和解協議が行われます。
その結果、慰謝料の金額、その他の和解条件について合意ができましたら和解が成立となり、裁判は終結します。合意に達しない場合には次の尋問手続に入っていきます。
尋問
尋問は原告本人、被告本人の尋問、証人がいれば証人の尋問も行われます。ここまでに提出された主張書面や証拠から争点は絞られていますので、例えば、不倫の有無が争点であれば、それに関連する事実についてのみ尋問が行われます。
原告本人、被告本人の尋問、証人尋問の順番、尋問時間は事前に裁判所と協議して決定します。なお、尋問については公開の法廷で行われます。
尋問が終わりますと全ての証拠調べ手続きが終わったことになりますので、裁判所の心証は確定しています。
多くの場合、尋問終了後に再度、裁判所の心証を踏まえた和解協議がなされます。この段階では裁判所がどのような判決を出すのかについてほぼ決まっていますので、尋問前には和解ができなかったケースでも和解が成立することがあります。
ここでも和解が成立しなかったときには、判決言渡しの期日が指定されます。
判決
裁判官が判決書を作成しますので、判決の日は尋問の日の1か月半から2か月後に指定されることが多いです。判決の日は必ずしも裁判所に出廷する必要はなく、裁判所に電話で問い合わせると判決内容について教えてもらうことができます。
判決内容に不服がある場合には2週間以内に控訴状を判決を言い渡した裁判所へ提出をして控訴します。控訴がなければ判決が確定します。
判決が出ますと被告が判決で決まった金額を支払ってくることが通常ですが、支払いを拒否されることもあります。その場合には、強制執行の手続きによって被告の財産、給与を差し押さえ慰謝料を回収していく必要があります。
不倫の慰謝料の裁判についてよくある質問
ここで、不倫慰謝料の裁判についてよくあるご質問に対して回答したいと思います。
- 不倫を会社や家族に知られてしまうのか
- 裁判の期間はどれくらい?
- 裁判で和解は拒否できる?
- 判決が出たのに払ってこないことはある?
不倫を会社や家族に知られてしまうのか
まず、裁判は公開なので裁判になると会社や家族に不倫の事実を知られてしまうのではないかというご質問がよくあります。
しかし、裁判になったからといって著名人でもない限りニュースになるわけではありませんので、裁判の事実が不特定又は多数の人に知られることはありません。
また、先ほどご説明しましたとおり、第1回の裁判期日以降は非公開の手続きで行われます。確かに尋問は公開の法廷で行われますが、不倫慰謝料の裁判は注目される事件でもありませんので、傍聴人が一人もいないことも多くあります。
したがって、裁判になったからといって会社や家族に不倫を知られる可能性は低いといえます。ただし、最初の訴状の送達の段階で家族が訴状を受領したり、会社の他の従業員が訴状を受領して不倫の事実を知られることはあります。
裁判の期間はどれくらい?
次に、裁判というと長い年月を要するというイメージをお持ちの方も多いと思います。もちろん、不倫の慰謝料の裁判であっても1年、2年と長期化するケースもなくはありません。
しかし、多くのケースは半年以内に終わっています。また、事実関係に争いはなく、争点は慰謝料の金額だけというケースでは1、2回の裁判期日で和解が成立して終結することもあり、その場合は1、2か月で終結することになります。
裁判で和解は拒否できる?
先ほど、裁判では裁判官が間を取り持って和解協議がなされるとご説明しました。もっとも、和解をするかどうかは原告、被告の自由ですから、和解をしなければならないということではなく、和解を拒否することはもちろん可能です。
ただ、裁判官は忙しいため、尋問を実施することや判決を書くことをできる限り避け、早く和解で終わらせたいと考える人もいます。そのような裁判官は和解を拒否しているのに、執拗に和解を進めてくることがあります。
和解を拒否することに理由がある場合にはそのような圧力に負けず、判決を求めるべきです。
判決が出たのに払ってこないことはある?
裁判で判決が出ると被告は慰謝料など裁判所が支払いを命じた金額を原告に支払う義務を負います。ところが、判決が出たにも関わらず支払いをしない被告も稀にいます。
その場合には、被告の勤務先や預金口座などの財産を調査して、強制執行の手続きを取り、強制的に慰謝料を回収する必要があります。
とはいえ、勤務先も財産も把握できない場合、またそもそも無職で財産もない場合には判決を得たとしても回収はできません。したがって、裁判を起こす前の段階で、仮に不倫相手が判決を無視した場合に慰謝料を回収できるのかについても検討しておくべきです。
不倫の慰謝料を裁判で解決した事例
最後に不倫の慰謝料請求について裁判で解決した事例を見てみましょう。
当初無視していたが裁判で150万円を得た事例
妻の不倫が発覚して離婚をしたことから、不倫相手に対して300万円の慰謝料を請求する内容証明郵便を送りました。ところが、不倫相手からの返答はなく、電話にも出ないことから裁判所に裁判を提起しました。
すると不倫相手は弁護士に依頼をして、裁判に対応してきました。離婚はしたとはいえ、肉体関係は1回だけであり裁判所の心証として慰謝料は150万円が限度であったことから、150万円にて和解を成立させました。
本件は3回の裁判期日で和解が成立しました。相手が無視するときには、速やかに裁判を提起した方が早期の解決につながります。
離婚するも80万円の心証を得た事例
出会い系サイトで知り合った女性と不倫関係にあったところ、女性の夫に不倫関係がばれてしまい、夫婦は離婚しました。その後、慰謝料500万円を請求する裁判を起こされました。
女性は過去にも複数人の男性と不倫関係にあったことがLINEのやり取りに残っており、また夫婦関係も破綻とまでは言えませんでしたが、良好ではないことがLINEのやり取りからわかりました。
裁判では女性が夫側の証人として出廷し、過去の男性との不倫関係を否定する証言、夫婦関係は良好であったという証言をしました。それに対してLINEのやり取りを提示する反対尋問を行ったところ、女性の証言の信用性が否定される結果となりました。
尋問後の和解協議において裁判所からは慰謝料として80万円が相当であるという心証を開示されましたが、最終的には100万円にて和解が成立しました。
本件は夫婦が離婚した事例ではありましたが、戦略的に裁判を進めることによって夫婦関係が良好ではなかったことの心証を形成し、慰謝料を100万円以下とする心証を得ることができました。
まとめ
以上の、不倫の慰謝料請求の裁判について解説しました。
不倫相手に慰謝料を請求したい方、不倫の慰謝料を請求された方は、最善の解決をするために不倫問題を専門とする弁護士にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。