養育費を増やす3つの方法とは?より多く受け取るためのポイントやすべきことを解説

最終更新日: 2023年10月31日

養育費を増やす3つの方法とは?より多く受け取るためのポイントやすべきことを解説

  • 夫からの養育費の増額の話し合いをしているが揉めている
  • 養育費を支払っている相手の収入の増加を理由に増額は可能なの?
  • 養育費の支払いを増額をさせる方法を教えてほしい

養育費は親権を持たない親が子どもの養育のために支払う費用です。

養育費の額は子どもが自立するまで、毎月同じ額では足りないケースもあります。

なぜなら、子どもが成長すれば、生活費や教育費の負担が大きくなる可能性があるからです。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、養育費を増やす方法、養育費を増やせる可能性が高いケース等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 養育費が足りないときは、相手との交渉や調停、審判で増額を請求できる
  • 子どもへの支出が増えたり、養育費を支払っている親の収入が変化したら、増額できる可能性がある
  • 養育費を増やすためには、増額理由を明確化し、事前に弁護士と相談して交渉の準備を整える

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

養育費を増やす3つの方法

離婚時に毎月支払う養育費の額や支払い方法を決めたものの、子どもの成長などの事情の変化で、増額が必要となることもあります。

その場合には、次のような方法で解決を図ります。

協議

養育費の増額については、「養育費・婚姻費用算定表」を確認しつつ話し合っていきましょう。

たとえば離婚時に、家族の収入の状況は次の通りだった場合、

  • 養育費を支払う側:夫(会社員年収500万円)
  • 養育費を受け取る側:妻(専業主婦)
  • 子ども1人:6歳(小学生)

算定表を用いると、離婚時の養育費は毎月約6万6,000円が目安です。

しかし、10年後には子どもが高校に進学し、教育費用も多くかかります。

10年後、次のような状況になりました。

  • 養育費を支払う側:夫(会社員年収700万円)
  • 養育費を受け取る側:妻(パート従業員年収150万円)
  • 子ども1人:16歳(高校生)

この場合、算定表を用いると10年後の養育費は毎月約8万9,000円が目安です。

算定表の金額を参考に、受け取る側と支払う側双方の事情も考慮し、養育費の金額を決めていきましょう。

出典:養育費・婚姻費用算定表 | 裁判所

調停

話し合いで双方が養育費の増額に合意できなかった場合は、調停による解決が可能です。

養育費を支払う側の親の住所地または当事者が合意で決めた家庭裁判所に、「養育費(増額)調停」を申し立てます。

家庭裁判所から選任された調停委員が、当事者双方の言い分を聴き、調整を図り、合意を目指していきます。

養育費(増額)調停の申立てには、次の書類の提出が必要です。

  • 申立書原本および写し各1通
  • 送達場所の届出書1通
  • 事情説明書1通
  • 進行に関する照会回答書1通
  • 未成年者の戸籍謄本1通:本籍地の市区町村で取得
  • 申立人の収入関係の資料:源泉徴収票、給料明細、確定申告書等の写し
  • 非開示の希望に関する申出書:必要があれば
  • 収入印紙:子ども1人につき1,200円
  • 郵便切手

出典:養育費(請求・増額・減額等)調停の申立て | 裁判所

審判

調停不成立の場合は、自動的に審判へ移行し増額するかどうかが判断されます。

裁判官は一切の事情を考慮したうえで、養育費に関する決定を下します。

審判で増額が妥当であると認められた場合は、支払う側はそれに従い養育費を支払わなければなりません。

養育費を増やせるケース

子どもにかかる出費や支払う側の収入が上がった場合は、支払う側は養育費の増額に応じる可能性があります。

子への支出が増えた場合

子どもが公立の小学校・中学校で義務教育を受けていても、成長すれば私立の高校に進学したり、大学進学のために塾に通ったりするため、養育費が足りなくなるかもしれません。

事情の変更があり、次のような条件が揃っているときは、協議や調停で養育費の増額が認められる可能性は高いです。

  • 離婚時に夫婦で取り決めた養育費が、教育費用の増額分を見込んでいなかった
  • 支払う側が受け取る側の教育方針(例:大学進学させる等)を承知していた
  • 支払う側の収入や生活レベル等を考慮しても適切な教育内容である

