殺人で逮捕されるとどうなる?対応方法から問われる罪まで詳しく解説
最終更新日: 2023年07月12日
- 殺人・殺人未遂で逮捕されるとどのような刑罰が与えられる?
- 殺人・殺人未遂で逮捕されたときに、弁護士が行う活動は?
- 殺人・殺人未遂で逮捕されたあとはどうなる?
人を殺してしまった場合、重い刑罰が下るということは容易に想像できる人が多いでしょう。実際に、刑法では、殺人罪は第199条で規定され、厳しく取り締まられています。
しかし、殺人や殺人未遂の容疑で逮捕されたあとはどうなるのか、弁護士は何をしてくれるのかよく知らない人もいるかもしれません。
そこで今回は、殺人・殺人未遂事件に詳しい弁護士が、殺人・殺人未遂で逮捕されたときの刑罰や弁護士の活動・逮捕後の流れについて詳しく解説します。
- 殺人・殺人未遂で逮捕されると死刑や無期懲役などの刑が科される可能性がある
- 逮捕されると身柄を拘束されて取調べを受ける
- まずは殺人・殺人未遂事件の実績を豊富に持つ弁護士に相談することが大切
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの刑罰は
殺人もしくは殺人未遂で逮捕されたときには、関連するいくつかの罪のどれに該当するかによって刑罰が異なります。殺人罪に関連する犯罪には以下の3つがあります。
- 殺人罪
- 殺人未遂罪
- 同意殺人罪
それぞれについて詳しく解説していきます。
殺人罪
殺人罪は、殺意をもって人を殺した場合に成立する罪です。この場合、人を殺す手段は問いません。
典型的なものには、刺殺・絞殺・溺殺・毒殺などがあります。殺人罪での刑罰は、死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役が科せられます。
殺人未遂罪
殺人未遂罪は、人を殺そうとしたけれど、相手が死亡しなかった場合や、怪我をしたけれど死に至らなかった場合に成立する罪です。刑罰は、殺人罪と同様、死刑または無期懲役、もしくは5年以上の懲役です。
ただし、殺人未遂罪の場合は、被害者が死亡していないため、未遂犯として減刑されることが一般的です。
同意殺人罪
同意殺人罪には、嘱託殺人と承諾殺人があります。嘱託殺人は、相手から依頼を受けて殺人を行った場合を言います。対して、本人の承諾を得て相手を死亡させた場合には、承諾殺人です。
どちらの場合も、被害者が殺害される意志があるという点で共通しています。
ただし、自殺を促したり強要したりするような行為は、自殺教唆罪や強要罪に該当するため、同意殺人罪にはなりません。同意殺人罪は、6か月以上7年以下の懲役、または禁錮に科せられます。
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの弁護のポイント
殺人・殺人未遂で逮捕されたときに、弁護士はどんなサポートをしてくれるのでしょうか。弁護活動のポイントには、以下の5つがあります。
- 殺意はあったか
- 犯人か否か
- 正当防衛ではなかったか
- 嘱託殺人・承諾殺人ではなかったか
- 責任能力はあったか
それぞれについて詳しく解説していきます。
殺意はあったか
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの弁護のポイントの1つ目は、殺意はあったかという点です。被疑者に殺意がなく、暴行してしまった場合、相手が死亡してしまった場合は殺人罪ではなく傷害致死罪が成立します。
たとえば、凶器・殺意がなく、長時間や多数回に渡り暴行を加えたわけではなければ、殺意はなかったという主張が通る可能性も出てきます。
ただし、繰り返し刃物で刺したなどの場合では、殺意を否認したところで通らない可能性が高いでしょう。
犯人か否か
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの弁護のポイントの2つ目は、犯人か否かという点です。
自分が犯人ではないこと、つまり無罪を主張する場合は、検察官や裁判官に、犯人ではない証拠を捜査機関や裁判所に提出する必要があります。
正当防衛ではなかったか
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの弁護のポイントの3つ目は、正当防衛ではなかったかという点です。
正当防衛であれば、殺人罪は成立しません。正当防衛が認められるためには、以下のような要件をすべて満たす必要があります。
- まさに攻撃を受けているか、攻撃が迫っている場合に行った
