婚約も契約の一種!法的効力を弁護士が解説
最終更新日: 2024年12月11日
婚約をしたら行うものが婚約契約です。 あまり聞きなじみがないかもしれませんが、ご説明していきます。
婚約とは
婚約とは、将来夫婦となることを内容とする合意、契約をいいます。
婚約は特に形式は必要なく、お互いに口頭で約束するだけで成立します。婚約指輪を贈った、結納をしたという事実は婚約成立を証明する事実となりますが、これらの事実がなければ婚約が成立しないというわけではありません。
ただし、婚約も契約の一種ですから、お互いに将来結婚することを真剣に考えて約束する必要があり、漠然とした、願望程度の約束では婚約とはなりません。
婚約は契約ですから、その不履行があれば損害賠償責任が発生しうるものですし、婚約破棄の態様によっては不法行為責任も発生することもあります。
婚約契約のメリット
婚約は口頭で成立する契約ですが、書面で婚約関係について取り決めをするものを婚約契約といいます。
婚約を破棄されたので婚約者を訴えたい、婚約者が浮気をしたので婚約者に慰謝料などを請求したいというご相談はよくあります。
このようなご相談があった場合、まず、法的に婚約が成立しているのかが問題となります。場合によっては、証拠が不十分なために婚約が認められないケースもあります。
法的に婚約が成立していることが明らかなケースであっても、慰謝料として幾らが認められるのか、結婚準備のためにした支出のうち損害賠償として何が認められるのかという点は一義的に明確ではありません。
婚約解消は精神的に辛いものですから、そのような状態で婚約者との争いを長引かせることは避けたいところです。
婚約契約を作成しておくことで、法的に婚約が成立しているかどうかという争いを回避できますし、予め慰謝料金額や損害賠償の対象を明確にすることができますので、婚約者との争いを早期に解決することができます。
婚約契約の内容
婚約契約の内容としては、概ね以下のような内容を定めます。
婚約履行のために誠実に努力すること
婚約は将来結婚することの契約ですから、お互いに結婚、入籍までの準備を誠実に協力し合うべきです。まず、婚約契約には、この点を明記します。
重大な事実が発覚した場合のペナルティ
婚約者が浮気をした、婚約者の多額の借金が発覚した、婚約者が実は既婚者だったというケースはしばしばあります。
このように結婚を再考させられるような重大な事実が発覚した場合に、慰謝料などの損害賠償について婚約契約に定めます。
婚約を破棄する場合のペナルティ
婚約解消に至るのは、前記のような重大な事実があるケースに限らず、むしろ性格が合わない、容姿に対する不満、自分の親の反対、相手の親族との相性が悪いといった理由によることの方が多いです。
そこで、何らかの理由で婚約解消を婚約者が求めた場合には、当該婚約者に対する慰謝料などの損害賠償について婚約契約に定めます。
損害賠償の内容
婚約契約には、婚約者が浮気したなどの重大な事実が発覚した場合や、性格が合わないなどと言って一方的に婚約解消を求められた場合に、相手方に請求することができる損害賠償について定めます。
この請求できる損害賠償として、まずは慰謝料があります。慰謝料の金額としは100万円から200万円が一般的ですが、相手方の経済力や婚約破棄によって被る不利益によってはそれ以上の金額を定めることも考えられます。
慰謝料の他には、結婚式場の費用、ウェディングドレスの費用、同居のための家財道具の費用、新居への転居費用などの損害がありますので、想定される損害について婚約契約に明記しておきます。
婚約後、結婚に向けて職場を退職するケースもあります。このような場合、婚約解消後に改めて職を探さなければなりませんし、前職と同程度の待遇の職に就くことはできないかもしれません。
このような退職しなければ得られた給料等については、慰謝料の金額を決定するにあたって考慮されますが、原則として、直接、給料等が損害賠償の対象となることはありません。しかし、このような損害についても、婚約契約に例えば、半年分の給料相当額を損害賠償として規定することで、その賠償を受けることが可能です。
まとめ
以上、婚約契約についてご説明しました。
婚約関係に入ると、結婚に向けて経済的に大きな支出もありますし、親族、職場など関係者にも影響があります。
お互いに婚約者に責任をもち、結婚という共通のゴールに向けて誠実に行動することを担保するためのツールとして婚約契約があります。
婚姻関係という重要な男女の法律関係については婚前契約という契約でルールを定めるのと同様、重要な法律関係である結婚の準備段階にあたる婚約についても婚約契約を作成することをお勧めします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。