養育費はどうすれば増額できる?条件・進める方法・押さえるべきことを解説
最終更新日: 2023年09月28日
- 養育費を受け取っているものの、現在の金額だけではとても足りない
- 養育費の増額を元配偶者に要求しているが、なかなか応じてくれない
- 養育費の増額を弁護士に相談したら、どのような行動が期待できるのだろう?
養育費とは、離婚後に未成年の子どもが自立するまでの間、親権を持たない親が子どもの養育のために支払う費用です。
養育費は子どもの成長を支える大切な費用となります。
ただし、子どもが成長し養育に必要となる費用の増加等で、以前に取り決めた養育費では足りなくなるケースもあります。
そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、養育費の増額は可能なのか、増額請求の方法等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 養育費は支払う側の収入が増えた場合や子どもに必要な費用が増えた場合などに増額請求できる
- 養育費を増額する方法は協議や家庭裁判所での調停、審判がある
- 養育費の増額請求について弁護士に相談すれば的確なアドバイスが受けられる
養育費は増額できるのか?
養育費は一度決まった後でも変更が可能です。
養育費を支払う側の元配偶者に同意を得れば増額ができます。ただし、支払う側にも生活があるので、増額自体が可能か、どのくらいまで増額できるかをよく相談しましょう。
支払う側が増額に反対している場合、家庭裁判所の調停で増額を話し合う方法や、審判で増額の決定をしてもらう方法があります。
養育費を増額できる条件
養育費が増額できるのは、子どもの成長に合わせるための他、支払う側・受け取る側の親の事情も条件となります。
こちらでは、養育費が増額可能なケース3つを取り上げましょう。
支払義務者の収入が増えた
離婚後、受け取る側の収入がさほど増えていないにもかかわらず、支払う側の収入が上がった場合、以前と同じ養育費の金額のままでは、受け取る側は不公平だと感じてしまいます。
その場合、支払う側・受け取る側で、養育費の金額を決め直した方がよいでしょう。
ただし、すでに離婚しているので、支払う側がどれくらい収入を得ているかは、容易にわかりません。
そのため、離婚時に養育費の金額や支払方法を決める場合、「〇年に1回(年月日を指定した方がなおよい)、お互いの年収を開示し、養育費を決め直す」という条件も盛り込んでおいた方が無難です。
親権者の収入が激減した
支払う側の収入は変わっていないものの、受け取る側の収入減少が激しく、現在の養育費の金額のままでは著しく不公平となる場合があります。
このケースも、養育費の増額を請求する理由となります。
たとえば、受け取る側の収入減少の原因が次のようなケースならば、支払う側は増額に応じる可能性が高いです。
- 受け取る側の親または子どもが病気やケガで入院し、現在の養育費では足りなくなった
- 受け取る側の親の勤め先が倒産し、これから新たな仕事を探す必要がある 等
なお、受け取る側の親が働けるのに働かないという場合は、なかなか増額に応じてくれないかもしれません。
子どもに必要な費用が増えた
子どもが成長していくと私立の学校に進学したり、塾や習い事をしたりして費用がかかり、養育費が足りなくなる可能性もあります。
ただし、事情の変更があるからといって、養育費の増額が必ず認められるわけではありません。
事情の変更がある場合、以下の条件を確認しましょう。
- 当初の養育費が、教育費用の増額分を見越して決められていない
- 支払う側が受け取る側の教育内容を承知していた
- 支払う側の教育歴と生活レベルを考慮した教育内容といえる
いずれの条件にも合致しなければ、増額は認められません。
養育費を増額するための方法
支払う側と受け取る側とが話し合いに合意すれば、養育費の増額が可能です。
しかし、支払う側が同意しなかった場合は調停や審判で解決を図ります。
話し合い
支払う側と受け取る側が養育費の増額を冷静に話し合います。
話し合いの合意ができない場合は、弁護士と相談し交渉を依頼しましょう。
弁護士は養育費の増額が適切かどうかを判断し、対応の仕方をアドバイスします。
自分に代わって弁護士が支払う側と交渉するので、養育費の増額に合意できる可能性も高くなります。
調停
話し合いで養育費の増額に合意できなかった場合、調停による解決が可能です。
相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に、「養育費(増額)調停」を申し立て、話し合いを継続します。
家庭裁判所が夫婦の主張を聴き、アドバイスや意見の調整を図り、養育費に関する合意を目指していきます。
養育費(増額)調停の申立てには、次の書類の提出が必要です。
- 申立書原本および写し各1通
- 送達場所の届出書1通
- 事情説明書1通
- 進行に関する照会回答書1通
- 未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)1通:本籍地の市区町村役場で取得
- 申立人の収入関係の資料:源泉徴収票、給料明細、確定申告書等の写し
- 非開示の希望に関する申出書:必要があれば
- 収入印紙:子ども1人につき1200円
- 郵便切手100円2枚、84円10枚、10円20枚
審判
調停でも合意に達しないときは、審判に移行し増額をするかどうか判断します。
審判では支払う側・受け取る側の主張および、一切の事情を考慮し家庭裁判所が決定を下します。
審判で増額が妥当であると認められたとき、支払う側は今後増額された養育費を支払わなければいけません。
養育費の増額請求のために押さえるべきこと
養育費の増額請求をする前に、把握しておくべき内容の確認や、専門家にも相談し、万全の体制で交渉や調停等に臨みましょう。
証拠をもとにした主張
養育費の金額を判断する場合、裁判所が公表している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に決定します。
たとえば、離婚時に支払う側の夫が会社員(年収750万円)で、受け取る側の妻がアルバイト店員(年収150万円)・子ども1人(10歳)がいた場合、算定表を用いると養育費は次の通りです。
- 離婚時の養育費:毎月約78,000円
しかし、5年後には夫の収入が増加し(年収900万円)、妻の収入(年収150万円)は変わらないままで、妻と同居している子どもは15歳になりました。算定表を用いると養育費は次の通りです。
- 5年後の養育費:毎月約116,000円
このように、算定表の金額を参考に、受け取る側の事情と支払う側の事情も考慮して、双方が納得できる養育費の金額を決めていきます。
弁護士への相談
養育費の増額請求をするとき、弁護士に相談し今後の対応を話し合ってみましょう。
弁護士は増額請求を交渉するときのポイントや、交渉が成立しなかった場合の対処法もアドバイスします。
また、弁護士を立てれば支払う側との交渉等を任せられ、交渉がうまくいかなくても、本人の代理人として調停の申立てが迅速に進められます。
調停には弁護士も同席できるので、弁護士のサポートのもと、説得力のある増額請求の主張が可能です。
増額請求の交渉や調停を行う場合は、離婚問題に詳しい弁護士を選びましょう。離婚問題に詳しい弁護士は、法律事務所のホームページをみて判断できます。
主に次のような内容が掲示されているかを確認します。
- 離婚相談実績や交渉実績等を明確に公表している
- 養育費をはじめとした離婚に関する話題が豊富に掲載されている
- 養育費請求をはじめ離婚交渉、調停等にかかる費用が明記されている
なお、初回の相談を無料にしている法律事務所もあります。
まとめ
今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、養育費の増額の条件や、増額請求のポイント等について詳しく解説しました。
養育費を受け取る側は、支払う側の事情も良く考慮して、どのくらいまで増額が可能なのか、よく話し合ってみましょう。
養育費の増額に悩んだら、なるべく早く弁護士に相談し、アドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。