別居で専業主婦が受け取れる生活費相場はどれくらい?請求方法・注意点を徹底解説

最終更新日: 2025年02月14日

別居で専業主婦が受け取れる生活費相場はどれくらい?請求方法・注意点を徹底解説

  • 夫と冷静に離婚を話し合いたいので別居したい。別居費用は自分で賄うしかないのか?
  • 別居しても夫に婚姻費用を請求できると聞いた。請求方法を知りたい。
  • 婚姻費用について相談したいので、婚姻費用に詳しい専門家を知りたい。

離婚に向けた話し合いをするため、夫との別居を希望する方もおられるでしょう。

家を出たのが妻であった場合、特に専業主婦ならば、生活費に困窮する可能性もあります。

別居生活で困窮しないように、夫に対し「婚姻費用」の請求が可能です。ただし、夫婦の経済事情を考慮せず、高額な婚姻費用を請求すると、夫とトラブルになるおそれもあるでしょう。

そこで今回は、離婚問題の解決に携わってきた専門弁護士が、別居中の専業主婦が受け取れる婚姻費用や生活費の相場、生活費を弁護士と相談するメリット等について詳しく解説します。

本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。

  • 別居中の生活費相場は地域や子の有無によって大きく差がある
  • 生活費を賄うために、別居中の専業主婦は夫に婚姻費用を請求できる
  • 婚姻費用を請求する前に、弁護士とよく相談した方がよい

離婚に強い弁護士はこちら

この記事を監修したのは

代表弁護士 春田 藤麿
代表弁護士春田 藤麿
第一東京弁護士会 所属
経歴
慶應義塾大学法学部卒業
慶應義塾大学法科大学院卒業
都内総合法律事務所勤務
春田法律事務所開設

