2020年01月08日
1 はじめに
「確たる証拠はつかめなかったものの、慰謝料請求書を作成して内容証明郵便で送ったところ、請求相手が不貞行為を否定してきたが、どうすればよいか?」
「夫は不貞行為を認めているけど、不倫相手は不貞行為を否定している場合に不倫慰謝料請求はできるのか?」
といったご相談はよくあります。
そこで今回は、配偶者が不倫をした場合の慰謝料請求について、相手が不貞行為を認めない場合についてご説明いたします。
2 不貞配偶者又は不倫相手の一方が不倫・浮気を認めない場合
不倫をした当事者のうち一方は認めているのに、他方は認めないという場合があります。このような場合としては、不倫をした配偶者は認めているけれども、不倫相手は認めていないというケースが多いかと思います。
不倫をした配偶者の証言だけでも、不貞行為を証明することは可能ですが、不貞行為を証明できるかどうかは、不倫をした配偶者がどの程度明確に不貞行為を認めているのかに依ります。
例えば、「○○と不倫したでしょ!」という問いに対して、「うん、ごめん。」と答えただけであれば、後に不貞行為の証明に失敗する可能性があります。
なぜなら、この程度の「認めた」であれば、「本当は不倫してないけど、あの時は妻があまりに怒って詰めてくるので、その場を収めるために認めた」、「確かに一緒に食事には行ったけど、性交渉はない」などと、後日、配偶者が不貞行為を否定してくる可能性があるからです。
他方、不倫をした配偶者が、いつ、どこで、何をしたということを詳細に「認めている」場合には、そのような証言の信用性は高く、不貞行為の証明は可能です。
そのように詳細な証言は、録音するか直筆で書面に記載してもらい証拠化しましょう。
3 不貞配偶者と不貞相手の両方が不貞行為を認めない場合
不倫をした配偶者と不倫相手のいずれもが不倫を認めない場合があります。この場合に不倫慰謝料請求が認められるかどうかは、不貞行為を証明できる証拠があるかどうかにかかってきます。
⑴ 不貞行為を証明できる証拠がある場合
ラブホテルへの出入りなど探偵による浮気調査や明らかに肉体関係をもっていることがわかる内容のメールがあれば、それを突き付けることで認める可能性は高いでしょう。
それでも認めない場合には、裁判をする必要があります。そのような確たる証拠があれば裁判所は不貞行為を認定してくれますし、不貞行為を認めない態度は慰謝料を増額させる方向で考慮されます。裁判官によっては、そのような態度を踏まえ、かなり高額の慰謝料額を認める場合があります。
⑵ 不貞行為の証明が難しい場合
メールのやり取りから、不倫をした配偶者と不倫相手がお互いに好意をもっており、デートもしていることはわかるけれども、肉体関係を示すやり取りがないといった場合には、不貞行為を証明することはできません。
このような場合は、少なくともいずれかが不貞行為を認めない限り、慰謝料請求は認められません。
一度、不貞を疑われた後は警戒されますので証拠を得るハードルは上がりますが、しばらく時間を置いて探偵に依頼すると、不貞行為の証拠を得られることがあります。
なお、「愛してる」「大好きだよ」などの愛情表現を含む内容のメールがある場合、肉体関係こそ認定できないものの、このような表現自体が婚姻生活の平穏を害するとして慰謝料請求を認めた裁判例もありますが、慰謝料額は低額にとどまります。
また、慰謝料請求はできなくても、せめて離婚をしたいというご相談もありますが、不倫の証拠も証言もない場合には、その他に夫婦関係を破綻させるような事情が夫婦間になければ、不倫をした配偶者が同意しない限りは、離婚請求が認められないという厳しい状況になります。
4 不倫相手から既婚者とは知らなかったと反論された場合
内容証明郵便で慰謝料請求書を送ったところ、不倫相手から、確かに肉体関係はもったけれど既婚者とは知らなかったと反論されるケースがしばしばあります。
既婚者にもかかわらず、インターネットを通じて知り合った相手と、独身であると偽って不倫関係をもっているケースはよくありますので、既婚者とは本当に知らなかったという場合はあります。
他方、既婚者であると本当は知っていたのに、責任を逃れるために既婚者と知らなかったと嘘をつく不倫相手もいます。このように嘘をついている場合に不倫慰謝料請求が認められるかどうかは、既婚者であることを不倫相手に明らかにしていたと配偶者が認めているかどうかや、既婚者と知っていることがわかるメールの内容があるかに依ります。
5 最後に
以上、配偶者や浮気相手が不貞行為を認めない場合の不倫慰謝料請求についてご説明しました。
不貞行為を証明する十分な証拠がある場合には、裁判という手間が発生する可能性はあるものの、不倫慰謝料請求が認められる可能性は高いでしょう。
他方、裁判で不貞行為を認定してもらえるかどうかは微妙だけれども状況証拠からして不貞行為があるのはほぼ間違いないと思われるケースでは、まずは、配偶者や浮気相手に不貞行為を認めてもらうことが非常に重要です。
弁護士が相手と話すことで証言をうまく引き出せる可能性がありますので、不貞行為を不貞されており、十分な証拠もなく、手詰まりという場合には不倫に強い弁護士に一度ご相談ください。
この記事を書いたのは
- 代表弁護士春田 藤麿
- 愛知県弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
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