子ども名義の財産でも財産分与の対象に?具体的内容と対処法を専門家が解説

最終更新日: 2023年11月14日

子ども名義の財産でも財産分与の対象に?具体的内容と対処法を専門家が解説

  • 夫婦で離婚を話し合っているが、子ども名義の財産は財産分与の対象になるのだろうか?
  • 子どもにあげたお小遣いやお年玉は、財産分与の対象になるのか?
  • 実質的には夫婦の共有財産でも、子どもが成長した後は子どもの財産となってしまうケースがあるのだろうか?

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚時または離婚後に分ける方法です。

分与対象が夫婦の共有財産に限定されるため、子ども名義の財産もその範囲に含まれるか、疑問に思う人もいるでしょう。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、子ども名義の財産が分与の対象となるケース、対象とならないケース等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 子ども名義の財産であっても、夫または妻の収入を原資としていれば分与の対象
  • 夫婦の共有財産として認められる場合でも、子どもが成人に達し、預貯金を十分管理できる能力があるときは、子どもの固有財産とされる可能性もある
  • 子ども名義の財産が分与対象か否か、よくわからないときは弁護士に相談する

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

子ども名義の財産は分与の対象か?

子ども名義の財産が分与の対象となるか否かは、ケースバイケースで判断されます。

こちらでは、子ども名義の財産が形成された経緯から、分与対象か否かをみてみましょう。

両親の収入が原資な場合

子ども名義の銀行口座を開設しても、口座に預けるお金が夫婦の婚姻期間中の収入だった場合、預貯金の実質的な運用・積立は夫婦が行っています。

この場合、子ども名義の口座でも、預貯金は夫婦で協力して得た財産と判断されます。そのため、当該預貯金は夫婦の共有財産として財産分与の対象です。

贈与の場合

子どものために贈られた金銭や物品(おもちゃや学習机、カバン等)は、子どもの固有財産です。

ただし、贈与されたものが金銭の場合は、親が管理している預金口座へ入金されると混同してしまい判別は困難となります。

この場合、子どもの固有財産として区別できるように、別の口座を開設しておくのがよい方法です。

子どもが築いた場合

子どもがバイトをして得た財産は子どもの固有財産です。夫婦の財産分与の対象とはなりません。

こちらのお金も親が管理している預金口座へ入れてしまえば、夫婦の共有財産であるお金と混同してしまい判別困難になります。

そのため、子どもの固有財産として区別できるように新たな口座を開設し、入金しておきましょう。

子どもが成人の場合

子ども名義の銀行口座を開設した当時、口座に預けたお金が夫婦の婚姻期間中の収入であり、親が管理していたとしても、子どもが成人したときは固有財産となる場合もあります。

なぜなら、子どもが預貯金を十分に管理できる年齢に達し、通帳や印鑑、キャッシュカードを自分で所持しているときは、その預貯金は親の管理から脱していると判断されるためです。

ただし、当該口座に親の運用した多額の預貯金(例:数千万円等)が預けられている場合は、財産分与の対象となる可能性があります。

子ども名義の財産が財産分与となるかについての具体的項目

こちらでは、子ども名義で管理されている財産が、財産分与の対象となるか否かについてみていきましょう。

預貯金

子ども名義の口座を開設しても、夫または妻の収入が原資で実質的に夫婦が管理しているときは、基本的に財産分与の対象です。

ただし、親戚等から子どもに贈られたお金や、子どもがバイトをして貯めたお金もその口座に預けていて、子どもの固有財産と親の共有財産が混在し、判別困難となっている可能性もあります。

