財産分与にはどんな種類がある?離婚時に知っておきたい基礎知識と注意点
最終更新日: 2025年06月26日
離婚が決まると、気持ちの整理だけでなく「お金」の問題も避けて通れません。
その代表的なものが「財産分与(ざいさんぶんよ)」です。
一言で「財産分与」といっても、実は目的や性質の違いによっていくつかの種類があります。
この記事では、財産分与の基本的な考え方から、3つの種類(清算的財産分与・扶養的財産分与・慰謝料的財産分与)、対象となる財産の例、そして分与をめぐる注意点まで、初めての方にもわかりやすく解説します。
「何が分けられるの?」「専業主婦だけど請求できる?」などの疑問を持つ方も、この記事を読めば全体像がつかめるはずです。
財産分与とは?基本の考え方
財産分与とは、夫婦が婚姻生活の中で一緒に築いてきた財産を、離婚するときに公平に分け合う制度のことです。
たとえば、貯金、マイホーム、自動車、保険などが対象になります。
ポイントは「どちらの名義か」よりも「いつ・どのように得たか」。
結婚生活の中で築かれたものであれば、名義が夫でも妻でも、分与の対象になることが多いです。
財産分与には3つの法的性質がある
清算的財産分与(もっとも基本的な形)
これは最もオーソドックスなタイプで、夫婦が婚姻期間中に共同で築いた財産を、離婚にあたって清算するものです。
たとえば、以下のようなものが対象になります。
- 預貯金
- 不動産(持ち家・マンションなど)
- 自動車
- 有価証券・保険の解約返戻金
- 退職金(条件あり)
夫婦どちらの名義でも、実質的に「二人の協力で得たもの」であれば、対象に含まれます。
扶養的財産分与(経済的な支援を目的とした分与)
離婚によって経済的に困る他方配偶者に対して、「一定期間、生活を支える」目的で支払われるのがこの扶養的財産分与です。
よくあるケースは、長年専業主婦だった方が離婚して突然収入が途絶える、というもの。
再就職が難しい年代や、病気・障害を抱えている場合などに、相手が一定期間生活費を補助する形で支払います。
慰謝料や養育費とは別の制度です。
慰謝料的財産分与(精神的苦痛に対する補填)
相手の不倫やDVなど、離婚原因が一方に明らかにあるような場合は、「慰謝料的な意味を込めて」財産分与の額が増えることがあります。
通常の慰謝料請求とは異なり、財産分与の中で精神的損害を補う形です。
あくまで例外的な扱いですが、感情的にも納得感が得られる重要な要素です。
財産分与の対象とならないもの
すべての財産が分与の対象になるわけではありません。
次のようなものは「特有財産」として扱われ、基本的に分与の対象外です。
- 結婚前から保有していた財産
- 相続や贈与で得た財産(原則的に個人のもの)
- 夫婦の協力とは無関係に得た利益
とはいえ、実際にはどこからが「共有」でどこからが「特有」か、判断が分かれるケースも少なくありません。
特にローンが絡む不動産や、混ざり合った預金などは慎重な確認が必要です。
財産分与の割合はどう決まる?
基本は「半分ずつ」、つまり2分の1ずつの分け方が原則です。
これは、たとえ一方が専業主婦(主夫)で収入がなかったとしても、「家事・育児」という貢献が評価されるからです。
ただし、婚姻期間が短い場合や、極端に一方だけが財産を築いたようなケースでは、割合が変わることもあります。
実際には話し合いや調停・裁判で決まることも多いため、柔軟な対応が必要です。
財産分与をめぐる注意点
話し合いで決着しないときは調停へ
当事者同士の話し合いで合意できなければ、家庭裁判所の調停手続(第三者が介入)を利用することになります。
調停でも解決できない場合は、審判や訴訟(離婚訴訟の附帯処分)に進むこともあります。
名義にかかわらず対象になる
「相手の名義だから自分には関係ない」と思いがちですが、結婚中に築いた財産なら名義に関係なく分与対象になります。
財産を隠されるケースもある
中には、離婚を見越して預金を引き出したり、資産を他人名義にしたりする人もいます。
不安な場合は、早めに証拠(通帳、保険証書など)を確保し、弁護士に相談するのがおすすめです。
事例紹介
夫婦共有のマンションを売却して分与(40代男性)
共働きで築いた家庭だったが、離婚に際して最も大きな問題となったのが住宅ローンの残るマンションの扱いだった。
話し合いの末、住み続けることにこだわらず、マンションを売却することで双方納得の解決を目指すことになった。売却後、ローン残債を返済し、残った金額を折半。
手元に残るお金は決して多くはなかったが、清算が明確になったことで今後の生活設計が立てやすくなった。
弁護士の助言により、不動産業者との連携や税務面の確認もスムーズに行えたため、トラブルもなく、冷静に手続きを終えることができた。
専業主婦に対して生活補助つきの分与(30代女性)
20年間にわたり家事や育児を一手に担ってきた妻が、夫の希望で離婚に応じることになった。
婚姻中の預貯金は夫名義が多かったものの、「内助の功」を評価し、半分を財産分与として受け取ることに加え、再就職までの半年間、月5万円の生活補助(扶養的財産分与)を取り決めた。
これは、長年の貢献と就労までの不安を考慮した柔軟な対応であり、弁護士の提案により実現できたものである。離婚後の生活の立ち上げを支援する形となり、円満な合意に繋がった好例である。
よくある質問(FAQ)
Q:離婚後でも財産分与は請求できますか?
はい、ただし時効があります。離婚成立から2年以内に請求しないと権利が消滅してしまいます。
Q:住宅ローンが残っている家はどうなりますか?
売却してローンを精算する、どちらかが住み続けるなど方法はいくつかあります。残債や名義に応じて分与内容も変わります。
Q:結婚前の貯金も分けないといけない?
いいえ。原則として結婚前の財産は「特有財産」として分与の対象外です。
Q:相手が財産を隠しているかもしれません
弁護士を通して調査を依頼することができます。資料の開示請求や調停の場での開示命令も可能です。
Q:退職金は分けられますか?
支給が確定していなくても、婚姻期間に応じて「将来得る可能性のある財産」として一部が対象になることがあります。
まとめ
財産分与は、単に「お金を半分にする」という話ではありません。
結婚生活のなかで、どれだけ協力し合って財産を築いてきたかを振り返りながら、公平に分けるための大事な手続きです。
3つのタイプ(清算的・扶養的・慰謝料的)を知っておくことで、「自分が受け取れる権利」をしっかり理解できるようになります。
「こんなに請求していいのかな?」と迷ったら、まずは専門家に相談して、後悔のない離婚に備えましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。