タクシー運転手に暴行をしてしまった場合の流れと対応
最終更新日: 2021年07月08日
飲み会で泥酔して、帰宅するためにタクシーを捕まえたことまでは覚えているが、気が付いたら警察署にいたというケースがあります。
また、そこまで泥酔はしていないものの、酔った状態でタクシー運転手と口論になり、手や足が出てしまったというケースはよくあります。
タクシー運転手ではありませんが、駅員に対する暴力事件もよく良く耳にするかと思います。
これらの事件は犯罪とは縁も所縁もない普通の会社員も加害者となることが多い事件です。
今回は、万が一にもご自身や家族が加害者となってしまった場合、その後の流れはどうなるのか、またどのように対応するべきなのかという点についてご説明いたします。
タクシー運転手に対する暴行はどんな犯罪になるのか?
タクシー運転手を殴った、蹴ったなどの暴行を振るった場合、暴行罪(刑法第208条)に該当します。
暴行罪では、
- 二年以下の懲役
- 30万円以下の罰金
- 拘留又は科料
のいずれかの刑罰が科されます。
また、暴行を振るった結果、タクシー運転手が怪我をした場合には、傷害罪(刑法第204条)に該当し、
- 15年以下の懲役
- 50万円以下の罰金
のいずれかの刑罰が科されます。
なお、手で殴った、足で蹴ったなどの打撃ではありませんが、タクシー運転手に対して唾を吐いたという場合も、暴行罪になることがありますので注意が必要です。
同種の前科がなければ、暴行罪であれば、不起訴処分になることも多く、起訴されたとしても略式手続で罰金刑に処せられる可能性が高いです。
傷害罪の場合も初犯であれば罰金刑となる可能性が高いですが、全治数か月などの重い傷害結果であれば、例え初犯であっても略式手続による罰金刑ではなく、正式な裁判(公判)で懲役刑を求刑され、ケースによっては数年間、刑務所で懲役刑に服する重い刑罰となる可能性もあります。
このように処分は様々ですので、起訴される可能性、罰金や懲役いずれの刑罰になる可能性が高いかについては、一度、弁護士にご相談ください。
タクシー運転手に暴行をして逮捕された時の流れ
タクシー運転手に暴行を振るった場合、警察が駆け付け、その場で現行犯逮捕となるケースが多いです。
その後は、警察署において被害者、加害者それぞれの取り調べが行われるとともに、現場周囲の防犯カメラやタクシーのドライブレコーダーに暴行の一部始終が映っていないか確認されることとなります。
逮捕されるとその後48時間以内に警察から検察庁に事件送致するか釈放するかの判断がなされます。
48時間以内に釈放された場合
逃亡や罪証隠滅の可能性は低いだろうと警察が判断すると48時間以内に釈放され、その後、何度か警察に出向いて取り調べなどの捜査を受けます。
そして、警察での捜査がひととおり終わると、事件は検察庁へ送られます。
そして、検察庁から呼び出しを受け、取り調べを受け、その後処分が決まります。
事件発生から最終的に処分が決まるまで通常ですと2、3か月ですが、警察が多忙な場合などには半年以上かかる場合もあります。
なお、48時間以内に釈放せず、ほぼ全ての事件を検察庁に送致する運用の地域もあります。
48時間以内に釈放されず検察庁に事件送致された場合
48時間以内に釈放されず検察庁に事件送致された場合には、事件送致後24時間以内に検察庁の担当者は、裁判所に勾留の請求をするかどうかの判断をします。
勾留の請求がなされなければ釈放となります。
他方、勾留の請求された場合には、裁判官は勾留するかどうかの検討し、勾留しない場合には釈放され、勾留する場合には10日間勾留されることとなります(その後さらに10日間、勾留期間が延長されることが多いです。)。
釈放された場合は、前記⑴と同様に、警察や検察庁に何度か出向いて取り調べを受け、その後処分が決まります。
他方、勾留された場合には、勾留の最終日に起訴か不起訴かの処分が決まります。
逮捕・勾留を防ぐことはできないのか
逮捕・勾留の要件は、
1.逃亡のおそれと2.証拠隠滅のおそれです。
そのいずれも可能性が低いと判断されれば釈放されることになります。
タクシー運転手に対する暴行事件では、ドライブレコーダーなどの客観的な証拠は既に押収されていますし、加害者がタクシー運転手に接触を図って供述を曲げさせることは現実的に難しいでしょう。
ですから、身元がしっかりしていれば、執行猶予中でも懲役刑に服する可能性が高いといった事情がない限り逃亡のおそれはないと判断される可能性は十分あるでしょう。
1、2いずれもその可能性が乏しいことを捜査機関や裁判官に説得して、逮捕・勾留を回避する活動は弁護士にお願いしましょう。
タクシー運転手と示談交渉をしましょう。
タクシー運転手に対して暴行を振るってしまったのであれば、被害者に対して謝罪をして、慰謝料などの賠償金をお支払いして示談するべきでしょう。
稀に加害者と直接、示談交渉をしてくださるタクシー運転手もいるようですが、大抵は弁護士でなければ加害者側との示談交渉に応じていただくことはできません。
賠償金ですが、慰謝料の他に、事件当日、営業を中断して警察署で取り調べを受けていますので、その間の営業損害相当額の賠償を求められることがあります。
また、暴行の際にタクシーの車内や外装を毀損した場合にはその賠償も当然必要となります。
示談金の金額としては10万円から高くても30万円に収まることが多いですが、怪我が酷い場合にはそれ以上の賠償金となる可能性もあります。
謝罪、損害賠償をして被害者から許しを得た場合、同種前科があったり、重大な傷害結果が生じていない限り不起訴処分となり、刑罰を受けない可能性が高いです。
最後に
以上、タクシー運転手に対して暴行をしてしまった場合の逮捕・勾留や示談についてご説明しました。
普段全く警察のお世話になったことがないような普通の会社員の方でも、お酒に酔って加害者となり、刑罰を受ける可能性があります。
早期の釈放、被害者との示談をするためには、弁護士にできるだけ早く相談することが重要です。
最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にある「LINEで無料相談」のボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。