介護事故で骨折したときの損害賠償請求方法を弁護士が解説!

2022年05月12日

介護事故で骨折したときの損害賠償請求方法を弁護士が解説!

  • 介護施設でお世話になっている親が転倒して骨折してしまった
  • 介護施設での骨折事故の責任は誰が負うのか
  • 介護施設での骨折事故では損害賠償の請求は可能なのか

介護施設において、利用者の転倒・転落による骨折は少なくありません。

高齢者は骨や筋力、反射神経が衰えていることが多いため、とっさの反応が難しくなります。一度でも骨折により身体機能を損なうと、その後は寝たきりや亡くなるケースなど重大な結果が生じる可能性が高くなります。

このような場合、介護施設に責任追及はできるのか、損害賠償請求は可能なのかが問題となります。

そこで今回は介護事故に詳しい弁護士が、介護事故による骨折での初動・請求できる可能性がある費用・介護事故による骨折での損害賠償請求方法を解説します。

この記事を監修したのは

南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

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介護事故による骨折では初動が重要

介護事故による骨折では初動が重要です。以下、3つのポイントから解説します。

  • 介護施設から詳しい説明を受ける
  • 損害賠償請求を検討する
  • 必ずしも介護施設側が責任を負うわけではない

1つずつ、見ていきましょう。

介護施設から詳しい説明を受ける

介護事故による骨折で重要な初動の1つ目は、介護施設から詳しい説明を受けることです。

介護施設において利用者が骨折をしてしまった場合、何よりも利用者あるいはその家族が事故の状況を把握し介護施設より事故の経緯や原因を充分に説明してもらうことが重要です。

介護施設が介護保険を利用して介護サービスを提供するには、都道府県や市町村など行政から「指定」を受けなければなりません(介護保険法70条1項)。介護サービスを提供中に事故が発生した場合には、介護施設は「介護事故報告書」を作成して市町村あるいは都道府県に報告する義務があります。

介護施設から説明を受ける際には、この「介護事故報告書」の開示を求め、具体的にどのような状況で事故が起きたのか・事故発生時の時間・場所・介護の態様・事故防止の対策の有無、職員の介助の態様など詳細な情報を聴き取ることが重要です。その際には介護施設の説明の内容を録音し記録を残しておくことをおすすめします。

介護施設によっては、損害賠償や行政指導を免れるために、施設側が介護事故を隠ぺいする可能性があります。こうした事態に備えるためにも、事故の状況がわかる現場の写真や目撃証人の証言を記録するなど客観的な証拠をできるだけ多く集めておくようにしましょう。

損害賠償請求を検討する

介護事故による骨折で重要な初動の2つ目は、損害賠償請求を検討することです。

介護事故において、

介護施設が追うべき法的責任には不法行為責任契約上の安全配慮義務違反があります。(民法709条、民法715条、民法714条1項、民法717条、民法415条1項)

いずれにおいても責任の有無を判断するにあたっては、「予見可能性」と「結果回避可能性」の有無により決められます。この予見可能性と結果回避可能性が認められたときに、介護施設は介護事故の賠償責任を負うことになります。

「予見可能性」とは、施設側で事故が発生することを予見することができたことをいいます。たとえば、利用者に筋力の低下があった場合、また過去にも転倒したことがあった場合など、施設側がこれらの情報をすでに把握していたようなときは、転倒の予見があったといえるでしょう。

また「結果回避可能性」とは、施設側が事故の発生を予見できたのに、それを回避するための適切な措置を怠った場合をいいます。たとえば、転倒の危険があるのに付き添いをせずに利用者を1人でトイレに行かせた、見回りもせずに利用者を放置していたような場合には、施設側に結果回避義務違反が認められるでしょう。

「予見可能性」「結果回避性」の判断には、利用者の状態や過去の転倒の有無、事故現場の状況などを具体的に検討する必要があります。その判断材料ともなる介護サービス記録など施設が保管・管理している資料等の提出も必要になりますが、場合によってはこうした記録の提出に応じてくれず、当事者間でもめることもあります。

弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

必ずしも介護施設側が責任を負うわけではない

介護事故による骨折で重要なことは、必ずしも介護施設側が責任を負うわけではない、ということです。

介護施設にはサービスを提供する際に「安全配慮義務」が課されますが、それは常に施設の職員が近くで介助をしなければならない、というわけではありません。利用者が介護サービスを利用する目的の中には、心身の機能を維持することにあり、できるだけ自力で生活することが重要になるからです。

そのため、施設側で利用者が通常では予想できない行動をとり、避けられない事故が発生したような場合には損害賠償請求は難しくなります。たとえば、利用者はそれまでも歩行器を使って施設内を移動していたのに、突然仰向けの状態で転倒して骨折したような場合です。

このような場合、施設側に安全配慮義務はあるものの、利用者の歩行能力やそれまで後方に転倒することなどがなかったのであれば、安全配慮義務違反は認められにくいでしょう。

