介護のトラブルの実態と原因、未然に防ぐ方法や最初に行うべきことについて徹底解説!
最終更新日: 2023年11月29日
超高齢化社会が進んでいる日本では、介護にまつわるトラブルが年々増加しています。いつかは誰もが介護の当事者となる日が来ることが想定されますが、思わぬ形で介護が始まり、想定していなかったトラブルに直面する方も少なくありません。
そこで今回は、介護にまつわるトラブルの実態と原因、未然に防ぐ方法や最初に行うべきことについて解説いたします。
介護トラブルの実態
まずは、介護トラブルの典型として挙げられる4つの事例について見てみましょう。
- 金銭トラブル
- 兄弟間の役割トラブル
- うつ症状や体調不良による離職
- 介護虐待や介護殺人
それでは、1つずつ解説していきます。
金銭トラブル
介護トラブルの実態の1点目は、金銭にまつわるトラブルです。
介護には施設への入居費やデイケアサービスの利用料・病院までの交通費・おむつ代など、毎月多額の金銭が必要となります。
介護にかかる費用について事前に誰が費用を負担するかを決めていない場合、金銭を支払う人が偏ってしまい、重い負担となることもあります。
無用なトラブルを避けるためにも、あらかじめ介護費用について誰がどのくらい負担するのかを決めておくことが賢明です。
兄弟間の役割トラブル
介護トラブルの実態の2点目は、兄弟間の役割トラブルです。
「仕事や家庭が忙しい」「小さな子どもがいて介護に手が割けない」「遠方に住んでいて通うことが難しい」など、それぞれの事情を理由に介護を押し付け合うのは、決して珍しい話ではありません。
長男長女やその配偶者が介護を担うケースが多いようですが、直接介護に携わらない兄弟のちょっとした発言が原因となり、大きなトラブルを招くこともあります。
「長男長女だから…」という事情のみによって介護を押し付けるのではなく、自身も当事者の一員であるという自覚を持って介護へと携わることでトラブルが防げるでしょう。
うつ症状や体調不良による離職
介護トラブルの実態の3点目は、うつ症状や体調不良による離職です。
介護のために子どもが仕事を辞めなければならない、いわゆる「介護離職」も近年では大きな問題となっています。
総務省の実施した『就業構造基本調査』によれば、1年間で約10万人弱が介護離職をしているといいます。
親の介護に専念するために仕事を辞めることは、一見すると聞こえがいいですが、その反面で、下記のような様々なトラブルへと発展するリスクがあります。
・これまでの地域社会との関わりが希薄し、周囲から孤立する
・安定した収入源がなくなり、経済的に困窮する
誰か一人に極端に重い負担が集中することがないよう、家族全員で介護を分担することで介護離職を招くリスクを下げることができます。
介護虐待や介護殺人
介護トラブルの実態の4点目は、介護虐待や介護殺人です。
介護のトラブルは、時に介護虐待や介護殺人などの取り返しのつかない事態へと発展することもあります。
厚生労働省によると、介護虐待は令和元年で16,298件の事例があったと報告されています。
また、将来への悲観や介護疲れから、夫婦や母子で無理心中に至ったケースもあり、決して他人事ではありません。
自身やその親族が介護虐待・介護殺人の当事者とならないためにも、介護にまつわるトラブル事例やその対処法について学ぶことは極めて重要です。
両親の介護でトラブルになる原因
両親の介護でトラブルになる4つの原因について見てみましょう。
- 介護は急に訪れる
- 現実的に介護が難しい
- 介護の方針が決まらない
- 金銭の出処が決まっていない
それでは、1つずつ解説していきます。
介護は急に訪れる
両親の介護でトラブルになる原因の1点目は、介護が必要な状況は急に訪れることが多いからです。
親族間で準備や心構えができていない状態で、とりあえず手の空いている人が介護を引き受けるなど、曖昧な条件のまま介護を引き受けてしまうと、トラブルの原因となります。
実際に介護が始まってしまうと、思ってもみなかったような問題が表面化します。特定の誰かに対して極端に重い負担がかかることも珍しくありません。いざという時を想定し、親族間で日常的に介護に関する話題を共有することが大切です。
現実的に介護が難しい
両親の介護でトラブルになる原因の2点目は、現実的に介護が難しいことにあります。
