建設アスベスト給付金を申請・請求するには?専門家が解説
2024年04月29日
アスベストによる被害を補償してもらいたい
建設アスベスト給付金を請求できるか知りたい
給付金の請求手続のポイントを知りたい
数十年も昔に従事していたアスベストにさらされる建設業務が原因となって肺がんや中皮腫などの病気に苦しんでいる被害者の方は多くおられます。
このような被害者に対して速やかに補償をするべく令和4年(2022年)1月から建設アスベスト給付金制度が施行されています。令和6年4月時点で6500件以上の認定がなされており、現に支給される方が年々増加しています。
本コラムではアスベストの補償について詳しい弁護士が、建設アスベスト給付金制度の申請要件やその方法について分かりやすく説明をします。
建設アスベスト給付金の申請・請求の要件
まずは、建設アスベスト給付金を申請・請求するための要件を説明します。
給付金の申請・請求要件
建設アスベスト給付金を申請するための要件は下記①から④のとおりです。特にポイントとなるのは、下記②の期間内に石綿にさらされる業務に従事していたことを当時の同僚の証言などによって証明できるか否かです。
②当該業務の従事期間が下記の期間であること
・石綿の吹付け作業に係る建設業務:
昭和47年(1972年)10月1日から昭和50年(1975年)9月30日
・一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務:
昭和50年(1975年)10月1日から平成16年(2004年)9月30日
③石綿にさらされる当該業務によって下記疾病にかかったこと
・中皮腫
・肺がん
・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
・石綿肺(じん肺管理区分が管理2から4又はまたはこれに相当するもの)
・良性石綿胸水
④労働者、中小事業主、一人親方、家族従事者であったこと
アスベストの原因が見落とされがち
上記の疾病のうち中皮腫は8割以上がアスベストが原因と言われています。それでも専門の医師でなければアスベストが原因であることを見落とすことがあります。
肺がんの場合には一層、アスベストが原因であることを本人だけでなく医師も見落とすことが非常に多いです。特に喫煙歴がある場合には医師もタバコだけが原因と判断してしまいがちです。
さらに、間質性肺炎と診断された場合も実は石綿肺であるというケースもあります。
アスベスト関連疾患は石綿にさらされる作業から数十年後に発症することから、患者本人も気が付かないケースが多く、アスベストの被害であるのに給付金などの補償を受けていない被害者が多数いるのが現状です。
前記疾患を発症した方やその家族が過去に建設作業に従事していたり、工場の近くに住んでいたという場合にはアスベストの原因を疑い、労災病院などの専門医療機関を受診してみることをお勧めします。
給付金の申請・請求権者
建設アスベスト給付金は被害者本人が申請、被害者本人が死亡したときはその遺族が請求できます。
請求できる遺族は、配偶者(事実婚を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹です。配偶者が最先順位で、先に記載の者から優先して請求権者となります。
もし申請をしてから認定通知を受けるまでに申請者が死亡してしまった場合、当該申請は無効となります。そして、請求権限のある遺族がいれば遺族が改めて請求します。
建設アスベスト給付金の審査期間は長いケースだと1年以上もかかっています。その間に申請者が死亡し、その他に請求権者が存在しない場合、当該被害については給付金の補償がなされずに終結する結果となります。
このような不当な結果を避けるために、審査業務の一層の迅速化が求められています。
給付金の申請・請求期限
建設アスベスト給付金には申請・請求の期限があり、下記の期日までに書類を提出する必要があります。
②石綿関連疾病により死亡した日から20年以内
※初日算入、申請期限末日が休日の場合は翌開庁日が期限末日となります。
建設アスベスト給付金の申請・請求の方法(労災認定ありの場合)
次に、建設アスベスト給付金の具体的な申請・請求の方法について説明します。
建設アスベスト給付金の申請は、所定の資料と書類を厚生労働省労働基準局労災管理課へ郵送提出して行います。
提出資料、書類は申請前に労災保険給付の支給決定又は石綿健康被害救済制度の特別遺族給付金の支給決定を受けているか否かによって異なってきます。ここではこれらの支給決定を受けている場合の手続きを説明します。
労災支給決定等情報提供サービス
アスベストの被害について労災保険給付又は特別遺族給付金を受けている場合には、「労災支給決定等情報提供サービス」を利用することができます。
