親権、監護権とは

最終更新日: 2023年06月13日

未成年と親権、監護

親権とは、父母が未成年の子に対し、教育を行い、監護する権利や義務をいいます。

親権は、権利の側面だけでなく、子どもを健やかに育てる責任・義務が含まれています。民法には、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と規定されており(民法820条)、親権は、「子の利益のために」行使されなければなりません。

父母の婚姻中は、原則として父母が共同して親権を行使します(民法818条3項)。しかし、父母が離婚した場合には、親権を共同で行使することは困難となるため、夫婦のいずれか一方が親権者となります。

親権の内容は、一般的に財産管理権と身上監護権とに分けて考えられます。

親権と身上監護権

身上監護権とは

身上監護権には、監護教育権(民法820条)、居所指定権(民法821条)、懲戒権(民法822条)、職業許可権(民法823条)があります。

監護教育権とは

身上監護権の総括的な規定として、民法820条は、「親権者には、子の利益のために、監護及び教育する権利と義務がある。」として、監護教育権を定めています。

親権者が未成年者の利益を著しく害するような監護教育を行うことは資格喪失事由に当たる可能性があります。

判例上、子の引渡請求は、親権者の監護教育権行使を妨害しないことを請求する妨害排除請求であると解されています。

居所指定権とは

親権者が未成年者の監護教育を適切に行うために、親権者は未成年者の居所を指定することができます(民法821条)。

親権者の居所指定場所が子の利益に反する場合には、居所指定権の濫用として、親権喪失事由に該当することがあります。

懲戒権

親権者には、監護教育をするために必要な範囲内で未成年者を懲戒することができます(民法822条)。 

親権者が監護教育に必要と考えられる懲戒権を逸脱した場合には、懲戒権の濫用として、親権喪失事由に該当します。

職業許可権と同意権

未成年者が職業を営むには、子の利益の観点から親権者の許可が必要とされています(民法823条)。職業によっては、未成年者に大きな負担となるものもあり、親権者が許可した場合にのみ、職業を営むことが認められているのです。

未成年者は営業を許可されると、その営業について、成人と同じ行為能力を持つことになります(民法6条)。同意を得ずに行った行為も取消の対象とはなりません。

なお、「営業」と「職業」については、「営業」の方が「職業」より広い意味で用いられており、親権者が未成年者に職業を営むことを許可したからといって、それが直ちに営業を許可したということにはなりません。

親権と財産管理権

財産管理権とは

発達途中の未成年者を保護するために、民法は親権者が子の財産を管理すること(財産管理権)や財産に関する法律行為についての代表権を定めています(民法824条)。また、親権者は未成年者自らが法律行為をする場合の同意権も有しています(民法5条)。

財産管理権における「管理」とは、財産の保全、性質を変じない範囲における利用・改良をいい、財産管理の目的である未成年者の保護といえる場合には、財産の処分行為も含まれます。

原則として、未成年者の財産は全て財産管理の対象となりますが、例外的に以下1ないし4の財産については、財産管理の対象となりません。

  1. 未成年者が親権者に許可された営業行為で得た財産(民法6条)
  2. 親権者が目的を定めて処分を許した財産(民法5条3項)
  3. 第三者が、親権者に管理させない意思を表示して、無償で未成年者に与えた財産(民法830条、ただし、別途、管理者が選任されます。)
  4. 未成年者自身が労働契約によって得た賃金(労働基準法59条)

財産管理に当たっては、親権者には「自己のためにするのと同一の注意」義務が課せられています(民法827条)。

財産に関する法律行為についての代表権・代理権について

代表権については、財産管理権と同じく民法824条に定められています。

民法824条にいう「財産に関する法律行為」とは、未成年者の財産上の地位に変動を及ぼすような一切の法律行為をいうと解されており、広く捉えられているため、代理ではなく、「代表」という言葉が使われています。

親権者が代表権を濫用したような場合には、注意義務違反(民法827条)となり、親権喪失(民法834条)や管理権喪失(民法835条)の対象となります。

*代理権の濫用に関する注目判決:最高裁判所平成4年12月10日判決
「子の利益を無視して自己または第三者の利益を図ることのみを目的としてされるなど、親権者に子を代理する権限を授与した法の趣旨に著しく反すると認められる特段の事情」がある場合には、代理権の濫用に当たると判断した判決があります。

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