一般的に両親の介護が必要になるのは40~50代前後の世代が多いです。仕事や家庭など、それぞれが抱える事情を理由に、親族間で介護の押し付け合いが起きることもあります。
「仕事での責任が重く休めない」「お金に余裕がない」「遠方に住んでおり通うことができない」などの理由により現実的に介護へ携わることが難しいという場合でも、当事者目線を持ち、それぞれにできる形で介護に参加するという姿勢がトラブルを防ぎます。
介護の方針が決まらない
両親の介護でトラブルになる原因の3点目は、介護の方針が決まらないことです。
複数人兄弟がいると「自宅介護か施設介護のどちらを選ぶか」といった介護の方針がまとまりにくいからです。
一般的に自宅介護の方が費用面は安く抑えることができますが、その分誰かが付きっきりで介護を行うこととなってしまい、その人一人に負担が乗しかかります。
一方で、施設介護の場合には、金銭面での負担の大きさや、集団生活によるウイルス感染症のリスク上昇などのデメリットもあります。
自分以外にも兄弟や姉妹がいる場合には、定期的に介護を担当する者を変更する、全員で公平に金銭面の負担するなど、幅広い選択肢を選べるように対策をしておくとよいでしょう。
金銭の出処が決まっていない
両親の介護でトラブルになる原因の4点目は、金銭の出処が決まっていないことです。
介護にかかる金銭の出処が決まっていない場合にも大きなトラブルの原因となってしまいます。
先述したように、介護は突然始まる場合が多く、「たまたま介護できる状況の人が何となく費用を払い続ける」状況になりがちです。
介護には毎月多額の費用が必要となります。積み重なれば非常に大きな負担となることから、金銭の出処については特に親族間で話し合っておくことをおすすめいたします。
介護トラブルを未然に防ぐ4つの方法
介護トラブルを未然に防ぐための4つの方法についてご説明します。
- 両親がどうしたいか気持ちを確認する
- 費用面の確認
- 基本は親のお金を使うことを合意する
- 介護に関する知識を学ぶ
それでは、1つずつ解説していきます。
両親がどうしたいか気持ちを確認する
介護トラブルを未然に防ぐ方法の1点目は、両親が元気な内に、両親自身がどうしたいかという気持ちを確認しておくことです。
まだ元気な両親に対して介護の話をすることに抵抗感を抱く人も多いですが、事前に介護される両親自身の意向を確認し、兄弟間で共有しておくことで多くのトラブルを防ぐことができます。
お正月やお盆など、家族が集まった際にざっくばらんに話し合ってみるといいでしょう。
費用面の確認
介護トラブルを未然に防ぐ方法の2点目は、費用面の確認です。
介護にまつわる費用をどう分担するか調整を行うことは非常に難しい課題です。しかし、両親も元気な内に自身の将来について話しておきたいと考えている場合も多く、そのきっかけを子どもたちの方から作ることは決して悪いことではありません。
年金や預貯金など、両親のお金のみで介護費用を賄うことができるのかは、事前に確認しておきましょう。また突然の病気などにより両親の意思表示が難しくなった場合を想定し、通帳や印鑑などの資産管理の方法についても話し合っておくことが大切です。
基本は親のお金を使うことを合意する
介護トラブルを未然に防ぐ方法の3点目は、基本は親のお金を使うことで合意形成することです。
介護には毎月多くの費用が必要となりますが、お金の出処が決まっていない場合、誰がいくら負担するのかをなかなか決められずトラブルとなるケースが多くあります。
介護にかかる費用は、基本的には両親のお金を使うという合意を家族間で行っておくと同時に、実際に介護が始まった際に足りない部分を子どもたちで負担し合うなど、定期的な見直しを行うことも重要です。
介護に関する知識を学ぶ
介護トラブルを未然に防ぐ方法の4点目は、介護に関する知識を学ぶことです。
介護トラブルを未然に防ぐためには、介護についての技術的な知識を学ぶことも重要です。知識がないまま見よう見真似で介護を行うと、両親のみならず自分自身が怪我をしかねません。
現在では、YouTubeなどの動画投稿サイトでも介護にまつわる知識を気軽に学ぶことができます。
特に怪我の起こりやすいといわれる移動や起き上がりの介助技術については、確認しておくことをおすすめいたします。
