暴行罪の示談金相場と示談交渉の進め方を弁護士が解説
最終更新日: 2026年05月15日
かっとなって相手の胸ぐらを掴んでしまった、口論の末に手が出てしまった――そのような方から「被害届を出された」「警察から呼び出しを受けた」というご相談が多く寄せられます。
暴行事件では被害者との示談が成立するかどうかが、その後の処分を大きく左右します。示談が成立すれば不起訴・前科回避につながり、逮捕されている場合は早期釈放の可能性も高まります。
本記事では、暴行罪の示談金の相場・示談交渉の具体的な流れ・弁護士に依頼すべき理由を、加害者・被疑者の立場から解説します。
この記事のポイント
①暴行罪は怪我がなくても成立する。示談なしで起訴されれば前科になる
②示談金の相場は怪我なしで10〜30万円、軽傷を伴う場合は30〜100万円程度。事案によって変動する
③被害者への直接接触は逆効果。弁護士を通じた交渉が示談成立への最善策
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暴行罪とは:傷害罪との違いと刑事手続きの流れ
暴行罪と傷害罪の法的な違い
暴行罪(刑法208条)は「暴行を加えたが傷害に至らなかった」場合に成立します。法定刑は2年以下の懲役・30万円以下の罰金・拘留・科料です。詳しくは「暴行罪とは?暴行罪にならないケースは?」もご参照ください。
傷害罪(刑法204条)は暴行によって相手に怪我を負わせた場合に成立し、法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金とより重くなります。傷害罪で逮捕されるケースや基準については「傷害罪で逮捕!?現行犯・後日逮捕の基準と回避の流れ」をご覧ください。
「怪我がなかったから暴行罪にはならない」という誤解もありますが、物を投げつける・恐怖を与えるような行為も暴行罪が成立することがあります。また、診断書の提出があれば傷害罪として立件されるケースも少なくありません。
| 暴行罪 | 傷害罪 | |
|---|---|---|
| 成立要件 | 怪我なし(暴行行為があれば足りる) | 暴行によって怪我を負わせた場合 |
| 法定刑 | 2年以下の懲役・30万円以下の罰金 | 15年以下の懲役・50万円以下の罰金 |
| 示談の重要性 | 非常に高い(不起訴の主要要因) | 非常に高い(量刑・不起訴に影響) |
逮捕から起訴までの一般的な流れ
暴行事件では、現行犯逮捕または後日逮捕によって身柄が拘束される場合と、在宅のまま任意出頭・書類送検となる場合があります。
逮捕された場合は警察48時間→検察24時間の計72時間以内に勾留請求の判断が下され、その後最長20日間の勾留期間を経て起訴または不起訴の判断がなされます。
逮捕から釈放までの期間や早期釈放のポイントは「暴行で逮捕されるまでの期間は?早期釈放のポイントと弁護士の活用法」で詳しく解説しています。
示談と不起訴の関係
検察官が起訴・不起訴を判断する際、被害者との示談成立は「被害回復がなされ、被害者が許している」という重要な事情として考慮されます。
暴行罪は統計上6〜7割が不起訴猶予処分となっていますが、示談が成立している場合はその割合がさらに高まります。
特に逮捕後すぐに弁護士に依頼し、早期に示談交渉を開始することが、不起訴・早期釈放への最短ルートです。不起訴処分の獲得と前科回避について詳しくは「暴行罪で不起訴処分になるには?前科を回避するために知っておきたい「示談」と弁護士の役割」をご覧ください。
暴行罪の示談金の相場
示談金の内容
暴行罪の示談金のメインは慰謝料です。ただし、暴行罪として立件されている事件の中には、被害者が打撲・かすり傷などの軽傷を負っているにもかかわらず診断書を警察に出していないため傷害罪ではなく暴行罪として処理されているケースもあります。
そのため、暴行罪であっても被害者が医療機関に受診している場合は治療費・医療費も示談金の対象となります。刑事事件における示談の仕組みやメリット・タイミングは「刑事事件での示談はできるのか!?成立のメリット・タイミング・金額の相場」も参考にしてください。
怪我がない場合(胸ぐらを掴む・押すなど)の相場
典型的な暴行事件として、被害者の胸ぐらを掴む、突き飛ばすというケースがあります。被害者に怪我がなく暴行のみで終わった場合、示談金の相場はおおむね10〜30万円程度です。
