老朽化したアパートの建て替えに伴う立ち退き問題を専門弁護士が解説

最終更新日: 2023年12月03日

老朽化したアパートの建て替えに伴う立ち退き問題を専門弁護士が解説

  • 老朽化したアパートを建て替えたい
  • どのようにして立ち退きを進めるのか
  • 立ち退きを請求されたがどうしたらいいか

老朽化したアパートは全国に多数存在します。大地震がいつ起きてもおかしくないと言われているため、老朽化したアパートの建て替えは喫緊の課題ですが、建て替えには現入居者が退去する必要があります。

今回は、老朽化したアパートの建て替えに伴う立ち退き問題について専門弁護士が解説します。大家側だけでなく、入居者のためにもなる内容となっておりますのでぜひご一読ください。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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老朽化したアパートの建て替えに伴う立ち退き問題

老朽化したアパートの建て替えに伴う立ち退き問題について以下3点を説明します。

  • 建物の老朽化は正当事由
  • 更新しない事前通知が必要
  • 立ち退き料とその相場

建物の老朽化は正当事由

1つ目は、建物の老朽化は借地借家法の正当事由になることです。

アパートの老朽化により建て替えを行う場合、賃貸借契約の更新をせずに賃貸借契約を終了させて入居者に立ち退きをしてもらう必要があります。

そのように賃貸借契約を終了させるためには借地借家法28条が定める更新拒絶のための正当事由が必要です。裁判例においても建物の老朽化は正当事由として考慮されているケースは多くあります。

ただし、老朽化の1点だけをもって正当事由が認められるケースは少ないことに気をつけなければなりません。大半の事例では老朽化の事情に加えて、相応の立ち退き料の支払いの事情によって正当事由が行程されています。

更新しない事前通知が必要

2点目は、更新しないことの事前通知が必要だという点です。

前述のとおり老朽化したアパートの建て替えのためには賃借人との契約を更新せずに終了させる必要があります。その手続きとして、借地借家法26条は事前通知の手続きを定めています。賃貸借契約の更新拒絶をしたい場合には、賃貸契約期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃借人に対して契約を更新しない旨の通知する必要があります。万が一その通知期間を過ぎてしまうと、契約更新となってしまいます。

もっとも、大家と入居者が納得の上であれば、賃貸借契約はいつでも合意解約することはできます。

立ち退き料とその相場

3点目は、立ち退き料とその相場です。

先ほど説明しましたとおり、アパートの立ち退き請求において、老朽化だけでは賃貸借契約の更新拒絶の正当事由を満たすことは難しいです。

この正当事由とは、建て替えの必要性、賃借人の物件使用の必要性、従前の賃貸借の経緯、立ち退き料の提供などの事情を考慮して判断されます。多くの事例では老朽化の事情だけでは正当事由が認められず、立ち退き料の支払いによって正当事由が認められています。

この立ち退き料の金額をどのように決まるのかについては法律には定められていません。裁判例では、「引越し費用+新居の契約金(仲介手数料と礼金)+新居と現家賃の差額賃料の1年分から3年分」という算定方法が示されたものもありました。とはいえ、いかなるケースでもこの計算式で一律に立ち退き料の金額が決定するものではありませんので、あくまで参考程度に考慮すべきでしょう。

実際のアパートの立ち退き料の相場ですが、100万円から200万円ほどが相場といえます。ただ、あくまでも相場ですから300万円などこれ以上になることもあれば、80万円などこれ以下になることもあります。

老朽化したアパートの建て替えと立ち退き交渉の進め方

老朽化したアパートの建て替えのための立ち退き交渉をどのようにして進めるかについて以下3点の説明をします。

  • 正当事由の説明と立ち退き料の提示
  • 転居のサポート
  • 余裕をもった退去時期の提示

正当事由の説明と立ち退き料の提示

1点は、立ち退きの正当事由の説明と立ち退き料の提示です。

先ほどの説明のとおり、契約期間満了の6か月前から1年前に更新しない旨の通知をする必要があります。その通知の中で老朽化によっていかにアパートの建て替えが必要であるのか丁寧に説明します。建て替えをしなければ入居者の安全を守れないことも説明した方がよいでしょう。

この通知の中で立ち退き料の提示をするかどうかは賃貸人の考え方によります。といいますのも、立ち退き料無しで退去合意をとれる賃借人も一定数います。

そのため、できる限り立ち退き予算を抑えたい場合には立ち退き料の要求があった場合にだけ立ち退き料の提示をしていくという進め方もあり得ます。ズルいと思われるかもしれませんが、立ち退き料の予算には限りがありますから、このような進め方も一つではあります。

転居のサポート

2点目は、転居のサポートです。

老朽化とはいえ大家都合で引越しを強いられるのは賃借人にとってストレス、負担です。そのため、転居のサポート、つまり転居先の物件探しや引っ越し業者の手配について大家側でサポートすると賃借人にとってはとても助かります。そのような大家側の姿勢を見て、賃借人が立ち退きに協力的になることを期待できます。

余裕をもった退去時期の提示

3点目は、余裕をもった退去時期の提示です。

2,3か月後の立ち退きを求める通知がなされるケースがあります。このような通知は、借地借家法の通知期間を遵守していないことはもちろん、あまりに早急な立ち退きに入居者は困惑し、反発するでしょう。

立ち退きに応じるにしても、納得のできる場所に転居したいと考えるのは当然です。そのためにはそれなりの時間が必要です。少なくとも退去時期の半年以上前に通知をした方が良いでしょう。

アパート建て替えの立ち退きが難航した場合

アパートの建て替えによる立ち退きが上手く進まないケースは以下の2つです。

  • 入居者が了承しない場合
  • 入居者が退去しない場合

入居者が了承しない

1つ目は、入居者が立ち退きに了承しない場合です。

この場合はやはり何故立ち退きに反対するのかその理由を丁寧に確認することが重要です。漠然とした不安が理由であることもありますし、良い転居先が見つからないことが理由かもしれません。

アパートの場合、大家との個人的感情の対立が原因のケースもありますので、そのような場合は第三者である弁護士に交渉を委ねた方がスムーズに進む可能性が高まります。

入居者が退去しない

2つ目は、立ち退きの合意を既にしているのに入居者が退去しない場合です。既に賃貸借契約が終了しているのであれば入居者は不法占拠していることになります。

不法占拠ですから裁判をすれば強制的に立ち退きをさせることはできます。しかし、裁判をすると時間も費用もかかりますから、まずは弁護士を入れて話し合いで自主的に退去するよう説得していくのが良いでしょう。

まとめ

今回は、老朽化したアパートの建て替えに伴う立ち退き問題について解説しました。

大家側でも入居者側でも立ち退き問題はその進め方や交渉の仕方に専門的な知識と経験が求められます。アパートの立ち退き問題をスムーズに解決するためには、立ち退き問題の専門弁護士にまずはご相談ください。

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