労災で休業補償が支給される期間はいつまで?専門弁護士が請求の方法や支給期間について徹底解説!
2023年06月08日
仕事中に病気になったりケガを負ったりした場合、治療費などの出費が発生するうえに収入が減少したり途絶えたりするおそれがあります。
仕事を休んでいる間の補償を受けられるかどうか、受けられるとしてその金額はどの程度であるかがわからない場合、将来の見通しができず、大きな不安を感じることでしょう。
仕事中の病気やケガによって休業を余儀なくされた場合には、その間の補償として、労災保険から休業補償の支給を受けることができる可能性があります。
この記事では、労災保険から休業(補償)給付を受けとることができる期間について、詳しく解説いたします。
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- 休業(補償)給付の請求の流れがわかります。
- 休業(補償)給付はいつからいつまでもらえるのか、いくらもらえるのか等、休業(補償)給付の期間について詳しく解説しています。
- 休業(補償)給付の期間についてのよくある質問にも回答しています。
労災の休業補償が支給される期間
労災休業補償は、業務または通勤が原因となった傷病の療養のため、労働することができず、賃金を受けられないときの給付をいいます。
この休業補償制度の概要や請求の時期や流れなどを確認していきましょう。
休業補償が支給される要件
まず、簡単に労災休業補償の制度について概要をお伝えします。
療養のために仕事を休み、賃金を受けていない場合には、休業(補償)給付を受けることができます。
支給の要件は、次の1~3のとおりです。
- 1 業務上の事由または通勤による負傷や疾病による療養であること
- 2 労働することができないこと
- 3 賃金を受けていないこと
支給の内容(いつから、いくら)は、次のとおりです。
- 支給の対象:休業4日目から(休業初日から3日目までは労災保険からの支給対象外です)
- 支給の内容:給付基礎日額の80%(保険給付60%+特別支給金20%)
いつから支給されるのか
では、休業(補償)給付を受けるためには、どのような手続きが必要でしょうか。
大きな流れは次のとおりです。
労働災害発生
↓
請求書を労働基準監督署(労基署)に提出
↓
労働基準監督署の調査
↓
支給・不支給の決定
↓
指定された振込口座へ保険給付が支払われる
休業(補償)給付は、休業が発生したらすぐに支払われるものではありません。
まず、支払われるまでの間、「待期期間」が存在しています。
休業補償の待期期間は、休業初日から3日までです。
休業4日目からは休業(補償)給付を受け取ることができます。
もっとも、手続の流れにも記載したとおり、休業(補償)給付を受け取るには、請求が必要です。そして、請求を受けた労働基準監督署による調査や認定も必要です。
そのため、休業4日目以降は休業(補償)給付の対象とはなりますが、実際に、給付を受け取ることができるようになるまで、請求から約1か月程度を要することもあります。
いつまで支給されるのか
休業(補償)給付の3つの要件が満たされている限り、支給は継続します。
では、支給が停止されるのは、どのような場合でしょうか。
治ゆの場合
たとえば、労災認定されていた病気や怪我が「治ゆ」して、再び仕事ができるようになれば打ち切りとなります。
ここでいう「治ゆ」とは、身体の諸器官・組織が健康時の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待できなくなった状態をいいます。
つまり、労災保険では身体が完全に回復していなくても、医学的な観点からは症状に変動が見られなくなってしまい、心身に障害が残ってしまった場合でも(症状固定)、「治ゆ」と表現しているので、注意が必要です。
まだ症状が残っていて仕事に復帰できていないときでも、医師が症状固定であると判断した場合は、休業(補償)給付は打ち切りとなります。
傷害補償年金への移行の場合
療養開始後1年6ヶ月経過し、その負傷又は疾病が治っておらず傷病等級表の傷病等級に該当する程度の障害がある場合は、傷病(補償)年金が支給されることになり、休業(補償)給付の支払は停止されます。
骨折の抜釘手術など期間を空けて治療が必要な場合
骨折などの怪我の場合、体内にボルトやプレートを入れて患部を固定することがあります。
ボルトやプレートを入れたまま職場復帰する方もいらっしゃるでしょう。
休業補償との要件の関係では、一旦職場復帰すれば、その時点で原則として休業(補償)給付の支給は停止します。
では、抜釘などで期間が空いてから再度治療をする場合に休業となる場合は、どのように考えられているのでしょうか。
こういった場合には、「症状の再発」という扱いになり、休業補償給付が再開されることが一般的です。
一部のみ休業の場合
治療中やリハビリ期間には、通院などのために就業時間の一部のみを休業する場合もよくあります。こういった場合には、休業(補償)給付はどう扱われるのでしょうか。
このような場合には、一部休業をした日の給付基礎日額から実働したことによって支払われた賃金額を控除した金額を基準に、休業(補償)給付を計算します。
つまり、支給金額に影響はしますが、支給そのものが停止されるわけではありません。
労災の休業補償の期間が終了する場合
少し重複しますが、休業補償の期間が終了する場合を整理しておきます。
休業補償の要件を満たさなくなった場合
まずは休業補償の1から3の要件を満たさなくなった場合です。
傷害補償年金への移行の場合
また、療養開始後1年6ヶ月経過し、その負傷又は疾病が治っておらず傷病等級表の傷病等級に該当する程度の障害がある場合は、傷病(補償)年金が支給されることになり、休業(補償)給付の支払は停止されます。
ただし、1年6ヶ月を経過していても、症状固定に至っておらず、傷病補償年金への移行がなされない場合には、給付が継続します。
労災の休業補償の期間についてのよくある質問
最後に、休業(補償)給付の期間に関するよくある質問について回答いたします。
退職後の扱いについて
まず、退職後の扱いについてです。
労働者災害補償保険法では「保険給付を受ける権利は、労働者の退職によって変更されることはない。」と規定しています(第12条の5)。
休業(補償)給付の受給中に会社を退職した、または定年退職した、会社が倒産したなどの理由があったとしても、支給要件を充たしていれば給付は継続されます。
有給休暇の扱いについて
労災が原因で有給休暇を使用することはできるのでしょうか。
有給休暇とは、出勤している場合と同じように、使用者から給与が支払われる休暇をいい、100%の給与が支給されます。
労災保険の支給額は、上にも記載したとおり、特別支給金を含めても給付基礎日額の80%ですので、有給休暇を希望する方もいらっしゃるでしょう。
しかし、会社からの支払いを受ければ、休業(補償)給付の要件を満たさなくなるため、休業(補償)給付は支給されません。
結論としては、労災を原因とする場合も有給休暇を使うことは可能ですが、有給休暇による会社からの給与と労災保険の休業(補償)給付を受け取ることはできないので注意してください。
土日などの扱いについて
休業(補償)給付は土日も対象になるのでしょうか。
休業(補償)給付は、療養のために休業して賃金の支払いを受けていない期間すべてが支給対象日になります。
つまり、土日など会社の所定休日であっても、支給されます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今日は、労災給付の中でも生活に直結する休業(補償)給付の期間について、詳細に説明をいたしました。
休業(補償)給付の支給や打ち切り、症状固定などでお困りであれば、弁護士へのご相談をおすすめいたします。