大麻リキッドの初犯は逮捕?不起訴?専門弁護士が解説

最終更新日: 2024年02月29日

大麻の初犯でも逮捕・起訴される?事例も踏まえ弁護士が解説大麻は初犯でも逮捕されるの?
初犯の大麻事件で不起訴になることはあるの?
初犯の大麻事件でも実刑判決になることはあるの?

大麻は初犯率の高い犯罪です。そのため、大麻で検挙された方の多くがこのような疑問を持ちます。

今回は、数百件の刑事事件を解決してきた専門弁護士が、初犯の大麻事件について解説します。

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

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大麻は初犯でも逮捕される?在宅起訴?

大麻は初犯でも逮捕されてしまうのでしょうか。在宅捜査され、在宅起訴となることはないのでしょうか。以下、大麻事件で検挙された後の流れについて確認しましょう。

職質後の流れ

大麻所持で検挙されるのは、路上を歩いている時や車に乗っている時に職務質問をされ、所持品検査をされるケースが典型的です。

乾燥大麻を所持していたときは、その場で簡易鑑定をされ、陽性反応が出れば現行犯逮捕となります。

一方、所持量が非常に少なく簡易鑑定をしては本鑑定に回す大麻が残らない場合や、簡易鑑定では偽陽性だった場合には、現行犯逮捕とはなりません。一旦は帰宅を許され、1、2週間ほど後に本鑑定が終わり、通常逮捕となります。

最近は大麻リキッドを所持しているケースが多く、大麻リキッドは簡易鑑定をすることができませんので、当日は帰宅を許され、本鑑定後に通常逮捕となります。

在宅捜査になるケース

大麻を所持していた場合、多くのケースでは現行犯逮捕か通常逮捕となります。しかし、逮捕はされず在宅捜査となるケースもしばしばあります。

そのようなケースのほとんどは、証拠が不十分なケースです。

証拠が不十分なケースとは、

  • 鑑定によっても大麻であるのか確証を得られなかったケース
  • 所持していた量や態様からして大麻を所持しているという故意を立証できるか微妙なケース
  • 検挙した現場に複数人がおり、共同所持を認定できるか微妙なケース

などが代表的です。

これらの在宅捜査になったケースでは起訴されないことが多いですが、捜査の結果、立証可能と判断され、在宅起訴となるケースもあります。

逮捕された場合の流れ

一方、逮捕された場合は次の流れとなります。

まず警察に逮捕されてから48時間以内に検察庁へ事件が送られます。そして、検察庁への事件送致から24時間以内に、検察官が裁判官に10日間の勾留を請求し、裁判官が勾留を決定します。

10日間の勾留期間の後、さらに最大10日間、勾留期間が延長されます。そして、その満期の日に起訴され、約1か月後に、裁判(公判)が開かれることとなります。

近時は勾留されないケースも

多くのケースでは以上の流れとなります。しかし、近時は、検察官が勾留を請求しても裁判官が勾留請求を却下して、釈放を認めるケースがしばしばみられるようになりました。

刑事事件において勾留を認めないケースは近時増えていましたが、大麻など薬物犯罪では関係者との口裏合わせの可能性があり、証拠隠滅を懸念されることから勾留は必至でした。

ところが、近時は、薬物犯罪においても初犯の末端ユーザーの場合には、証拠隠滅の可能性は低いと判断され勾留されないことがあります。釈放を認めやすくするよう、弁護人が裁判官に対して意見書を提出することの重要性が高まっているといえます。

大麻所持の初犯は保釈される?保釈金は?

起訴されると裁判官に対して保釈請求ができます。保釈が許可されて保釈金を納めると釈放されます。ここでは大麻事件の保釈について説明します。

黙秘したら保釈されない?

大麻所持の初犯は、罪を認めていれば保釈が許可されるのが通常です。

ところで、自ら大麻を栽培していた場合でなければ、大麻は誰かから買ったり、もらうことになります。捜査機関は当然、誰から入手したのか、大麻の入手ルートに関心があります。

しかし、入手ルートが友人であったり、怖い人の場合には、入手先について供述したくないという場合もあります。このように入手先を黙秘すると起訴された後の保釈が認められないのではないかと懸念するかもしれません。

確かに、入手先が友人であったり、関係が深い場合には保釈を認めると証拠隠滅の恐れが高いと判断され、保釈が認められない可能性があります。

一方、入手先以外については正直に供述しており、面識のない売人から買ったというだけであれば、釈放したとしても敢えてその売人と口裏合わせをする可能性は低いため、入手先を黙秘していたとしても保釈が認められる可能性は十分にあります。

保釈金はどれくらい?

