慰謝料請求できる条件は精神的苦痛でどう決まる?条件ごとの相場も詳しく紹介

2025年01月30日

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  • 配偶者から嫌がらせを受けている。暴力は受けていていないが、離婚の他に慰謝料請求はできるのだろうか?
  • 配偶者が原因で婚姻生活が破綻し、うつ病になった。離婚条件に慰謝料を加えたい。
  • 配偶者への慰謝料の相場はどれくらいか?ケースごとに違ってくるのだろうか?

配偶者や恋人から暴力を受けていなくても、精神的苦痛を受けた事実を証明できれば、慰謝料請求が可能な場合があります。

ただし、精神的苦痛を受けたからといって、どのようなケースでも慰謝料を請求できるわけではないので注意が必要です。

そこで今回は、男女問題の解決に携わってきた専門弁護士が、精神的苦痛で慰謝料を請求できる条件、ケースごとの相場等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 精神的苦痛で慰謝料を請求できるケースは、配偶者の不貞行為や悪意の遺棄等がある
  • 精神的苦痛で慰謝料を請求できないケースは、性格の不一致による離婚、不貞行為が確認できない浮気等がある
  • 精神的苦痛の深刻度や加害者の悪質性によって、慰謝料の金額は大きく変わる

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

慰謝料請求できる条件は精神的苦痛でどう決まる?

配偶者や恋人から不法行為(嫌がらせ等)を受けた場合、精神的苦痛を理由として慰謝料請求できる場合があります。

ただし、裁判で慰謝料請求が認められるのは、配偶者や恋人の言動と被害者側の精神的苦痛に因果関係がある場合に限られます。

精神的苦痛の定義

精神的苦痛とは精神面での苦痛や損害を指します。まさしく人の精神に関する損害なので、どのような行動で人の精神がどれだけ傷つくかは、人それぞれによって大きな差が出ることもあるでしょう。

また、外傷を伴わない精神的苦痛を証明するのは難しいという一面があります。

そのため、精神的苦痛の大きさは、各人が傷ついた度合いだけで判断せずに、原因となった言動に着目します。

つまり、傷ついた被害者の精神だけではなく、精神を傷つける原因となった行為との因果関係で慰謝料の成否を判断するのです。

慰謝料の定義

慰謝料とは、精神的苦痛に対する「損害賠償」を指します。民法の条文には「慰謝料」と明記された規定はありませんが、財産以外の損害に対しても、損害賠償を認める規定が設けられています(民法第710条)。

この財産以外の損害である精神的損害の賠償を一般的に慰謝料と呼んでいるのです。

出典:民法 | e-Gov法令検索

裁判に発展することも

被害者が裁判で精神的苦痛に関する慰謝料を請求したいのであれば、配偶者や恋人の不法行為と精神的な損害との因果関係を証明しなければなりません。

裁判では、被害者と相手方(配偶者や恋人)とが、損害賠償の要否や、賠償金額(慰謝料額)について争います。

被害者は次の要件を満たせば、精神的苦痛を理由とした損害賠償(慰謝料)請求訴訟の提起が可能です(配偶者との離婚と慰謝料請求を行う場合は離婚訴訟)。

  • 相手方(配偶者や恋人)に不法行為(嫌がらせ等)がある
  • 不法行為が原因で、被害者側が苦痛や悲しみ等の精神的な打撃を受けた

裁判所が、相手方の言動と被害者側の精神的苦痛に因果関係があると認めたときは、被害者の主張を認める判決が言い渡されるでしょう。

精神的苦痛で慰謝料を請求できる条件

精神的苦痛を理由として相手方に慰謝料を請求できるケースはいろいろあります。

精神的苦痛に関する客観的な証拠があれば、被害者側が裁判で非常に有利となるでしょう。

不貞行為

配偶者の「不貞行為」を理由に慰謝料請求が可能です。

貞操義務に反し不倫をした配偶者と不倫相手は、被害者に対して精神的苦痛を与えたと判断され、判決で慰謝料の支払いを命じられるでしょう。

ただし、裁判所から不貞行為と認められるためには、配偶者と不倫相手の性行為の有無が判断対象となります。

そのため、被害者側に次の証拠があれば有利です。

  • 配偶者と不倫相手の性行為、または性行為が推認される画像や動画
  • 配偶者または不倫相手の出産(中絶)に関する証明書類

配偶者と不倫相手との不貞行為(性行為)が証明できなくても、慰謝料請求が認められるケースはあります。

たとえば、配偶者の不倫が原因で精神的苦痛を受け、うつ病になった等の事実が証明できた場合(例:医師の証明書等)です。

ただし、配偶者の不貞行為が証明できたわけではないため、受け取れる慰謝料額は低額となる可能性があります。

DV

配偶者や恋人からの「DV」を理由に慰謝料請求が可能です。

DVは暴力行為なので、配偶者や恋人から受けた暴力によるケガ・アザの画像や、医師の診断書等が証明となります。

配偶者や恋人によるDVで精神的苦痛を受け、うつ病になった等の事実が確認できた場合は、精神的苦痛に関する慰謝料も請求できます。

配偶者が金銭的な自由を奪い、精神的負担を加えた経済的DVの場合も同様に慰謝料請求が可能です。

裁判では、身体的暴力の慰謝料額に精神的苦痛分の慰謝料額を上乗せする形で、判決が言い渡されるでしょう。

悪意の遺棄

配偶者が自分や家族に対し「悪意の遺棄」を行った場合も、慰謝料請求が可能です。

悪意の遺棄とは、配偶者が無断で別居した(夫婦の同居義務違反)、家事や育児を全くしない(協力義務違反)、生活費の分担を拒否した(扶助義務違反)等の行為が該当します。

