老朽化したアパートを建て替えたい!スムーズに進めるためのポイントを解説
最終更新日: 2022年08月23日
- 老朽化したアパートにはどのようなリスクがあるのか
- 老朽化したアパートを建て替えるときの立ち退き交渉のポイントを整理したい
- 老朽化したアパートを建て替えるときに立ち退き交渉が難航した場合はどうすればいいか
老朽化したアパートにはあらゆるリスクが伴います。また、建て替えには多くの手間がかかり、住民とのやり取りも頻繁に発生するため、時間がかかるものです。そのため、建て替えを検討するときは早めに手続きを進めていきたいところです。
そこで今回は、老朽化したアパートの建て替えに関する問題を数多く解決に導いてきた弁護士が、老朽化したアパートのリスクと対策、建て替えに伴い立ち退きが発生するときの立ち退き交渉のポイントなどを解説します。
老朽化したアパートの建て替えは重要なリスク対策
老朽化したアパートの扱い方は、多くの大家を悩ませるポイントです。ここでは、老朽化したアパートで想定されるリスクと老朽化に伴う問題への対策を解説します。
老朽化したアパートで想定されるリスク
老朽化したアパートで想定されるリスクとして、以下の3つを紹介します。
- 設備や配管の劣化に伴う不具合
- 耐震強度の不足
- 経年による機能的劣化・社会的劣化
それでは、1つずつ解説します。
設備や配管の劣化に伴う不具合
老朽化したアパートで想定されるリスクの1つ目は、設備や配管の劣化に伴う不具合です。
たとえば、老朽化したアパートではコンクリートの劣化が多く見られるようになります。コンクリートの劣化により、ひび割れ・剥がれ・浮き、それに伴う漏水などが発生します。これらの症状が発生しているのにもかかわらず、特にメンテナンスを施さずに放置していると、重大な事故につながる可能性があります。
また、各配管設備の不具合も頻繫に見られるようになっていきます。配管の金属が錆びて腐食すると、排水管の詰まりや漏水などが発生する恐れがあります。さらに、階段や設備において鉄が経年劣化によって腐食が進むと、破損する危険性が高まります。
耐震強度の不足
老朽化したアパートで想定されるリスクの2つ目は、耐震強度の不足です。
特に注意しなければならないのは、旧建築基準法が適用されるアパートです。1981年6月1日以前の建物に適用される旧建築基準法での耐震基準は、震度5強程度の地震で倒壊しないことが基準となっています。一方、1981年6月1日以降の建物に適用されている現在の建築基準法の耐震基準では、震度6強〜7程度の地震で倒壊しないことが基準となっています。
普段の生活においては、旧建築基準法が適用されるアパートでも全く問題はありません。ただし、日本は地震が多い国で、「南海トラフ地震については、マグニチュード8~9クラスの地震の30年以内の発生確率が70~80%(2020年1月24日時点)」とする国土交通省の発表もあります。旧建築基準法が適用される建物では、巨大地震が発生したときには倒壊のリスクが大きいことは確かです。
経年による機能的劣化・社会的劣化
老朽化したアパートで想定されるリスクの3つ目は、経年による機能的劣化・社会的劣化です。
機能的劣化とは、新築時には最新の設備であったものの、技術の進歩で新たな設備が誕生したことで使いにくさが目立つようになり、価値が下がることです。キッチン・トイレ・浴室などの水回りの設備では、特に顕著に機能的劣化が現れるとされています。
また、社会的劣化とは、住民のライフスタイルや周辺環境、社会的ニーズの変化により、アパートが住民のニーズに応えられなくなって価値が下がることです。都市部で自動車を所有する人が減ったために、アパートにおいて駐車場の需要が減少したことが一例です。
建物の老朽化に伴う問題への対策
ここでは、建物の老朽化に伴う問題への対策を2つ紹介します。
- 建て替え
- 改修工事
それでは、1つずつ解説します。
建て替え
建物の老朽化に伴う問題への対策の1つ目は、建て替えです。
建て替え工事は改修工事よりもコストがかかります。また、住民の立ち退きが必要になることにも注意が必要です。しかし、建物の規模を拡大して、家賃収入をアップさせた方がメリットが大きい場合や、旧建築基準法が適用されているアパートについては建て替え工事を検討した方が良いでしょう。
なお、建て替え費用を確保できないときには、不動産会社への建物売却を検討することも手段です。
