弁護士法人 春田法律事務所

親権を父親が取るには?親権を母親が取れない場合を専門の弁護士が徹底解説!

親権を父親が取るには?親権を母親が取れない場合を専門の弁護士が徹底解説!

2021年03月08日

親権はどのように指定されるのか?

父母の離婚、父母の別居などを理由に、親権者や監護権者を決めるにあたって協議が整わない場合、親権者や監護権者の指定を裁判所に求めることができます。

裁判所は、どういったことを考慮して、監護権者や親権者を判断することになるのでしょうか。

裁判所は、父母のどちらが親権者・監護権者としてふさわしいか、子の福祉の観点から総合的に判断します。

調停などの場合には、親権者指定に当たって裁判所から陳述書の提出を求められますが、裁判所の書式があり、だいたい以下のようなことが聞かれます。

  • 生活歴(学歴、職歴、婚姻や離婚歴、転居等)
  • 就労状況(職業、勤務先、職務内容、勤務時間、通勤方法・時間等)
  • 経済状況(収入、支出、負債の有無・内容等)
  • 心身の状況(病歴、健康状態等)
  • 家庭状況(住居の状況、同居家族の状況等)
  • 監護補助者の状況(監護補助者の有無、監護補助の実績、子との関係等)
  • 監護方針(今後の養育方針、監護環境及び態勢、親権者に指定されなかった親と子との交流についての意向等)

また、子に関する情報として、だいたい以下のようなことが聞かれます。

  • 子の生活歴
  • 過去の監護・養育の状況
  • 子の心身の状況
  • 現在の生活状況(家庭での状況、保育所・幼稚園・学校での状況、非監護親との交流の状況等)
  • 紛争に対し、どのような認識を有しているか

子どもの意思を裁判所調査官が調査をし、子の意思が重視される場合もあります。

以上のような事情を総合考慮しますが、考慮する際には、監護の継続性、奪取の違法性の有無、母性優先原則、面会交流への許容性、兄弟不分離なども検討します。

親権の母性優先の原則について

母性優先の原則という考え方について、子が小さいほど裁判所は重視する傾向にあるようです。

ただし、ここでいう「母性」とはイコール母親ではなく、最近では、子にとって母性的な役割を継続して担ってきた者と考えられているようです。

したがって、現状は子が生まれたときから子の養育を一方配偶者と同じように分担して行ってきた人については、父親であってもその他の考慮要素で母親より父親と暮らした方が子の利益にかなうと判断された場合には、父親が親権者と指定されます。

ただ、育児休暇などを取得し、母親と同じように育児に関わることのできる時間を父親に求めることは、男性の育児休暇の取得率から見ても、日本社会ではまだまだ難しく、どうしても生まれた直後から主たる監護を担ってきた母親が親権者や監護権者に認められやすい現実があります。

ただし、母ではなく、父に親権者が認められた裁判例や審判例もあります。以下、近年の裁判例や審判例を紹介します。

親権を母親が取れない場合、負ける場合

平成28年3月29日千葉家裁松戸支部判決

父と母が離婚訴訟内で親権を争った事案で、松戸支部は下記のような判断をし、父を親権者に指定しました。

父を親権者と指定した理由として、以下の点をあげています。

  1. 別居する際に父親の了承を得ずに長女を連れだしたこと
  2. その後5年10カ月の中で面会交流が6回しか行われていないこと
  3. 父親は親権者になった場合には、母との面会交流を年間100日認めるという面会交流計画書を作成し、訴訟の中で裁判所と母親に提示していること

父親を親権者と認めた方が、母だけでなく、父と母両方との交流ができ、かつ、親権者ではない母とも100日の面会交流をすることを具体的に計画書として提案していることがポイントのようです。

面会交流計画書の中身は、以下のように、かなり具体的に面会交流ができる日程を記したものでした。

  1. 隔週の金曜日の19時から日曜日の19時まで面会交流を認める。
  2. これ以外に、祝日、春の連休(4月29日から5月5日)及び長女の誕生日について、隔年ごとに面会交流を認める。
  3. 原告の誕生日と年末(12月23日から12月30日)については、毎年面会交流を認める。
  4. 夏に2週間、それ以外の時期にも1週間の長期面会交流を認める。

長女を現在の慣れ親しんだ環境から引き離すのは、長女の福祉に反するという母親からの主張に対しては、

「今後長女が身を置く新しい環境は、長女の健全な成長を願う実の父親が用意する整った環境であり、長女が現在に比べて劣悪な環境に置かれるわけではない。加えて、年間100日に及ぶ面会交流が予定されていることも考慮すれば、原告(母親)の懸念は杞憂にすぎないというべきである。」

と判断しました。

子の福祉の観点から、両親から愛情を受けられる環境を重視した判断です。

平成28年3月18日福岡家裁判決

この判決では、11歳の長女の意思を尊重し、親権者を父へ、約7歳の弟については、親権者を母とする判断をしました。

別居する際には、母が監護していましたが、その後、長女は自らの意思で父親の下へ行ったという事情がありました。このような長女の強固な意志を尊重し、親権者を兄

弟で分けて指定したという事案です。

兄弟不分離の原則については、以下のように判断しました。

「親権者を定める場合、長女が原告(父親)に、長男が被告(母親)に、それぞれ監護養育される結果、きょうだいが分離されて成育することとなり、長女及び長男の意向に沿わない結果となる。

