【介護施設の事業者向け】利用者からの暴言・暴力・セクハラへの対処方法を徹底解説

2022年03月03日

【介護施設の事業者向け】利用者からの暴言・暴力・セクハラへの対処方法を徹底解説

介護施設でよく問題視されるトラブルといえば、利用者からの暴言・暴力・セクハラです。

これらは加齢による判断能力の低下であったり、精神疾患から起こることもあるのですが、もし職員からこのようなトラブルの相談を受けた場合、事業者としてはどのような対応をするべきなのでしょうか。

事業者は利用者にも、介護施設で働く職員にも安全に配慮する義務を負っているため、職員が介護施設で利用者からの暴言・暴力・セクハラの被害を受けた場合、どのように対処すればよいかについてこの記事では徹底解説します。

この記事を監修したのは

南 佳祐
弁護士南 佳祐
大阪弁護士会 所属
経歴
京都大学法学部 卒業
京都大学法科大学院 卒業
大阪市内の総合法律事務所 勤務
春田法律事務所 入所

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介護施設での利用者からの暴言・暴力・セクハラに対する事業者の対応

介護施設などで従業員が利用者から暴言・暴力・セクハラの対象になってしまった際、事業者がどのような対応をするべきか、この記事では解説していきます。

職員への問題行為の対策方法の決定

職員が身の安全を確保し、介護に従事できるようにするために普段から利用者による暴言・暴力・セクハラに対する対策方法を決定しておく必要があります。具体的には以下の4点になります。

利用契約条項:サービス利用契約の中に「利用契約の解除」の項目を必ず入れ、入所する際に利用者・ご家族に説明を行う。この「利用契約の解除」の条件については以下の安全配慮義務への対策で詳しく記載します。
入所・サービス開始時における説明:利用者には入所・サービス開始時に施設のルールを丁寧に説明しましょう。ルール違反があった場合、最悪利用契約の解除に繋がることも説明には組み込んでおきましょう。
ポスター・パンフレットなどの明示:利用者やその家族、職員の誰もが目に付く施設内に暴言・暴力・セクハラを糾弾する内容のポスターを明示しておくことも一つの手段です。
日々目に触れる場所にあることで意識に定着し、問題行為を未然に防ぐ一助となります。
サービス・ケア方法:介護現場は密着したサービス提供といった特性上、該当職員と利用者以外の第三者にトラブルの状況を説明することが難しい場合があります。そのため、利用者をケアする際に順守すべきルールを職員側にも周知させておく必要があります。具体的には、身体の接触があるケアは一人で行わない、個室に入る場合は扉を閉めない、ハサミなど凶器となりうる物は利用者の近くに置かない、などのことです。

安全配慮義務への対策

事業者は労働契約法5条において、労働者、つまり従業員の「生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と定められています。

労働者の安全への配慮を怠った場合起こりうることは2点あります。

ひとつは「損害賠償を請求される可能性があり、それに応じなくてはならない」、もう一つは「企業のイメージダウンに繋がる」ということです。

労働者の安全を配慮するために必要な具体的対策としては、以下の4つがあります。

  • 情報共有
  • マニュアルの作成
  • 身体拘束
  • 利用契約の解除

それぞれ簡単に解説していきます。

(1)情報共有

暴言・暴力・セクハラの傾向がある利用者は、従業員間で共有しておく必要があります。誰に対しても同じような対応をするのか、それとも個人に向けたものなのかによっても対策が異なるため、状況やその程度なども詳しく把握できるようにしておく必要があります。

情報共有は、関与するすべての従業員が知っておく必要があるため、漏れのないように仕組みを作っておく必要もあります。

(2)マニュアルの作成

暴言・暴力・セクハラが発生した際の対処方法をあらかじめマニュアルとして作成し、研修などを利用して従業員に周知させる必要があります。

起こりうる場面をあらかじめ想定しておき、凶器になりそうな危険なものの保管場所を利用者から遠い位置にするなど予防策を実施し、実際に暴言・暴力・セクハラが起こってしまった場合は被害を最小限にとどめるためにどうすべきかなどを決めて記載しておくことも必要です。

