自首した場合どれくらい減刑される?軽くなるケース・ならないケースを弁護士が解説
最終更新日: 2025年03月31日
- 罪を犯したが反省しており、自首したい。自首すれば必ず減刑されるのだろうか?
- 自首した場合、どれくらい減刑されるのだろう?
- 自首しても減刑されない場合はあるのだろうか?
自首とは、犯罪の事実や犯人が特定されていない段階で、捜査機関に犯行を自ら申告することです。
自首すれば、罪を真摯に反省し罪を償おうとする姿勢を裁判所から評価され、減刑につながる可能性があります。
ただし、自首しても必ず減刑されるわけではありません。
そこで今回は、数多くの刑事事件に携わってきた弁護士が、自首による減刑の程度、自首するメリット等について詳しく解説します。
本記事のポイントは以下です。お悩みの方は詳細を弁護士と無料相談できます。
- 自首する前に、要件を満たしているかどうかを検討する必要がある
- 自首して減刑された場合、法定刑の期間・金額等が軽減される
- 自首して減刑を得たいのであれば、弁護士とよく相談し対応の仕方を協議しておいた方がよい
自首の意味・成立要件
自首すればどれくらい減刑されるかどうかを知るためには、まず自首とはなにか、どのような条件で認められるのかを理解しておく必要があります。自首による減刑の可能性を考える前に、基本的な内容について確認しましょう。
自首の意味・成立要件
警察署に出向いただけでは、捜査機関から自首と認められるわけではありません。
自首が成立するには、次のいずれかの条件に該当する必要があります。
- 自らの犯した罪そのものが、いまだ警察や検察に発覚していない
- 警察や検察が犯罪の事実を認識しているが、犯人が誰かをまだ特定できていない
被害者から被害届が提出されていないときは、警察署に出向いても自首が認められないケースもあります。
そのため、自分が犯罪を行ったことを示すため警察署に出向くときは証拠(例:盗撮の場合は盗撮画像、人を刺したときは犯行に使用したナイフ等)を持参しましょう。
出頭との違い
出頭とは、警察や検察が犯罪の事実を認識しており、しかも犯人がすでに特定されている場合に警察署へ出向く行動です。
出頭しても、裁判官の裁量で減刑される旨が法律上明記されているわけではありません。
ただし、捜査機関から逃げ回らず潔く名乗り出た事実が情状面で考慮され、量刑上有利に扱われる可能性もあるでしょう。
自首した場合はどれくらい減刑されるのか
自首が成立し減刑が認められれば、量刑の期間や金額が大幅に縮減される可能性があります。
自首による減刑が認められる場合
自首をすれば必ず減刑されるわけではありません。刑法は、自首による減刑が認められる場合について、次のように規定しています。
- 「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる」(刑法第42条第1項)
- 「告訴がなければ公訴を提起することができない罪(親告罪)について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする」(刑法第42条第2項)
つまり、減刑するかどうかは裁判官の裁量次第といえるでしょう。
しかし、特定の犯罪については、自首すれば必ず刑が軽くなると法律で決められているものもあります。たとえば、身の代金目的略取等予備罪(刑法第228条の3)がその一例です。
出典:刑法|e-GOV法令検索
減刑される程度
自首等により減刑が認められる場合、量刑は次の通り軽減されます(刑法第68条)。
刑罰の種類 | 減刑後の刑罰 |
---|---|
死刑 | 無期懲役または10年以上の懲役・禁錮(2025年6月1日以降は拘禁刑) |
無期懲役・無期禁錮 | 7年以上の有期懲役・禁錮 |
法定刑 | 最長・最短が半減 |
罰金刑 | 最高額・最低額が半減 |
拘留 | 1日~15日未満 |
科料 | 1,000円~5,000円未満 |
拘留・科料に処されたとき量刑の下限(寡額)は半減しません。
自首しても減刑が認められない場合もある
自首すれば大幅な量刑の軽減が認められる可能性がありますが、必ず減刑されるわけではありません。
事件発生から自首までに長期間が経過していたり、自首した本人が真摯に反省していなかったりすると、減刑は認められない可能性があります。
犯行から長期間経過している場合
罪を犯した後、長期間経ってから自首しても、減刑されないことがあるので注意しましょう。
事後強盗殺人の犯人が犯行後10年以上経ってから自首したものの、裁判所は減刑を認めず、無期懲役を言い渡した判例があります(名古屋高裁平成17年2月3日判決)。
自首して減刑されるためには、犯行後できるだけ早く警察署へ出向いた方がよいでしょう。
反省がみられない場合
自首しても深い反省や後悔が認められなければ、減刑されない可能性があります。
たとえば、警察署や検察庁での取り調べで「重い罪になるのは嫌だから自首した」と発言していた場合、反省がみられないと判断されるかもしれません。
反省の有無は自首の成立要件ではありませんが、深い反省の意を示していれば、裁判官の心証がよくなる可能性はあるでしょう。
自首によるメリット
自らの罪を真摯に反省し自首すれば減刑されるだけでなく、捜査機関から有利な扱いを受けられる可能性もあります。
また、被害者が自首した加害者との示談に応じるかもしれません。
逮捕・勾留回避
自首が認められた場合、警察側が本人の行動を評価し、逮捕せずに釈放する可能性があります。
逮捕は、被疑者が住所不定の場合や、証拠隠滅・逃亡のおそれがある場合の措置です。
