不貞慰謝料と離婚慰謝料の違いは?両方もらえるケースと金額相場

2026年02月10日

不貞慰謝料と離婚慰謝料の違いは?両方もらえるケースと金額相場

配偶者の不貞行為(不倫・浮気)が原因で離婚を考えるとき、多くの人は「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」という二つの言葉に直面し、その違いや両方を請求できるのかといった疑問を抱えがちです。

この記事では、不貞慰謝料と離婚慰謝料それぞれの法的な意味、二重取りの問題を含む請求の可否、実際の金額相場について詳しく解説していきます。

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
宅地建物取引士

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不貞慰謝料と離婚慰謝料、2つの慰謝料の基本的な違い

配偶者に対して請求できる慰謝料には、「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」という2つの種類があります。これらはどちらも精神的苦痛に対する賠償金という点では共通していますが、その発生原因や請求できる条件、さらには請求相手が異なります。

このセクションでは、それぞれの慰謝料がどのようなもので、どのような違いがあるのかを基本的な部分から詳しくご説明します。続く項目では、それぞれの慰謝料の定義と特徴について掘り下げて解説していきます。

不貞慰謝料とは?|離婚しなくても請求できる慰謝料

不貞慰謝料とは、配偶者が不貞行為(肉体関係を伴う不倫や浮気)をしたことによって受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。法律上、不貞行為は民法709条の「不法行為」に該当するため、不貞行為を行った配偶者と不倫相手の双方に、共同で責任を負うことになります。

不貞慰謝料の最大の特徴は、離婚に至らなくても請求できる点にあります。たとえ夫婦関係を継続する選択をしたとしても、不貞行為の事実が証明できれば、配偶者と不倫相手に対し慰謝料を請求することが可能です。これは、不貞行為が夫婦間の貞操義務を破り、婚姻共同生活の平和を害する行為であると法的に評価されるためです。

したがって、不貞慰謝料は「不貞行為そのもの」によって生じた精神的損害に対して支払われるものであり、必ずしも離婚を前提とするものではありません。ただし、離婚に至った場合は精神的苦痛が大きいと判断され、慰謝料額が高額になる傾向があります。

不貞慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。

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離婚慰謝料とは?|離婚そのものに対する慰謝料

離婚慰謝料とは、相手方の有責行為(責任がある行為)が原因で離婚せざるを得なくなった際に、離婚によって受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金です。不貞慰謝料が「不貞行為」という特定の行為に対するものなのに対し、離婚慰謝料は「離婚そのもの」によって生じる精神的苦痛焦点を当てています。

この有責行為には、不貞行為だけではなく、DV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ(モラルハラスメント)といった精神的な暴力、さらには「悪意の遺棄」(正当な理由なく同居・協力・扶助義務を果たさないこと、例えば生活費を渡さないなど)も含まれます。これらの行為によって夫婦関係が破綻し、離婚に至った場合に請求できるのが離婚慰謝料です。

不貞慰謝料と大きく異なる点は、離婚慰謝料は「離婚すること」が請求の前提条件となることです。つまり、離婚が成立しない限り、離婚慰謝料は請求できません。不貞行為が離婚の原因となる場合、不貞行為に対する精神的苦痛と離婚に対する精神的苦痛が重なる部分が多く、両者が混同されやすい傾向にあります。

離婚慰謝料を請求できる条件については、以下の記事で詳しく解説しています。

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【結論】不貞慰謝料と離婚慰謝料は両方もらえる?二重取りの考え方

配偶者の不貞行為に直面したとき、「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」という2種類の慰謝料の請求を検討される方は少なくありません。しかし、これらを両方もらえるのか、あるいは二重取りになってしまうのか、という点は多くの方が疑問に感じるでしょう。

結論からお伝えすると、原則として、同じ不貞行為という原因に対して慰謝料を二重に受け取る「二重取り」は認められていません。ただし、厳密には二重取りではないものの、例外的に慰謝料が増額されるケースは存在します。この後のセクションでは、それぞれの慰謝料の法的な考え方について詳しく解説します。

原則として慰謝料の「二重取り」はできない

慰謝料の「二重取り」が原則として認められないのは、法律が精神的苦痛に対する賠償を「一体のもの」として捉えるためです。裁判実務において、不貞行為が原因で離婚に至った場合、不貞行為によって受けた精神的苦痛と、その結果としての離婚によって受けた精神的苦痛は、切り離して考えるのではなく、一つの連続した精神的損害として評価されます。

