売掛金のトラブルは弁護士に相談を!手段・活動内容・費用も詳しく紹介

最終更新日: 2024年01月31日

売掛金のトラブルは弁護士に相談を!手段・活動内容・費用も詳しく紹介

  • 売掛金回収がうまくいかない。円滑に回収できる方法を教えて欲しい。
  • 売掛金の回収を進めたいが、業務が忙しいので、回収方法を熟知した専門家に頼みたい。
  • 売掛金回収を弁護士に依頼すれば、どのようなサポートが得られるのだろう?

売掛金は、自社が売上の対価として将来に対価を受け取る権利です。

特に建設業、サービス業、卸売業では、商品・サービスを提供した時点ですぐに決済を行わず、対価は後日まとめて支払われます。

しかし、取引先に対する売掛金の回収が何らかの理由で滞る可能性もあります。

売掛金回収が円滑に進まないと自社の経営が悪化するおそれもあるので、迅速な対応が必要です。

そこで今回は、多くの売掛金回収に携わってきた専門弁護士が、売掛金回収の方法や、弁護士に売掛金回収を相談するメリット等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 売掛金回収が予定通り進まない場合、催告書の送付、支払督促や調停、訴訟等を行い回収する方法がある
  • 売掛金回収が遅れると、自社の経営状態が悪化するおそれもあるので、早く弁護士に相談し、対応を協議する
  • 弁護士に売掛金回収を任せると、売掛先からの回収がスムーズに進む可能性が高い

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

売掛金回収の手段を弁護士が解説

取引先から売掛金を予定通り回収できなかった場合、まずは相手に電話連絡や面談交渉で支払いを促します。

しかし、それでも相手が支払いに応じない場合は、いろいろな方法を駆使して回収を図ります。

こちらでは、主な売掛金回収手段を説明しましょう。

催告書の通知

催告書とは、売掛金が期限までに支払われないときに、売掛先に対して速やかに支払うように促す書類です。一般的に「内容証明郵便」を相手に送付します。

内容証明郵便とは、郵便の内容や発送日、相手の受領日等を郵便局が証明するサービスです。

内容証明郵便で送付する場合、次のようなルールを守る必要があります。

  • ・文字数が制限されている:
    【横書き】(1)1行26文字・1枚20行まで(2)1行13文字・1枚40行まで(3)1行20文字・1枚26行まで、のいずれか
    【縦書き】1行20文字・1枚26行以内まで
    なお、括弧や句読点、記号も1文字にカウントされる。
  • 用紙:用紙サイズや紙質等は自由だがA4で作成するのが一般的
  • 契印:複数枚の書面を内容証明で送るとき必要。ホチキスで綴じ綴目に契印を押印

ただし、催告書を内容証明郵便で送付しても法的効果はないので、相手から無視される可能性はあります。

相手との交渉

催告書を送付した場合、相手から交渉を持ちかけられる場合もあります。

そのときは改めて支払期日を定め、売掛金の支払いについて取り決めをしても構いません。

交渉が成立した場合は、契約書を2通作成し双方が1通ずつ保管します。

支払督促

催告書の送付や相手との交渉で売掛金の回収に至らなかった場合は、支払督促で回収を試みます。

支払督促とは、裁判所が関与し売掛金の未払いトラブルを解決する法的手続きです。

手続きの手順は、次の通りです。

  • 1.支払督促申立書の提出:相手の住所地を管轄する簡易裁判所に申立書等を提出
  • 2.審査:簡易裁判所の書記官が申立書の内容に不備、法律違反等がないか審査
  • 3.支払督促の発付:審査で問題がなければ書記官は支払督促を相手(売掛先)に発付

支払督促だけでは強制的な債権回収ができないため、相手の対応次第で次のような手続きに進みます。

  • 相手から支払督促に異議申立てがない→仮執行宣言の申立てが可能
  • 相手から支払督促に異議申立てがある→裁判所が異議申立てを受理すると、通常の訴訟手続きに移行

