薬物で逮捕されたら懲役何年になる?時効・逮捕後の流れ・弁護士との相談ポイントも解説

2025年02月23日

  • 警察から違法薬物の使用や所持を疑われている。逮捕されるとどうなってしまうのか心配だ。
  • 薬物に関する罪で逮捕・起訴された場合、最長で何年くらい刑事施設に収容されるのだろう?
  • 違法薬物で逮捕されるそうな場合、誰に相談すべきか教えてほしい。

覚醒剤や大麻、危険ドラッグは、人の生命や身体に重大な影響を与える薬物として、厳しく規制されています。

薬物の種類や利用目的によっては、無期懲役(無期の拘禁刑)および1,000万円以下の罰金で処罰される可能性があるのです。

そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた専門弁護士が、違法薬物で逮捕された場合、何年の懲役になるか、逮捕された後の流れ等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 違法薬物の種類や利用目的によって科される刑罰は異なる
  • 違法薬物に関する罪で逮捕された場合、基本的に送検→勾留→起訴・不起訴→裁判という流れになる
  • 違法薬物に関する罪で逮捕されてしまうか不安なときは、速やかに弁護士と相談しよう

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

薬物で逮捕されたら何年の懲役になる

薬物は法律で使用や所持、製造等が厳しく規制されており、法律に違反すると逮捕・起訴される可能性があります。
起訴され有罪になると、以下の通り懲役(2025年6月1日以降「拘禁刑」)や罰金刑に処されるでしょう。

覚醒剤

覚醒剤の使用や所持、密売をした者は「覚醒剤取締法」により、処罰される可能性があります。

覚醒剤をみだりに輸入や輸出・製造した者は1年以上の有期懲役(覚醒剤取締法第41条第1項)です。

ただし、それらの行為が「営利目的」で行われると、無期もしくは3年以上の懲役、情状により無期もしくは3年以上の懲役および1,000万円以下の罰金(同法第41条第2項)と、罪が非常に重くなります。

他にも、同法によって処罰される行為があります。主なものは、次の通りです。

  • 覚醒剤をみだりに所持、譲渡、譲り受けた:10年以下の懲役(同法第41条の2第1項)
  • 覚醒剤を営利目的で所持、譲渡、譲り受けた:1年以上の有期懲役、または情状により1年以上の有期懲役および500万円以下の罰金(同法第41条の2第2項)
  • 覚醒剤を使用した等:10年以下の懲役(同法第41条の3)

出典:覚醒剤取締法|e-GOV法令検索

大麻

大麻を取り締まる法律は、次の通り大幅に変更されています(2023年12月改正)。

  • 大麻の所持や譲渡:「麻薬」として位置付け、「麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)」による規制へ移行
  • 大麻の栽培:大麻取締法を「大麻草の栽培の規制に関する法律(大麻栽培規制法)」に改題し、同法で規制

次の行為は、麻薬取締法で処罰されます。

  • 大麻を使用した:7年以下の懲役(麻薬取締法第66条の2第1項)
  • 大麻を営利目的で使用した:1年以上10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科(同法第66条の2第2項)
  • 大麻を所持・譲受・譲渡した:7年以下の懲役(同法第66条第1項)
  • 大麻を営利目的で所持・譲受・譲渡した:1年以上10年以下の懲役、情状により300万円以下の罰金を併科(同法第66条第1項)
  • 大麻を輸出・輸入した:1年以上10年以下の懲役(同法第65条第1項)
  • 大麻を営利目的で輸出・輸入した:1年以上20年以下の懲役(同法第65条第2項)

一方、次の行為は、大麻栽培規制法で処罰されます。

  • 大麻を栽培した:1年以上10年以下の懲役(大麻栽培規制法第24条第1項)
  • 大麻を営利目的で栽培した:1年以上20年以下の懲役、情状により500万円以下の罰金を併科(同法第24条第2項)