- 自分または他人の権利を防衛するために行った
- やむを得ず行った行為である
たとえば、ナイフを持って襲いかかってきた相手に対して、自分を防衛するために包丁で反撃した場合などは、該当する場合があります。
一方で、殴りかかってきた相手が暴力をやめ、ドアから出ていこうとしているところをナイフで後ろから何度も突き刺した場合などは、正当防衛にはあたらない可能性が高いでしょう。
嘱託殺人・承諾殺人ではなかったか
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの弁護のポイントの4つ目は、嘱託殺人・承諾殺人ではなかったかという点です。被害者から殺害の依頼を受けて殺害した場合には、殺人罪ではなく、嘱託殺人罪が成立します。
被害者から依頼されてはいないが、殺害の承諾を受けていた場合には、承諾殺人罪が成立します。承諾殺人罪の例には心中があります。ただし、子供の場合は判断能力がないとされるため、承諾していたとしても殺人罪が成立する可能性があるでしょう。
責任能力はあったか
殺人・殺人未遂で逮捕されたときの弁護のポイントの5つ目は、責任能力はあったかという点です。殺意があって人を死亡させたとしても、責任能力がなければ心神喪失状態にあったとして殺人罪が成立しません。
たとえば、以下のようなケースでは、責任能力がないことを主張できる可能性があると言えます。
- 躁うつ病や統合失調症などの精神疾患がある
- 重度の知的障害がある
- 精神疾患や知的障害により、自己の行為についての判断力または自己の行為に従う能力が不十分である
ただし、精神障害や知的障害があるからといってすべての場合に責任能力がないとは限りません。状況によっては責任能力があるとされる場合もあることを理解しておきましょう。
殺人・殺人未遂で逮捕されたあとの流れ
殺人や殺人未遂を犯したときには、逮捕後の流れを知っておくことをおすすめします。警察に逮捕された後は、以下の4つの流れで進みます。
- 送検
- 勾留
- 起訴
- 刑事裁判
それぞれについて詳しく解説していきます。
送検
殺人・殺人未遂で逮捕されると、警察の取調べが行われ、48時間以内に事件を検察官に送致するかどうかを判断します。その間、身柄は警察署内の留置場に留め置かれることが多いでしょう。
勾留
送検されたのち、検察官が裁判所に勾留請求を行います。そして、裁判所に連れて行かれた後、裁判官から勾留質問を受けて、勾留が決定されます。
検察官が勾留の請求を行わない場合や、裁判官が勾留を決定しないときには、被疑者は勾留されず、釈放されます。
勾留が決まると、原則として10日間は、身柄を留置され続けます。勾留され続けている間、実況見分への立ち会いを行ったり、捜査官から取り調べを受けます。10日間で捜査が終わらなかった場合、最大20日間まで勾留期間は延長されます。
勾留期間中は、家族との面接が可能で、このことを接見といいます。ただし、接見は時間が10分〜20分と制限されており、接見時には警察官が立ち会うため、ゆっくり話をすることは不可能です。
起訴
勾留期間が終わると、検察官により、被疑者の起訴・不起訴が決定されます。起訴されると、被告人として裁判を受け、判決を待つことになります。
不起訴とされると、刑事処罰はされません。不起訴処分となれば、同じ犯罪事実によって再び逮捕されることはありません。身柄はそのまま解放され、前科がつくこともありません。
刑事裁判
起訴された場合には、被疑者は被告人となり、刑事裁判で裁かれます。刑事裁判には略式起訴と通常裁判がありますが、殺人罪の場合は通常裁判になることが考えられます。
通常裁判は、法廷で開催され、被告人として裁判官の目の前で裁かれます。殺人事件の場合は、裁判員裁判となるのが一般的です。
通常裁判では、期日が開かれ、審議が行われます。検察官や弁護人からの証拠提出、被告人質問、証人尋問などが行われ、被告人に判決が下されます。
まとめ
今回は、殺人・殺人未遂事件に詳しい弁護士が、殺人容疑・殺人未遂容疑で逮捕されたときの刑罰や弁護士の活動・逮捕後の流れについて詳しく解説しました。
殺人や殺人未遂の罪の容疑者となった場合は、弁護士は、殺意の有無や正当防衛の可能性、責任能力の有無などを多角的に判断し、法律の専門知識を持って、弁護活動を行っていきます。
殺人・殺人事件で逮捕されそうな場合には、刑事事件の実績が豊富で、すぐに対応してくれる弁護士に相談することをおすすめします。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。