放尿行為も器物損壊? 器物損壊罪とは

最終更新日: 2021年07月08日

器物損壊罪の刑法の条文(罰条)

器物損壊罪の法律の条文は、刑法261条にあります。
「前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

器物損壊罪の法定刑(刑罰)は懲役、罰金又は科料

器物損壊罪について法律が定める法定刑(刑罰)は、3年以下の懲役、30万円以下の罰金又は科料(1000円以上1万円未満の罰金)と定められています。

初犯の場合は罰金刑として10万円、15万円、20万円又は30万円の支払いを命じられることが多いですが、犯行が悪質であったり、複数の前科がある場合などには初犯でも懲役刑を科される可能性もあります。

家族間、親子間の器物損壊も処罰されるのか? 親告罪

家族間、親子間で喧嘩になって物を損壊した、あるいはいたずらで物を損壊ということは、しばしば起きる事例です。

このような事例でも刑法の器物損壊罪には該当します。もっとも、器物損壊罪は親告罪ですから(刑法264条)、被害者が加害者の処罰を求めて告訴しない限りは起訴されることはありません。

このように器物損壊罪は被害者の告訴がなければ起訴できないことから、特に家族間、親子間の事案では、警察は、一時の怒りに任せて被害届を出そうとしているだけではないか、真に処罰意思があるのか慎重に検討し、捜査対象とするか判断することになるでしょう。

刑法は故意犯のみで過失の器物損壊、未遂犯は処罰していない

法律上、処罰対象としているのは故意による器物損壊で、未遂罪の規定はありません。そのため、不注意で他人の物を損壊してしまった場合には犯罪は成立しません。

もっとも、過失による場合であっても、民事の損害賠償責任を負う可能性があります。

また、刑法は、器物損壊の未遂犯は処罰していませんので、現に物を損壊しない限りは犯罪は成立しません。

器物損壊罪の要件

器物とは

罪名は、器物損壊罪といいますが、条文上は「器物」という文言は使われておらず、「他人の物」と規定されています。

そして、「他人の物」とは、公用文書毀棄罪、私用文書毀棄罪、建造物等損壊罪の対象以外の、財産権の対象となる一切の物が対象となります。例えば、土地や動植物も対象となります。

損壊の定義、損壊の意味

「損壊」とは、物の効用を害する行為をいいます。物の効用を害するとは、物理的に物を破損させる行為に限りません。

なお、ペットなど動物の効用を害する行為は、器物損壊罪の条文の「傷害」の方に該当します。

汚損も器物損壊罪に該当する

物の効用を害する行為は物理的に破損させる行為に限らず、例えば、車に糞尿を付ける行為やペンキを塗りたくる行為も「損壊」に該当します。

また、次に説明しますとおり、物を隠す行為(隠匿行為)も「損壊」に該当します。

隠匿による器物損壊と窃盗罪との関係

他人の物を持ち去る行為は窃盗罪に該当するのではないかと考えるのが一般的な感覚です。

ですが、窃盗罪が成立するためには、加害者にその物を自己の物として利用処分する意思があることが必要です。

そのため、このような意思がなく、単に嫌がらせなどの目的で他人の物を隠す行為には窃盗罪は成立せず、器物損壊罪が成立することになります。ただし、短時間隠しただけであれば、物の効用が害されたとまでは評価されないでしょう。

なお、財布などを盗んだ加害者が現金だけを抜き去り、財布自体は捨ててしまったというケースは多くありますが、窃盗の加害者のそのような行為には窃盗罪と別途に器物損壊罪が成立することはありません。

器物損壊罪と建造物損壊罪

他人の建造物を損壊した場合には、建造物損壊罪にて処罰されます。

建造物損壊罪は、器物損壊罪よりも重い罪で、5年以下の懲役刑のみが定められており、法定刑に罰金や科料はありません。

例えば、建物の壁を殴って破壊したり、壁面ガラスを割ったりする行為は建造物損壊罪となります。

器物損壊罪の時効(公訴時効)は3年、告訴期間

器物損壊罪の公訴時効は3年です(刑事訴訟法250条2項)。そのため、3年を経過すると検察官は起訴することができなくなります。

また、器物損壊罪は親告罪ですから、検察官が起訴するためには被害者の告訴が必要です。

そして告訴期間は、被害者が犯人を知った時から6か月であり、それ以降は告訴をすることはできません(刑事訴訟法235条)。

器物損壊の事例

車を蹴る行為で傷つけた事例

路上で停車中の他人の自動車を蹴ってドアを凹ませた被疑者に対して、罰金10万円の刑罰が科されました。

ペットを放った事例

他人が飼っていた小鳥を逃がす目的で、被疑者がカゴを開放し、その結果、小鳥が消息不明になってしまった事例について罰金20万円の刑罰が科されました。

落書きをした事例

町内会の掲示板に落書きをした被疑者に対して罰金10万円の刑罰が科されました。

自転車をパンクさせた事例

駐輪場に停めてあった他人の自転車のタイヤをパンクさせた被疑者に対して罰金10万円の刑罰が科されました。

電車内で女性のスカートに精液を付着させた事例

電車内で女性に対して痴漢行為を行い、スカートに向かって射精し、精液を付着させた被疑者が起訴され、懲役1年6か月、執行猶予3年の判決がくだされました。

刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談を

以上、器物損壊罪についてご説明しました。

器物損壊罪は親告罪とされていますので、示談が成立し、告訴がなされなければ起訴処分となることはありません。そのため、弁護士の活動においては示談が決定的に重要となります。

器物損壊事件の被疑者となり、逮捕・勾留からの身柄解放、示談交渉をご希望の場合は、できるだけ早期に刑事事件の経験豊富な弁護士にご相談ください。

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