介護事故での骨折で請求できる可能性がある費用

介護事故での骨折で施設側に請求できる可能性がある費用は、以下の4つです。

  • 治療に関連する費用
  • 介護にともなう休業損害
  • 逸失利益
  • 精神的苦痛に対する慰謝料

1つずつ、見ていきましょう。

治療に関連する費用

介護事故での骨折で請求できる可能性がある費用の1つ目は、治療に関連する費用です。

治療に関連する費用には、

  1. 治療費
  2. 通院のための交通費
  3. 入院雑費
  4. 付添看護費があります。

治療費とは、骨折の治療をするために必要となる費用です。レントゲンやギプス、あるいは手術をするような場合にかかる費用です。処方箋なども含まれます。また針灸マッサージや温泉治療なども請求が可能です。さらに入院中の特別室使用料も治療費に含まれるとした判例があります。

通院のための交通費は、骨折の治療を行うために通院することで生じる費用です。通常はタクシーによる通院交通費や通院のためのガソリン代、宿泊代や付添人の交通費も含まれます。その都度、領収書を残しておくことが必要です。

入院雑費とは、入院中に必要となる日用雑貨や通信費です。病院によっては指定の寝巻きの利用を求める場合もあり、これらも入院雑費に含めることができます。

付添看護費は、入院や通院に付添が必要な場合に生じる付添人に支払われる費用です。ヘルパーなどの職業付添人はもちろんのこと、近親者でも必要かつ相当な限度の範囲で看護費が認められます。

介護にともなう休業損害

介護事故での骨折で請求できる可能性がある費用の2つ目は、介護にともなう休業損害です。

介護にともなう休業損害は、利用者が骨折により近親者の付添看護が必要となった場合、その近親者が仕事ができなくなって生じる損害をいいます。

この場合、付添看護費とは別に休業損害を請求できますが、休業損害の補償額の計算が複雑であり専門的な判断が必要となるので弁護士へ相談することをおすすめします。

逸失利益

介護事故での骨折で請求できる可能性がある費用の3つ目は、逸失利益です。

逸失利益には、

  1. 後遺障害逸失利益
  2. 死亡逸失利益があります。

後遺障害逸失利益とは、骨折により後遺障害が生じたことが原因で、将来得ることの出来た利益が得られなくなった損害です。死亡逸失利益とは、骨折が原因で死亡したために、将来得られるはずであった収入が得られなくなった損害をいいます。

後遺障害逸失利益については、介護事故の場合、利用者は通常は就労していないため、骨折によって給料を得られない、または後遺障害が残ったために将来の収入が得られなくなるということはないので原則として問題になりません。

問題になるのは、骨折が原因で利用者が死亡してしまった場合です。このような場合、得られたはずの年金や恩給が支給されなくなったので、その分の年金を逸失利益として請求することができます。

その場合には受給年金額を基礎収入として、平均余命年齢までに得られるはずであった年金収入を死亡逸失利益として計算します。ただし、死亡しなければ生活費がかかるところ、死亡したためこの生活費の支出がなくなるわけですから、通常は年金収入の3割程度しか請求できません。

さらに、年金や恩給にも種類があり、基礎収入にあたるものとあたらないものがあります。年金の種類によっては複雑な計算をしなければならないことが多いので、詳しくは専門家に問い合わせることをおすすめします。

精神的苦痛に対する慰謝料

介護事故での骨折で請求できる可能性がある費用の4つ目は、精神的苦痛に対する慰謝料です。

慰謝料とは、利用者の骨折による精神的苦痛に対する賠償金です。

骨折事故を原因とする慰謝料には、

  1. 入通院による慰謝料
  2. 後遺障害による慰謝料
  3. 死亡による慰謝料の3つがあります。

入通院による慰謝料は、骨折による痛みなどの苦痛のみならず、入院または通院したときの面倒や生活上の不便により被った苦痛に対する賠償金です。入通院の期間に応じて賠償額が決まります。

後遺障害による慰謝料は、骨折によって後遺障害が残った場合の精神的損害に対する賠償金です。後遺障害と認められるには、骨折前に比べて相当程度の身体能力または精神能力の低下があり、かつ、それが医学的にも認められることが必要になります。そのため、後遺障害の程度により、賠償額が異なります。

死亡による慰謝料は、利用者が骨折により死亡した場合に生じた精神的苦痛に対する賠償金です。利用者が死亡したときの年齢や骨折前の健康状態にもより賠償額が異なります。利用者の家族も個別に慰謝料を請求することが可能です。

介護事故による骨折での損害賠償請求方法

介護事故による骨折での損害賠償請求方法を紹介します。実際の請求の仕方・おすすめの方法を紹介します。請求の方法は、以下の3つです。

  • 示談交渉
  • 調停
  • 裁判

1つずつ、見ていきましょう。

示談交渉

請求の方法の1つ目は、示談交渉です。

示談交渉とは、トラブルの解決を目的とした当事者による話し合いのことをいいます。損害賠償請求は、被害者が加害者に実際に被った損害の賠償を請求するものですが、その金額は示談交渉あるいは民事裁判で決められます。