自首して罪を償う姿勢が警察側に伝われば、証拠隠滅・逃亡のおそれはないと判断し、被疑者を逮捕せずに自宅に返す場合もあるのです。
そうなれば、在宅事件(被疑者を逮捕・勾留しないで捜査を進める刑事事件)となり、引き続き捜査は行われるものの、これまで通り自宅で生活しながら刑事手続が進んでいくでしょう。
また、自首して逮捕され身柄を送検された場合でも、検察官が自首の事実を考慮し、勾留請求せずに釈放することがあります。その場合は、在宅事件として扱われる可能性があります。
一方、検察官が勾留請求した場合、裁判所が請求を認めると勾留期間は最長20日間に及びます。
自首して逮捕・勾留を回避できれば、心身ともに疲弊する事態を避けられるため、メリットは大きいといえるでしょう。ただし、在宅事件となった後も、引き続き警察や検察の取り調べに応じなければいけません。
事件化せずに解決できる場合がある
自首しても事件化せず、すぐに解決する場合があります。
たとえば、次のようなケースでは事件化せずに終了となる可能性があります。
- 自首したが事件性がなかった:(例)家族の物をこっそり盗んだ(刑法第244条)
- 被害者から被害届が出されておらず、証拠もない
これらのケースでは、自首を受け付けずに、警察官から口頭注意・警告をされて終了することになるでしょう。
ただし、後日、被害者から被害届が提出された場合は、警察署へ出向いたときに遡り本人の自首が認められる可能性があります。
不起訴処分獲得
自首した場合、検察官は不起訴処分にする可能性があります。
ただし、自首しただけで検察官が不起訴処分を決めるわけではありません。次の要素も考慮し、総合的に判断するでしょう。
- 被疑者が自分の罪を後悔し、真摯に反省する姿勢が認められる
- 被疑者が初犯かつ常習性も認められない
- 被疑者は捜査機関の捜査に協力的であった
- 重い罪を犯してはいない
- すでに被害者との示談が成立している
被疑者が反省していないと認められる場合や、再犯であるとき、重大な犯罪(例:殺人や放火等)を引き起こしたときは、起訴される可能性が高いでしょう。
示談交渉の円滑化
被害者が加害者(被疑者)の自首を「真摯に反省している」と受け止め、加害者側からの示談交渉の申し出に応じるケースがあります。
被害者との示談に成功すれば、被害届が取り下げられるでしょう。被害届を取り下げた場合、検察官は不起訴処分にする可能性があります。
示談交渉は、弁護士を立て、次のような内容を取り決めるのが一般的です。
- 加害者が被害者へ謝罪する
- 加害者が支払う示談金の調整(示談金額・支払方法・支払期限の決定)
- 被害者が被害届を取り下げる
- 被害者が検察官に嘆願書を提出し、加害者に対する寛大な処分を求める
- 示談が成立したら、加害者・被害者は再び問題を蒸し返さない
示談合意後は示談書を2通作成し、加害者・被害者双方が1通ずつ大切に保管しておきましょう。
自首して減刑を得るための弁護士の活動
「自分だけで自首を決断してよいものか」「自首は警察署に出向くだけでよいのだろうか」と、悩んでいる人もいるでしょう。
自首するかどうか迷うときは、弁護士と相談した方がよいです。
弁護士に相談すれば、法的なアドバイスをしたうえで、減刑を得るための弁護活動を始めます。
自首同行
自分だけで自首するのが不安なときは、弁護士が付き添う「自首同行」も可能です。
弁護士に自首同行を依頼するメリットは、次の通りです。
- 自首前に打ち合わせを行い、自首する計画を立てられる
- 自首に必要な準備を教えてもらえる
- 自首報告書の作成を任せられる
- 警察との話し合いを任せ、スケジュール調整できる
- 逮捕された場合の弁護活動や、自首後に取り調べを受けるときの注意点などがわかる
- 自首後も弁護士のサポートを受けられる
自首前に警察の担当者へ経緯を説明することや、自首する内容をまとめた報告書の作成・提出も、弁護士に任せられます。本人は安心して警察署に自首できるでしょう。
逮捕回避
自首に付き添った弁護士は、警察側に次のように説明し、本人を逮捕しないよう求めます。
- 本人は犯した罪を後悔しており、反省の意思を示すため自首した
- 取り調べに誠心誠意対応し、偽りなく供述した
- 初犯であり、犯罪の悪質性は低い
- 弁護士が身元引受人となり、逃亡・証拠隠滅しないように指導する 等
弁護士の主張に納得した警察が、逮捕せずに被疑者の帰宅を許す可能性があります。
不当な取り調べ防止
自首するときに弁護士がいれば、警察からの不当な取り調べを防止できる効果も期待できます。
警察側は自首した本人に理解を示すとは限らず、取調官が誘導尋問や威圧的な質問を行ったり、不利な供述の強要や供述していない内容を供述調書に記載したりする可能性もあります。
しかし、自首同行した弁護士が警察署で待機していれば、取調官はうかつな対応はとれなくなるでしょう。
また、自首前に弁護士から取り調べに対する回答の仕方や、供述調書の確認などについてアドバイスを受けられます。
取り調べの回答に困ったら弁護士と相談もでき、供述調書の記載内容に問題があれば指摘も可能です。取調官の勢いに押されることなく、冷静な対応を行えるでしょう。
自首して減刑を得たいなら春田法律事務所まで
今回は数多くの刑事事件を担当してきた弁護士が、自首すればどれくらい減刑されるかや、減刑を実現するための弁護活動等について詳しく解説しました。
春田法律事務所は刑事事件の弁護活動に実績豊富な法律事務所です。自首による減刑を望む場合は、事前に弁護士と今後の対応をよく相談しましょう。
※内容によってはご相談をお受けできない場合がありますので、ご了承ください。