起訴後に保釈請求が認められると、保釈金を裁判所に収めて保釈してもらうことができます。

この保釈金は、逃亡を防ぐために担保として裁判所に収めるものですから、被告人にとって没収されると痛い金額に設定されます。つまり被告人の経済力によってその金額は増減するのです。

大麻の初犯であれば実刑判決になる可能性は低いため、敢えて逃亡を図る可能性は低いと裁判官も判断します。そのため、よほど経済力のある方でなければ、保釈金は150万円から250万円の間になるでしょう。

大麻リキッドの初犯は不起訴になる?

大麻の初犯で不起訴になることはあるのでしょうか。以下大麻の起訴率や、どのようなケースで不起訴になるのか見て行きましょう。

大麻の起訴される確率

令和2年の統計によれば、大麻取締法違反事件7254件中、起訴されたのは3019件でした。つまり、起訴率は41%です。

犯罪全体の起訴率が30%ですからそれよりは高いですが、6割は不起訴になっていると見ることもできます。

起訴猶予で不起訴になるケース

先ほどの統計によれば、起訴猶予となったのは1590件でした。つまり全体の22%ほどが証拠は十分で、起訴して有罪判決を得ることができるのに起訴されなかったということです。

このように起訴猶予とするか否かを判断する裁量は担当の検察官にあります。検察官は、大麻の所持量、被疑者の常習性や反省態度、前科の有無、更生に協力する監督者の有無などを考慮して起訴猶予とするか判断します。

検察官が起訴猶予としやすくするための材料を提出していくことは弁護人の重要な仕事です。

証拠不十分で不起訴になるケース

一方、起訴猶予以外、つまり証拠不十分で不起訴になったケースは1100件でした。つまり全体の15%ほどが証拠不十分で不起訴となっています。

灰皿にあった吸い殻、パケやクラッシャーに残っていた大麻の少量のカスなどは大麻を所持しているという故意があるのか微妙なケースがあり、そのような場合には証拠不十分で不起訴となることがあります。

また、共同所持の事案、例えば複数人で車に乗っていたところで一部の者は逮捕されたものの、他の者については共同所持の事実が認められるか微妙なケースはよくあります。このような共同所持の事案も比較的、証拠不十分で不起訴になるケースは多いといえます。

さらに、近年、検挙件数の急増している大麻リキッドについては、新しい大麻の製品のため、その鑑定結果によっては大麻取締法の要件に該当するのか微妙なケースもあり、不起訴になることが多い印象です。

これらの証拠不十分で不起訴になるようなケースでは、警察や検察に対してどのような供述をするかが非常に重要ですから、予め弁護士と十分な打合せをすることが重要です。

大麻の初犯の裁判は執行猶予?実刑?

次に、不起訴とはならず起訴された場合にどのような判決が下るのかについて見て行きましょう。

法律上の刑の重さ

大麻に関する犯罪の刑の重さ(法定刑)は、以下のとおりです。

栽培、輸入7年以下の懲役

輸入は、罰金刑は100万円以下の罰金も

【営利目的】

10年以下の懲役、又は情状により10年以下の懲役及び300万円以下の罰金

所持、譲受、譲渡

5年以下の懲役

【営利目的】

7年以下の懲役、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金

初犯の単純所持は執行猶予

大麻の所持は、初犯であればほとんどのケースで執行猶予がつきます。

判決内容は懲役6か月から1年、執行猶予3年が普通です。よほど反省が見られないなど公判での態度が悪くない限りは、初犯の大麻所持で実刑判決となることはありません。

初犯で実刑になるケース

初犯の大麻事件で実刑判決になるケースもあります。

まず、営利目的が認定された場合には、先ほどご紹介しましたとおり、法定刑は重くなります。そのため、初犯であっても3年以上の実刑判決となるケースが多くあります。

そのため、起訴される前の捜査段階で、いかに営利目的を付けて起訴されることのないようにするかが弁護活動で重要となります。

再犯率は高く執行猶予でも安心できない

大麻に限らず、違法薬物には依存性がありますので、初犯で執行猶予が付いたとしても、執行猶予期間内に再犯に及んでしまい実刑判決を受けるケースは多くあります。

覚醒剤は再犯率が70%近く、非常に依存性が強いことがわかります。一方、大麻は検挙件数のうち初犯率が高く、再犯率は覚醒剤ほど高くはありませんが、それでも再犯率は20%を超えています。

したがって、前記のとおり、初犯の大麻は執行猶予が付く可能性が高いとはいえ、その後の再犯によって実刑判決を受ける可能性は十分ありますので、安心はできません。

再犯の場合で執行猶予がつくには?