民事訴訟では裁判所が認める慰謝料は10万円以下にとどまることが多いですが、示談交渉では被害者の恐怖の程度・行為の態様・加害者の謝罪態度・加害者の資力などを踏まえて交渉額が決まります。被害者から高額な要求がある場合でも、弁護士が介入することで法的に合理的な水準への調整が可能です。
軽傷を伴う場合(傷害罪に近いケース)の相場
打撲・切り傷など軽傷を負わせた場合、傷害罪として処理される可能性が出てきます。示談金の相場はおおむね30〜100万円程度に上がります。治療費・通院費の実費補償に加え、慰謝料(精神的苦痛に対する補償)が示談金の主な構成要素となります。
診断書が作成されている場合は治療費実績が明確になるため、治療費を超えた慰謝料部分をどう設定するかが交渉のポイントです。
| 要因 | 金額への影響 |
|---|---|
| 怪我の程度 | 怪我あり(通院日数・入院期間)ほど高額になる |
| 行為の態様 | 一方的・計画的・複数回など悪質性が高いほど高くなる |
| 加害者の謝罪態度 | 早期の謝罪・反省の姿勢があると示談がまとまりやすい |
| 加害者の資力 | 支払い能力の範囲内での交渉が現実的 |
| 前科・前歴 | ある場合は検察の判断が厳しくなる。示談の重要性が増す |
被害者が健康保険を使った場合の注意点
被害者が医療機関で診察・治療を受け健康保険を使用した場合、第三者行為による傷病届を市区町村に提出することで、自己負担を超える金額が後日保険者(市区町村)から加害者に対して求償されます。
示談金を決める際はこの点も考慮し、示談書に「健康保険の求償を含む一切の債権債務を清算する」旨の清算条項を入れることが重要です。
示談交渉を弁護士に依頼すべき理由
被害者への直接接触は逆効果になりやすい
加害者本人や家族が被害者に直接連絡を取ろうとする行為は、証拠隠滅・接触妨害として受け取られるリスクがあります。被害者が感情的になり、示談を拒否するだけでなく、告訴・被害届の提出につながる可能性もあります。
弁護士を通じた正式な交渉ルートを確立することで、被害者側も「真剣に謝罪・賠償の意思がある」と受け取りやすくなり、示談交渉がスムーズに進みます。
弁護士が介入することで示談成立率が上がる
弁護士が代理人として介入することで、以下の対応が可能になります。
- 謝罪文・示談申し入れ書などの書面の作成
- 示談金の適正額の算出と交渉
- 被害者の感情的な要求に対する冷静な対応
- 示談交渉が複数回に及ぶ場合の継続的なフォローアップ
特に、加害者と被害者の間に面識がない場合、警察・検察は通常、加害者本人に被害者の連絡先を開示しません。弁護士に依頼することで、捜査機関を通じて被害者への連絡が可能になります。
弁護士への依頼のメリット・費用・流れについては「暴行罪で弁護士に相談するメリットは?費用や流れを解説」もご参照ください。
示談書の内容が後の刑事手続きに影響する
示談書には以下の内容を盛り込む必要があります。
- 示談金の金額とその支払い方法
- 被害者は被疑者に対して刑事処分を求めない旨の表明(または被害届の取り下げ)
- 当事者間に債権債務がこれ以上ないことの清算条項(健康保険の求償分を含む)
不備のある示談書は検察官に提出できない場合や、後から追加請求される可能性を残します。弁護士が示談書を作成することで、検察官に提出できる形式・内容の書面が整備されます。
暴行罪の示談金を払う流れ
示談交渉の具体的なステップ
示談交渉は以下のステップで進みます。
- 弁護士に依頼し、被害者の連絡先を入手(捜査機関経由)
- 謝罪文を被害者に渡し、加害者の謝罪の言葉と示談の意向を伝える
- 刑事手続きの説明・示談が成立した場合の影響について被害者に説明
- 示談金額を提示。接触禁止など被害者側の要望を確認
- 金額・条件について合意に達したら示談書を作成・締結
- 示談金を支払い、示談書を検察官に提出
示談が成立すると被害届は取り下げになるのか
示談成立によって被害者が被害届を取り下げても、警察は犯罪を認知した以上、捜査を続けることができます。ただし、事件発生から間もない段階で示談が成立し被害届が取り下げられた場合は、警察がそれ以上の捜査をせず刑事事件が終結することも多いです。