悪意の遺棄を理由とした慰謝料請求の場合、裁判所に次の証拠を提出します。

  • 預金口座(夫婦の共有財産)の履歴:配偶者からの入金がない証拠となる
  • 無断で締結した別居用物件の賃貸借契約書:配偶者が無断で別居した証拠となる
  • 治療費の領収書、医師の証明書:悪意の遺棄により精神的疾患を発症した場合

性行為の強要

たとえ配偶者や恋人であっても、自分が嫌がっているにもかかわらず性行為を強要してきたケースでは、慰謝料請求が可能です。

性行為の強要はもちろん、配偶者や恋人に脅迫や威圧的な態度で畏怖されたときも、深刻な精神的苦痛を受けたと判断されます。

性行為の強要を理由とした慰謝料請求の場合、裁判所に次の証拠を提出しましょう。

  • 配偶者や恋人から性行為を強要されている動画、音声
  • 治療費の領収書、医師の証明書:性行為の強要が原因で精神的疾患を発症した場合

精神的苦痛で慰謝料を請求できない場合

精神的苦痛を受けていれば、どのようなケースでも慰謝料を請求できるわけではありません。

自分が怖い思いをしても、生命・身体へ深刻な影響が認められないと、慰謝料請求は不可能な場合があります。

性格の不一致の離婚

性格の不一致による離婚の場合、夫婦のどちらかに原因があるわけではありません。

そのため、離婚の話し合いに手間取り精神的苦痛を受けたという理由で、離婚条件に慰謝料を加えても、配偶者の同意は得られない可能性が高いです。

また、性格の不一致だけの理由で離婚を目指す場合、法定離婚事由(民法第770条)に該当しないので、離婚訴訟の提起も認められません。

不貞行為が見られない浮気

配偶者と不倫相手の不貞行為が確認できなかったとき、調停や裁判を申し立てても、慰謝料請求は認められない場合があります。

主に次のようなケースです。

  • 配偶者と異性が食事をしただけだった
  • 配偶者と異性が映画をみたりレジャー施設で遊んだりしていた
  • 配偶者と異性がキスをしただけにとどまった
  • 配偶者と異性が日帰り旅行をしていた

ただし、配偶者と不倫相手とが性行為をしなくとも、交際が常態化したために精神的苦痛を受け、精神疾患を発症した事実が認められれば、慰謝料請求が可能です。

物損事故

交通事故の場合、どのような損害を受けたかによって慰謝料請求の対象になるか否かが決まります。

車に関する人身事故だった場合、被害者は負傷による慰謝料を請求できます。

交通事故によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)で、精神的な苦痛を受けている状態であれば、慰謝料(後遺障害等級慰謝料)の請求も可能です。

一方、物損事故だけであれば、被害者に精神的苦痛があっても慰謝料請求の対象とはならないでしょう。

会社側の質性が低い労働トラブル

会社との労働に関するトラブルで精神的苦痛が発生した場合、会社側の悪質性が低いと、慰謝料請求はできない場合が多いでしょう。

次のようなケースです。

  • 何らかの事情でやむを得ないと判断できる場合:新型コロナウイルスに多くの従業員が感染し自宅待機となり、感染していない労働者の仕事の負担が結果的に重くなった
  • 労働者のミスで業務に支障が出て、多くの時間を労働に費やす事態となった

会社が労働者に対して計画的に過重労働を強いるようなケースではなく、突発的な出来事が原因になっている場合、慰謝料請求は認められない可能性が高いです。

精神的苦痛による慰謝料の請求条件ごとの相場

配偶者や恋人の言動に着目し、ケースごとに被害者の精神が傷ついた度合いを判定していきます。そのため、法律上では「賠償額は一律〇〇万円」と決まっていません。

ただし、裁判で言い渡された慰謝料額を確認すれば、ケースごとに大まかな目安がわかります。

不貞行為

配偶者の不貞行為が原因で慰謝料を請求する場合、裁判所の判断では離婚するか・しないかで、相場に差が出ています。

  • 離婚をしない場合:数十万~100万円
  • 離婚をする場合:200万~300万円

不貞行為が原因となり、離婚という形で婚姻を解消した場合、慰謝料は高額になる可能性が高いです。

DV

配偶者や恋人のDVは、暴力を受けた回数や年数・悪質性・負傷の状況、精神的苦痛の有無等で慰謝料に差が出てきます。

50万〜300万円程度が相場です。ただし、配偶者が不貞行為や悪意の遺棄等も合わせて行っていた場合、300万円を超える高額な慰謝料が認められる場合もあります。

悪意の遺棄

悪意の遺棄の場合、50万〜300万円程度が相場です。

配偶者が家族に生活資金を入れないばかりか、家族の困窮する状況を無視し、不倫相手と同棲し性交を楽しむ目的で別居した場合は、裁判所は非常に悪質性が高いと判断するでしょう。

裁判所から配偶者に対し、相場の300万円を超える高額な慰謝料の支払いが言い渡されることもあり得ます。

性行為の強要

配偶者や恋人による性行為の強要の場合は、数十万〜300万円が相場です。

なお、配偶者や恋人が何度も性行為を求めてくるものの、こちらが断れば引き下がるようなケースであれば、慰謝料は請求できません。

性行為を求めてきたとき、脅迫や威圧、暴力を伴った場合は性行為の強要があったとして、慰謝料請求が可能です。

慰謝料請求できる条件が精神的苦痛でどうなるかは春田法律事務所まで

今回は男女問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、精神的苦痛で慰謝料が可能なケース等を詳しく解説しました。

春田法律事務所は男女問題の解決に強い法律事務所です。まずは弁護士と、精神的苦痛で慰謝料請求ができるかどうかについてよく相談しましょう。

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