再犯の場合、実刑判決を受ける可能性は高くなります。しかし、保護観察付きの執行猶予期間内でない限りは、法律上は、執行猶予となる可能性があります。

では、過去にも違法薬物で有罪判決を受けた前科がある場合、どのような場合に再び執行猶予がつくのでしょうか。

執行猶予中の再犯のケース

法律上、執行猶予中の再犯であっても、以下の要件を満たせば、再度の執行猶予判決が可能です(刑法第25条2項)。

  • 今回の判決が1年以下の懲役刑となる場合 かつ
  • 情状に特に酌量すべきものがあるときは、

大麻の単純所持のケースでは1年以下の懲役刑を言い渡される可能性が十分ありますから多くの事件で一つ目の要件はクリアできそうです。

問題は二つ目の要件で、情状に「特に」酌量すべき点が必要です。単に反省している、家族が情状証人として出廷しているというだけでは不十分です。

入院治療を受けていること、ダルクなど更生支援施設への入所など、再犯防止のための本気の取り組みが必要となります。再度の執行猶予を得られるかどうかは担当する弁護士の力量が大きく影響します。

執行猶予期間が経過している場合

執行猶予期間が明けた後の再犯の場合、法律上は執行猶予を付すことは可能です。しかし、実務上、前刑の判決言渡しから5、6年が経過したにとどまるケースでは実刑判決となる可能性が高いです。

一方、前刑の判決言い渡しから10年以上が経過している場合には、執行猶予が付く可能性が高いです。

微妙なのは前刑の判決言い渡しから7、8年が経過しているケースです。このようなケー^巣で執行猶予が付くか否かは、弁護活動の内容に大きく左右されるでしょう。

前刑の執行を終えた後の再犯

前刑の執行終了から7、8年が経過しているケースでは執行猶予判決となる可能性が出てくると言われています。そして、前刑の執行終了から10年以上が経過していると執行猶予が付く可能性が高くなります。

少年(未成年)の大麻の初犯

ここ3、4年で20代、未成年による大麻事件の検挙が3、4倍に急増しています。未成年者の間でも大麻に対する関心が高まり、かつ容易に入手可能な状態になっているということです。

共犯者のいない大麻の単純所持のケースであれば、捜査に時間もかかりませんので、逮捕され、72時間以内に送致された後は、検察官は警察施設の留置する勾留ではなく、勾留に代わる観護措置といって少年鑑別所に収容する選択をするケースが多くあります。

先ほど大麻の単純所持の初犯では実刑判決となる可能性は低いと説明しました。しかし、少年事件は少年の更生のために少年院が必要と判断されると初犯であっても少年院に収容されることがありますので、油断はできません。

大麻の初犯の実際の事例

最後に、初犯の大麻事件について実際の事例をいくつか見てみましょう。

初犯の大麻所持で在宅捜査の後に不起訴となった事例

知人から電子タバコのようなカートリッジをもらい一度吸った後、車のコンソールに入れておいたところ、後日、職務質問をされた際にカートリッジの中から大麻草が見つかり、検挙されました。

職務質問を受けるまでカートリッジに大麻が入っているとは知らなかったことから、逮捕や起訴されることを避けるために当事務所に依頼をしました。

まずは逮捕を回避すべく、警察に在宅捜査を求める意見書を提出しました。その結果、警察は逮捕はせず、在宅捜査にて進めてくれることとなりました。

その後、数度の取り調べがありましたが、いずれもポイントとなる点について打ち合わせをして臨んだ結果、最終的に証拠不十分で不起訴となりました。

初犯の大麻栽培で執行猶予となった事例

自分で使用するために自宅で大量の大麻を栽培していたところ、ある日家宅捜索が入り、現行犯逮捕されました。その際、覚醒剤やコカインなどの違法薬物も一緒に押収されました。

前科はなく初犯であったものの、営利目的がつけば実刑判決の可能性が高くなり、また営利目的がつかなくても覚醒剤や麻薬の所持も加わることで実刑判決となる可能性が十分にありました。

数度の再逮捕の後、保釈され、保釈後は再犯防止のために3か月間、専門病院に入院をしました。そのような治療結果などを公判で示す弁護活動を行ったところ、検察の求刑は4年半の実刑でしたが、懲役3年、執行猶予5年の判決となり実刑を免れました。

友人らと一緒に捕まった未成年の大麻所持

その年、高校を卒業し、就職をして働いていたある日、いつも一緒に遊んでいる地元の友人の家に家宅捜索が入り、大麻草を押収され、その友人は現行犯逮捕され、その2週間ほど後、逮捕状をもった警察に通常逮捕されました。

高校卒業後、将来の目標をもって真面目に働いていたことから、両親もひどく残念に思っていました。

少年本人も勾留、少年鑑別所での生活を通じて、不真面目な友人と関わることで自分の人生にマイナスの影響が及ぶことを理解し、今後はそのような友人とは距離を置くことを固く決意することができました。

審判は予定通りの保護観察処分となりましたが、少年は、今回の逮捕で意識を変えることができたと前向きな気持ちで事件を終えました。

まとめ

以上、初犯の大麻事件について解説しました。

初犯の大麻事件では、弁護活動によって逮捕や勾留を回避することができたり、不起訴処分に持ち込めるケースがあります。

大麻事件の被疑者となったときは、できる限り早期に大麻事件に詳しい弁護士にご相談ください。

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