具体的には、裁判所は不貞行為から離婚に至るまでの一連の事情を総合的に考慮し、生じた精神的苦痛の総額を算定します。そして、その総額を「離婚に伴う慰謝料」として認定します。

そのため、別途、不倫相手に対して不貞慰謝料を請求しても、既に配偶者から受け取った金額と合わせて、精神的苦痛の総額を超えて支払いを受けることは認められません。つまり、不貞行為を理由とする慰謝料は、配偶者と不倫相手のどちらから受け取ったとしても、最終的に受け取れる賠償額の総額は一定の範囲内に収まる、という考え方が基本となります。

例外的に両方の請求が認められる(増額される)ケース

慰謝料の二重取りが原則として認められない一方で、例外的に慰謝料が増額されるケースがあります。これは厳密には「二重取り」ではありませんが、複数の原因によって精神的苦痛が複合的に生じている場合に認められます。

例えば、離婚の原因が配偶者の「不貞行為」だけでなく、「DV(ドメスティック・バイオレンス)」や「モラハラ(モラルハラスメント)」、あるいは「悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)」といった複数の有責行為にある場合です。この場合、不貞行為によって受けた精神的苦痛とは別に、DVやモラハラといった他の行為によって生じた精神的苦痛に対しても慰謝料が認められる可能性があります。

このような状況では、不倫相手に対してはあくまで不貞行為に対する慰謝料しか請求できませんが、配偶者に対しては不貞行為とDV・モラハラの双方に対する責任を追及できるため、結果として請求できる慰謝料の総額が増えることになります。つまり、不貞行為だけが離婚原因ではない、複合的な事情がある場合には、精神的苦痛の全体像を考慮して慰謝料が増額される可能性があるということです。

誰に請求できる?配偶者と不倫相手への請求の違い

不貞行為によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料は、不貞行為を行った「配偶者」と「不倫相手」の双方に請求する権利があります。しかし、被害者が実際に受け取れる賠償額は、損害の総額までとされています。

つまり、配偶者と不倫相手のどちらか一方、または両方から慰謝料を請求できますが、例えば損害額が300万円と認められた場合、両方から合わせて300万円までしか受け取ることはできません。もし、不倫相手から300万円を受け取った場合、配偶者には慰謝料を請求できなくなります。この法的な関係性を理解した上で、次に配偶者と不倫相手それぞれに請求する場合の特徴と注意点について詳しく見ていきましょう。

配偶者(夫・妻)への請求

配偶者に対して慰謝料を請求する場合、最も一般的なのは離婚を前提とするケースです。離婚する際には、慰謝料の他にも、夫婦の共有財産を分ける財産分与や、子どもの養育費、年金分割など、様々なお金の問題が発生します。これらの金銭問題をまとめて協議離婚の中で話し合い、解決することが一般的です。

当事者間の話し合いで慰謝料の金額や支払い方法について合意できない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。調停委員を介して話し合いを進め、合意を目指します。調停でも解決しない場合は、最終的に離婚裁判を起こし、裁判官に判断を委ねることになります。

配偶者への慰謝料請求の大きな特徴は、不貞行為以外の原因、例えばDV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ、悪意の遺棄(生活費を渡さないなど)によって受けた精神的苦痛に対しても、離婚慰謝料としてまとめて請求できる点です。不貞行為が離婚の原因の一部である場合でも、配偶者に対してはそれ以外の有責行為についても責任を追及し、慰謝料に含めることが可能です。

不倫相手への請求

不倫相手に対して慰謝料を請求する場合、配偶者との婚姻関係を継続するか、離婚するかにかかわらず請求が可能です。不倫相手に慰謝料を請求するためには、不倫相手が「故意または過失」によって不貞行為を行ったという事実が必要です。

具体的には、不倫相手があなたの配偶者が既婚者であることを知っていた、または少し注意を払えば既婚者であることがわかったはずである、という事情が求められます。もし不倫相手が、配偶者が既婚者であることを知っていたことが証明できず、また、その事実を知らなかったことに過失があったと証明できなかった場合、慰謝料請求が認められない可能性もあります。

不倫相手に請求できる慰謝料は、あくまで「不貞行為」によって受けた精神的苦痛に対するものに限られます。配偶者へのDVやモラハラなど、不貞行為以外の要因による精神的苦痛については、不倫相手に責任を追及することはできません。また、不倫相手から慰謝料を受け取る際には、求償権、つまり、不倫相手が損害賠償を支払った場合に、不倫相手が配偶者に対して責任割合に基づく支払額の清算請求をすることの問題にも注意が必要です。

慰謝料請求でやってはいけないことについては、以下の記事で詳しく解説しています。

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よくある質問(FAQ)

不貞行為や離婚に関する慰謝料の問題は、非常にデリケートで複雑なため、多くの方がさまざまな疑問を抱えていらっしゃいます。これまでの解説で触れきれなかった点や、特に多く寄せられる質問について、Q&A形式でわかりやすくお答えしていきます。

Q:肉体関係がないプラトニックな関係でも慰謝料は請求できますか?

