債権回収での弁護士の役割とは?業務内容やメリット・費用を分かりやすく紹介
最終更新日: 2024年01月31日
- 取引先の売掛金がなかなか回収できない。穏便に回収できる方法が知りたい。
- 債権回収を図りたいが、忙しくてなかなか手が回らない。債権回収の専門家に対応を頼みたい。
- 債権回収を弁護士に依頼したら、弁護士はどのような対応をするのだろう?
債権・売掛金の回収がスムーズにできないと、自社の事業経営にも深刻な影響が出てしまいます。
しかしながら、自社の事業が多忙を極め、債権・売掛金の回収になかなか手が回らない場合も想定されます。
そこで今回は、多くの債権回収に携わってきた専門弁護士が、弁護士による債権回収の方法や弁護士へ債権回収を依頼するメリット等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 債権回収が円滑に進まないと、会社の経営が立ち行かなくなるおそれもあるので、なるべく早く弁護士に相談する
- 債権回収を依頼された弁護士は、支払督促や調停、訴訟を駆使し、問題の解決を図る
- 弁護士に債権回収を任せると、債務者からの回収がスムーズに進む可能性は高い
債権回収を弁護士が解説
自分の会社が他社に貸付をしている、売掛金取引を行っているという場合は、期限内にしっかりとお金を回収したいものです。
期限を過ぎても回収できなければ、自社の経営に影響が出るおそれがあります。債権者である自社が債務者との交渉や催促を行い、回収のための行動を起こす必要があります。
しかし、自社で債権回収をしたいものの、事業経営で忙しく対応が難しい状態ならば、法律の専門家である弁護士に債権回収を依頼し、対応を任せた方がよいでしょう。
弁護士は自社(債権者)と他社(債務者)の関係性を考慮しつつ、債権回収のために最も効果的な措置を実行します。
債権回収を成功するために弁護士が行う方法
債権回収といっても、債務者や売掛先とは長年懇意にしてきたので穏便な回収を図りたいケースもあれば、長期間回収が滞ってしまい強制執行をしてでも回収したいケースもあるでしょう。
弁護士は依頼者(債権者)の状況や債務者との関係を慎重にヒアリングし、最適な方法で回収を図ります。
電話・面談
弁護士が債務者や売掛先に、電話連絡や面談交渉で回収を図ります。最も穏便な回収方法であり、長年懇意にしてきた相手方の場合は支払いへ応じる可能性が高いです。
また、弁護士が債権回収に乗り出しているとわかれば、「すぐに支払わないと調停や訴訟へ発展するかもしれない。」と、相手方にプレッシャーを与える効果もあります。
内容証明郵便
内容証明郵便とは、郵便の内容や発送日、相手が受け取った日付等を郵便局が証明するサービスです。
この内容証明郵便でお金の支払いを促しても、法的効果は得られないので、相手から無視される可能性はあります。
ただし、弁護士名が明記された内容証明郵便で、かつ「期限の〇年〇月〇日に支払わなければ法的措置を講じる。」と明記されていれば、相手方に大きなプレッシャーを与えられます。
内容証明郵便の送付だけで、これまで貸したお金が全額返ってくる場合もあるでしょう。
支払催促
支払督促とは、お金の未払いに関するトラブルを解決する法的手続きのひとつです。
裁判所が関与し手続きを進めます。
手続きの手順は次の通りです。
- 1.支払督促申立書を提出する:債務者の住所地を管轄する簡易裁判所に、申立書等を提出
- 2.簡易裁判所の審査:簡易裁判所の書記官が、申立書の内容に不備、法律違反等がないか確認
- 3.支払督促の発付:審査で問題がなければ、書記官は支払督促を債務者に発付
弁護士に申立てを任せれば、スムーズに手続きは進みますが、支払督促をしただけでは強制的な債権回収はできません。
ただし、債務者から支払督促に関する異議申立てがない場合、債権者は仮執行宣言の申立てが可能です。
一方、債務者から支払督促に関する異議申立てがあり、裁判所がそれを受理すると、支払督促は効力を失い、通常の訴訟手続きに移行します。債権者の主張は、訴訟において審理が続けられます。
債務者が支払督促の発付を確認すれば、「ついに借金の件で、債権者が裁判所に申立てをした。」と感じ、返済に応じる場合もあるでしょう。
調停
支払督促を行っても相手が支払いに応じない場合、債務者の住所を管轄とする簡易裁判所に、「民事調停」の申立てを行います。
調停は債権者・債務者との話し合いによる解決となります。もちろん、依頼者は弁護士に申立て手続を任せ、調停期日には弁護士を代理人として出席させても構いません。
手続きの手順は次の通りです。
- 1.裁判所に調停申立書等を提出する:申立書の他、証拠書類として契約書、領収書、売掛台帳の写し、手形等を準備する
- 2.申立受理:申立書が受理されると、第1回調停期日の決定後、裁判所から債務者側へ呼び出し状が送達される
- 3.第1回調停〜:弁護士が債権者の立場にたち債務者を説得する
- 4.調停委員が妥協案を作成:調停を行う中で妥協点が見つかったならば、妥協案が作成される
- 5.民事調停完了:当事者が話し合いに合意したら、書記官が調停調書を作成する
ただし、調停不成立となった場合は、訴訟で解決を図ります。
訴訟
調停不成立の場合は、いよいよ裁判所に債務者を訴え、勝訴判決を受けるための手続きをとります。
債権額が140万円を超える場合は地方裁判所で、それ以下は簡易裁判所に申し立てます。
