悪意の遺棄とはなにか?定義や注意点を専門弁護士が徹底解説

最終更新日: 2024年01月24日

悪意の遺棄

  • 悪意の遺棄とはなにか
  • 自分の状況が悪意の遺棄に当たるのか把握したい
  • 悪意の遺棄をされた場合に慰謝料をどう請求すべきなのか

悪意の遺棄という言葉を知っていても、実際どういったことが悪意の遺棄に当たるのか、悪意の遺棄に該当する場合どういう対応をすべきなのか、までは詳しく知らないという方も多いでしょう。

そこで本記事では、悪意の遺棄の概要と具体例を解説し、悪意の遺棄をされた場合の対応について専門の弁護士が解説をしていきます。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 悪意の遺棄とは、同居義務・協力義務・扶助義務といった夫婦間の義務を怠って、配偶者や子供たちの生活水準を損なったことなどを指す
  • 悪意の遺棄に当たるかは、「同居義務」「協力義務」「扶助義務」をチェック
  • 慰謝料に関しては、実績が豊富で交渉力のある弁護士に相談することが大切

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

悪意の遺棄とはなにか?

悪意の遺棄とは、民法第770条1項2号で定められている言葉で、具体的には、同居義務・協力義務・扶助義務といった夫婦間の義務を怠って、配偶者や子供たちの生活水準を損なったことを指します。

たとえば、配偶者を家から追い出し、経済的な支援をしなかったり、家事や育児に関わらなかったり、病気や障害があるにも関わらず扶助をしなかった場合などが悪意の遺棄に当たります。これらの行動は婚姻関係を破壊し、離婚を申し立てる理由になります。

悪意の遺棄を理解するためにおさえるべき3つの義務

まずここでは、悪意の遺棄を理解するためにおさえるべき義務を解説します。

  • 同居義務
  • 協力義務
  • 扶助義務

それでは1つずつ、見ていきましょう。

同居義務

1つ目の義務は、同居義務です。

同居義務とは、婚姻関係がある中で夫婦や家族と共に生活をする義務を指します。法定されており、家族全員が共に生活することによって、家族全体の生活水準を向上させることができると考えられています。

同居義務は、正当な理由なく同居を拒むことはできません。家族全員が共に生活することができない場合は、裁判所からの命令によって強制されることがあります。

協力義務

2つ目の義務は、協力義務です。

協力義務とは、夫婦など家族間で共に生活するために、互いに協力することを義務づけられることを指します。

これは、夫婦間や家族間での共同生活を円滑にするために必要なことであり、家事や育児、経済的支援など、お互いに協力しあうことが求められます。協力義務は法定されており、義務を果たさない場合には、裁判所の判断によって強制されることがあります。

扶助義務

3つ目の義務は、扶助義務です。

扶助義務とは、家族や親族などお互いに扶助することを義務づけられることを指します。夫婦のどちらかに扶助が必要になった場合、同等程度の生活が送れるように扶助しなければなりません。扶助義務は、法定されており、家族の経済的な支援や生活上の支援をすることが求められます。

それでは、これらの3つの義務を守らない悪意の遺棄の具体例を紹介していきます。

同居義務を守らない悪意の遺棄の具体例

ここでは、同居義務を守らない悪意の遺棄の具体例を3つ解説します。

  • 理由もなく同居しない
  • 浮気相手の家で暮らしている
  • 配偶者を家から追い出す

それでは1つずつ、見ていきましょう。

理由もなく同居しない

具体例の1つ目は、理由もなく同居しないです。

具体例として、家族がいるのに急に家出して実家に帰ったり一人暮らしを始めたり、同意のない別居をすることが挙げられます。

また、配偶者を追い出して同居義務を守らない悪意の遺棄の例になります。さらに、合理的な理由もなく、親が子供を養育施設に置き去りにして養育を放棄することも悪意の遺棄にあたります。これらは法律上は違法であり、罰せられる可能性があります。

浮気相手の家で暮らしている

具体例の2つ目は、浮気相手の家で暮らしているです。

夫婦間で、一方が不倫相手と同居し、家族と離れて暮らすことも同居義務を果たさない悪意の遺棄の具体例として挙げられます。

不倫相手と同居は、夫婦間での同居義務を守らない行動であり、家族全体の生活に悪影響を及ぼす可能性があります。同意のない別居は同居義務に違反する行為であるとともに、不倫相手との同居では不貞行為も疑われます。