改修工事
建物の老朽化に伴う問題への対策の2つ目は、改修工事です。
改修工事は建て替えより少ないコストで実施できるため、改修工事だけで老朽化に対応できるときには、改修工事を検討すべきでしょう。
たとえば、塗装を塗り替えると、塗装が紫外線や風雨から建物を守ってくれる効果を回復させることができます。また、設備のリニューアルを行うことで、設備の物理的劣化だけでなく、機能的劣化や社会的劣化も解消できます。さらに、リフォーム・リノベーション工事といった大規模な改修を行えば、配線・配管も含めて大々的にリニューアルできます。
老朽化したアパートで建て替えを行うには住民の立ち退きが必要
老朽化したアパートで建て替えを行うには、住民の立ち退きが必要です。
住民に立ち退きを要求するには、住民が納得できる理由(正当事由)が必要になります。借地借家法の第28条によると、老朽化も立ち退きの正当事由と解釈できるため、大家は住民に対して建て替えを理由に立ち退きを要求することが可能です。
ただし、住民に対して立ち退きを要求するときには、立ち退き前の事前通知と立ち退き料が必要になります。それぞれ以下に解説します。
立ち退き前には事前通知が必要
大家が住民に立ち退きを要求するには、契約満了の1年前から6か月前までに契約を更新しない旨を事前に通知しなければなりません。更新契約をしないまま契約の期間が満了した場合、賃貸借契約は法定更新になり、従来の契約と同じ条件で更新したものとされてしまいます。
立ち退きには住民への立ち退き料も必要
法律で決められているわけではありませんが、大家の都合によって契約更新を行わないときは、住民に立ち退き料を支払うことが通例です。立ち退き料の金額も法律で決まっているわけではありません。
この立ち退き料には、新居の費用・引越し費用などが含まれます。また、急を要する立ち退きをお願いする場合は、交渉材料としてさらに金額が上乗せされることも珍しくありません。
老朽化したアパートでの建て替えにおいて立ち退き交渉を行うときのポイント
ここでは、老朽化したアパートでの建て替えにおいて立ち退き交渉を行うときのポイントを3つ紹介します。
- 立ち退き要求を行う理由を十分に住民に説明する
- 住民の引越し先探しをサポートする
- 立ち退き期間を十分に確保
それでは、1つずつ解説します。
立ち退き要求を行う理由を十分に住民に説明する
ポイントの1つ目は、立ち退き要求を行う理由を十分に住民に説明することです。
日本の法律では、賃貸借契約は住民が有利になっています。そのため、住民の納得が得られないにもかかわらず大家の意向で立ち退きを要求することはできません。
大家が住民に立ち退きを要求するには正当事由が必要になります。また、正当事由があっても、説明の仕方が悪いと住民から不満が出てトラブルになることも想定されます。立ち退きを要求するときには、住民に対して、なぜ立ち退きが必要なのか、なぜ建て替えを行う必要があるのか、建て替えないとどのようなリスクがあるのかなどについて丁寧に説明をして理解を得ることが重要です。
住民の引越し先探しをサポートする
ポイントの2つ目は、住民の引越し先探しをサポートすることです。
住民に対するフォロー体制を手厚く整えておくことで、立ち退き交渉がよりスムーズに進むはずです。大家の都合で住民に立ち退きをお願いすることになるため、住民の引越し先探しをサポートしましょう。
不動産会社と連携をとり、住民が今のアパートと同じような条件で住める引越し先を探せるよう手を回すことで、住民が物件を探す手間や負担を最小限に抑えます。
立ち退き期間を十分に確保
ポイントの3つ目は、立ち退き期間を十分に確保することです。
急な立ち退き交渉はトラブルのもとになります。多めに立ち退き料を支払うと伝えても、住民にもさまざまな事情があるため、短い期間での立ち退きに応じてくれるとは限りません。
そのため、よほどの事情がない限り、立ち退き期間は余裕をもって確保するようにしましょう。最低でも立ち退きの6か月前までには通知を行わなければなりませんが、建て替えが決まったらより早い段階で通知しておくに越したことはありません。1年程度の長い期間があれば、住民もゆとりを持って新居を探すことができます。
老朽化したアパートでの建て替えにおいて立ち退き交渉が難航したときに対処する方法
