大麻の所持で逮捕されたら起訴?実刑?専門弁護士が解説
最終更新日: 2023年07月12日
大麻所持がばれたら逮捕されるの?
大麻所持で逮捕されたら起訴されてしまうの?
大麻所持で起訴されたら執行猶予は付くの?
ご自身やご家族などが大麻所持で警察に検挙されたときは、このような不安を覚えるかと思います。今回は、刑事事件を数百件解決してきた専門弁護士がこのような不安や疑問について解説します。
大麻の所持で逮捕されないことがある?
大麻所持の事実を警察に知られた場合、逮捕されるのでしょうか。逮捕される場合と逮捕されない場合についてご説明します。
薬物犯罪は原則として逮捕される
薬物犯罪には密行性があります。つまり、ばれないようにこっそりと入手し、使用するときも自宅などの密室で使用されます。そのため、どのような関係者がいるのか、どのような関係証拠があるのか、捜査の初期段階ではわからないことが多いのです。
そのため、逮捕しなければ容易に証拠隠滅や関係者の口裏合わせをされてしまいます。ですから、薬物犯罪では他の犯罪よりも逮捕されることが多いのです。
在宅捜査になるケースもある
とはいえ、全ての事件で逮捕されるわけではありません。証拠隠滅の可能性が低いケースでは逮捕されないこともあります。
例えば、既に家宅捜索を終えており、犯行を認めていて、入手先についても供述をしていて、その供述が信用できるような場合には、証拠隠滅の可能性は低いといえます。
このようなケースでは逮捕されずに在宅捜査となることがあります。
尿検査が陽性でも逮捕はされないケース
大麻は所持していなかったけれども、尿検査で大麻の陽性反応が出た場合に逮捕されるか、というご相談はしばしばあります。
大麻取締法は大麻の所持は規制していますが、使用は規制していません。そのため、大麻そのものが見つからなかった場合には、いかに尿検査が陽性で使用の事実がわかったとしても起訴することはできません。
そのため、このようなケースでは逮捕されることはありません。
友人が逮捕されたら自分も逮捕される?
知人、友人が大麻の所持や栽培で逮捕された場合に、自分も逮捕されるのではないかというご相談を受けることはよくあります。
このような場合、逮捕された知人、友人の供述や携帯電話の内容から関係者に捜査が及ぶことがあります。そして、警察が家宅捜索に来たときに大麻が発見されると、現行犯逮捕となります。
他方、そのような事態を恐れ、大麻を全て処分してしまう方もおられるでしょう。その場合には家宅捜索で大麻が発見されることはありません。
しかし、そのように処分をしたとしても、知人、友人が所持していた大麻に関する共同所持で逮捕されることもありますし、大麻の譲受罪で逮捕される可能性もあります。
大麻の所持で逮捕されたら起訴される?実刑?
次に、大麻所持で逮捕されたら起訴されてしまうのか、起訴されたら実刑判決になってしまうのかについてご説明します。
勾留される期間
逮捕されると48時間以内に検察庁へ事件が送致され、そこから24時間以内に検察官は裁判官に10日間の勾留を請求します。
そして裁判官が勾留を決定すると10日間の勾留となり、さらに検察官が勾留の延長を裁判間に請求してそれが認められると最長10日間、勾留期間は延長されます。
このように起訴前の勾留期間は最長20日間、逮捕から勾留決定前の日数も含めると最長23日間、身柄拘束されることとなります。
釈放はされる?
このように逮捕、勾留をされると長期間、仕事や学校などの社会生活を送ることができなくなります。
薬物犯罪の場合、裁判官は勾留決定をすることが多いのですが、弁護士が働きかけることによって、裁判官、裁判所は罪証隠滅の可能性が低いと判断し、検察官の勾留請求を認めず釈放することがあります。
また、即時の釈放までは認めずとも勾留期間が短縮されることもあります。
そして、起訴された後は保釈請求をすることができます。この保釈は必ず許可されるわけではなく、罪証隠滅の可能性が高い場合などには保釈は許可されません。
保釈が許可される場合、よほど資産が多い方でない限りは150万円から300万円の保釈金を裁判所に預け入れることで釈放されます。
起訴はされる?
大麻の所持で逮捕された場合、証拠が十分であれば原則として起訴されます。しかし、特に初犯の場合で、所持量も多くない場合には2割から3割のケースで起訴猶予として不起訴処分になります。
そのように起訴猶予による不起訴処分を目指す場合には、被疑者の反省や再犯防止について弁護士から検察官に意見書を出してもらうことが重要です。
他方、大麻の所持で逮捕された場合、所持の事実や所持の故意について証拠が不十分なケースがしばしばあります。そのようなケースでは、起訴したとしても無罪となる可能性があることから嫌疑不十分で不起訴処分となることがあります。
報道はされる?
