不貞が不法行為である理由とは?慰謝料請求の条件と進め方を専門家が解説

最終更新日: 2023年10月31日

不貞が不法行為である理由とは?慰謝料請求の条件と進め方を専門家が解説

  • 不貞行為をしたら犯罪?刑務所に入れられるのか不安
  • 不貞をすると不法行為になるようだが慰謝料はどうなるのか
  • 不貞による不法行為が判明したらどのように離婚を進めるのか

不貞行為は配偶者や家族の心を傷つける卑劣な行為です。不貞行為が発覚すれば、当然その責任を問われます。

不貞をした人や不倫相手は、どのようなペナルティを受けるのか不安に感じることもあるでしょう。

そこで今回は、多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、不貞が不法行為である理由、不貞による不法行為が判明したときに慰謝料はどう決まるのか等を詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 不貞行為をしても犯罪にはならないが、不法行為責任を追及され、離婚や慰謝料を請求される可能性がある
  • 不貞行為の慰謝料は、婚姻期間や不貞を行った期間、回数等によっては高額な支払いが認められる可能性もある
  • 不貞による不法行為が判明したときは、協議、調停、裁判という形で離婚手続きが進められる

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この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

不貞が不法行為である理由

不貞は非難される行為ですが、犯罪になるのかどうか、何らかのペナルティを受けるのか、気になるところでしょう。

こちらでは不貞は犯罪か否か、不貞が不法行為に該当する意味を解説します。

犯罪ではない

犯罪とは、法律により刑罰が科される行為です。不貞行為に関して刑罰を科す法律はないので、不貞は犯罪ではありません。

不貞行為をした本人や不倫相手が懲役刑を受けたり、罰金刑を受けたりするようなことはなく、もちろん前科も付きません。

不法行為とは

不法行為とは、「故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害」することです。そして、これらの行為をした者は、「これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と民法に規定されています(民法第709条)。

不貞行為の場合、不貞行為をされた配偶者が権利・利益を侵害された「他人」であり、不貞行為をした配偶者と不倫相手が「権利・利益を侵害した者」に該当します。

つまり、不貞行為をされた配偶者は、民法の規定に従い不貞行為をした当事者の双方または一方に、損害賠償(慰謝料)を請求できます。

なお、慰謝料を請求するかどうかは、不貞行為をされた配偶者の判断次第です。

たとえば、不貞行為をした配偶者を厳しく叱責するだけにとどめ、不倫相手だけに慰謝料を請求することも可能です。

出典:民法|e-GOV法令検索|法務省

対象となる不法行為

不貞が不法行為と認められるのは、通常不貞行為をした当事者が肉体関係にある場合です。

特に裁判離婚で離婚および慰謝料を請求する場合は、不倫相手との性行為の証拠がないと、原告(訴えを提起した人)に有利な判決は得難いケースが多いです。

ただし、夫婦の一方が配偶者以外の人とデートをした、レストランで食事をした、という証拠しか見つからなくても、協議離婚や調停離婚で夫婦が合意して、離婚や希望に見合った慰謝料支払いの取り決めをすることは可能です。

不法行為である不貞の慰謝料

不貞行為をした当事者に慰謝料を請求する場合、協議や調停で合意が得られれば、合意した慰謝料の金額が支払われます。

また家庭裁判所での離婚訴訟や、地方裁判所等での慰謝料請求訴訟の場合、夫婦が離婚するケースでは慰謝料は100万円〜300万円(簡易裁判所による訴えは140万円が上限)が相場です。
ただし、婚姻期間や不貞行為の状況等によって、慰謝料が増額される可能性はあります。

婚姻期間

夫婦の婚姻期間が長い場合、慰謝料の増額が認められる可能性があります。

長年にわたり良好な夫婦関係を築いてきたのに不貞行為をした責任は重いと、厳しく判断されるためです。

たとえば、婚姻期間25年で不貞行為をした配偶者に500万円の慰謝料支払いを命じた判例があります(浦和地裁判決昭和60年1月30日)。

子の有無と年齢

不貞行為をした配偶者と相手との間に子どもがおり、その子どもの年齢が高いケースも、慰謝料増額の要素となる可能性が高いです。

子どもの年齢が高いということはかなり前から不貞行為をしていて、しかも関係が解消されおらず、不貞行為が継続されてきた証拠と判断されるためです。

期間、回数

判例によれば、不貞行為の期間が1年以上、相手と肉体関係を持った回数が20回以上になると、慰謝料が増額される可能性が高いです。

なぜなら、不貞行為をした配偶者と不倫相手がそれだけ頻繁に会い性行為を繰り返している事実は、強く非難されるべき事態といえるからです。

苦痛の程度

不貞行為をされた配偶者の精神的ショックが大きい場合、慰謝料の増額が認められる要素といえます。

不貞行為をされた側がうつ病等になったという症状だけでなく、不貞行為の期間や回数の長さ、不倫相手との間に子どもができた事実(堕胎の事実を含む)等も考慮されます。

裁判所がこのような事実を考慮し、不貞行為をされた配偶者の精神的苦痛は大きいと判断すれば、高額な慰謝料を命じる可能性が高いです。

不貞による不法行為が判明したときの進め方

配偶者の不貞行為が原因で離婚手続きを進める場合も、基本的に協議→調停→裁判という形で行われます。

協議

まずは夫婦で離婚について話し合いましょう。

慰謝料をはじめとした離婚条件(親権、財産分与、養育費、面接交流等)について、慎重に協議します。

協議内容によっては高額(300万円を超える金額)な慰謝料支払いの取り決めも可能です。

なお、夫婦の一方が協議に応じようとしないときは、家庭裁判所に調停の申立てができます。

調停

協議離婚の話し合いがつかない、夫婦の一方が協議に応じようとしないときは、相手方の住所地または当事者が合意で定めた家庭裁判所に、「夫婦関係調整調停(離婚)」申立てを行いましょう。

