別居で子供2人分の生活費を請求したい!相場・方法・すべきことを解説
最終更新日: 2025年02月14日
- 配偶者と別居したいが2人の子供も連れていきたい。別居の生活費はどれくらいになるのだろうか?
- 別居で子供の分も含めた婚姻費用を決めたい。参考になる資料はないだろうか?
- 配偶者と別居の生活費の件で揉めている。よい解決方法があれば知りたい。
配偶者と別居するときに、「婚姻費用」として生活費を配偶者に請求できる場合があります。
子供も一緒に別居する場合、その分を上乗せして請求することも可能です。
しかし、婚姻費用はどれくらいが適正なのか、配偶者に拒否されたときはどうすればよいのか、疑問や不安を感じる方も多いでしょう。
そこで今回は、夫婦の問題解決に携わってきた専門弁護士が、子供2人とともに別居するときの生活費の相場、別居の生活費で配偶者と揉めた場合の対応等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 夫婦が別居するときは、収入の低い方が高い方に生活費を婚姻費用として請求できる
- 請求する婚姻費用は夫婦で自由に取り決め可能だが、一般的な相場を参考にした方がよい
- 婚姻費用を決める前に、弁護士とよく相談した方がよい
別居の生活費の相場:子供2人の場合
別居する場合、本人だけでなく連れていく子供の生活費も配偶者に請求できます。
毎月の生活費は夫婦で自由に決定できますが、別居のケースに応じた相場を参考にするとよいでしょう。
婚姻費用
婚姻費用とは、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用です。たとえ別居していても、夫婦には互いの生活を保持する義務があります。
そのため、別居する本人の収入が低い場合、収入の高い配偶者に婚姻費用の請求が可能です。
婚姻費用の範囲は、生活に必要な費用全般です。
- 食費や光熱費、衣類の購入費
- 賃貸住宅の家賃のような居住費
- 子供を連れて別居した場合、保育園代、学費、塾の費用
- ケガや病気をした場合の通院費、治療費等の医療費
- 常識的に必要と考えられる範囲の交際費、娯楽費
なお、婚姻費用の支払期間は別居期間が終了するまで(夫婦が正式に離婚するまで)、基本的に継続します。
婚姻費用算定表での計算
毎月の婚姻費用は、夫婦で話し合って自由に取り決め可能です。
裁判所が公表している「婚姻費用算定表」を参考にすれば、金額の目安がわかります。
夫婦それぞれの年収・子供の数によって、おおよその婚姻費用の適正額が算定できます。
婚姻費用をどのように算定するか悩むときは「婚姻費用算定表」を参考にして、双方が納得できる金額を決定しましょう。
状況によって異なる
婚姻費用の適正額は、夫婦それぞれの年収や子供の数によってかなり異なってきます。
具体的なケースをあげ、毎月の婚姻費用を算定してみましょう。
(1)妻だけ別居する場合・子供なし
- 自宅に残る側:夫(給与所得者、年収750万円)
- 別居する側:妻(パート従業員、年収100万円)
→婚姻費用(月額)約10万4,000円
(2)妻と子供2人が別居する場合
- 自宅に残る側:夫(給与所得者、年収750万円)
- 別居する側:妻(パート従業員、年収100万円)
- 子供:2人(兄15歳、弟10歳)
→婚姻費用(月額)約16万5,000円
子供も別居する場合、婚姻費用を支払う側の負担はかなり重くなります。
別居の生活費を子供2人分請求する方法
別居の生活費を配偶者に請求したいときは、まず夫婦が協議します。
話し合いがまとまらないときは、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」の申立てが可能です。
夫婦間での協議
夫婦で婚姻費用を話し合います。別居する場合、本人から配偶者に別居する旨の意思表示をしておきましょう。
配偶者に別居の意思を伝えず、いきなり家を飛び出す行動は、「夫婦の同居義務」規定に反する可能性があります(民法第752条)。
婚姻費用を決めるときは金額だけでなく、状況の変化に対応し、夫婦が再び話し合う旨を確認しておいた方がよいです。協議する内容は主に次の通りです。
- 婚姻費用(月額)の決定
- 婚姻費用の支払期間:基本的には離婚するまで、再び同居するまで等と決める
- 婚姻費用の支払方法
- 夫婦の事情に変化が生じた場合、改めて協議する旨:夫婦のどちらかが就職または失職した場合等
- 子供も別居する場合は監護養育や面会についての決定
- 約束通り婚姻費用を支払わなかったときの対応:調停を申し立てる等
話し合いがまとまったときは「婚姻費用合意書(別居合意書)」を2通作成しましょう。夫婦が1通ずつ大切に保管しておきます。
分担請求調停・審判
夫婦間で協議がまとまらなかったときは、相手方の住所地か夫婦が合意した家庭裁判所に、「婚姻費用の分担請求調停」の申立てが可能です。
調停では裁判官と調停委員が夫婦の間に立って、婚姻費用で揉めている点を聴取した後、状況に応じた助言や和解案を提示し、自主的な和解を目指します。
夫婦の合意が得られなければ、家庭裁判所で自動的に審判手続が開始され、裁判官が必要な審理を行い、一切の事情を考慮し、婚姻費用に関する審判を下します。