原則として、裁判で「不貞行為」と認められ、慰謝料請求が認められるのは、配偶者以外との肉体関係があった場合です。そのため、単に頻繁に食事に行ったり、手を繋いだりするといったプラトニックな関係だけでは、原則として不貞慰謝料の請求は難しいとされています。

しかし、例外的に肉体関係がなくても慰謝料が認められるケースもあります。例えば、頻繁なデートを重ねたり、キスや抱擁といった行為があったりするなど、夫婦の婚姻共同生活の平和を維持する権利を著しく侵害するほど親密な関係であったと証明できる場合です。この場合、「不貞行為」とまではいかなくとも、民法上の「不法行為」として精神的苦痛に対する賠償が認められる可能性があります。

ただし、認められる慰謝料の金額は、肉体関係があった場合の不貞慰謝料に比べて低額になる傾向があります。重要なのは、その行為が夫婦関係に与えた影響の大きさや、配偶者の精神的苦痛の度合いを客観的に証明できるかどうかです。

Q:離婚後に元配偶者の不貞が発覚した場合でも請求できますか?

はい、離婚後に元配偶者の不貞行為が発覚した場合でも、慰謝料を請求することは可能です。請求の対象となる不貞行為は、あくまで「婚姻期間中」に行われたものである必要がありますが、その事実を離婚後に知ったとしても、慰謝料を請求する権利は失われません。

ただし、慰謝料請求権には時効がありますので注意が必要です。不貞行為に対する慰謝料は、被害者が不貞行為の事実と、不倫相手の存在を知った時から3年、または不貞行為があった時から20年で時効が成立します。したがって、離婚後に不貞の事実を知った場合は、その時点から3年以内に請求手続きを開始する必要があります。この時効期間を過ぎてしまうと、たとえ確たる証拠があっても慰謝料を請求できなくなるため、早めに行動を起こすことが非常に重要です。

Q:慰謝料を請求された側です。どうすればよいですか?

慰謝料を請求された場合、まずは届いた書面の内容を冷静に、そしてしっかりと確認することが大切です。感情的になって無視したり、安易に請求に応じたりすることは避けるべきです。書面に記載されている不貞行為の事実関係や、請求されている金額が妥当であるかを慎重に検討しましょう。

もし、請求内容に事実と異なる点がある場合や、請求されている金額が相場と比較して不当に高額であると思われる場合は、減額交渉の余地があります。この際、ご自身で相手方と直接交渉すると、感情的になったり、不利な条件で合意してしまったりするリスクがあるため、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士は、請求の妥当性を法的な観点から判断し、具体的な対応策をアドバイスしてくれます。また、代理人として相手方と交渉し、適切な反論や減額交渉を行ってくれるため、精神的な負担を大きく軽減することができます。示談書にサインをする前に、必ず法律の専門家に相談し、最善の解決策を検討することが重要です。

まとめ

配偶者の不貞行為に直面したとき、不貞慰謝料と離婚慰謝料という二つの言葉に戸惑うかもしれません。不貞慰謝料は「不貞行為」自体に対する精神的苦痛への賠償で、離婚しなくても請求できます。一方、離婚慰謝料は「離婚」そのものに対する精神的苦痛への賠償であり、離婚が前提となります。

不貞行為が原因で離婚に至った場合、原則として不貞慰謝料と離婚慰謝料を二重に請求することはできません。これは、精神的苦痛の総額として慰謝料が一本化されるためです。しかし、不貞行為以外にもDVやモラハラなど複数の有責行為があった場合は、結果的に慰謝料額が増額されるケースもあります。

このような複雑で感情的な問題は、一人で抱え込まずに弁護士などの専門家に相談することが、後悔のない解決につながる最も確実な方法です。弁護士は、適正な慰謝料額の算定、相手方との交渉や法的手続きの代理、そして有効な証拠収集のアドバイスを通じて、あなたの精神的・経済的な負担を軽減し、より良い未来を築くためのサポートをしてくれるでしょう。

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