調停では、家庭裁判所から選任された調停委員が夫婦双方の言い分をヒアリングし、調停委員の助言を受けながら、離婚等の合意を目指します。

なお、調停内容によっては協議の場合と同様に、高額な慰謝料支払いの取り決めが可能です。

夫婦の合意が得られたときは、家庭裁判所は調停調書を作成します。

出典:夫婦関係調整調停(離婚) | 裁判所

裁判

夫婦関係調整調停で話し合いがまとまらなかった、または夫婦の一方が調停に出席しなかったという場合は調停不成立となります。

この場合には、不貞行為をされた配偶者(原告)が家庭裁判所に訴訟を提起し、離婚や慰謝料請求することが可能です。

離婚訴訟では、たとえ相手方(被告)が離婚を拒否したり、離婚条件(慰謝料の金額等)に納得しなくても、原告が勝訴すれば、被告はその判決に従う義務があります。

ただし、裁判離婚を行うには、民法で規定された離婚事由に該当する必要があります。

法定離婚事由は次の5つです(民法第770条)

  • 配偶者に不貞行為があった
  • 配偶者から悪意で遺棄された
  • 配偶者の生死が3年以上明らかでない
  • 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある

「配偶者に不貞行為があった」と裁判官から認められるためには、被告と不倫相手との性行為の証拠が必要です。肉体関係の確実な証拠がないと、原告の主張が通らない可能性もあります。

なお、不倫相手への慰謝料請求金額が140万円以内のときは簡易裁判所へ、140万円を超える場合は地方裁判所に、慰謝料請求訴訟を提起します。

出典:離婚 | 裁判所

不貞という不法行為への対処方法

不貞行為の責任を追及したい場合は、証拠の収集や弁護士との相談等を行い、十分に準備を整えておく必要があります。

事実調査

不貞行為の確実な証拠は、たとえば不貞行為をした配偶者と不倫相手が、ラブホテル等に出入りした画像や動画です。これらを撮影できた等、確実な証拠があれば、有利に離婚手続きを進められます。

とはいえ、調査の素人が不倫の疑いのある当事者を、見失わずに尾行することは困難です。

調査を進めるときは、探偵社等の調査会社に依頼して、確実な証拠を掴んでもらいましょう。

調査会社は調査後、調査の内容をまとめた「調査報告書」を依頼者に提出します。

調査報告書には、通常詳細な記録の他、調査対象者の鮮明な証拠画像や動画が添付されます。

訴訟でこのような証拠物の証拠能力が高いと認められれば、不貞行為をされた配偶者の主張(離婚および慰謝料請求)が通りやすくなります。

冷静な対応

不貞行為の証拠が揃った場合も、不貞行為をされた配偶者には冷静な対応が求められます。

なぜなら不倫相手とされた人物が、実は不貞行為をした配偶者から騙されて付き合っていた可能性もあるからです。

たとえば、次のような立証がなされれば、不倫相手とされた人物への慰謝料請求は困難です。

  • 不貞行為をした配偶者から「自分は未婚者だ」と告げられ、その事実を故意または過失なく信じてしまった
  • 不貞行為をした配偶者から「妻はいるけれど完全に関係は破綻している。離婚は秒読みだ」と告げられ、その事実を故意または過失なく信じてしまった 等

不倫相手側の事情も踏まえつつ、どのように問題解決を図っていくか、柔軟に検討する必要があります。

弁護士への相談

夫婦の一方が不貞行為をしているときは、早く弁護士に相談しましょう。

弁護士は相談者から事情をよく聴いたうえで、離婚の進め方や、多額の慰謝料を請求できるか否か等について、わかりやすくアドバイスします。

弁護士に代理人を依頼すれば、自分の代わりに不貞行為をした配偶者や不倫相手と交渉することも、訴訟提起も可能です。

弁護士に任せれば、当事者との深刻なトラブルを避けてスムーズに問題の解決が図れます。

まとめ

今回は多くの民事事件に携わってきた専門弁護士が、配偶者の不貞が判明したときに慰謝料を請求するポイント等について詳しく解説しました。

不貞行為をされた配偶者が、慰謝料を含め自己に有利な離婚条件で離婚したい場合は、慎重に証拠収集をして、弁護士のサポートも受けて万全の準備を整えましょう。

不貞行為の慰謝料請求を行う場合は、まず弁護士と相談して、今後の対応の仕方を話し合ってみましょう。

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