子供2人分の生活費を請求する分担請求調停の流れ
子供も一緒に別居する際の婚姻費用は高額化する傾向があり、婚姻費用を支払う配偶者との交渉が難航する可能性もあるでしょう。
婚姻費用で夫婦が歩み寄れるよう、調停で理性的な合意を目指す必要があります。
申立書の提出
婚姻費用の分担請求調停の申立てを行うときは、まず家庭裁判所に申立書等の提出が必要です。次の書類を作成・提出しましょう。
- 婚姻費用分担請求申立書:裁判所のサイトまたは裁判所の窓口で取得可能
- 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得、1通450円
- 申立人の収入関係の資料:源泉徴収票や給与明細、確定申告書等の写し
- その他、収入印紙(1,200円分)、連絡用切手
ケースによっては裁判所から追加の資料を請求される可能性があります。
呼出状が届く
申立書内容や提出書類に不備がなければ裁判所が申立てを受理し、第1回目の調停期日を決定します。
担当する裁判官・調停委員・調停期日が決まれば、呼出状が申立人と相手に普通郵便で届きます。
呼出状を確認し、家庭裁判所に出向く準備を進めていきましょう。
調停の開催
第1回調停期日に、家庭裁判所で調停委員による聴取が開始されます。
申立人と相手から1人ずつ約30分の事情聴取を2往復程度行うのが一般的です。
調停委員は申立人に質問した内容を、相手方にも質問します。このような聴取を繰り返して、夫婦双方の意見調整を行っていきます。
第1回調停期日だけで話し合いがまとまるのは稀で、双方の主張が出尽くすまで調停期日は開催されるでしょう。
調停中、追加で婚姻費用に関する資料の提出を求められる可能性があります。
調停成立・審判への移行
調停で話し合いが進めば、夫婦が和解に合意したか否かで、次のようなステップに移行します。
- 夫婦が和解に合意(調停成立)→調停調書の作成
- 夫婦が和解しなかった(調停不成立)→自動的に審判へ移行
調停不成立の場合、約2週間〜1か月後に審判期日が指定されます。
審判期日の開催
審判期日には、申立人と相手が家庭裁判所へ再び出向き、裁判官による審問を受けます。
審問では申立人・相手の同席が求められ、裁判官からの質問に返答しなければなりません。審問は申立人・相手の主張が出尽くし、審判できる段階に達したと裁判官が判断するまで続けられます。
審判期日は1〜2回で終了するのが一般的です。審判結果を言い渡す日に、申立人・相手が裁判所に出向くケースはほぼありません。
裁判所から後日送られてくる審判書を確認し、婚姻費用に関しての審判結果を知ります。
不服がある場合は即時抗告
申立人または相手が審判の結果に不服があるとき、審判書を受け取ってから2週間以内に即時抗告の申立てが可能です。
即時抗告の申立ては抗告状の提出が必要です。即時抗告すれば高等裁判所で婚姻費用に関する審理が進められます。
当事者が審判書を受け取った後、2週間以内に即時抗告をしなければ、審判が確定します。
別居後子供2人分の生活費を継続して受け取るためのポイント
夫婦がせっかく話し合って、婚姻費用について取り決めたとしても、生活費を支払う側が約束通り支払わない可能性があります。
夫婦間で婚姻費用合意書(別居合意書)を作成するだけでは不安な場合は、合意内容を公正証書にしましょう。
公正証書の作成
夫婦間で婚姻費用の合意ができたときは、合意内容を「公正証書」にすればより安心できるでしょう。
公正証書は、公証役場(法務省に属する機関)の公証人が作成する公文書です。公正証書を作成すれば、相手が生活費を支払う可能性も高くなります。
また、公正証書は証明力・証拠力を備えた証書なので、相手と民事裁判になったとき「別居当時、相手と婚姻費用の約束をした」という証拠として活用できます。
支払いが滞った場合の対処法
公正証書を作成していたにもかかわらず、相手側からの生活費の支払いが滞った場合、次のような対応が可能です。
- 内容証明郵便で相手に請求→請求を拒否・無視された場合は民事訴訟→判決に応じない場合、裁判所に強制執行の申立て
- 強制執行認諾文言付き公正証書を作成していた→即、裁判所に強制執行の申立て
強制執行認諾文言付き公正証書とは、「婚姻費用の支払いを履行しないとき、ただちに強制執行へ服する旨を陳述した」という文言が付与された公正証書です。
強制執行認諾文言が付与されていれば、民事訴訟を経ずに、すぐ強制執行の申立てが可能となります。
迅速かつ簡易に生活費の滞納問題を解消したいときは、事前に強制執行認諾文言を公正証書に記載しておきましょう。
別居時に子供2人分の生活費を受け取るために
今回は夫婦問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、子供2人と共に配偶者と別居するとき、生活費を賄うポイント等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は夫婦問題の解決に強い法律事務所です。まずは弁護士と、婚姻費用に関する対処法をよく話し合ってみましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。