このような事態は、必ずしも好ましいとはいえないものの、非親権者と長女及び長男との面会交流の機会等に、長女及び長男が相互に交流する機会を設けることによって、きょうだいの交流を図ることが可能であること等に照らせば、やむを得ないというべきである。」

子の意思が明確な場合には、子の福祉として尊重される傾向にあります。

平成24年12月20日東京家裁立川支部判決

別居後、離婚訴訟内で親権が争われた事案で、母親が子供が通う保育園の同学年の子の父と肉体関係を持ったことについて、別居のきっかけを作ったこと、別居後は父が監護養育している状況で下記のとおり判断し、親権者を父と認めました。

「別居以前に長男を主に監護養育してきたのは原告(母親)であるが、

別居後は被告(父親)が被告の母の援助を得ながら長男を監護養育していること、

長男の心身の発育に問題はないこと、

長男は、被告(父親)に対し親和的な感情を抱き、被告の存在に安心感を抱いていること、被告は、長男に愛情を持って接し、子の発達に見合った関わりや働き掛けをしていることが認められ、現在の長男の監護状況は長男の福祉にかなったものといえる。」と判断しました。

その他、面会交流の強制や監護態勢に問題がないこと、長男が現在の居住地で出生時から生活しており、現在の生活を変えることは長男の福祉にとって望ましくないことなどを考慮しました。

本件は、母性優先の原則や別居前の監護の継続性をそれほど重視せず、現在の子の安定性を考慮したものと言えます。

令和2年2月28日東京家裁決定

父から親権者母に対し、親権者変更の申立てがなされた事案です。この事件は、離婚の際に父ではなく母を親権者と認めましたが、その後、父を親権者に変更するという決定をしました。

離婚訴訟においては、

「相手方(母親)が、未成年者を出生以来現在まで主として監護してきたこと、

過去の相手方の監護状況・姿勢について憂慮すべき点があったとしても、その後、相当程度改善されたと認められること、

一方、申立人(父親)についても、経済力、居住環境、未成年者に対する熱意等、相手方の監護態勢に優るとも劣らない部分も多々あるものの、上半身等のタトゥーや、申立人(父親)の両親が、相手方(母親)の父や同人の内妻より高齢であることなど、未成年者の健全な成長にとっての不安要素もあり、一概に相手方(母親)の監護より優れているとも言い切れないこと、

その他監護の継続性、監護状態の変更による未成年者の負担等も考慮すれば、相手方を未成年者の親権者に指定して引き続き監護させ、申立人と未成年者とのつながりは面会交流の拡充等で確保することが相当と認める」

として、母親が親権者に指定されたようです。

しかし、その後、母親が別の男性と交際を始め婚姻に至った中で、子の精神状況が不安定になり、交際男性の子に対する接し方に不適切な点があり、母親と交際相手からの暴力などもあったことから父へと親権者変更を認めました。

母親は交際を始めた男性とは離婚し、子どもの監護をしっかりしていくと主張し、実際に離婚もしたようですが、父親に親権者の変更がなされました。

このように監護の継続性や、監護態勢、監護補助者の存在などから親権を認められても、その後の実際の養育において、不適切な点があれば、親権者の変更が認められ得ることを示しています。

平成26年12月4日福岡家裁決定

この決定については、親権者である母親が、非親権者である父親と子供との面会交流を拒否したことを理由として、親権者を父親側に変更する決定をしたとして、ニュースにもなりました。

裁判所は、双方の親と愛着を形成することが子の健全な発達にとって重要であるとして、面会交流を勧める傾向にあります。

そして、本件事案では、裁判所は、

「非監護親との面会交流は、非監護親との別離を余儀なくされた子が非監護親との関係を形成する重要な機会であるから、監護親はできるだけ子と非監護親との面会交流に応じなければならならず、面会交流を拒否・制限しうるのは、面会交流の実施自体が子の福祉を害するといえる「面会交流を禁止、制限すべき特段の事情」がある場合に限られると解されている」

として、まず面会交流の重要性を説明しました。

その上で、この事案では、面会交流を拒否したり制限したりする特段の事情がないにもかかわらず、親権者母が面会交流を拒否しているため、母親側の態度変化を促し、子の父親に対する拒否的な感情を取り除き、円滑な面会交流の再開にこぎ着けることが子の福祉にかなうというべきであると判断しました。

この事案では、もともと親権者を母にすることに父親が同意したのは、母親との間で面会交流を行うという約束があったからでしたが実際は面会交流を認めない状態で、親権者を指定した際の前提がなくなっているという事情もあったようです。

親権を父親が取るには?

以上見てきたとおり、親権者の指定に際しては、様々な事情が考慮されます。母性優先の原則が重視される傾向にあると言われてきていましたが、面会交流の許容性や子の意思、別居に至った事由など事案ごとの事情を丁寧に検討されています。

親権者の指定に当たっては、この事情があるから大丈夫とか、この事情があるから認められないという一律的な判断は出来ず、すべての事情を子の福祉の観点から総合的に判断されます。

父親でも親権を取ることができる場合はあります。

どのような事情を主張できるのかということについては、過去の裁判例を見据えて検討する必要があります。

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