労災でも弁護士費用特約は使える?専門弁護士が解説
最終更新日: 2022年11月29日
労災事故に遭ってしまったときには、弁護士への相談や依頼を検討する人が多いのではないでしょうか。
しかし、実際にどのくらいの弁護士費用が必要なのか知らなければ、弁護士への相談もしにくくなってしまうでしょう。
また、交通事故のように弁護士費用特約が使えるのであれば、費用に頭を悩ませる必要も少なくなるでしょう。
そこで、この記事では、労災事故を弁護士に依頼する場合に必要な費用やその相場について、ご説明していきます。また、弁護士費用特約が利用できるか否かについても解説をいたします。
では、早速、確認していきましょう。
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- 労災について弁護士費用特約が使えない場合、弁護士に支払う弁護士費用には、着手金・成功報酬・日当・実費などが含まれることが一般的です。
- 労災でも弁護士費用特約が使える場合があります。自動車保険以外にも付保されていることもあり、複数利用することも可能です。
- 死亡事案や重度の障害が残った場合、民事での損害賠償請求を考えている場合、労災保険の申請に自信がない場合には、ぜひ弁護士にご相談ください。
労災で弁護士費用特約が使えないときの弁護士費用はどれ位?
まずは、弁護士費用特約が使えない場合を前提に、労災事故を弁護士に依頼すると、どのくらいの費用が必要なのか確認したいと思います。
もちろん、各弁護士や法律事務所は、自由に弁護士報酬を設定していますが、おおよそ目安を知っておくことは可能です。
- 弁護士費用の内訳は?
- 相談料
- 着手金
- 成功報酬
- 実費
弁護士費用の内訳は?
一口に「弁護士報酬」といっても、いくつかの費目が含まれることが一般的です。ここでは、弁護士報酬の内訳や各項目ごとの相場について、説明いたします。
主な弁護士費用としては、相談料、着手金、成功報酬、日当、実費等が考えられます。それぞれ見ていきましょう。
相談料
1つ目は、「相談料」です。
相談料は、相談をする際に発生する費用です。たとえば、事前に資料を提供したうえで1時間程度の相談をすることで発生します。
相談では、弁護士から事件の見通しや弁護士を介入させるメリットなどの説明、今後の注意点などを聞くことができます。また、担当する弁護士との相性を確認することもできるでしょう。
相談料は、時間ごとに設定されている場合が多く、1時間あたり1万円から3万円程度が一般的かと思います。
事務所によっては、初回相談に限り無料としていることもあります。
着手金
2つ目は、「着手金」です。
着手金は、弁護士が依頼を受けたことを前提に、事件に「着手」するときに発生する弁護士費用です。
この着手金の定め方もいろいろあり、たとえば、以下のように、労災事件においては手続ごとに着手金を設定していることもあります。
- 相手方との交渉の着手金
- 労災保険への申請の着手金
- 証拠保全手続の着手金
- 訴訟手続に関する着手金
労災事件の被災者は怪我をして収入が減少していることもあり、着手金を無料とする法律事務所もあるようです。
なお、着手金は途中で契約を辞めた場合にも、その一部または全部が返還されないことが多いので、契約の際にはきちんと説明を聞くようご留意ください。
どこまでの範囲が委任の内容かによって、また請求できるであろう見込み金額によって、着手金の額も様々ですが、交渉を含む着手金であれば、30万円前後が一つの目安ではないかと考えます。
成功報酬
成功報酬は、契約書で定めた一定の条件を達成(成功)することで、発生する報酬です。
回収額のうち一定の割合と定められることが多いです。
完全成功報酬型の場合には、着手金がない分、割合が高く定められているようです。
具体的な成功報酬発生の条件について、しっかりと理解をしておく必要があります。
完全成功報酬であれば、請求認容額(または回収額)の10~25%程度が一つの目安ではないでしょうか。
日当
日当は、たとえば遠方などに弁護士が出向く場合に、発生する弁護士報酬です。
労災事故の案件で、相手方と交渉する際や裁判所に出廷する際などに、弁護士が出向くことがありますが、すべての場合に「日当」が発生するわけではありません。
たとえば、遠方の相手方や裁判所など、移動時間を含めて一定時間以上を要する場合に日当が発生するとされることが多いです。
どのような場合(どのような距離、所要時間)であれば日当が発生するのか、日当の中に宿泊費や交通費が含まれるのか、別途支払う必要があるのか
距離や所要時間にもよりますが、1日あたり3~10万円程度が目安です。
実費
最後に、実費です。実費は、実際に要した費用であり、たとえば、交通費、通信費、郵便代などに当てられます。
事前に一定額を預かっておき、契約終了時点で精算するという運用もあれば、一定期間ごとに精算をするという運用もあるようです。