暴言・暴力・セクハラが発生した際に時系列や内容の詳細などを記録しておくためのシート等を作成してマニュアルに組み込んでおくと、実際に事案が発生した際さらに実用性のあるマニュアルとなります。

(3)身体拘束

身体拘束が許されるケースは極めて限定的な場合であり、「緊急やむを得ない場合」に該当しない限りすべて高齢者虐待に該当する行為とみなされ、法的根拠が必要となります。

この「法的根拠」は具体的に以下の3点になります。

●切迫性:利用者本人または他の利用者の生命または身体が危険にさらされる可能性が著しく高い場合
●非代替性:身体拘束以外に代替する介護方法がないこと
●一時性:身体拘束は一時的なものであること

また、「緊急やむを得ない場合」の判断は職員個人やチームではなく、施設全体として行うこと、高齢者本人やその家族に対して身体拘束の目的・内容・期間・時間などを十分に説明し、理解を得ること、さらに介護保険サービス提供者にはその記録の作成が義務付けられているなど細かい留意事項があることも忘れてはなりません。

(4)利用契約の解除

介護は利用者をサポート・ケアする仕事ですが、安全安心な環境でないと十分なサービスを提供することはできません。

一方で、利用者は介護施設の支援に頼らざるを得ない状況が多いことからも、利用契約を解除されてしまうと生きること自体に支障をきたす可能性も出てきます。

利用者の家族も働きながら家族の介護を行うことで不当な配置転換をされたり待遇を下げられるなど「ケアハラ」を受け、介護施設を利用せざるを得ない場合もあります。

そのような背景を踏まえて利用契約を解除することなく、かつ従業員を守るためにも利用者との契約書には暴言・暴力・セクハラなどがあった場合に利用契約を解除できる条項を必ず入れておきましょう。入所する際に利用者とその家族に丁寧に説明することも重要です。

内容を理解し、納得したうえで施設を利用してもらうためにも説明が終わった際には後々のトラブルに繋がらないように署名をしてもらうなど予防線を張っておくのも重要です。

介護現場は密着して行うことも多いため、その発生状況をご家族に説明するのが困難な場合もあります。そのため、事案が発生した場合は必ず文書として時系列で残しておくこともポイントです。

介護施設での利用者からの暴言・暴力・セクハラと労災の可能性

介護施設では、利用者が思ったように身体を動かすことができずイライラしがちで、それゆえ暴言を吐いたり暴力をふるうということが悲しくも散見されます。

被害を受けても「病気や障害があるから仕方ない」と諦めてしまう職員も多く、また、親子ほど歳の離れた利用者に圧倒されてしまったりして中々被害を言い出せない職員もいたりします。

場合によっては利用者からの暴言・暴力・セクハラは労災に該当する可能性も十分にあります。以下でその判断基準などを詳しく解説いたします。

利用者からの暴言は労災認定される?

結論から申し上げると利用者からの暴言「だけ」で労災認定されることは難しいです。

暴言によって精神疾患の認定を受けた場合、労災認定される可能性が高まります。暴力であれば目で見てわかる被害なので証明しやすいですが、暴言や精神疾患となると、目で見てわかるものではないため被害の程度を把握することが難しくなります。

利用者からの暴言による精神疾患で労災認定を受けるには、ポイントが3つあります。

1. 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
2. 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
3. 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

認定基準の対象となる精神障害は10段階に分類されており、業務に関連して発病する代表的なものはうつ病や急性ストレス反応などが挙げられます。

ここで留意すべき点は三つ目の「業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと」ですが、たとえば家庭で配偶者などからモラルハラスメントなどを受けていた場合、そのモラハラが原因の可能性もあるため、労災が認定されない可能性があるということです。

また、2の「業務による強い心理的負荷」についても判断基準や項目がいくつかあるため、極度の心理的負荷が与えられたと証明する客観的証拠を用意することも重要です。具体的には暴言の録音、病院の診断書、暴言があった際の記録(日記)などです。

利用者からの暴力の労災申請について

利用者からの暴力によって職員が負傷した場合、労災を申請することは可能です。そもそも労災とは「業務災害」と「通勤災害」に分類されており、利用者から暴力を受けた場合はこの「業務災害」に該当します。

