別居中の婚姻費用を払わない相手への対処法|未払い分を請求・回収する手順
2026年03月10日

「別居した途端、夫(妻)が生活費を入れてくれなくなった…」
「『勝手に出て行ったんだから払わない』と言われたが、法的にはどうなの?」
別居中であっても、離婚が成立するまでは法律上の夫婦です。収入の多い側は、相手と子どもが生活できるよう婚姻費用(生活費)を分担する義務があります。
相手が支払いを拒否していても、法律上は請求することが可能です。本記事では、婚姻費用を払わない相手への具体的な対応方法と、回収までの流れをわかりやすく解説します。
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「別居したら払わなくていい」は原則として誤り
よくある誤解ですが、どちらが家を出たかにかかわらず、原則として婚姻費用の支払い義務はなくなりません。
生活保持義務とは
民法上、夫婦にはお互いに同程度の生活を保障する義務があります(民法752条・760条)。
そのため、収入差がある場合、収入の多い側が生活費を分担するのが原則です。
支払いが制限されるケース(例外)
例えば、請求する側に不倫などの明確な有責行為があり、それが別居の主な原因である場合には、婚姻費用の一部が制限される可能性があります。
ただし、その場合でも子どもの養育費相当分は原則として支払義務があります。
離婚に向けた別居期間の目安や注意点については、以下の記事で解説しています。
婚姻費用を払わない相手への主な対応策
話し合いで解決できない場合、次のような手順で進めます。
内容証明郵便で請求する
婚姻費用は、一般的に「請求した時点」以降の分を基準に判断されます。
そのため、「〇月分から月額〇万円を支払ってください」と明確に請求し、その証拠を残しておくことが重要です。
内容証明郵便を使うことで、「いつ・いくら請求したか」が明確になります。
婚姻費用分担調停を申し立てる
相手が応じない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立てます。
- 裁判所が間に入るため、感情的な対立を抑えやすい
- 算定表に基づいて金額が整理される
- 合意できなければ審判に移行し、裁判所が金額を決定する
調停は比較的利用しやすい制度で、法律に詳しくなくても申し立ては可能です。
離婚調停を有利に進めるための対策と弁護士の必要性については、以下の記事で解説しています。
調停・審判後も払わない場合
調停調書や審判が確定しているにもかかわらず支払わない場合は、
- 履行勧告
- 給与や預金の差押え(強制執行)
といった法的手段が可能になります。
給与差押えの場合、勤務先を通じて手続きが行われるため、実効性のある回収方法といえます。
婚姻費用の相場はどのくらい?
裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」に基づき、双方の年収と子どもの人数・年齢で決まります。
【例】
- 夫:年収600万円(会社員)
- 妻:年収100万円(パート)
- 子ども1人(5歳)
→ おおよそ月額11万円前後が目安
ただし、住宅ローンや特別な事情がある場合は修正されることもあります。
早めの対応が重要な理由
婚姻費用は、原則として「請求前の長期間分」を遡って認めてもらうのが難しい傾向があります。
そのため、「払ってもらえない」と感じた時点で早めに動くことが重要です。
また、生活が厳しい場合には、審判前に仮払いを求める「保全処分」という手続きもあります。
弁護士に依頼するメリット
婚姻費用の請求はご自身でも可能ですが、弁護士に依頼することで次のようなメリットがあります。
適正額を正確に算定できる
算定表の見方や、修正要素(住宅ローン・自営業・賞与など)を踏まえた現実的な金額を整理できます。
相手との直接交渉を避けられる
精神的負担が大きいケースでは、弁護士が窓口になることで冷静な話し合いが可能になります。
調停・審判を有利に進めやすい
主張整理や資料提出を適切に行うことで、不要な長期化を防ぎやすくなります。
未払い分の回収まで見据えた対応ができる
強制執行の可否や、相手の財産状況の把握など、回収可能性を踏まえた戦略を立てられます。
「感情的な対立で話が進まない」「相手が収入を隠している可能性がある」といったケースでは、専門家の関与が特に有効です。
まとめ
別居中でも、婚姻費用の支払い義務は原則として続きます。
相手が拒否していても、法的手続きを通じて請求・回収することは可能です。
ただし、請求のタイミングや金額の設定を誤ると、本来受け取れるはずの金額に影響が出ることもあります。
「自分の場合はいくら請求できるのか」
「相手が本当に払わない場合、どこまでできるのか」
状況は家庭ごとに異なります。一度整理しておくだけでも、今後の見通しが立ちやすくなります。
まずは現在の収入状況やお子さまの年齢、別居の経緯などをもとに、具体的な金額の目安や進め方について確認してみてはいかがでしょうか。
よくある質問(FAQ)
Q:相手が「収入が減ったから払えない」と言っています。本当に払わなくてよいのでしょうか?
収入が減ったとしても、直ちに支払い義務がなくなるわけではありません。
婚姻費用は、双方の現在の収入を基準に再計算されます。
例えば、ボーナスが減った・転職したなどの事情がある場合でも、客観的な収入資料(源泉徴収票・給与明細など)に基づいて判断されます。
相手が「払えない」と言うだけで資料を出さない場合は、調停で開示を求めることが可能です。
収入を正確に把握しないまま合意してしまうと、本来より低い金額で決まってしまうこともあるため注意が必要です。
話し合いを拒否・無視する相手と離婚・費用請求を進める方法については、以下の記事で解説しています。
Q:相手が自営業で、正確な収入が分かりません。どうすればいいですか?
自営業者の場合、売上と所得は異なり、経費計上によって実際の生活実態が見えにくいケースがあります。
調停では、確定申告書や課税証明書の提出が求められます。
それでも不透明な場合、生活状況(車・住居・支出状況)などを踏まえて実質的な収入を主張していくことになります。
自営業案件は金額に差が出やすいため、主張の整理が重要です。
資料の読み取りや反論の組み立ては専門的な判断が必要になることも少なくありません。
Q:すでに半年以上払ってもらえていません。過去分もまとめて請求できますか?
原則として、婚姻費用は「請求した時点」以降の分を基準に判断されることが多いです。
そのため、何も請求せずに放置していた期間については、全額が認められない可能性があります。
ただし、事情によっては過去分を考慮してもらえるケースもあります。
「もう遅い」と決めつけず、まずは請求時期や証拠の有無を整理することが大切です。
Q:調停を申し立てたら、どのくらいで支払いが始まりますか?
調停は通常、申立てから初回期日まで約1か月前後かかります。
そこから数回の期日を経て合意または審判に至るため、数か月かかることもあります。
生活が厳しい場合は、「審判前の保全処分」を申し立てることで、暫定的な支払いを求められる可能性があります。
資金が逼迫している場合は、早めに手続きを開始することが重要です。
Q:相手が「会社に知られたくないなら請求するな」と言っています。本当に差押えで会社に知られますか?
調停や審判で決まった金額を支払わない場合、給与差押えを行うと勤務先に通知が届きます。
そのため、会社に知られる可能性はあります。
ただし、差押えはあくまで最終手段です。
多くの場合、法的手続きが進んでいることを理解すると任意に支払うケースもあります。
どの段階でどの手段を取るかは、状況を見ながら判断することが重要です。
Q:婚姻費用はいつまで支払う必要がありますか?
原則として、「離婚が成立するまで」または「別居が解消して同居を再開するまで」の間、支払い義務が継続します。
相手が「もう離婚したつもりだから払わない」と言い張っても、法律上夫婦である限り、支払い義務は消滅しません。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
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