詳しくはこちら

別居中の専業主婦が受け取れる生活費とは

妻は「これから離婚を冷静に話し合っていくため、夫と距離をとりたい」「これ以上、夫と同居したくないので家を出る」等の理由で、別居を決意する場合があります。

そのようなときに頭を悩ませるのが生活費です。特に専業主婦が別居する場合、安定した収入源がないため経済的に困窮するおそれがあるでしょう。

婚姻費用

別居中の専業主婦は、収入のある夫に「婚姻費用」を請求できます。

婚姻費用は、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用です。

毎月の婚姻費用は夫婦の話し合いで自由に決められます。裁判所の「婚姻費用算定表」をもとに決定するのもよい方法です。

婚姻費用算定表をもとに、婚姻費用を事例をあげて計算してみましょう。

  • 夫:給与所得者年収600万円
  • 妻:専業主婦年収0円
  • 子:なし

→婚姻費用月額:約102,000円

毎月10万円以上、夫に対して請求できます。ただし、必ずしも算定した費用で取り決める必要はなく、夫が同意すれば費用の増額も可能です。

また、専業主婦が別居後に就職し、正社員となり生活が安定すれば、夫と再度話し合い、婚姻費用の調整を行う必要があるでしょう。

参考:養育費・婚姻費用算定表 | 裁判所

支払い義務

たとえ別居していても夫の収入が妻より多い場合、夫は婚姻費用の支払いが必要です。

夫からすれば、「なぜ別居している妻に、お金を毎月支払う必要があるのか納得できない」と感じるかもしれません。

しかし、民法に、夫婦には婚姻から生じた費用を分担する義務が明記されています(民法第760条)。この義務は別居したとしても免除されません。

正式に夫婦の離婚が成立するまでは、夫は基本的に別居した妻の生活費を負担する必要があります。

出典:民法 | e-Gov法令検索

別居で専業主婦が受け取れる生活費の相場

別居中の生活費は地域によって大きな差があります。また、専業主婦本人だけではなく子の生活費も考慮しなければなりません。

専業主婦に働く能力があるかどうかによっても、請求できる婚姻費用は異なります。

状況によって異なる

専業主婦1人で別居する場合は、約16〜17万円が平均的な生活費の月額相場です。

専業主婦と子2人で別居する場合は、月額27〜30万円と多額の生活費が必要になります。

また、都心と地方、中心市街地と郊外でも、生活費にかなり差が出てきます。

参考:家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年) | 総務省統計局

働く能力がある場合

別居する妻が専業主婦でも、健康でパート等に出て働けるような状況であれば、全く働けない場合より、婚姻費用は低くなる可能性があります。

婚姻費用算定表をもとに、妻がすぐにでも月給10万円くらいのパート従業員となれる場合を例として、計算してみましょう。

  • 夫:給与所得者年収600万円
  • 妻:パート従業員年収120万円
  • 子:なし

→婚姻費用月額:約7万9,000円

妻が子と同居する場合の婚姻費用月額は次の通りです。

  • 子1人10歳→約10万9,000円
  • 子2人10歳・16歳→約13万2,000円

養う子の数が多いと、その分請求できる金額は多くなります。

働けない場合

別居する妻が高齢である、病気がちで療養が必要だというときは、すぐに働けるような状況とはいえません。

更に別居する妻が子を連れて出ていくケースでは、夫が支払う婚姻費用は高額になります。

  • 夫:給与所得者年収600万円
  • 妻:専業主婦年収0円
  • 子:1人10歳

→婚姻費用月額:約12万6,000円

妻がパート等に出て働けるようなケースよりも、多くの婚姻費用が必要です。

別居中の専業主婦が生活費を請求する方法

別居中の妻が夫に生活費を請求する場合は、まず夫婦で協議するのが一般的です。

夫婦で協議しても婚姻費用が決まらない場合は、家庭裁判所での調停・審判で解決を試みます。

協議

まずは夫婦で協議し、毎月の婚姻費用をどうするのかについて話し合いましょう。

お互いの収入を確認し合い、調整を図りながら、双方が納得できる金額を取り決めます。

裁判所の公表する「婚姻費用算定表」で算定した金額を、そのまま月額費用にしても構いません。

ただし夫婦の事情を踏まえ、月額費用を増減した方が「実際に別居してみたら、全然お金が足りなかった」と、後悔せずに済みます。

調停

夫婦で協議がまとまらなかった場合は、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てましょう。

調停では夫婦の話し合いを、裁判官と調停委員が仲立ちし、夫婦の自主的な和解を目指します。

調停手続では、夫婦の資産・収入・支出など一切の事情を考慮しつつ、調停委員が当事者双方から事情を聴取します。必要に応じ資料等の提出が求められる場合もあるでしょう。

調停委員は夫婦の事情をよく把握したうえで、解決案の提示や必要な助言を行います。

夫婦の一方が和解に応じない場合、調停は不成立となり審判へ移行します。

参考:婚姻費用の分担請求調停 | 裁判所

審判

調停不成立の場合は、そのまま家庭裁判所による審判へ移り、婚姻費用問題の解決が図られます。

基本的に、調停不成立日の2週間〜1か月後くらいに審問期日が設定されます。

夫婦共に追加の主張がなく、十分な資料が集まっていれば、調停終了後すぐに審判が行われるケースもあるでしょう。

最後の審問期日から1〜2か月後に、裁判所が夫婦に審判を告知します。なお、審判に不服があれば、審判の告知日の翌日から2週間以内に「即時抗告」を行い、高等裁判所に判断を求める方法もあります。

別居中の専業主婦が生活費を請求するときの注意点

夫との婚姻費用の話し合いに臨むときは、理性的に交渉を進め、夫の同意を得る努力が必要です。

また、弁護士に交渉役を任せた方が、円滑に婚姻費用の取り決めができる場合もあります。

感情的にならない

夫婦の仲が冷え切っているとはいえ、感情的になってしまうと、話し合いが全く進まない事態も想定されるので注意しましょう。

専業主婦が婚姻費用を取り決めないまま夫と別居してしまうと、生活に困窮してしまう可能性があります。

別居に衝撃を受けた夫がエキサイトしたとしても、妻は冷静な対応に徹する必要があるでしょう。

一人で対応しない

直接夫と婚姻費用の話し合いをするのが難しいと感じたときは、弁護士を立てて協議した方がよいです。

弁護士は法律の知識に精通し交渉経験も豊かです。何より第三者であるため、理性的に交渉を進められるでしょう。

弁護士の説得力のある主張で、夫の方も婚姻費用の支払いを真剣に考え、支払いに同意する可能性もあります。

別居中の専業主婦が弁護士に相談するメリット

別居中の生活費をどうするか真剣に悩んでいるのであれば、弁護士と相談してみましょう。

弁護士は夫婦の事情を聴き、有益なアドバイスやサポートを提供します。

法的なアドバイスの提供

弁護士に相談すれば、夫婦の資産・収入・支出、同居する子の数等を考慮し、適正な婚姻費用を算定できます。

また、夫の協議の進め方のポイントや、協議不成立となった場合の対応もアドバイスが可能です。

なお、相談するうち「この弁護士なら、婚姻費用の交渉役を任せられる」と思ったときは、そのまま弁護士と委任契約を締結してもよいでしょう。

弁護士は依頼者に代わり、夫との交渉を試みます。

手続きの代行

夫との協議が不成立でも、弁護士に婚姻費用の分担請求調停の申立てを任せられます。

申立てに必要な書類は次の通りです。

  • 申立書および写し1通
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書):本籍地の市区町村役場で取得(1通450円)
  • 申立人(妻)の収入関係の資料:源泉徴収票、給与明細、確定申告書等の写し

自分で書類を作成・収集しようとすると手間取る可能性もあるでしょう。

弁護士を代理人にすれば、申立てのための書類の作成・収集、そして家庭裁判所への提出もすべて委任できます。

弁護士は書類作成に慣れているので、スムーズに申立てが進められるでしょう。

有利になるようにサポートを行う

婚姻費用の分担請求調停が開始された場合は、依頼者と共に弁護士が同席し、依頼者に代わり主張・立証を行います。

妻が直接調停期日に出席しなければならないケースを除き、代理人だけが調停に出席することも可能です。

弁護士が代理人となれば、家庭裁判所に出席し自己の主張を述べるとき、身体的・精神的な負担を大きく軽減できるでしょう。

弁護士がサポートを行うので、有利に調停・審判を進められる可能性が高いです。

別居後の生活費問題でお困りなら弁護士にご相談を

今回は離婚問題の解決に尽力してきた専門弁護士が、別居中に専業主婦が受け取れる婚姻費用や、夫との交渉のポイント等について詳しく解説しました。

婚姻費用をどうするかで悩んだら、速やかに弁護士と相談し対応を協議しましょう。弁護士のアドバイスとサポートを受けながら、迅速に婚姻費用問題の解決を進めてみてはいかがでしょうか。

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