大麻で後日逮捕されることはあるのか?弁護士が解説
最終更新日: 2022年05月26日
薬物犯罪の中でも大麻取締法違反事件は覚せい剤取締法違反に次いで検挙件数が多い薬物犯罪です。
そして、大麻取締法違反事件の大半が大麻所持事件です。
今回は、大麻所持事件の逮捕について、弁護士がご説明します。
この記事を監修したのは

- 代表弁護士春田 藤麿
- 愛知県弁護士会 所属
- 経歴
- 慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設
大麻で逮捕するための条件
大麻所持で逮捕する為の条件は何なのでしょうか。順にご説明します。
- 逮捕の法律の要件(基準)
- 予試験(簡易検査)
逮捕の法律の要件(基準)
逮捕をするためには、大麻を所持しているという嫌疑、逃亡のおそれ、罪証隠滅の恐れが必要です。
逃亡のおそれや罪証隠滅の恐れについては、現実的可能性はさておき比較的容易にその恐れがあると判断されています。
大麻所持の事案で一番ポイントになるのは、被疑者が所持している植物片等が果たして大麻なのかどうかという点です。
予試験(簡易検査)
職務質問や、家宅捜索の際、まず警察は被疑者が所持していた大麻と疑われる物が大麻であるかどうか確認するために予試験(簡易検査)を実施します。
ところが、大麻の簡易検査は、覚せい剤など他の薬物犯罪の簡易検査と異なり、検体の色の変化が必ずしも明確ではなく、大麻であるのかどうかっきりしないケースがよくあります。
現に、大麻であると警察が判断して被疑者を現行犯逮捕したものの、その後に大麻ではないことが判明して、誤認逮捕であったというニュースがしばしば見られます。
とりわけ、近時は、脱法ハーブなど見た目は大麻と区別がつきにくい違法薬物も多く出回っていることから捜査現場での薬物の判定が容易でないケースがよくあります。
このように大麻の簡易検査では、大麻であることがはっきりしないことがあるため、被疑者の現行犯逮捕には至らないケースがしばしばあります。
大麻で逮捕された後の流れと勾留期間
被疑者が警察に逮捕されると48時間以内に検察庁に事件送致され、そこから24時間以内に検察官が裁判官に10日間の被疑者の勾留を請求します。
そして、裁判官が勾留を決定すると10日間勾留され、更に捜査の必要があると最大10日間勾留が延長されます。
そして、勾留の満期に被疑者に対する起訴処分、不起訴処分がなされますが、捜査未了の場合には、処分保留で釈放され、後日、起訴処分、不起訴処分がなされることもあります。
起訴処分となった場合、初犯であればほとんどは執行猶予付きの懲役刑判決となります。
なお、近時は、東京や大阪などの地域では、弁護士が入ることで、初犯の末端ユーザーの大麻所持事件の場合には、裁判官が勾留請求を却下するケースがしばしばみられるようになってきました。
どのような場合に逮捕されるのか
どのような場合に逮捕されるのでしょうか。さまざまなケースをもとに、解説していきます。
- 大麻所持で現行犯以外で逮捕されることはあるのか
- 初犯の大麻所持でも逮捕されるのか
- 大麻の所持量が微量でも逮捕されるのか
- 大麻を使用したが所持していなかった場合も現行犯逮捕されるのか
大麻所持で現行犯以外で逮捕されることはあるのか
警察の簡易検査で大麻であることが明らかにならなかった場合、科学捜査研究所の正式鑑定にまわされますので、その場で現行犯逮捕されることはありません。
そして、正式鑑定の結果、大麻であるとの鑑定結果が出たときは、後日逮捕されることになります。
この正式鑑定からの後日逮捕ですが、鑑定機関や警察の繁忙度によって、2週間ほどで後日逮捕になることもあれば、数か月後になることもあります。
初犯の大麻所持でも逮捕されるのか
初犯であっても、大麻所持を含む薬物事件では逮捕されるのが通常です。
もっとも、検挙件数のうち約6割の事件は検察庁に身柄送致されますが、残りの4割は検察庁に事件送致される前に警察の段階で逮捕されない又は釈放されて在宅捜査となっています。
特に近時は初犯の末端ユーザーの大麻所持事案の場合には、在宅捜査となるケースも増えています。
大麻の所持量が微量でも逮捕されるのか
どれくらいの量を微量というかという問題がありますが、微量の大麻所持であっても、それが大麻であるとの鑑定結果が出ている限り、原則として逮捕はされます。
もっとも、パケにカス程度の大麻が付着していたというようなケースでは、そもそも、「所持」の故意の有無について疑義がありますので、そのようなケースでは逮捕がされないことがあります。
大麻を使用したが所持していなかった場合も現行犯逮捕されるのか
警察が尿検査をした結果、大麻成分は検出されたものの、大麻自体は所持していなかったというケースがあります。
大麻取締法は、大麻の使用行為自体は直接的には規制対象としていませんので、大麻の使用が判明としても大麻使用の嫌疑で逮捕することはできません。
もっとも、大麻を使用したということは、大麻を持っていたということになるわけですから、大麻所持を立証することは不可能ではありません。
とはいえ、例えば、他人が所持していた大麻を少し吸わせてもらったという場合には、大麻の「所持」は認められない可能性が高く、「所持」の立証は容易ではありません。
このように大麻自体を所持していなかった場合には、大麻所持の立証は容易ではないことから、逮捕されないケースがほとんどです。
逮捕されるとニュースになるのか、家族や会社に知られるのか
ニュースになる事件は報道価値がある事件です。2018年度の大麻取締法違反の検挙件数は4605件と非常に多くあります。
そのため、末端ユーザーの大麻所持というだけでは大した報道価値はないといえます。ところが、公務員や有名企業の会社員、有名大学の学生などの身分があると報道価値がありニュースになることがあります。
また、上記のように全国的には検挙件数が多くありますが、大都市と比較して人口の少ない地方都市の場合には、そのような事件も比較的珍しいことが多く、報道価値があるとして、当該地方の新聞やニュースで報道されることは比較的よくあるようです。
大麻所持で自首をすれば逮捕を回避できるのか
大麻所持など薬物事件の場合には、入手経路や余罪について証拠隠滅の恐れがあるとして、逮捕されることが大半です。
ですから、警察署に自首をしたとしても、原則として逮捕されることになります。
もっとも、前記のとおり、在宅捜査で進められる大麻取締法違反事件も多くあります。そのため、弁護士と一緒に自首をすることで逮捕を回避できる可能性があります。
まとめ
以上、大麻所持事件の逮捕について、弁護士がご説明しました。
大麻所持事件は、初犯であれば起訴処分となっても執行猶予付きの懲役刑となることがほとんどです。
もっとも、逮捕、勾留されると、会社、学校など社会生活に多大な不利益が発生しますので、できる限り逮捕、勾留は回避したいところです。
大麻所持で被疑者となったときは、刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
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