本サービスは建設アスベスト給付金の申請手続を簡略化するために設けられた制度です。本サービスを申請すると、労災保険の認定の際になされた過去の就業歴や疾病などに関する調査結果を踏まえて、建設アスベスト給付金の申請に必要な情報の通知を受けることができます。
これによって建設アスベスト給付金の申請に必要な資料の提出の大部分を省略することができます。
労災支給決定等情報提供サービスの申請の必要書類は下記のとおりです。結果の通知を受けるまでに現状、3か月から半年ほどの時間がかかっています。
①「労災支給決定等情報提供サービス」申請書
②申請者の公的身分証明書のコピー(運転免許証、マイナンバーカードなど)
③住民票の写し(申請前30日以内に発行)
④遺族と被災者との関係がわかる戸籍謄本(申請前30日以内に発行)
給付金の申請・請求の手続
労災支給決定等情報提供サービスを申請して通知書を受領した後は、建設アスベスト給付金の申請のために下記書類を提出します。必要書類は下記のみでありシンプルです。
①特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等申請書
②振込を希望する口座の通帳又はキャッシュカードのコピー
③「労災支給決定等情報提供サービス」の通知書のコピー
情報なしの通知でも直ぐに諦めない
労災支給決定等情報提供サービスの申請結果として、建設アスベスト給付金の要件に該当する情報は無いと通知されることがあります。しかしながら、建設アスベスト給付金を請求できないという意味の通知ではないことに注意が必要です。
上記サービスはあくまで労災認定のために必要なだけの調査をした結果を踏まえた通知です。労災認定の要件と建設アスベスト給付金の要件は異なりますから、前者に該当しなくても後者に該当することがあります。
例えば、1975年10月1日以前からずっと石綿にさらされる業務に従事していたけれども、同日以降は労災保険に加入していなかったというケースがありえます。
この場合、建設アスベスト給付金の対象期間である1975年10月1日以降は労災保険に加入していないので労災支給決定等情報提供サービスでは情報無しの通知を受けます。しかし、石綿ばく露作業に従事していますから建設アスベスト給付金の要件に該当する可能性があります。
このように労災支給決定等情報提供サービスで情報なしの通知を受けても建設アスベスト給付金の対象外であると勘違いしないよう気を付けましょう。
建設アスベスト給付金の申請・請求の方法(労災認定なしの場合)
次は、労災保険給付や特別遺族給付金の支給決定を受けていない場合の建設アスベスト給付金の申請・請求の方法について説明します。
労災認定の申請
未だ請求期限内であり労災保険給付や特別遺族給付金の申請ができる場合には、まずはこれらの給付の申請をします。支給決定が出た後、前記の労災支給決定等情報提供サービスを申請して、その後に建設アスベスト給付金の申請をするのが通常の流れです。
しかし、労災保険などの支給決定、情報提供サービスの通知いずれも申請から決定・通知までに3か月から半年ほどの期間がかかります。そのため、労災保険給付などの申請とは別途に並行して建設アスベスト給付金の申請をした方が良いケースが多いでしょう。
また、就業歴や労災保険の加入時期からすると建設アスベスト給付金の申請に必要な調査がなされないと判断できるケースがあります。その場合には労災支給決定等情報提供サービスを利用しても情報なしの通知を受けることになりますので、労災保険給付の申請とは並行して建設アスベスト給付金の申請を行います。
給付金の申請・請求の手続
労災支給決定等情報提供サービスを利用しない場合には、下記のとおり提出する書類は多くなります。
就業歴等申告書とその証拠資料が特に重要なポイントとなります。数十年も前の業務内容について元同僚の証言などから証明する必要があり、証明に困難を伴うケースもあります。
①特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等申請書
②振込を希望する口座の通帳又はキャッシュカードのコピー
③申請者の住民票の写し(申請前30日以内に発行)
④(申請者が遺族の場合)被災者との関係を示す戸籍謄本(申請前30日以内に発行)
⑤死亡届の記載事項証明書
⑥(決定を受けている場合)労災保険給付や石綿救済法の支給・不支給決定の通知書、じん肺管理区分決定通知書
⑦就業歴等申告書と裏付けとなる資料
⑧医師の診断書(意見書)と診断の根拠資料
まとめ
以上、建設アスベスト給付金制度の申請要件やその方法について説明をしました。
建設アスベスト給付金の申請を検討する場合には労災保険給付や石綿健康被害救済制度の給付の申請も検討すべきケースがあります。漏れなく、速やかに支給を受けるために、アスベスト被害の補償に詳しい弁護士に無料でご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。