また、示談成立により微罪処分(検察への事件送致なしで終結)や、送致されても不起訴処分(起訴猶予)となる可能性が大幅に高まります。被害届の取り下げの手続きや注意点は「被害届の取り下げは可能?示談の進め方と加害者の注意点」をご覧ください。
暴行罪は示談しないと必ず起訴されるのか
暴行罪は比較的軽微な犯罪として扱われるため、示談が成立していなくても起訴猶予処分となるケースは相当数あります。統計上も6〜7割が不起訴猶予です。
ただし、起訴処分となる可能性も十分あります。前科がある場合・暴力の態様が悪質な場合・被害が重大な場合は示談なしでも起訴されることがあるため、示談成立を目指すことが重要です。示談しない場合にどうなるかについては「暴行罪で示談しないとどうなる?初犯なら前科はつかない?示談が成立しない場合の対処法」も参考にしてください。
示談交渉のポイント
謝罪文の作り方
謝罪文はインターネットの雛形をそのまま使うと、表面的な内容になり被害者の反感を買うことがあります。
効果的な謝罪文を作成するには、まず以下の点を書き出してから文章にまとめることをおすすめします。
- なぜ暴行を振るってしまったのか
- 被害者にどんな迷惑・恐怖を与えたと思うか
- なぜ踏みとどまれなかったのか
- 再発防止のために具体的にどうするつもりか
内容面の過不足や言葉遣いは、弁護士の添削を受けることで被害者に届く謝罪文に仕上げることができます。
示談書の必要項目
示談書に最低限盛り込むべき内容は以下の3点です。これに加え、清算条項・接触禁止条項・守秘義務条項を入れることで、後のトラブルを防げます。
- 示談金の金額と支払い方法(一括または分割)
- 被害者は被疑者に対して刑事処分を求めないことの表明(または被害届の取り下げ)
- 当事者間の債権債務がこれ以上ないことの清算条項
よくある質問(FAQ)
Q 示談が成立すれば必ず不起訴になりますか?
A 示談成立は不起訴の有力な事情ですが、確実に不起訴になる保証はありません。前科がある場合・暴力の態様が悪質な場合・被害が重大な場合などは、示談成立でも起訴されることがあります。ただし、示談なしよりも不起訴・執行猶予になる可能性は大きく高まります。
Q 被害者が示談を拒否した場合はどうなりますか?
A 被害者が示談を拒否する場合でも、謝罪・反省の態度を示す書面の提出や、被害弁償の供託(被害者が受け取らない場合に法務局に納める手続き)を行うことで、検察官に誠意を示す方法があります。弁護士と相談しながら、できる限りの対応を取ることが重要です。
Q 示談金は一括で支払わなければなりませんか?
A 分割払いで合意することも可能です。被害者が分割払いに同意し、公正証書や示談書に分割払いの内容を記載することで法的に有効な合意が成立します。支払い能力を正直に伝え、現実的な分割計画を提案することが示談成立の鍵になります。
Q 示談交渉はいつ始めればよいですか?
A 逮捕直後または在宅捜査の段階から、できる限り早く弁護士に依頼して示談交渉を開始することが重要です。検察官の起訴判断前に示談が成立することが最も効果的で、逮捕後72時間以内に弁護士を立てることで不起訴の可能性が大幅に高まります。
Q 暴行罪で前科はつきますか?
A 起訴されて有罪判決を受けた場合に前科がつきます。略式起訴による罰金刑も前科です。示談が成立して不起訴になった場合や起訴猶予処分の場合は前科にはなりません。前科を回避するためにも、示談成立と不起訴獲得を目標とした早期の弁護士相談が重要です。
Q 示談の事実は職場に知られますか?
A 示談の内容は守秘義務条項を盛り込むことで相手方に口外させないことが可能です。ただし、逮捕・勾留された場合は職場への影響が避けられないケースもあります。在宅事件や早期釈放が実現した場合は職場に知られないまま解決できる可能性が高まります。
まとめ
暴行罪における示談は、不起訴・前科回避・早期釈放を実現するための最も有効な手段です。示談金の相場は事案によって大きく異なりますが、弁護士が介入することで適正額での示談成立を目指せます。
- 逮捕または警察からの呼び出しを受けた段階ですぐに弁護士に連絡する
- 被害者への直接接触は絶対に避け、弁護士を通じた示談交渉を依頼する
- 示談書を作成・締結し、検察官に提出して不起訴処分を目指す
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。
職員が丁寧にお話を伺います初回無料
刑事事件の実績