配偶者を家から追い出す

具体例の3つ目は、配偶者を自宅から追い出すです。

具体例として、配偶者を自宅から追い出し、一方だけが住んでいるような状態を作って暮らすことが挙げられます。

また配偶者を家から追い出すだけではなく、浮気相手などの別人物を家に入れて暮らすといった行為も考えられます。配偶者を追い出すことは、婚姻関係を維持するための同居義務を守らない行為だと言えます。

協力義務を守らない悪意の遺棄の具体例

次に、協力義務を守らない悪意の遺棄の具体例について以下の3つを解説をします。

・健康なのに働かない
・悪意をもって配偶者を困らせている
・家事育児をしない

それでは1つずつ、見ていきましょう。

健康なのに働かない

具体例の1つ目は、健康なのに働かないです。

夫婦や家族間では、お互いに協力しあうことで、生活を円滑にする必要があります。その中で、経済的な支援は特に重要です。

しかし、生活をしていくために収入が必要にも関わらず、健康なのに働かないことで、家族全体の生活水準を下げることになり、家族全体に悪影響を及ぼすことになります。働く意思を持たず、このような行動をすることは協力義務を果たしていないといえます。

悪意をもって配偶者を困らせている

具体例の2つ目は、悪意をもって配偶者を困らせているです。

協力義務を守らない悪意の遺棄の具体例として、配偶者を悪意をもって困らせることが挙げられます。

たとえば、配偶者に対して、暴言や暴力をはたらいたり、意図的に不快なことをする、必要なものを提供しない、金銭的な支援を拒否するなどの非協力的な行動は、協力義務を守らない悪意の遺棄に該当します。

家事育児をしない

具体例の3つ目は、家事育児をしないです。

協力義務を守らない悪意の遺棄の具体例として、家事や育児を拒否することが挙げられます。合意なく育児に参加しなかったり、一切の家事を拒否をすることで相手に大きな負荷を与えるとともに、家族全体に悪影響を及ぼすことになります。

扶助義務を守らない悪意の遺棄の具体例

続いて、扶助義務を守らない悪意の遺棄の具体例について以下の3つを解説をしていきます。

  • 配偶者が病気なのに面倒を見ない
  • 夫婦間の生活水準に明らかな差がある
  • ギャンブルなどでお金を費やし生活費を入れない

それでは1つずつ、見ていきましょう。

配偶者が病気なのに面倒を見ない

具体例の1つ目は、配偶者が病気なのに面倒を見ないです。

扶助義務を守らない悪意の遺棄の具体例として、配偶者が病気や障害があるのに面倒を見ないことが挙げられます。

配偶者が病気なのに面倒を見ないことで、生活に必要な支援を受けられなくなり、家族全体にも悪影響を及ぼすことになります。このような行動は、扶助義務を果たさないことになり、法律上も違法であり、裁判所からの命令によって強制されることがあります。

夫婦間の生活水準に明らかな差がある

具体例の2つ目は、夫婦間の生活水準に明らかな差があるです。

夫婦間の生活水準に明らかな差がある状態も扶助義務を守っていない具体例として挙げられます。夫婦間では、家計や財産を共有することが期待されており、特に経済的に劣っている一方に対して、他方が十分な支援をすることが求められます。

しかし、特に金銭面での差があり、相手に対して経済的な支援や生活上の支援を協力せず、明らかに生活水準に差が生まれている場合、扶助義務を果たしていないといえます。

ギャンブルなどでお金を費やし生活費を入れない

具体例の3つ目は、ギャンブル等でお金を増やし生活費を入れないです。

他の扶助義務を守らない悪意の遺棄の具体例として、ギャンブルなどでお金を費やし、生活費を入れないことが挙げられます。家族全員が共に生活するためには、家計を支え、必要なお金を管理することが求められます。

しかし、ギャンブルなどに多額のお金を使い込んでしまい、生活費を入れないことで、家計を破たんさせてしまうことになります。このような行動は、扶助義務を果たしていないといえます。

悪意の遺棄に当たらない具体例

ここでは、悪意の遺棄に当たらない具体例を5つ解説していきます。

  • モラハラやDVを理由とした別居
  • 単身赴任などの仕事を理由とした別居
  • 互いに合意して家計を分けて別居している
  • 自分自身に障害があり満足に家事を行えない
  • 病気が原因で働くことができない