逮捕された場合、ニュースになって報道されるのではないかと心配になる方は多くおられます。
もちろん、逮捕されれば必ず報道されるわけではありません。特に少量の大麻を単独で所持していたというケースは全国的に非常に多く、被疑者の職業が公務員や教員などでもない限り、報道する価値は乏しいといえます。
もっとも、地方紙などにはこのようなありふれた事件であっても報道されることがあります。残念ながら、弁護士が報道機関や警察に申し入れたとしても報道を止めさせることはできません。
執行猶予はつく?
起訴された場合、犯行を認めていれば原則、有罪判決がくだされます。この場合に執行猶予が付くのか、実刑判決となり刑務所に服役するのかは強い関心事です。
初犯の大麻所持であれば執行猶予が付くことはほぼ間違いありません。ただし、重罪である営利目的の所持の場合には、初犯であっても実刑判決となる可能性が高くなります。
では、初犯ではなく再犯の場合はどうでしょうか。
法律に書かれているものではありませんが、過去の経験上、前回の判決から10年が経っていれば執行猶予が付く可能性が高く、7年が経っていれば執行猶予が付く可能性がある、それ以下の年数しか経っていない場合には執行猶予が付く可能性は低いといえます。
未成年者の場合
被疑者が未成年者の場合には成人とは多少異なります。未成年者の場合、刑罰を与えるという観点ではなく、どのような措置が健全な成長に必要かという観点から考えられます。
まず、捜査にさほど時間がかからないケースでは、検察官は、勾留ではなく、勾留に代わる10日間の観護措置を裁判官に請求します。この観護措置がとられますと警察署ではなく少年鑑別所にて生活することになります。
10日間の観護措置が終わると、事件は家庭裁判所に送致され、3週間から4週間、少年鑑別所にて非行原因などについて調査がなされます。
そして少年鑑別所で過ごす3週目から4週目に審判が開かれ、保護観察、少年院送致などの処分が下されます。
成人であれば初犯で刑務所に入ることはほとんどありませんが、未成年者の場合、更生のために必要と家庭裁判所が判断すれば、初犯であっても少年院に入ることがあります。
大麻の所持で逮捕された事例
最後に、大麻所持で逮捕された具体的な事例についていくつか見てみましょう。
勾留されずに釈放された事例
地方の大学に通う未成年の依頼者は、友人と東京へ旅行に行きました。友人らの一人が皆で使うために繁華街で大麻を購入しました。皆で歩いていたところ、警察官に職務質問と所持品検査をされてしまい、大麻の所持がばれて全員その場で現行犯逮捕されました。
依頼者は警察に正直に話をしていましたので、勾留の必要性は低いと考えられました。そこで、検察官の勾留請求を却下するよう裁判官に求めたところ、勾留はされず釈放となりました。
その後地元の家庭裁判所に事件が移送され、非行原因や今後の更生について家庭裁判所の調査官と話し合い、審判は予想通り保護観察処分となり事件は終結しました。
共同所持で不起訴となった事例
依頼者は、友人らと駐車中の車内にいたところ、警察官の職務質問を受けました。友人らの一人が大麻を所持していたことから、全員が大麻の共同所持の疑いで現行犯逮捕されました。
依頼者は、友人が大麻を所持していることは全く知らなかったということでした。確かに、過去に友人らと大麻を使用したことはあるものの、当日友人が大麻を所持していることは知らなかったのです。
警察は当然、依頼者の話を疑いましたが、取り調べに対する適切な対処を助言し続けました。 その後、勾留延長決定に対する準抗告が認められ、勾留期間は短縮され、処分保留のまま依頼者は釈放されました。
その後しばらくして依頼者については不起訴処分となり事件は終結しました。
再犯で実刑となった事例
依頼者は、職務質問で大麻のパケ3袋を押収され、現行犯逮捕されました。約6年前に大麻所持で懲役8か月、執行猶予3年の判決を受けていました。前回の判決から未だ6年しか経っていないことから、今回も執行猶予を得ることは困難と判断されました。
起訴された翌日、保釈金150万円で保釈されました。
公判には妻が情状証人として出廷し、今後の監督を約束しましたが、やはり裁判所は執行猶予は付けずに実刑判決としました。もっとも、検察が懲役1年6か月を求めたのに対し、判決は懲役6か月でしたから服役の期間は比較的短期で済みました。
まとめ
以上、大麻所持の逮捕や裁判について解説しました。
大麻所持で逮捕を回避したい方、早期に釈放して欲しい方、実刑判決を回避したい方は、大麻事件に強い弁護士にできる限り早期にご相談ください。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。