もちろん、子どもに大学や短大等へ進学したいのか、それとも高校卒業後に就職したいのかを聞いたうえで、養育費の増額を検討する必要があります。

収入の変化

離婚後、受け取る側の親の収入が低いにもかかわらず、支払う側の収入が順調に高くなっているときは、以前と同じ金額のままでは不公平といえます。

その場合、当事者間で再び養育費の金額を決め直した方がよいでしょう。

しかし、離婚した元配偶者の年収は容易にはわかりません。

そのため、離婚時に作成する離婚契約書に「定期的にお互いの年収を開示し、養育費を再検討する」という条件を盛り込んでおいた方がよいです。

養育費を増やすためのポイント

養育費をスムーズに増額させるために、ケースに応じて次のような方法をとってみましょう。

内容証明郵便の送付

養育費の増額を支払う側と話し合いたくても、いつまでも返答がないケースもあります。

そのようなときは、相手に「内容証明郵便」を送付しましょう。

内容証明郵便とは、郵便局に相手へ送った内容、送付・送達についての記録が残る郵便です。

養育費の増額に関しての記載内容は法定されていないものの、概ね次のような事項を明記する必要があります。

  • 内容証明のタイトル:「養育費増額請求書」
  • 養育費の増額希望を明記
  • 養育費を増額する理由
  • 増額希望額
  • 養育費の受取人(差出人)の住所と氏名

内容は、縦書きの場合は1行20文字以内で用紙1枚あたり26行以内を目途にしましょう。

横書きの場合は、1行20文字以内で用紙1枚あたり26行以内、1行13文字以内で用紙1枚あたり40行以内、1行26文字以内で用紙1枚あたり20行以内が目途です。

内容証明郵便には法的な効力はないので、送付しても相手に無視される可能性はあります。

しかし、多少なりとも相手にプレッシャーを与える効果はあるので、相手側から「話し合いをしたい」と交渉を申し込んでくることも期待できます。

公正証書の作成

養育費の増額に当事者が合意したときは、合意内容を必ず契約書として書面化しておきましょう。

ただし、当事者間で作成した契約書の場合、相手が書面を破棄したり改ざんするおそれも否定はできません。

そこで、養育費の増額に関する取り決めを「公正証書」で作成しておくと安心です。

公正証書、公証役場で公証人(公証作用を担う公務員)が作成する公文書です。

公証人が当事者の意思を聴き取り作成するので信頼性は高く、原本は公証役場に保管されるため、相手によって偽造・変造されるリスクもありません。

さらに、「強制執行認諾」の記載がある公正証書にしておけば、たとえ養育費の増額に関する不履行があっても、裁判手続を経ずに相手へ強制執行ができます。

養育費を支払う側は、強制執行をおそれて誠実に養育費の増額に応じる可能性が高まります。

養育費を増やすためにすべきこと

養育費の増額を希望する場合は、いきなり養育費を支払う側へ請求するのではなく、増額の理由を整理し、法律の専門家と相談して交渉の準備を行う方がよいです。

理由の明確化

養育費の増額の理由が「増額すれば受け取る自分が楽になるから」だけでは、支払う側からの反発を招き、増額の合意は困難でしょう。

増額の理由について、どのような事態が起きているか(例:受け取る側の収入の減少、子どもが進学を希望した等)、どの程度の養育費の増額を望むのか、はっきりと相手に主張しなければいけません。

協議前に「養育費・婚姻費用算定表」を参考にして、具体的な養育費の金額を算定しておきましょう。

弁護士への相談

養育費の増額請求をするときは、前もって弁護士に相談し増額が可能か確認しましょう。

弁護士は、支払う側と増額請求を交渉するときのコツや、交渉不成立の場合の対処法を助言します。

弁護士に代理人を依頼すれば、適切に養育費の適正金額を相手へ主張するので、養育費の増額が成功する確率も高くなります。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、養育費の増額請求を行うコツ等について詳しく解説しました。

養育費の増額を望む側は、支払う側の事情も考慮して、どのくらいまで増額が可能か、冷静に話し合ってみましょう。

養育費の増額を希望するときは、早く弁護士と相談し、今後の対応の仕方を検討しましょう。

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