服役中の夫や妻との離婚は可能?刑務所にいる場合の方法を解説
最終更新日: 2023年02月18日
- 服役中の夫や妻との離婚はできるの?
- どのような場合に服役中の離婚が認められるの?
- 服役中の離婚の進め方を知りたい
犯罪を犯して服役中の夫や妻がいるとき、服役している理由が軽微な罪であっても、離婚を考えることがあるでしょう。離婚したいという意思が固まってくると、服役中であっても離婚を進めることができるのか、どのような場合に離婚が認められるのか、など知りたいことも増えてきます。
そこで今回は、離婚の専門弁護士が、夫や妻が服役中でも離婚できるのか・服役中の離婚が認められやすいケース・離婚の進め方を解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談することが可能です。
- 夫や妻が服役中での離婚は、相手も合意すればできる。できない場合は調停・裁判へと発展する可能性もある
- 服役中の離婚が認められやすいケースは、「配偶者から暴力・DVを受けていた」「重大な犯罪で服役している」「もともと夫婦仲が悪く別居していた」などがある
- 服役中の離婚を考えているなら、「協議離婚を進める」「調停離婚の申し立て」「離婚裁判をする」の3つがある
夫や妻が服役中でも離婚できるのか?
夫や妻が服役中であっても離婚は可能です。ただし、離婚は当事者同士の同意が前提であるため、相手が同意してくれない場合は、訴訟提起を必要とする可能性があります。
離婚を進めるにあたり、手続きとしては、「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。
協議離婚は、夫婦間の話し合いによって合意をし、離婚届を市区町村役場に提出して受理されることで離婚が成立します。
調停離婚は、協議離婚によるお互いの合意が得られない場合、家庭裁判所の調停委員を介して合意を調整する手続きです。調停での合意まであと一歩のところで、合意が取れない場合は、家庭裁判所の裁判官が職権で行うことができる審判による離婚が可能です。
調停をしても離婚が成立しない場合は、裁判上で離婚を目指すことになります。夫や妻が服役中であっても、協議離婚→調停離婚(審判離婚)→裁判離婚の流れに沿って手続きを行う必要があります。
夫や妻の出所が近い場合は、お互いで話し合うことも可能ですが、そうでない場合は、裁判上で離婚を進めることになります。 なお、裁判上で離婚を進める場合は、民法第770条1項の1号から5号に該当する事由が必要です。
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
服役中の離婚が認められやすいケース
ここでは、服役中の離婚が認められやすいケースを、以下の3点から解説します。
- 配偶者から暴力・DVを受けていた
- 重大な犯罪で服役している
- もともと夫婦仲が悪く別居していた
1つずつ見ていきましょう。
暴力・DVを受けていた
服役中の離婚が認められやすいケースの1つ目は、暴力・DVを受けていたケースです。
服役している理由が、たとえば「夫が妻に対して暴力をふるいケガをさせた」などの場合、裁判上で認められる事由としては、民法第770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当する可能性があります。
また、「生活費がもらえない」などの経済的なDVには、2号の「配偶者から悪意で遺棄されたとき。」が該当するといえるでしょう。
いずれにしても、配偶者から暴力・DVを受けていた場合、服役後も同じ被害に遭う恐れがあることから、離婚が認められる可能性は高いといえます。
重大な犯罪で服役している
服役中の離婚が認められやすいケースの2つ目は、重大な犯罪で服役しているケースです。
たとえば夫が会社から多額のお金を横領した罪で服役することになった場合、犯罪による社会的な影響力の大きさから、逮捕時には実名で大きく報道される可能性があります。
会社のお金を横領してそれを遊興に充てていたなど、お金の使い道についても詳細まで知られる可能性があります。
この場合、妻は近所と良好な関係を築くことが難しくなったり、子どもは学校でいじめられたりする可能性があり、妻や子どもへの影響は計り知れません。風評被害を避けるために、離婚という決断が認められやすくなるといえます。
もともと夫婦仲が悪く別居していた
服役中の離婚が認められやすいケースの3つ目は、もともと夫婦仲が悪く別居していたケースです。
服役をする前から別居している場合、別居期間が長いと離婚が認められやすくなります。「〇年以上別居している」という明確な年数は定義されていませんが、3~5年、5年~10年などさまざまなケースがあります。
別居については、すでに夫婦関係が破綻しているとみなされ、裁判上の離婚が可能といえるでしょう。
服役中の離婚の方法を詳しく解説