調停

支払督促を行っても売掛金回収ができない場合、相手の住所地を管轄する簡易裁判所に「民事調停」の申立てを行います。

調停は当事者の話し合いで解決を図ります。

手続きの手順は次の通りです。

  • 1.調停申立書等を提出:裁判所に申立書、証拠書類として契約書、領収書、売掛台帳の写し、手形等を提出
  • 2.申立受理:書類に不備がなければ受理され、第1回調停期日の決定後、相手に呼び出し状送達
  • 3.第1回調停期日〜:話し合いを開始
  • 4.妥協案作成:話し合いの中で妥協点が見つかれば、調停委員が妥協案を作成
  • 5.民事調停完了:当事者が妥協案に合意すれば書記官が調停調書を作成

仮差押え・仮処分

民事調停で相手と合意できなかった場合は訴訟を提起しますが、訴訟提起~判決を得るまでに相手が破産したり財産を隠匿したりする可能性があります。

そのため、訴訟提起前に相手の財産等をあらかじめ確保する措置について検討しましょう。この方法が「仮差押え・仮処分手続き」です。

仮差押え・仮処分手続きは、それぞれ次の特徴があります。

  • 仮差押え:金銭債権が将来的に強制執行できなくなるおそれがある場合、判決までの間、相手の財産を仮に差し押さえる手続き。差押えの対象となるのは売掛金、預貯金、給料、車、不動産等
  • 仮処分:自社が強制執行ができなくなり不利益を被らないように、争いとなっているもの(売掛金)の現状を維持するための手続き

訴訟

裁判所に相手を訴え、売掛金の返済を求める手続きをとります。訴状を提出する裁判所は売掛金の額によって異なります。

  • 売掛金の額が140万円超→地方裁判所
  • 売掛金の額が140万円以内→簡易裁判所

手続きの手順は次の通りです。

  • 1.訴訟準備:訴状を作成し、売掛金に関する証拠を揃えて裁判所に郵送
  • 2.訴訟提起:裁判所で訴状が審査され、第1回の裁判期日の決定後、被告(相手)に訴状を送達
  • 3.第1回の裁判期日開始:原告(自社)が訴状を陳述
  • 4.準備書面・書証等で主張:原告・被告の書面での主張のやりとり
  • 5.尋問手続:裁判所が原告、被告側双方の関係者を呼び尋問
  • 6.和解の打診:基本的に裁判官から和解案が提示され、和解案に合意したら和解調書作成→訴訟終了
  • 7.結審:尋問手続後、基本的に裁判所が審理を終結、判決の準備にとりかかる
  • 8.判決:原告・被告が和解できなかった場合、裁判所が判決を言い渡す

原告側が勝訴すれば、被告は売掛金の支払いを行わなければなりません。

強制執行

相手(被告)が裁判所から支払いを命じられたのに、任意の支払いに応じない場合は、自社(原告)は裁判所に強制執行の申立てが可能です。

基本的には債権執行で手続きが進められます。

まず債権差押命令申立書に、当事者目緑、請求債権目録、差押え債権目録、執行文付与付き債務名義、送達証明書等を添付し、相手の住所地を管轄する裁判所へ申し立てましょう。

裁判所が申立てを受理すると、債権差押命令が相手へ発送され、取立て(差押)が開始されます。相手の銀行預金等を差し押さえ、滞納分の返済に充てます。

売掛金で弁護士ができる活動内容

売掛金の回収方法にはいろいろありますが、自社の業務に追われ手続きがなかなか進められない場合も多いでしょう。

そのようなときは弁護士に代理人を依頼すれば、売掛金の回収を任せられます。

こちらでは、弁護士に売掛金の回収を依頼するメリットについて説明します。

最適策提示

弁護士は会社のニーズに応じたベストな解決策を提案します。回収方法ごとのメリット・デメリットや手順を説明し、依頼者にアドバイスします。

また、売掛金の回収を弁護士に委任可能です。

たとえば、取引先からの売掛金の回収がうまくいかない場合に、売掛先とは長い付き合いなので穏便に解決したときは、弁護士が代理人となり、交渉によって粘り強く支払いに応じるよう働きかけます。