介護が始まってからトラブルを発生させない大切な5ステップ
ここまで、介護にまつわるトラブルの実態や未然に防ぐための方法について見てきました。
しかし、実際に介護が始まれば当初想定していなかったような問題に直面することもあります。
ここでは、介護開始後にトラブルを発生させないために大切な5つのステップについて解説します。
- 兄弟会議をする
- 誰が何をできるか明確にする
- 中心人物となるリーダーを決める
- サブリーダーも決める
- 周りの人物の役割を明確にする
それでは、1つずつ解説していきます。
兄弟会議をする
ステップの1つ目は、兄弟会議をすることです。
兄弟のそれぞれに家庭や生活があり、その中には、自身の配偶者の両親の介護や受験を控えた子どもがいるなど、様々な事情があります。
しかし、その中で各々が介護を避けたいがために自身の理由ばかりを主張してしまうと、トラブルへと発展することは必至です。
実際に誰が介護を担当するかという話し合いからではなく、兄弟のそれぞれが両親の介護に対する正直な気持ちを話し合い、その上で役割を分担して介護に臨むことが大切です。
誰が何をできるか明確にする
ステップの2つ目は、誰が何をできるか明確にすることです。
同じ兄弟の間でも、両親に対する思い入れや介護に対する姿勢には温度差があります。
まずは、お互いの気持ちや本音を尊重し理解するように心がけ、その上で誰が具体的に何ができて、何をできないかを確認することが大切です。
どれくらい人手が足りないか、月々の介護費用にいくら必要かなどが明確になれば、各々ができる形で介護に参加しようと協力し合うことができます。
現在では、福利厚生の一環として、会社独自の介護休暇や介護サポートを導入している企業も多く存在します。兄弟の中でそうしたサービスが活用できないかを検討し、介護に参加したという事例もあります。
自分たちの場合に活用できる制度はないか、確認しておきましょう。
中心人物となるリーダーを決める
ステップの3つ目は、中心人物となるリーダーを決めることです。
介護を行う上では、中心となって介護を行うリーダーを決めることも重要です。リーダーは、自宅での介護は勿論、介護サービスやケアマネージャーとの折衝など、当然引き受ける負担が大きくなります。
他の兄弟同士でリーダーの負担を認識し、手の回らない部分について何を引き受けるかを決定しましょう。
サブリーダーも決める
ステップの4つ目は、サブリーダーも決めることです。
介護トラブルを起こさないためには、リーダー一人に介護の負担を集中させないということを意識しなければなりません。
残念ながら、介護による精神的な疲労や将来への不安などから、介護殺人や無理心中を起こしてしまう若い世代の方々が増えています。
リーダーに極端に負担が集中しすぎないようにサブリーダーを立てることや、兄弟の全員が介護の当事者であると認識し、全員参加で介護に臨むという姿勢を持ちましょう。
周りの人物の役割を明確にする
ステップの5つ目は、周りの人物の役割を明確にすることです。
介護では、誰が何を行うかといったそれぞれの役割を明確にし、何もしない人を生み出さないことでトラブルの発生を防ぐことができます。
遠方に住んでいるのであれば資金面での援助や定期的に両親へと連絡を入れる、平日の仕事が忙しいのであれば週末だけ介護を担当するなど、各々にできる役割を明確にし、協力して介護を担当することが大切です。
介護のトラブルの際は弁護士での平和的解決が必要
今回は介護にまつわるトラブルの実態や原因、トラブルを防ぐためのポイントについて解説しました。
介護トラブルを発生させる原因の多くは、当事者に介護の準備や心構えができていなかったりや、それぞれの役割を明確に決めないまま何となくで介護を担当してしまったりしていることにあります。
まだ先のことと考えず、いざという時のために家族間で介護に関する話題を共有しておくことが大切です。
また、万が一の場合には、介護トラブルに強い弁護士に頼ることも検討しましょう。介護にまつわる領域に明るい弁護士であれば、平和的に問題解決を図ることができます。一人で悩まずに、まずは相談から始めてみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。