なお、訴訟提起~判決を得るまでに、相手方が破産したり、財産を隠匿したりするおそれがあるならば、債権の保全も可能です。
その方法が「仮差押手続き」であり、債権額に相応する相手方の財産を差し押さえる手続きです。
民事訴訟を行うときは訴状の作成、証拠書類の収集、訴訟提起はすべて弁護士に任せられます。
手続きの手順は次の通りです。
- 1.訴訟準備に入る:訴状を作成し、証拠が揃った段階で裁判所に郵送する
- 2.訴訟提起:裁判所で訴状が審査後、第1回の裁判期日が指定され、被告に訴状を送達する
- 3.第1回の裁判期日:原告側(債権者)は、弁護士のみの出席でも構わない
- 4.準備書面・書証等で主張:原告・被告の書面での主張のやりとり
- 5.尋問手続:原告側、被告側双方の関係者を呼び、尋問が行われる
- 6.和解の打診:裁判官から和解案が示され、その和解案に合意したら和解調書が作成され、訴訟終了
- 7.結審:尋問手続後、基本的に裁判所が審理を終結させる
- 8.判決:和解ができなかったならば、裁判所が判決を言い渡す
判決により債権者側が勝訴した場合、強制執行により債務者の財産を差し押さえることが可能です。なお、判決に不満があれば、控訴の手続きに移ります。
強制執行
裁判所から支払いを命じられたにもかかわらず、債務者が任意の支払に応じないならば、裁判所に強制執行の申立てが可能です。
申立て手続きも全て弁護士に任せられます。基本的には債権執行により、債務者の銀行預金等を差し押さえ、滞納分の返済に充てます。
債権回収を弁護士に相談するメリット
債権回収の方法は、債務者への電話での督促や、訴訟・強制執行など様々あります。
ただし、債権回収の手続きが複雑な方法もあり、自社だけで対応すると手続きに手間取る可能性があるでしょう。
法律の専門家である弁護士へ依頼すれば、円滑に回収作業が進められます。
支払われる可能性アップ
弁護士を立てれば、債務者が支払いに応じる可能性は高まります。
貸付金や売掛金を滞納している債務者は、弁護士から支払うよう要求された場合、「とうとう裁判で訴えられるかもしれない。」と、大きなプレッシャーを感じることでしょう。
たとえ債務者が複数の会社に債務があっても、弁護士を代理人にした債権者からは逃げ切れないと考え、弁護士を立てていない債権者よりも優先的に支払いに応じる可能性が高いです。
スムーズな法的手段への切替
弁護士に回収を依頼すれば、状況に応じた回収方法の提案や切り替えが可能です。
債権回収の方法の一つを講じたとしても、債務者は支払いに応じるとは限りません。
たとえば、債務者が支払いに応じず支払督促→調停→訴訟へと進んでいけば、その都度、債権者側は申立て手続きを行う必要があります。
経験豊富な弁護士であれば数多くの申立て手続きをこなしているので、様々な法的手段への切り替えにも問題なく対応できます。
債権回収の弁護士費用
債権回収の弁護士費用は、回収方法や債権額(貸した金額)によって変わってきます。
こちらでは、相談料、着手金、成功報酬、その他の費用に分けて説明しましょう。
相談料
債権回収を依頼したいならば、まず法律事務所で相談を行います。初回相談を無料で受け付けている法律事務所もあります。
まずは担当者に回収の方法や手順をよく聴き、回収を任せたい場合は委任契約を締結します。
着手金
着手金とは、弁護士に依頼した場合に必ず支払わなければならない費用です。回収に成功しても失敗しても、基本的に支払ったお金は戻ってきません。
着手金の額は各法律事務所が自由に設定でき、金額の目安は下表の通りです。
債権回収方法 | 着手金の額 |
内容証明郵便 | 1~5万円程度 |
支払い督促 | 3~20万円程度 |
民事調停・交渉 | 10~20万円程度 |
訴訟 | 10~30万円程度 |
強制執行 | 5~20万円程度 |
なお、債権額によって着手金の額に差を設けている法律事務所もあります。
成功報酬
弁護士が交渉や申立てを行い債権回収に成功した場合、依頼者が支払わなければならない費用です。弁護士が債権回収に失敗した場合は請求されません。
こちらの報酬の場合、一律の金額が設定されているわけではなく、「回収に成功した額の〇%」という形で算定する事務所が多いです。
成功報酬の目安は、概ね回収額の10~20%となります。
たとえば、債権額1,000万円の回収に成功したならば、100〜200万円を成功報酬として支払う必要があります。
その他の費用
相談料、着手金、成功報酬の他に「実費」の支払いが必要な場合もあります。
実費に該当するのは、郵便代、予納郵券、印紙代、連絡用官製はがき、登録免許税、不動産全部事項証明書等です。
これらは主に裁判所へ申し立てるときに必要となる費用で、申立て内容によって金額がかなり違ってきます。
債権回収なら当事務所の弁護士にご相談を
今回は、企業の債権回収に尽力してきた専門弁護士が、債権回収に弁護士が果たす役割等を詳しく解説しました。
債権者である会社が債権回収へ手間取っている間に、相手方が破産したり財産を隠匿したりするおそれもあります。弁護士のサポートをもとに、迅速に回収を図っていきましょう。
弁護士の助力を受けながら、円滑に債権回収を進めてみてはいかがでしょうか。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。