出典:麻薬及び向精神薬取締法|e-GOV法令検索

出典:大麻草の栽培の規制に関する法律|e-GOV法令検索

危険ドラック

危険ドラッグの使用・所持や輸入、密売をしていた者は「医薬品医療機器等法」や「関税法」、各都道府県の条例により処罰対象となります。

医薬品医療機器等法では、厚生労働省令以外の用途で製造や輸入、販売、授与等を行った場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの刑が併科されます(医薬品医療機器等法第84条)。

医薬品医療機器等法で定められている危険ドラッグ(指定薬物)を輸入すれば、関税法で10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはこれらの刑が併科されるでしょう(関税法第109条)。

他にも各都道府県の条例による規制もあります。
たとえば、東京都薬物の濫用防止に関する条例の場合は次の通りです。

  • 知事指定薬物を販売または授与の目的で広告した
  • 知事指定薬物を所持・購入・譲受けまたは使用した

上記のような行為は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(東京都薬物の濫用防止に関する条例第22条の2)。

出典:医薬品医療機器等法|e-GOV法令検索

出典:関税法|e-GOV法令検索

出典:東京都薬物の濫用防止に関する条例|e東京都例規集データベース

薬物で逮捕された後の流れ

被疑者が違法な薬物の使用・所持等の疑いで逮捕された場合、捜査機関は通常の刑事手続に従い、取り調べや証拠となる薬物の押収等を進めていきます。

逮捕後、検察官が裁判所に勾留請求をしなければ、被疑者は釈放され、任意捜査(在宅事件)となる場合もあるでしょう。

送検

警察が被疑者を違法薬物の使用・所持等の疑いで逮捕・留置した場合、48時間以内に検察へ送致(送検)しなければなりません。

検察庁では、検察官が改めて違法な薬物に関する取り調べます。

送検後、検察官が被疑者による違法な薬物の使用、逃亡、証拠隠滅を防ぐため、留置施設への勾留継続を判断する可能性があります。

勾留の継続を行う場合、検察官は24時間以内に裁判所に「勾留」請求を行わなければなりません。

勾留

検察官の勾留請求を裁判所が認めた場合、留置施設で引き続き被疑者の身柄拘束が可能です。

勾留期間は原則10日ですが、必要があれば更に10日間継続されます。

被疑者を勾留している間に、警察や検察の取り調べや、違法薬物等の捜索・押収が行われるでしょう。

起訴・不起訴

違法薬物に関する捜査を終えたときは、検察官は被疑者を起訴するか否かについて判断しなければなりません。

  • 起訴→刑事裁判で無罪か有罪かを決める
  • 不起訴→被疑者を釈放する

不起訴となればすぐに釈放され自宅へ戻れます。起訴されれば公開の法廷で違法薬物の事実の有無が審理されます。

裁判

検察が起訴(公判請求)を決めると、被疑者が勾留中の場合は留置施設に、在宅事件の場合は自宅に起訴状が送達されるので、起訴内容をよく確認しましょう。

刑事裁判になると、被疑者から「被告人」へと呼び方が変わります。

起訴からおよそ1〜2週間後に、第1回公判期日の日程が決定されます。起訴から約1〜2か月後に第1回公判期日を開くのが一般的です。

被告人が違法薬物に関する事実を認めている場合、第1回公判期日で結審、第2回公判期日で判決が言い渡され、裁判は終了するでしょう。

裁判官は検察側・弁護側の主張や証拠、事実等を十分審理したうえで、有罪か無罪かの判決を言い渡します。

被告人を有罪にするだけの証言や証拠がなければ無罪となり、証言や証拠から違法薬物に関する犯罪が認められるときは有罪となるでしょう。

有罪のときに言い渡される判決は次のいずれかです。

  • 実刑判決:刑罰を言い渡され、かつ刑罰が執行される判決
  • 執行猶予付き判決:刑罰は言い渡されるが、刑の執行が猶予される判決