夫や妻が服役中に離婚を進めることは、通常より難しくなりますが、流れは大きく変わらないといえます。ここでは、服役中の離婚の方法を以下の3点から詳しく解説します。
- 協議離婚を進める
- 調停離婚の申し立て
- 離婚裁判をする
1つずつ見ていきましょう。
協議離婚を進める
服役中の離婚の方法の1番目は、協議離婚を進めることです。まずは、夫と妻の双方で話し合いを行い、合意を目指します。服役中の場合、相手が刑務所に出向いて話し合いを進めるか、離婚届のやりとりを郵送で行うことになります。
ただし、配偶者の懲役刑が確定しても、どこの刑務所に収監されるかは通知されないため、配偶者本人から手紙などで知らせがくるのを待つ必要があります。
連絡がない場合は、可能性のある刑務所に配偶者宛てに手紙を出しますが、配偶者が収監されていないと、宛先不明で手紙が返送されてきます。そのため服役中の夫や妻は、手紙が返送されてこない刑務所に収監されている可能性が高いといえるでしょう。
特に妻の場合は、収監先が全国に10カ所しかない女子刑務所に限られるため、収監先のあたりをつけやすくなります。収監されている刑務所がわかったら、手紙・面会などを通して離婚を求めることになります。
また、離婚届を郵送して、記入してもらうよう頼むこともできます。服役中の相手が離婚届を記入し返送すれば、役所に提出し協議離婚が成立します。しかし、連絡を無視する可能性があるため、この場合は、裁判所を通して離婚手続きを進めることになります。
調停離婚の申立て
服役中の離婚の方法の2番目は、調停離婚の申立てをすることです。
夫や妻が服役中に離婚手続きをすすめる場合、協議離婚が不成立になれば、次は調停離婚の申立てを行う必要があります。しかし、調停離婚は、双方が調停期日に出頭したうえで、家庭裁判所の調停委員を介した話し合いをする必要があります。
そのため服役中の場合は、調停を成立させることはできないといえるでしょう。手続きとしては、申立書を刑務所に送り、出席することが困難であることを明記し、裁判所に返送してもらう必要があります。
裁判離婚を考えるのであれば、調停を経てからでしか裁判の手続きができないため、手続き上調停離婚の申立てが必要といえます。
離婚裁判をする
服役中の離婚の方法の最後は、離婚裁判をすることです。離婚裁判は、離婚調停が不成立となった場合に可能な手続きです。
服役中の夫や妻との離婚は、民法第770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当する可能性が高いといえます。
しかし、100パーセントの確率で裁判官が離婚を認めてくれるとは限りません。たとえば、殺人などの重大な犯罪で服役している場合は、離婚が認められる可能性が高いです。しかし、1度の軽微な犯罪の場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」としては認められにくい傾向があります。
反対に、軽微な犯罪を何度も繰り返し有罪刑による執行で夫婦関係が破綻している、と認められれば、離婚が成立しやすい傾向にあります。
服役中の離婚は弁護士に相談することがおすすめ
服役中であっても離婚は可能ですが、通常の離婚とは違い、当事者同士だけで進めるのは難しいといえます。
まずは、収監されている刑務所にあたりをつけて離婚届を送付することからはじめますが、収監先を見つけても相手が拒否したり、離婚届が返送されなかったりした場合は、裁判所の手続きを通して離婚を進めることになります。
裁判所の手続きを一人で行うことは難しく不安もあるでしょう。離婚を専門とする弁護士であれば、このような手続きを円滑に進めることができます。また、相手に離婚を切り出す前に弁護士に相談することで、どのように進めるとよいかアドバイスをしてもらうこともできます。
離婚は一人で進めようとすると、途中で不安になったり手続きの煩雑さから諦めようとしてしまったりすることもあるでしょう。弁護士にサポートしてもらうことは、離婚成立への近道ともいえます。
まとめ
今回は、離婚の専門弁護士が、夫や妻が服役中でも離婚できるのか・服役中の離婚が認められやすいケース・離婚の進め方を解説しました。服役中の夫や妻との離婚は、簡単ではありません。双方で話し合うことも難しく、正式な手続きを行うのもすべて一人で進めることになります。
また、収監されている刑務所に送った離婚届を拒否されるかもしれない、もしかしたら返送されないかもしれないなどの不安もあるでしょう。
このような場合、離婚を専門とする弁護士であれば、状況に応じた適切な対応をしてくれるため不安を抑えることが可能です。
また、複雑な離婚の手続きもすべて代行して行ってくれるので、依頼者であるあなたの負担を減らすこともできます。離婚を成立させるためには、気持ちの維持や労力を必要とします。弁護士のサポートを受けながら離婚成立を目指しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。