労災でも弁護士費用特約が使えることもある
さて、ここまでは労災事件を弁護士に相談・依頼する場合の大まかな費用について確認してきました。
では、弁護士費用特約が使えると、どのような影響があるのでしょうか。
- 弁護士費用特約が使えると、どうなるのか
- 自動車の保険以外にも弁護士費用特約が付保されていることがあります
- 弁護士費用特約は複数を同時に利用できます
弁護士費用特約が使えると、どうなるのか
弁護士費用特約の利用が可能であれば、上限はあるものの、まずは弁護士費用特約で弁護士費用が支払われることになるため、弁護士への相談・依頼への経済的負担が大きく軽減されます。
まずは、加入の保険に弁護士費用特約が付いているかどうか、労災事故でも使えるのかどうかを確認することが大切です。保険代理人店や保険会社の担当者に連絡をすれば教えてくれます。
自動車の保険以外にも弁護士費用特約が付保されていることがあります
自動車やバイクを持っていないので、自分には弁護士費用特約はないと考えていらっしゃる方もおられます。
しかし、これは勘違いで、火災保険や家財保険に弁護士費用特約が付いていることは多く、クレジットカードにも付帯している場合もあります。そのほか、海外旅行保険、医療保険、自転車保険、単独型弁護士費用保険などが利用できることもあります。
自動車やバイクを持っていない方でも、これらの保険を調べてみる価値はあるでしょう。
また、ご本人が契約者ではなくても、家族(たとえば、同居の親族や別居の未婚の子など)の弁護士費用特約が使えるケースもあります。ご家族も含め、幅広く保険を確認してみることが重要です。
弁護士費用特約は複数を同時に利用できます
調べてみた結果、複数の弁護士費用特約を利用できるとなった場合、弁護士費用特約を複数利用することが可能です。
どちらから使うのか等は保険会社同士の調整も必要になりますが、単純に上限額が合算されるようなイメージを持っていただければよいでしょう。
労災で弁護士費用特約がなくても弁護士に依頼すべきケース
さて、これまで見たように、弁護士費用特約を用いることができれば、弁護士への依頼のハードルは大きく下がることになるでしょう。
では、弁護士費用特約がない場合、使うことができない場合であっても、費用を自分で負担してまで弁護士に依頼をするべきなのでしょうか。
以下、費用負担をしてでも弁護士に依頼をするメリットの大きなケースをご紹介します。
- 死亡事案や重度の障害が残存する(残存した)ケース
- 会社への民事での損害賠償請求を考えているケース
- 労災保険の手続など申請に不安があるケース
死亡事案や重度の障害が残存する(残存した)ケース
まずは、労災事故の結果、被災者が死亡してしまったケースや、重度の後遺障害の残存が想定されるケースです。
これらのケースでは、突然の出来事に被災者の家族はどうしてよいかわからず、混乱した状況が続くことでしょう。
しかし、早期に労災申請の手続は煩雑なこともあり、生活を維持しながら、治療を受け、労災手続を行うことは容易ではありません。弁護士が労災手続を支援することで、少しでも治療に専念してもらうことが可能です。
また、重篤な結果が生じている以上、それに照らして妥当な補償がなされなければなりません。弁護士が介入することで、適切な障害等級認定のサポートや、適切かつスムーズに労災保険の手続をとることが可能です。
会社への民事での損害賠償請求を考えているケース
労災保険からの給付だけでなく、会社への損害賠償請求を検討している場合にも、弁護士の介入は不可欠です。
労災保険は、会社側の過失有無にかかわらず給付がなされますが、民事上の損害賠償請求を行うには、会社に法的な責任(過失、安全配慮義務違反)などが必要です。
この責任追及には、専門的な見地からの判断や、必要十分な証拠収集が不可欠ですので、まさに弁護士が活躍すべき場面であろうと思います。
労災保険の手続など申請に不安があるケース
労災保険の手続には会社側の協力が原則として必要であり、面倒に感じる方もいらっしゃるでしょう。
会社が協力してくれるのかわからない、会社とはやりとりしたくない等のご希望もあろうかと思います。また、どの書類を、いつ、どうやって作成すればよいのか、提出すればよいのかわからない等の漠然とした不安もあるでしょう。
弁護士が介入することで、適時に適切な書類の作成をご案内することが可能であり、労災保険の手続に不安や煩雑さを感じていらっしゃる方は弁護士への相談をおすすめいたします。
まとめ
いかがだったでしょうか。今回は、労災保険の弁護士費用を中心に、弁護士費用特約のこと、特約がなくとも弁護士に依頼するメリットがあること等を説明いたしました。
弁護士を選ぶ際のご参考になればうれしく思います。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。