そのため、余程高額な共有財産を預けていない限り、夫婦が相談して財産分与の対象としない、と取り決めることも可能です。

夫婦が合意すれば、どのような財産を分与対象とするのか柔軟に決められるので、子ども名義の預金口座を外しても構いません。

お年玉

親や親戚からもらったお年玉は、子どもに自由な利用を認めたお金といえるので、子どもの固有財産です。

そのため、夫婦の財産分与の対象とはなりません。

お小遣い

お小遣いは子どもに自由な処分を許したお金なので、子どもの固有財産であり、分与対象とはなりません。

預金する場合は、子どもの固有財産としてわかるように新たな口座を開設し、入金しておきましょう。

遺贈

遺贈とは、遺言者(被相続人)の遺言により贈与される財産です。遺言書で子どもに贈与する旨を明記している財産は、子どもの固有財産です。

遺贈の対象は土地や建物のような不動産の場合もあれば、預金の場合もあります。

不動産は登記すれば、遺贈を受けた自分のものであると主張できますが、現金の場合はそうはいきません。

遺言者の預金の一部を引き継ぐときは、親の共有財産と混同しないよう、新たに預金口座を設け明確に分けておきましょう。

給付金

児童手当や児童扶養手当、出産一時金等の公的な給付金は、子どものためのお金といえます。

しかし、その給付金を受け取るのは親であり、婚姻中に受け取った給付金は夫婦の共有財産です。

一方、親がすでに別居しており、別居後に給付金を受け取る場合もあります。このケースでは受け取った親の特有財産となります。

学資保険

学資保険とは子どもの将来の進学資金を保険料で積み立て、契約で設定した年齢に子どもが達したときに、一括または分割して学資金として受け取れる保険です。

学資保険の契約内容は、基本的に次の通りです。

  • 契約者および保険料負担者:親
  • 被保険者:子ども
  • 学資金受取人:親(子どもの場合もある)

保険会社に支払う保険料は、夫婦の協力で築いた財産から支払われている場合がほとんどです。そのため、学資保険は夫婦の共有財産として財産分与の対象になります。

ただし、保険料負担者が祖父母の場合、支払われた保険料は夫婦の財産ではないので、財産分与の対象外です。

子ども名義の財産を財産分与とする方法

子ども名義の財産は、主に銀行口座へ預金するケースが一般的です。

財産分与を行い夫婦に分配する方法は、主に次の通りです。

  • 子ども名義の預金口座を解約し、夫婦それぞれの口座に振り分ける
  • 子ども名義の預金口座は残し、財産分与の割合に応じた預金を夫婦の一方に移す

財産分与割合は、夫婦それぞれ2分の1ずつ分配するのが一般的です。

なお、学資保険の場合は中途解約を行うと、保険会社から「解約返戻金」が支払われます。この解約返戻金は夫婦で分配可能です。

ただし、学資保険は子どもの進学のための大切な資金です。財産分与の利益だけを考えて、子どもの将来を危うくするような行動は慎みましょう。

子ども名義の財産が財産分与かわからないときの対応

当初は子ども名義の預金口座として開設し、夫婦の共有財産と認識できたものの、時間が経つうちに、子どもの固有財産である預金が入金され、判別困難となる可能性も出てきます。

こちらでは、夫婦の財産分与となり得るかわからないときの対応方法を紹介しましょう。

通帳の履歴確認

夫婦が子ども名義の預金口座に定期的に入金していたかを、通帳の履歴で確認可能です。

また、子どもがバイトをしていて、バイト先から夫婦が管理していた預金口座に振り込まれた場合、バイト先が振り込んだとわかるので、その分は共有財産から除外できます。

しかし、夫婦が臨時に子ども名義の預金口座へ入金したのか、単に子どもがお小遣いやお年玉を預金したのか、判断できないケースもあります。

通帳の履歴を確認しても、子どもの固有財産なのか夫婦の共有財産となるのか、よくわからない入金が多い場合、その預金口座自体を分与対象から外しておけば、子どもの不利益になりません。

弁護士への相談

子ども名義の財産が財産分与の対象になるか否か悩むときは、離婚問題に詳しい弁護士と相談しましょう。

弁護士は子ども名義の財産が分与対象になるか否かを確認する方法や、分与を行って子どもの不利益とならないか等を、詳しくアドバイスします。

ただし、弁護士の誰しもが財産分与をはじめ、離婚に関する取り決めや、離婚交渉、調停等に詳しいわけではありません。

そのため、弁護士に相談したい場合は法律事務所のホームページを確認しましょう。

  • 離婚問題の相談実績や解決実績が明記されている
  • 財産分与をはじめとした離婚に関する話題が、豊富に掲載されている
  • 離婚に関する交渉の流れや、離婚手続きに関する弁護士費用が明記されている

上記のような内容がホームページで明示されているときは、離婚問題に実績豊富な法律事務所といえます。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、子ども名義の財産が財産分与の対象となるのか否かを判断するポイント等について詳しく解説しました。

子ども名義の財産が、夫婦の共有財産として分与対象となったとしても、子どもの生活や教育の機会を奪うような分け方であってはいけません。

子ども名義の財産を分与するか否かを話し合う場合は、子どもの養育費の算定と同様、慎重な対応が求められます。

子ども名義の財産を分与するかどうかで悩んだときは、早く弁護士と相談し、今後の対応の仕方を話し合いましょう。

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