なお、検察側や弁護側が判決に不服があるときは、上級裁判所に対し控訴が可能です。

薬物の逮捕は何年有効か

違法薬物に関する時効は、懲役(拘禁刑)等の期間によって異なります。

たとえば、覚醒剤を営利目的で輸入や輸出、または製造した者の罪が無期懲役にあたる場合の時効期間は15年です。

同様に、15年未満の懲役の場合は7年、10年未満の懲役の場合は5年、5年未満の懲役の場合は3年で時効となります。

出典:刑事訴訟法|e-GOV法令検索

薬物での逮捕を弁護士に相談するメリット

違法な薬物の使用・所持等の疑いで逮捕された場合、速やかに弁護士と相談しましょう。

弁護士は被疑者に有益なアドバイスをする他、私選弁護人として粘り強い弁護活動を行います。

早期の身柄解放を目指せる

弁護士の説得で早期釈放となる場合もあるでしょう。

逮捕後に警察署で取り調べを受ける場合、速やかに弁護士へ連絡すれば、弁護士はすぐに警察署に駆けつけます。

逮捕前に弁護士と相談し私選弁護人を依頼していれば、早い段階で面会できます。そうすれば弁護士は、取り調べのときの対応の仕方や今後の刑事手続の流れ等のアドバイスが可能です。

また、弁護士は警察に対して次の主張を行い、早期の身柄解放を目指します。

  • 被疑者が薬物の常習犯ではない旨
  • 帰宅させても薬物は使用しない旨
  • 被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがないこと

弁護士の主張により警察側が帰宅を認める可能性もあるでしょう。その場合、今後は在宅事件として捜査が進められていきます。

不起訴処分獲得を目指せる

弁護士の指示に従い、警察や検察の捜査に協力すれば、不起訴処分となる可能性もあるでしょう。

検察官は被疑者を起訴・不起訴の判断をするときに、次のような事情を考慮し、被疑者を不起訴処分にする場合があります。

  • 被疑者は真摯に反省している
  • 被疑者は弁護士の指示を受け捜査に協力した
  • 被疑者は違法薬物の常習者でないことが確認できた
  • 所持していた薬物は微量である
  • 被疑者には違法薬物に関する前科がない

被疑者が不起訴処分となれば、前科が付かないため速やかに社会復帰が可能となるでしょう。

減刑を目指せる

たとえ検察から起訴されても、弁護士は諦めずに弁護活動を継続します。

弁護士のサポートを受けながら、刑事裁判で違法薬物に関する事実を主張し、反省や再発防止策等を述べれば、裁判官から「更生の余地がある」と認められる可能性も高まるでしょう。

その場合は、判決で減刑や執行猶予を得られる可能性があります。

再発防止策のアドバイスをもらえる

違法薬物の常習性が認められる場合は、裁判官に再発防止策を提出しましょう。

弁護士は、薬物依存から脱却する方法の相談にも乗ります。弁護士は薬物依存の治療・カウンセリング施設や、自助グループの紹介も可能です。

裁判のとき、次のような治療やカウンセリングを行い、社会復帰を目指す姿勢が示せれば、減刑や執行猶予付き判決が得られる可能性もあります。

  • 家族の監督に従う
  • 薬物依存の治療専門の医療機関やクリニックで治療する
  • 回復支援施設に入所・通所し、指導やカウンセリングを受ける
  • 精神保健福祉センター、保健所に更生のための相談をする
  • 薬物依存症者の自助グループでミーティング等に参加する 等

医療施設や自助グループ等を利用し、実際に薬物依存から脱却できるかどうかは、家族の協力と本人の努力次第です。

薬物での逮捕でお困りなら春田法律事務所にご相談を

今回は多くの刑事事件を担当してきた専門弁護士が、違法薬物で逮捕された後の対処法等について詳しく解説しました。

春田法律事務所は刑事裁判に実績のある法律事務所です。違法薬物の所持等を理由に逮捕されそうなときは、今後の対応の仕方を弁護士とよく相談しましょう。

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