密漁の罰則や捕まった後の流れについて専門弁護士が解説!

最終更新日: 2024年01月31日

密漁の罰則や捕まった後の流れについて専門弁護士が解説!

近年密漁によって逮捕される方が増えています。釣りや海水浴等のレジャー客がレジャー感覚でアワビや等を捕って逮捕されるケースが後を絶ちません。

密漁は水産資源に多大な影響を与える行為ですから、政府も増え続ける密漁を取り締まるため、密漁の罰則を大幅に強化しました。罰則だけでなく、海上保安庁や警察による監視やパトロールも強化され、逮捕者が続出しています。

今回は、密漁の罰則が許可された経緯や、罰則の内容、逮捕された場合のその後の流れを弁護士が解説します。

刑事事件に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

密漁の罰則が強化された経緯

近年、密漁が増加傾向にあり、取締が強化されています。このように取締が強化される理由や、経緯についてまずは確認しておきましょう。

  • 漁業者以外による密漁が増加傾向にある
  • 密漁が反社会勢力の資金源となっている
  • 水産資源に深刻なダメージを与える
  • 釣りや磯遊び等での採捕も密漁

漁業者以外による密漁が増加傾向にある

水産庁のウェブサイトには密漁の発生状況が記載されています。

それによると、漁業者による密漁の検挙件数(海面)は、平成10年は約900件であったのが令和2年には198件と減少しているのに対し、漁業者以外による密漁の検挙件数(海面)は、平成10年は約200件であったのが、令和2年ではその5倍以上となる1128件と、漁業者以外による密漁が増加しています。

また、密漁件数の増加だけでなく、近年の密漁は、組織的に行われ被害が深刻化しています。

関連記事:水産庁

密漁が反社会勢力の資金源となっている

暴力団等の反社会勢力が密漁のターゲットとしているものの一つにナマコがあります。

ナマコは、天敵等から攻撃を受けると自分の内臓を吐き出す習性がありますが、吐き出した内臓は数か月で元通りになります。また、ナマコを真っ二つに切っても数か月で再生して2匹になることが知られており、ナマコは驚くべき再生能力を有しています。

そのため、古来よりナマコには薬用効果があると信じられ、中国では、ナマコはアワビやフカヒレ等と並ぶ高級食材として人気があり、漢方にも用いられ重宝されています。特に日本産ナマコは中国では高値で取引きされ「黒いダイヤ」と呼ばれることもあります。

このように、希少価値があり高く売れるナマコですが、海中での移動速度は毎分数センチと動きが遅く素人でも比較的容易に採捕できてしまいます。そのため、反社会勢力は、少ない労力で捕ることができて、なおかつ、高く売ることができるナマコを密漁の対象とし、資金源としているのです。

水産資源に深刻なダメージを与える

島国である日本は海に囲まれ、豊かな水産資源を有しています。

しかし、近年、日本の水産資源に大きな影響を与えると懸念されているものがあります。
一つは海洋生物の生態系に影響を及ぼす気候変動です。

そして、気候変動と並んで懸念されているのが乱獲です。

水産資源は有限ですから、誰でも、どのような魚でも、好きなだけ捕ることを許せば、たちまち水産資源は枯渇してしまうでしょう。そのため、水産資源をきちんと管理し、密漁を厳しく取り締まる必要があるのです。

釣りや磯遊び等での採捕も密漁

海に来たレジャー客がサザエやトコブシ等を密漁して逮捕された、というニュースが毎年のようにテレビや新聞で報道されています。

「釣りをしていたらたまたまタコが釣れたので自宅へ持って帰った」、「磯遊びをしていて偶然サザエを見つけたから捕まえた」「自分で食べる分には問題ないと思った」という弁解は残念ながら通用しません。

自分で食べるためであったとしても、捕ってはいけないものだとは知らなかったとしても逮捕される可能性があるのです。捕った物が1個だけだったとしても密漁になってしまいますから注意してください。

テレビでは、タレントがサザエ・トコブシ・ウニ等を捕って、その場で調理しておいしそうに食べる場面をよく見かけますが、これはテレビ局が特別な許可を得て撮影しているのであって、通常は禁止されている行為ですから、絶対にまねをしてはいけません。

刑事事件に強い弁護士による逮捕・不起訴・裁判の無料相談!

密漁の罰則の内容

次に、密漁の罰則についてです。近年、密漁対策のために罰則が強化されたり、処罰対象が拡大される法改正が行われました。以下、順番に見ていきましょう。

  • 特定水産動植物の採捕禁止違反の罪
  • 密漁品流通の罪
  • 漁業権侵害の罪
  • 漁業調整規則

特定水産動植物の採捕禁止違反の罪

近年の密漁は手口が悪質化し、組織的かつ広範囲で行われており、このような状況を踏まえ、平成30年に漁業法が改正され令和2年12月1日施行されました。

改正漁業法では、アワビ、ナマコ、シラスウナギは「特定水産動植物」に指定され、これらを取ることは厳しく禁止されています。これらは、比較的簡単に捕ることができ、しかも高く売れることから密漁の対象にされやすいため、特に厳しく取り締まる必要があるのです。