それでは1つずつ、見ていきましょう。

モラハラやDVを理由とした別居

悪意の遺棄に当たらない具体例1つ目は、モラハラやDVを理由とした別居です。

モラハラやDV(家庭内暴力)を理由とした別居は、悪意の遺棄に当たらない具体例といえます。

モラハラやDVは、婚姻関係において重大な問題であり、安全や健康を守るためには、別居することが必要な場合もあります。こうしたケースで別居した場合には、悪意の遺棄に当たらないとされています。

単身赴任などの仕事を理由とした別居

悪意の遺棄に当たらない具体例2つ目は、単身赴任などの仕事を理由とした別居。

単身赴任などの仕事を理由とした別居は、悪意の遺棄に当たらない具体例と言えます。

仕事上の理由によって、一時的に別居することが必要な場合があります。こうしたケースも悪意の遺棄に当たらないとされています。なお、単身赴任だけではなく、子供を教育する上で必要とされる別居も悪意の遺棄に当たりません。

互いに合意して家計を分けて別居している

悪意の遺棄に当たらない具体例3つ目は、互いに合意して家計を分けて別居しているです。

互いに合意して家計を分けて別居している場合も、悪意の遺棄に当たらない具体例と言えます。別居することで、夫婦関係を見つめ直したり、新たな幸せを見つけるための準備をすることができます。

そのときに、互いに合意して家計を分けるということは、経済的な支援がないことに合意したとも言えます。そのためこのケースも悪意の遺棄とはいえません。

自分自身に障害があり満足に家事を行えない

悪意の遺棄に当たらない具体例4つ目は、自分自身に障害があり満足に家事を行えないです。

自分自身に障害があり、満足に家事を行えない場合も、悪意の遺棄に当たらない具体例といえます。障害によって自分自身が家事を行うことが困難になっている場合には、自分自身の責任ではなく障害によるものです。それに対して責任を負うことは適切ではありません。

そのため、こういったケースは悪意の遺棄とはいえません。むしろ、障害者が扶助を受けられるように、経済的な支援や生活上の支援を求めることができます。

病気が原因で働くことができない

悪意の遺棄に当たらない具体例5つ目は、病気が原因で働くことができないです。

病気が原因で働くことができない場合も、悪意の遺棄に当たらない具体例といえます

病気によって働くことが困難になっている場合、本人の意志とは関係なく家族の生活水準を保つための責任を全うすることができないことがあります。そのため、こういったケースも悪意の遺棄とはいえません。

悪意の遺棄をされた場合にできる対応

最後に、悪意の遺棄をされた場合にできることをご紹介します。

離婚の申し出が可能

離婚の申し出をするためには、離婚理由を証明することが必要です。悪意の遺棄は、離婚を申し立てる有力な理由になります。

また、悪意の遺棄が原因で、生活水準が落ちた場合には賠償を求めることもできます。悪意の遺棄を受けた場合には、弁護士やカウンセラーなどの専門家に相談することで、適切な対応をすることができます。

慰謝料の請求が可能

夫婦間の義務を怠って家族全体の生活水準を損う悪意の遺棄は、一定の金額の慰謝料請求が可能です。慰謝料は、被害者に対して損害賠償を行うために支払われるもので、生活費や医療費などの費用、心理的な苦痛などに対して支払われます。

また、悪意の遺棄が原因で離婚した場合には、子供の養育費を請求することも可能です。

トラブルを避けたい場合は専門弁護士へ相談

悪意の遺棄をした場合やされた場合、いずれの場合でもトラブルになる可能性が高く、婚姻関係や家族関係、財産や子育てなど様々な問題が発生します。そのため、法律上の権利や義務を理解し、適切な対応をすることができる専門弁護士に相談することをおすすめします。

また、協議や話し合い、裁判所での離婚調停・訴訟などの手続きも弁護士にお任せすることで、スムーズに進めることができるようになります。

まとめ

本記事では、悪意の遺棄について、その概要と具体例を解説し、悪意の遺棄をされた場合にできることについて弁護士が解説をしました。

当事務所では、離婚専門の弁護士がその知識と経験を生かして悪意の遺棄に対する弁護活動・ご支援もしております。悪意の遺棄でお悩みの方は、お気軽に無料相談をしてご依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

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