裁判を起こす前に当事者の示談交渉で決定する場合は、双方が合意できた金額が賠償額になります。

弁護士を通じて示談交渉をする場合は、内容証明郵便による通知書で介護施設に損害賠償をする旨の意思表示をしてから、交渉が始まります。裁判は訴訟費用や時間がかかるなど、当事者双方に負担がかかる場合が少なくありません。

訴訟を起こす前に示談交渉で解決したほうが、当事者にも負担が少なく済むことが多いのでできるだけ示談交渉で解決することをおすすめします。

示談交渉により賠償額が決定されれば、示談書にその旨を記載し、和解して賠償請求は終了します。

当事者の意見がまとまらずに決裂してしまった場合、あるいは最初から示談交渉を行わない場合には、民事裁判を経て損害賠償額が決定されます。

調停

請求の方法の2つ目は、調停です。

調停とは、当事者の間に裁判所で選ばれた調停委員が入り、話合いによりお互いが合意することで紛争を解決する方法です。訴訟ではなく、話合いによる円満なトラブル解決を図るための裁判所の手続きです。訴訟に比べて手続きが簡易で費用が安く早く解決ができる、また非公開であるのでプライバシーが守られるといったメリットがあります。

以下、調停の流れをおおまかにまとめました。

申立 介護施設の住所に最も近い簡易裁判所に申立を行います。
申立には、賠償金額に応じた手数料を支払います。
調停期日の指定 申立が受付けられると、簡易裁判所の裁判官と調停委員による調停委員会が発足します。
当事者を呼び出す期日が決められます。
当事者双方の呼び出し 当事者に呼出状が送られます。
介護施設側には、調停の申立書のコピーも送付されます。
調停期日 各当事者は、交互に調停室に入り自分の主張を述べます。
調停委員は、当事者双方の主張を聞いた後、提出された資料などを調査して争点を整理します。
調停委員は、双方の主張を相手に伝えて譲歩を試みます。
裁判官は、双方の主張と譲歩の状況を踏まえて、最終的な解決案を提案します。
通常は、1件の事案につき2~3回の調停期日が行われます。
調停の成立・不成立 裁判官の解決案に双方が同意すれば調停は成立し、紛争は解決となります。
このときの合意内容は調停調書に記載されます。
この調整調書は判決と同等の効力を持つので、相手が調停の内容を履行しない場合は強制執行ができます。
反対に、この解決案に同意できなければ調停は不成立となり、訴訟などに移行します。

 

裁判

請求の方法の3つ目は、裁判です。

示談交渉がまとまらなかったり調停が不成立になった場合は、裁判を起こすことにより損害賠償の請求が可能です。

以下、裁判の流れをおおまかにまとめました。

訴状の提出

原告またはその代理人である弁護士が、裁判所に訴状や証拠などの必要書類を提出します。

訴状受付

訴状の送付

裁判所は、書類に不備がないことを確認し問題がなければ訴状を受理します。

裁判所は、その後被告に訴状などの書類を送付します。

訴状の送達

裁判所から被告に訴状が送達され、被告が訴状を受け取ります。

口頭弁論期日の指定

呼び出し

裁判所は、第1回の口頭弁論期日を指定します。

その後、裁判所は原告と被告を指定の期日に呼び出します。

原告は、必要であれば証拠や証人の準備をします。

答弁書の提出

送付

受領

被告は、期日までに原告の主張に対する認否などを答弁書に記載してこれを裁判所に提出します。

裁判所は、被告が提出した答弁書を原告に送付します。

原告は、この答弁書を受領します。

審理

口頭弁論 裁判所は、原告の訴状の内容を確認し、被告の答弁書を確認します。

弁論準備 当事者の主張の内容を確認し争点を整理します。

証人尋問 事件の当事者や関係者が法廷で証言をします。この供述内容が証拠となります。

和解   話合いで合意が成立すれば、判決の前に和解です。

判決   裁判所は、法律に照らして原告と被告の双方の主張のいずれかを正当とする判決を下します。   

控訴

第一審の判決内容に不服がある場合、より上級の裁判所で改めて審理してもらうように不服の申立をします。

上告

控訴審の判決内容にも不服がある場合には、さらに上級の裁判所に対して改めて審理してもらうように不服の申立ができます。

 

交渉の長期化・難航を防ぐには弁護士への相談がおすすめ

損害賠償を請求する場合は、時間もかかり双方の言い分が食い違うために交渉が難航することが予想されます。また証拠の保全にもどのような内容の証拠が裁判に有利になるのか専門的な知識を要します。

さらに介護施設側が誠意を見せないような場合には、示談を行わずに最初から直接裁判をしたほうがよい場合もあります。利用者あるいはその家族が希望する結果を得るためにも紛争解決の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は、介護事故による骨折での初動・請求できる可能性がある費用・介護事故による骨折での損害賠償請求方法を紹介しました。

介護施設での利用者の転倒・骨折事故は、最も生じやすい事故です。

しかし施設内の事故は目撃者が少なく、また利用者が高齢で判断能力が低下している場合が多いので、施設側に損害賠償責任があることを立証するのが難しくなります。

介護施設で利用者が骨折して損害賠償請求を考えている場合は、まずは専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

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この記事を監修したのは

南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

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