ケース3:立ち退きの正当事由が微妙な事例

最終更新日: 2023年11月18日

正当事由が微妙な事例

ご相談内容

Aさんは、300平方メートルほどある土地を持っており、その土地の一部に小さな酒屋を営んでいました。

しかし、Aさんの酒屋だけでは土地が余ってしまうので、空いた土地を有効活用するため、Bさんに残地を賃借し、Bさんは、当該借地上に小さな建物を建てて、自らデザイン関係の事務所を営業していました。

BさんがAさんの土地で営業を始めて10年以上経過したところ、昨今の不況により、Aさんの酒屋も、苦境に立たされることとなりました。

Aさんとしては、酒屋だけでは限界を感じ、300平方メートルの広い土地を生かして、自動車利用者が駐車できるスペースのあるディスカウントストアを経営することとし、Bさんの建物には立ち退いてもらうこととしました。

しかし、Bさんは、立ち退きはかまわないが、十分な補償をしてほしいとのことで、Aさんから提示した立退料には応じてくれませんでした。

交渉

Aさんには一定の土地利用の必要性を肯定できますが、立ち退きによってBさんもかなりの損失を被ることから、正当事由を肯定できるかどうか微妙な事案でありました。

そのため、弁護士受任後も、立退料の調整が難航し、話し合いで解決することは困難となったため、裁判所の手続を利用して立ち退きを求めることとしました。

双方、土地利用の必要性に関する資料を出し尽くした結果、裁判所としては、土地利用の必要性については優劣をつけがたいとの心証でした。

その上で、裁判所は、立退料次第では正当事由を肯定できるとの心証を明らかにし、Bさんが失う借地権価格と引越し費用相当額を基準に立退料を算定してはどうかと和解勧試をしました。

AさんとBさんは、それぞれ自身の金額の正当性を裏付ける資料を提出して、借地権価格の算定方法を詰めていき、最終的には、当該借地権の価格と移転費用を加えた1000万円の立退料を、AさんがBさんに支払うことで和解により解決しました。

 

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