老朽化したアパートの建て替えでは、住民がどうしても立ち退きに応じてくれないこともあります。しかし、住民全員が退去しないと建て替えは進められません。ここでは、立ち退き交渉が難航したときに対処する方法を紹介します。
立ち退き料を上乗せしてでも早期の立ち退きを目指す
立ち退きに応じてもらえないときは、立ち退き料を上乗せしてでも早期の立ち退きを目指しましょう。
立ち退き交渉が長引いて期限内に立ち退きしてもらえなければ、訴訟・強制執行をしなければ退去を実現できなくなります。交渉の中で立ち退き料をいくらか上乗せして支払うことを伝え、そのうえでできるだけ早い段階で退去してもらいます。
ただし、すでに立ち退き料を支払った上で退去してもらった、もしくは退去が決まっている別の住民もいるでしょう。立ち退き料の上乗せは、公平性を欠いて不平不満やトラブルのもとにもなりかねません。立ち退き料を要求する住民との交渉は後回しにするなどの対策を取ることが大切です。
住民が居座ったときの対処方法
立ち退き料を上乗せしても立ち退き交渉がうまくいかず、住民に居座られてしまうケースもあります。この場合は法的手続きを取る必要があります。以下に、法的手続きを取るときの流れを紹介します。
契約を更新しない旨を通知
住民が立ち退きに応じないとき、期限の6か月前までに契約を更新しない旨を通知しないと従来の契約と同じ条件で更新したものとされてしまいます(法定更新)。そのため、老朽化に伴う建て替えを正当な事由として、期限の6か月前までには、住民に対して契約を更新しない旨を確実に通知しましょう。
裁判所に提訴
それでも住民が立ち退きに応じてくれないときは、専門家と相談したうえで正当事由の有無を判断します。正当事由がない状態で住民に立ち退きを要求することは不可能です。ただし、正当事由があっても、大家から住民を直接立ち退かせることはできません。交渉を重ねてもどうしても住民が退去してくれないときは、裁判所に提訴して退去を求める裁判を起こします。
提訴は管轄の裁判所で行います。管轄の裁判所とは、アパートのある住所を管轄する裁判所、または契約書に記載されている裁判所のことです。大家の自宅住所とアパートの管轄地域が異なるときには気をつけてください。
裁判・強制執行
退去を求める裁判は、裁判所に出廷して行われます。提訴の手続きを行った後、大家が原告として、居座り続けている住民が被告として裁判所に出廷します。このとき、被告が裁判所に出廷せず答弁書の提出もなければ、原告の主張が全面的に認められます。
裁判の結果、和解したときは和解調書が作成されます。また、裁判所によって判決が出たときは確定判決が作成され、強制執行が可能になります。ただし、強制執行を実行するには、裁判所に対して改めて強制執行の申立てを行わなければならないことも覚えておきましょう。
そして部屋の明渡し催告日から数えておおよそ1か月の期間をもって、強制執行を実行する断行日が決まります。断行日当日は、裁判所の執行官と荷物を運び出す業者が現地に入り、部屋から住民と荷物を外に出します。その後に鍵を交換して強制執行が完了します。なお、強制執行によって運び出された荷物は裁判所によって暫く保管されます。
老朽化したアパートの建て替えは弁護士に相談することでリスク回避
ここまで解説してきたように、老朽化したアパートの建て替えによる立ち退き交渉には、非常に多くの手間と時間を要します。また、立ち退き交渉が難航するケースも少なくなく、想定より建て替えの計画が進まないことも珍しくありません。
そのため、老朽化したアパートの建て替えにおいて法律上判断に迷う問題が発生したら、弁護士に相談するのがおすすめです。費用はかかりますが、弁護士へ依頼した方が早く確実にリスクを回避して問題解決できる可能性が高まることを考えると、結果的にはメリットの方が大きくなることでしょう。
まとめ
今回は、老朽化したアパートのリスクと対策、建て替えに伴い立ち退きが発生するときの立ち退き交渉を行うポイントなどを解説しました。
老朽化したアパートにはリスクが非常に多いため、建て替えや改修工事などの対策を早めに検討しておきたいところです。
特に、建て替えを行うときには住民への立ち退き交渉が必要で、立ち退き交渉が難航することも珍しくありません。スムーズに立ち退き交渉を済ませて建て替えを進めるためには、立ち退き問題を専門とする弁護士への相談・依頼を積極的に検討することをおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。