器物損壊罪は逃げ得か?後日逮捕はされるのか?
最終更新日: 2023年07月11日
器物破損罪は逃げたものが得なのでしょうか?後日逮捕があるのか?疑問に思う方もおられるかと思います。 刑事専門の弁護士が解説します。
器物損壊罪の検挙率、逮捕率
令和元年の統計によれば、器物損壊罪の認知件数(警察が被害申告を受けた件数)は7万1695件であったのに対し、検挙件数は8582件でした。
器物損壊事件の犯人の検挙率は約12%ということになります。刑法犯罪の平均検挙率は約39%ですから、器物損壊罪事件の検挙率は非常に低いといえます。
このように検挙率が低い理由としては、もちろん捜査を尽くしたものの犯人が特定されなかったというケースもあるでしょうが、物の財産的価値が軽微であったり、破損の程度が軽微なために、十分な捜査が尽くされなかったというケースもあるかもしれません。
また、被害届を受理はしたものの、その後、被害者と加害者との間で示談が成立し、被害届が取り下げられるケースが多いことも検挙率が低い理由として考えられます。
器物損壊罪は現行犯以外で逮捕されないのか
確かに、器物損壊事件は、物を破損してしまったその場で被害者や目撃者によって現行犯逮捕されることが多くあります。
他方、後に説明しますように、物を破損した加害者がその場を立ち去ってしまったところ、後に犯人が特定され後日逮捕に至ることも多くあります。
したがって、器物損壊事件は現行犯でなければ逮捕されないというわけではありません。
ただし、後日、犯人が特定されたからといって、必ず逮捕、勾留されるわけではありません。
高額な物ではなかったり、被疑者に前科がない場合には、後日警察から接触があったとしても逮捕はされず、在宅捜査になる可能性も十分あります。
器物損壊罪の犯人特定
犯人の特定はどのように行われるのでしょうか。みていきましょう。
防犯カメラの証拠から特定
最近は至るところに防犯カメラがありますので、器物損壊罪の犯行そのものが防犯カメラに映っていることがあります。
また、犯行自体は防犯カメラに映っていなかったものの、犯行を被害者などが目撃しており、その協力を得て現場付近の防犯カメラ映像から犯人を特定できる場合もあります。
このように現行犯逮捕に至らなかった場合も、防犯カメラの映像から犯人が特定されることは多くあります。
目撃証言だけ
他方、犯行現場にもその付近にも防犯カメラがなかったり、防犯カメラに犯人が映っていなかった場合は犯人特定の難易度は高くなります。
たまたま犯人のことを知っている、見たことがある人物の目撃証言がある場合には、その目撃証言から犯人が特定されることもあるでしょう。
そのようなケースで、目撃者が指示する人物が犯行を自供すれば良いのですが、自分は犯人ではないと否認した場合には、目撃証言が相当確かでないと検挙、起訴は難しいでしょう。
現行犯逮捕以外の逮捕
器物損壊事件で逮捕されるケースは、犯行現場にいた目撃者や被害者による現行犯逮捕が多数と思われますが、現行犯逮捕以外の逮捕がなされるケースもあります。
通常逮捕
犯行の目撃者がいなかった、目撃者はいたものの逃げられてしまったという場合に、後に犯人が特定され、警察が裁判所から逮捕状をとって、後日逮捕するのが通常逮捕です。
もっとも、先にも説明しましたとおり、軽微な器物損壊事件については在宅捜査となるケースが多いでしょう。
緊急逮捕
現行犯逮捕以外の逮捕として、逮捕を先行させ、事後的に逮捕状を請求する緊急逮捕というものもあります。
法定刑が一定以上の重さの犯罪についてのみ認められている方式の逮捕で、当該人物が犯人であると疑うに足りる充分な理由があること、逮捕状を請求していては犯人に逃げられてしまうなど急速を要する場合に認められる例外的な逮捕形式です。
逮捕まで待ってるべきか?自首するべきか?
冒頭に器物損壊事件の検挙率は非常に低いと述べましたが、それは後日、犯人として特定される可能性が低いということではありません。
先にも説明しましたとおり、最近は至るところに防犯カメラがありますので、たとえ犯行現場には防犯カメラはなくとも、その付近の防犯カメラ映像から犯人が特定されるケースは非常に多くあります。
そのため、後日、警察から連絡が来る、あるいは後日逮捕される可能性は大いにあるといえます。
そして、加害者が自ら自首をすれば(特に弁護士の同行を受けて自首をすれば)、逮捕される可能性は低いといえます。
また、自ら自首をして、早期に被害者に賠償をする方が示談は成立しやすいといえます。
とすれば、今日警察が来るかもしれないという不安を抱えながら毎日を過ごすよりは、自ら自首をして被害者と早期に示談をしてしまった方が良いことは明らかです。
器物損壊事件では逃げ得ということは考えない方が良いでしょう。
過失で物を壊したら逃げるが勝ち?バレないか?
器物損壊罪は故意による犯行のみが処罰対象とされていますので、過失による破損について犯罪は成立しません。
もっとも、「過失」は法的概念ですから、一般的な過失とは多少意味合いが異なりますので、加害者本人は過失を考えていても、捜査機関や裁判所が加害者の「過失」と認めてくれるとは限りません。
とりわけ、犯人特定前の時点では故意で破損されたのか、過失で破損されたのかは、警察にとって区別がつかないケースがほとんどです。
そうすると、ご自身では過失と考えている場合であっても、故意の犯行のケースと同じく後日逮捕の可能性は多いにあるわけですから、逃げるが勝ち、バレないと考えるのは早計でしょう。
器物損壊罪は弁護士にご相談ください
以上、器物損壊事件の後日逮捕についてご説明しました。
自首をする際には、弁護士が同行し、場合によっては弁護士が被疑者の身柄引受人となることで逮捕される可能性は非常に低くなります。
そして、示談交渉についても、謝罪の方法、適正な賠償金額の決定いずれについても被疑者本人によりも弁護士に依頼した方が速やかな示談に繋がります。
器物損壊事件の加害者となってしまい後日逮捕が心配な方は、できる限り早期に刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。
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