違反した場合は、3年以下の懲役又は3000万円以下の罰金が科されることになります。3000万円という罰金額は個人に対する罰金額としては最高額であり、極めて重い犯罪となっていますから、アワビやナマコを海で見かけても絶対に捕まえてはいけません。

なお、シラスウナギとはウナギの稚魚のことで、こちらも希少性が高く、「白いダイヤ」とも言われ高値で取引されています。シラスウナギについては、3年の猶予期間が設定されており、特定水産動植物として罰則の対象となるのは令和5年12月からですので注意してください。

密漁品流通の罪

密漁を減らすためには、密漁者だけでなく、密漁品を買う者も厳しく取り締まる必要があります。密漁品を高値で買う者がいなくならない限り、密漁がなくなることはないでしょう。

大麻や覚醒剤とは異なり、水産物自体は禁制品ではないため、一度流通に乗ってしまえば、それが適法に漁獲されたものなのか、密漁品なのかの区別ができなくなってしまいます。

そのため、改正漁業法では密漁品流通の罪が新設されました。

特定水産動植物の密漁品であることを知りながら、これを運搬、保管、取得、又は処分の媒介・あっせんをした者にも、厳しい罰則が科されることになります。

これは、特定水産動植物の密漁者と同じ重さの罰則です。つまり、3年以下の懲役又は3000万円以下の罰金が科されることになります。

漁業権侵害の罪

サザエ、ハマグリ、トコブシ等の貝類、ワカメ・コンブ等の海藻類、マダコ、イセエビ、ウニ等も捕ることが禁止されています。

これらは、漁業権の対象となっており、違反すると100万円以下の罰金が科されます。販売する目的であるか個人的な消費目的であるかを問いません。

漁業調整規則

都道府県ごとに定められている漁業調整規則があります。

漁業調整規則には、水産動植物を捕る際に使用しても良い道具や、採捕してよい魚介類の種類や大きさ等が定められています。

これに違反した場合にも刑罰が科されることになりますので、釣りや潮干狩り等で水産動植物を捕る場合には、各都道府県の漁業調整規則を確認してください。

刑事事件に強い弁護士が逮捕・不起訴・裁判を強力解決!

密漁で罰則を受ける場合の流れ

最後に密漁で逮捕され、その後に罰則を受けるまでの流れについて確認をしておきましょう。

逮捕・勾留

密漁で逮捕されてしまった場合、警察署に設置されている留置施設に留置され、取調べが行われます。

逮捕されてから48時間以内に検察庁へ事件が送致されます。警察は、検察庁への送致を行わないときは被疑者を釈放しなければなりません。

検察庁へ送致された場合には、検察官は、送致後24時間以内に勾留請求をするか否かを判断することになります。検察官が勾留請求しない場合は、被疑者を釈放しなければなりません。

そして、検察官が勾留請求をしたときは、裁判官が勾留するかどうかを判断します。裁判官が勾留を認めると10日間にわたって勾留されることになりますが、勾留期間が延長されることもあり、その場合にはさらに最長で10日間勾留延長されることになります。

検察官は、勾留期間が満了するまでに被疑者を起訴するのか、あるいは不起訴とするのかを判断することになります。

起訴

起訴とするか又は不起訴とするかは検察官が判断するということはご説明しましたが、検察官が行う起訴には、略式起訴と公判請求があります。

略式起訴とは、検察官が簡易裁判所に略式請求の申立てをすることより、公判手続きを行うことなく罰金または科料が科される手続きです。略式起訴をする場合には、被疑者の同意が必要となります。

検察官が略式起訴ではなく、公判請求をすると、ニュース番組で目にするような刑事裁判が行われることになります。刑事裁判では、裁判官が被告人の有罪無罪を判断し、有罪の場合には刑罰を宣告します。

判決

略式起訴の場合、略式命令が言い渡されると、後日、検察庁から自宅等へ納付通知が届きますので、記載された期日までに罰金を支払うことになります。罰金の支払いは指定された金融機関や検察庁で行います。

罰金は刑罰に他なりませんから、残念ながら前科がつくことになります。

他方、公判請求がされた場合、公開の法廷で公判期日が行われ、全ての審理が終わると判決を言い渡されることになります。執行猶予判決ではなく、実刑判決になると刑務所へ収容されることになります。

執行猶予判決とは、懲役刑が言い渡された場合でも、一定期間再び罪を犯すことなく過ごすことができれば、刑務所に収容されずにすむという制度です。

ただし、執行猶予判決も有罪判決ですので、罰金刑と同様に前科がつくことになりますから注意してください。

まとめ

以上、密漁の罰則が強化された経緯、密漁の罰則の内容、罰則を受けるまでの大まかな流れについて解説しました。

密漁で逮捕されたとしても、弁護士による迅速な弁護活動により、早期釈放や、起訴猶予にできる可能性があります。密漁で逮捕された場合には、一日も早く刑事専門の弁護士へ相談し、適切な対応をするようにしましょう。

家族が逮捕されたら!即日の接見を専門弁護士に依頼!

刑事事件に強い弁護士はこちら

刑事事件のコラムをもっと読む