また、業務災害に当たるかは「業務遂行性」か「業務起因性」の2つの要件から判断され、暴力はどちらの要件にも当てはまるため労災申請自体は可能です。

ただし、申請したからといって必ずしも認定されるわけではありませんのでご注意ください。というのも、利用者の「責任能力」の有無や、腰痛など元々疾患があった場合は認められにくいということがあるのでご注意ください。

介護現場での労災事情

厚生労働省の資料によると介護現場での労災発生状況は増加傾向であり、「腰痛」や「転倒」などその業務内容の過酷さからくるものが多数挙げられています。

また、精神障害での労災申請がダントツで多いのも社会福祉・介護事業関連となっており、今後の人材確保の観点から言っても看過できない事態となっています。

認知症により暴言や暴力の出てくる利用者もいるため、介護する側が感情的にならずに利用者の不安や怒りの原因を見つけてあげられるような精神的に余裕を持てる介護現場を提供できるよう、事業者は努力する必要がありそうです。

介護施設で暴言・暴力・セクハラが起きた場合の具体的な対処方法

介護施設で暴言・暴力・セクハラが起きた場合、事業者としてはどのような対処をするべきでしょうか?具体的にそれぞれ解説していきます。

被害職員のケアを行なう

実際に事件が発生した場合、最優先すべきは被害者(職員)の身の安全の確保です。他の利用者や職員の身の安全を確保し、凶器などの暴力の場合はすぐに警察へ通報しましょう。

暴言やセクハラなどの場合は加害者と被害を受けた職員の物理的距離を置き、お互いの存在を感じさせない配慮が必要です。被害者が暴行によって怪我を負った場合は病院へ行き、診断書を取りましょう。

悪質な暴力・セクハラにおいては被害届の提出など、刑事事件となる可能性もあります。その際は事業者として全面的に協力し、弁護士に相談されることをお勧めいたします。

「人」と関わり働く仕事において人間関係に起因するストレスは避けて通れません。ですが、事業者としてしっかりと対応することにより、職員の離職を防ぐことにも繋がります。

利用者の家族と話し合う

日頃から利用者と職員とのトラブルを防ぐために、「暴言や暴力をゆるさない」「ハラスメント禁止」など、ポスターやパンフレットによって施設利用時のルールを掲示し、ルールを守らない利用者はその家族と話し合うことが必要になります。

施設の利用にあたって交わした契約書を違反した場合、サービス継続ができなくなったり施設から退所してもらう旨を伝える必要があります。

契約違反があった場合、まずは話し合いを進め、話し合いに応じなかったり迷惑行為を利用者が繰り返すような場合は利用契約を解除することもやむを得ないでしょう。

弁護士に相談する

介護という重労働を利用者のためと思い日々従事している事業者側と、利用者とその家族の間でトラブルが生じてしまうのは大変残念なことです。

利用者・利用者家族、事業者側の間で解決することが難しい場合は介護トラブルに強い弁護士にご相談ください。第三者が間に入り平和的解決を目指すことで、事業者側の利益を守りつつその後も利用者が施設を継続して利用することが可能となります。

紛争の拡大や悪化を防ぐためにも経験豊富な弁護士が迅速な対応をいたします。

まとめ

この記事では介護施設の事業者向けに利用者からの暴言・暴力・セクハラがあった際、どのように対応すべきかを解説いたしました。高齢化が進むことで老老介護が増え、施設に頼らざるを得ない利用者やそのご家族が増えているというのも事実です。

そのような情勢の中、介護をする事業者側にとっても不利益なくサービスを十分に提供できるようにするため、何かトラブルが起きた際は法律の専門家を頼るというのもひとつの手段です。介護施設でのトラブルでお悩みの際、まずは弁護士までご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。ご不明な点があるときやもっと詳しく知りたいときは、下にあるLINEの友達追加ボタンを押していただき、メッセージをお送りください。弁護士が無料でご相談をお受けします。

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南 佳祐
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大阪弁護士会 所属
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