一方、早急に売掛金を回収したいのであれば、弁護士が支払督促や訴訟、強制執行の申立てを迅速に進めます。

回収交渉

弁護士に売掛先への電話連絡や面談、交渉を任せられます。

弁護士は法律に則り冷静に話し合いを進めるので、売掛先が納得し交渉で売掛金の支払いに応じる場合があります。

また、裁判所で話し合う「民事調停」へ進んだ場合も、調停に同席し、依頼者側に立った主張、証拠の提示を行います。

弁護士のサポートがあれば、調停を有利に進められる可能性が高いです。

親身なアドバイス

弁護士は、売掛金の回収方法の不明点や疑問点を親身になってアドバイスします。

現状を考慮し、話し合いではなく訴訟を提起した方がよい等、依頼者が損失を被らないよう、的確な助言を行います。

1つの回収方法がうまくいかないときは、他の回収方法を試みるよう促し、そのための手続きも弁護士が代行します。

精神的な負担軽減

自社だけで売掛金の問題の解決を図っても「本当に回収できるのだろうか?」「手続きがスムーズに進むのだろうか?」と不安を覚えることもあるでしょう。

法律の専門家である弁護士がサポートすれば、いろいろな手続きをスムーズに進められ、相手や裁判所との調整も任せられるので、精神的な負担を軽減できます。

法的リスク回避

弁護士は適正な回収方法をトラブルなく実行していきます。

自社だけで対応しようとすれば、売掛金を支払おうとしない相手に憤り、強引な手段により回収を図ってしまう場合もあるかもしれません。

強引な回収方法をとれば、それが原因で売掛先から損害賠償請求を受けるおそれもあります。

弁護士に任せれば、法律や判例に従い適切な回収措置を行うので、自社の社会的信用を損なわずに売掛金の回収が可能です。

売掛金回収のための弁護士費用

売掛金の回収を弁護士に任せた場合は、弁護士費用が発生します。

こちらでは、相談料、着手金、成功報酬、その他の費用に分けて説明しましょう。

相談料

売掛金回収を弁護士に依頼したいのであれば、まず法律事務所で相談をします。

相談する場合は、まず担当者に売掛金回収の方法や手順を聴きましょう。その上で、弁護士に回収を任せたいのであれば委任契約を締結します。

着手金

着手金は、売掛金回収を弁護士に依頼したときに必ず支払わなければならない費用です。

法律事務所によって着手金の額に差はありますが、目安は下表の通りです。

債権回収方法

着手金の額

内容証明郵便

1~5万円程度

支払い督促

3~20万円程度

民事調停・交渉

10~20万円程度

訴訟

10~30万円程度

強制執行

5~20万円程度

売掛金の額に応じて着手金の額に差を設けている事務所もあります。

成功報酬

弁護士が交渉や訴訟を行い売掛金の回収に成功したときに支払わなければならない費用です。

成功報酬は「回収できた売掛金の額の〇%」という形で算定する事務所が多く、目安は回収額の10~20%程度です。

たとえば、500万円の売掛金回収に成功したときは、50〜100万円を成功報酬として支払います。

その他の費用

その他に回収方法によっては「実費」の支払いが必要なケースもあります。

実費としては、郵便代や予納郵券、印紙代等があります。これらは主に裁判所へ申し立てるとき必要な費用です。

実費は申し立て内容により負担額が大きく異なるので、事前に弁護士や裁判所等に確認しておきましょう。

売掛金回収なら当事務所の弁護士にご相談を

今回は、売掛金回収に尽力してきた専門弁護士が、売掛金回収で弁護士が果たす役割等を詳しく解説しました。

自社が売掛金回収の準備を進めている間に、売掛先が破産したり財産を隠匿したりするリスクもあります。

弁護士のサポートを受けて迅速かつ円滑に売掛金回収を進めましょう。

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